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初心に返ってデータを守るNASを考える、高耐久HDD + RAID 5で安全運用

Seagate IronWolf + Synology DiskStationで手堅い環境を構築 text by 坂本はじめ

 いつの時代でも、大切なデータを安全に保存することはPCユーザーにとって重要な課題だ。データ置き場としてNAS(Network Attached Storage)を利用しているユーザーも多いかと思うが、今回はNASを使う上で安全にデータを守る方法を振り返ってみたい。

 Seagate IronWolfとSynology製NASキットの組み合わせを例に、データを安全に守ることのできるNASの構成や運用について確認してみよう。

「NAS向けHDD」と「RAID対応NAS」で信頼できるNASを構築しよう

今回一例として取り上げるNAS向けHDDのSegate IronWolfと、RAID対応のSynology製NASキット。

 一口にNASと言っても、単にネットワーク上で共有できるという最低限の機能を備えたものから、単体のHDDよりずっと高い信頼性や転送速度を実現できる高機能なものまで、さまざまな種類のNASが販売されている。

 利便性だけでなくデータの安全性を重視して選ぶなら、NAS向けに設計されたHDDと、データを失わないためにRAID 1/5/6といった冗長性を高める機能に対応したNAS本体の組み合わせがおすすめだ。

 まずは、NAS向けに設計されたHDDと、RAID機能を備えるNASが、なぜデータの安全性を重視するユーザーにおすすめできるものなのかを確認していこう。

データを守るなら高耐久HDDは必須、NAS向け設計で平均故障間隔時間の長いモデルを選ぼうSeagateならNAS用の「IronWolf」シリーズ

Seagate IronWolf HDD。ちなみに、Seagateは2020年の内蔵HDD販売台数(BCNランキング)が国内1位だという。
IronWolfは24時間稼働を前提として設計されたモデルで、年間180TBのデータ転送に耐えるとされるモデルだ。

 データを守るうえで一番重要になるのはHDDの耐久性だ。記録メディア自体が弱いのではベースの部分が揺らいでしまうので、データを失わないためにはこだわるべき部分だ。また、NASで使用するのであればNAS向けに設計されたHDDを使用したい。NAS環境で使うことを前提に耐久性も考慮されているので、想定外に摩耗してしまうようなこともない。

 今回NAS用HDDの代表例として取り上げるのはSeagateのIronWolf HDD。NAS向けに設計されたHDDで、高耐久かつ高信頼性を実現していることはもちろん、Seagate独自の機能やサービスに対応している。

 年間8,760時間(=24時間×365日)の連続稼働と180TBの作業負荷に対応しながらも、3年間の製品保証を実現できる高耐久設計を採用。また、平均故障間隔(MTBF)100万時間という高い信頼性も兼ね備えており、耐久寿命とは無関係に生じる突発的な故障の発生率も小さい。

 NAS向けの設計は性能面にも及んでおり、IronWolfは全モデルで書き込み性能の安定性に優れたCMR記録方式を採用。さらに、4TB以上のモデルには、回転や振動を検出するRVセンサーを搭載。センサーの検出値をヘッドの動作にフィードバックすることで、NASのように他のHDDから生じた振動の影響を受けやすい環境下であっても、安定したデータ転送を可能としている。

HDDのステータス情報をNASに提供する「IronWolf Health Management(IHM)」。S.M.A.R.T.より詳細にHDDのステータスを把握することで、不具合の兆候を察知できる可能性を高められる。
データ復旧サービス「Rescue」。購入後3年の間、無償で1回データ復旧サービスを利用できる。

 壊れにくく安定した性能を発揮するよう設計されているIronWolfだが、突発的な故障が発生する確率はゼロでは無いし、長い年数使用すれば耐久寿命が尽きる時は必ず来る。いずれ起こる不具合に備えるべく、IronWolfに採用されているのが、「IronWolf Health Management」と「Rescue」だ。

 IronWolf Health Management(IHM)は、NAS向けにHDDのステータス情報を提供する機能だ。一般的なHDDに採用されている「S.M.A.R.T.」(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology)より詳しいステータスを提供することで、HDDに生じた故障や不具合の兆候を察知し、致命的な問題が生じる前に対処できる可能性を高めている。

 Rescueは、Seagateが提供しているデータ復旧サービスだ。本来、データ復旧サービスは高価であり、軽微な不具合でも数万円、ハードウェア故障を伴う不具合なら数十万円もの費用がかかるものだが、IronWolfを購入してから3年の間、データ復旧サービスのRescueを無償で1回利用する権利が付与されている。これは、NASでRAIDを構築している状態でも有効であり、NASで構築したRAIDボリュームで致命的な事態が生じた場合でも、データを取り戻すためのサービスを無償で利用できる。RAID環境のデータ復旧も無料で行うサービスはかなり珍しいので、IronWolfを選ぶポイントになるだろう。

 NASで利用するのに最適なハードウェア設計を採用し、致命的な状況を回避するのに役立つIHMや、致命的な状態からのリカバリーを無償提供するRescueが利用できるIronWolfは、正常に運用できているときはもちろん、問題が生じても低コストで最善を尽くすことができる。データを安全に守るためにNASを用いるなら、このようなHDDを利用すべきだ。

NAS向けHDDの高い信頼性をさらに高めるRAIDRAID 1やRAID 5に対応したNASキットでデータを安全に保管

今回用意したSynology製NASキットは、複数のディスクを束ねて構築するRAIDに対応している。

 HDDが如何に耐久性が高くとも、使用年数が長くなればいつかは壊れる。NASはネットワーク越しにデータにアクセスできるようになる利便性だけでなく、そうした障害に備え、データを失わないためより安全に運用できる機能を備えているモデルも多い。その機能の一つがRAIDだ。

 今回用意したSynology製のNAS、「DiskStation DS220+」と「DiskStation DS920+」はRAID機能に対応したNASであり、冗長性を備えたRAIDボリュームを構築することによって、より強固にデータを保護することが可能だ。ここでは、RAIDがどのようなものであるのかを確認しておこう。

 RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)とは、複数のHDD(SSD)を束ねて、耐障害性を備えたディスクアレイを構築する技術だ。RAIDで構築したディスクアレイの容量や性能は、「RAID 1」や「RAID 5」などのRAIDレベルや構成するディスクの本数によって異なるので、どのRAIDレベルでディスクアレイを構築するのかが重要になる。

 例えば、2本のディスクで構築できる「RAID 1(ミラーリング)」は、2本のディスクに全く同じ情報を記録するため、2つのディスクが故障しない限りデータは失われない。これにより突発的な故障への耐性は劇的に向上するが、利用できる記憶容量は、ディスクアレイを構成する最小容量のディスク1本分なので、最大でも50%以下になってしまう。安全ではあるが、ある意味贅沢な使い方ともいえる。

 NASで利用されることの多い「RAID 5(パリティ分散)」は3本以上のディスクで構築可能で、構成ディスクのうち1台が故障してもデータが失われないという耐障害性を有する。ディスクアレイの記憶容量は「(構成ディスクの最小容量) × (ディスク数-1)」で、4台の4TB HDDで構築した場合、記憶容量は最大12TBとなる。

 3本以上のディスクを搭載できるNASでRAID 5が利用されることが多いのは、耐障害性を備えながらも記憶容量の利用効率が良いためだ。より耐障害性に重きをおくのであれば、RAID 1やRAID 6の利用を検討しても良いだろう。

 一方で、例外的に耐障害性を持たないレベルであるRAID 0については、データの安全に守るという観点からは選ぶべきではないRAIDレベルだ。データの保管場所ではなく、一時的なキャッシュ領域に使用するなど、速度を引出す必要がある用途の時だけ使用しよう。

 なお、Synology製のNASは、これまでのRAID 0にはなかった機能が追加されている。RAID 0を構築する際、使用するディスクの最小容量×台数分の容量ではなく、RAIDを構成するディスクの合計容量がそのまま使用可能だ。このため、異なる容量のディスクでRAID 0構成しても使用できない領域が発生することはなく、全領域が使用できる独自仕様のものとなっている。

動作互換性が取れているHDDとNASの組み合わせでより安全にIronWolf独自機能を活用できればさらに手堅い運用も可能

DiskStation DS920+のバリデーションリストの一部、Seagate IronWolfの数多くのモデルが互換性のあるHDDとして記載されている。

 単体でも優れた耐久性と信頼性を備えているNAS向けHDDと、RAID機能に対応したNASを組み合わせれば、耐障害性を付与することでより安全に使えるのだが、より手堅い選択となる選び方がある。NASメーカーはテストが済み正常動作が保証できるストレージをバリデーションリストに記載しており、その中から選ぶことでより安全にNASを運用できる。

 今回Seagate IronWolfの4TBモデル「ST4000VN008」を例に紹介しているが、DiskStation DS920+/DiskStation DS220+ともにこのモデルはバリデーションリストに記載されており、手堅い組み合わせであることがわかる。

 また、Synology製NASキットの互換性に記載されているIronWolfシリーズは、前述したよりストレージの状態を詳しく知ることのできるIronWolf Health Management(4TB以上のモデル)をNASからも利用可能となっており、IHMによる詳細なディスクステータスの監視によって安全に運用できる仕組みになっている。IronWolfとSynology製NASキットは、安全に運用できるという観点では非常に相性が良い組み合わせといえるだろう。

SynologyのNASは、HDDがSeagate IronWolfであることを判別可能で、IHMを利用したテスト(IronWolf正常性テスト)を実行できる。
S.M.A.R.T.やIronWolf正常性テストを定期的に実行することが可能で、異常があればメールで通知を受け取ることもできる。

 なお、今回用意したSynology製のNASである「DiskStation DS220+」と「DiskStation DS920+」には、PC上にNASとの同期フォルダを作成したり、指定したフォルダを自動バックアップできる「Synology Drive Client」や、Windows OSを含めたシステム全体のバックアップ(ベアメタルバックアップ)が可能な「Active Backup for Business」など、高機能なアプリケーションが無償で提供されている。

 普段使用しているPCのバックアップをNASに作成することで、データは多重化され、安全なデータの保存を実現できる。よりNASを便利に使うのであれば、こうしたバックアップ機能などの有無もNASを選ぶ際に確認してもらいたい。

無償提供されているSynology Drive Clientでは、同期フォルダを作成したり、指定したフォルダのバックアップが簡単に行える。
Active Backup for Businessを用いれば、OSを含めたシステム全体のバックアップが可能。こちらも無償で利用可能だ。

NAS用高耐久HDDに動作保証有りのNASキットを組み合わせてデータを失わない運用を

 HDDメーカーとNASメーカーが相互に互換性を確認済みで、NAS向けHDDの優れた耐久性と信頼性をベースに、さらなる信頼性強化が可能なRAID機能を備え、無償で使えるバックアップソフトも充実。さらには、転ばぬ先の杖としてのデータ復旧サービス「Rescue」までもが無償で利用できるという、Seagate IronWolfとSynology製NASキットの組み合わせは、NASを利用してデータをより安全に保存したいと望むユーザーにとって安心確実な選択肢だ。

 2021年6月現在、今回紹介したSeagate IronWolfとSynology製NASキットをセット購入すると、最大6,500円引きになる期間限定キャンペーンがAmazon上で行われている。NASの導入に興味のあるユーザーは、この機会に購入を検討してみるのも良いだろう。

2台のHDDを搭載できる「DiskStation DS220+」。対応するRAIDレベルはRAID 0/1。RAID 1を使ったシンプルで安全なNASを手軽に構築したいならこちらがおすすめ。
4台のHDDを搭載できる「DiskStation DS920+」。対応するRAIDレベルはRAID 0/1/5/6/10。容量効率の良いRAID 5や、高信頼性のRAID 6が利用できる本格的な高機能なNASキットだ。

[制作協力:Seagate]