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Intel環境でもPCI-E 4.0 SSDが使える時代に。で、結局どれくらい速くなった?

トップクラスの性能を誇るPCI-E 4.0 SSD「WD_BLACK SN850」でテスト text by 芹澤 正芳

 “Rocket Lake”こと第11世代CoreプロセッサーとIntel 500シリーズチップセットの登場で、Intelのデスクトップ環境もPCI Express 4.0に対応した。現状、PCI Express 4.0の恩恵がもっとも大きいのはSSD。PCI Express 4.0 x4対応のNVMe SSDは最速クラスでシーケンシャルリード7,000MB/sに達しており、PCI Express 3.0 x4(理論値で約3,938MB/s)の環境ではその速度が活かし切れないためだ。より高速なストレージ環境を求める人にとっては待望の強化と言えるだろう。

 そこで今回は、PCI Express 3.0までの対応となる前世代のComet Lakeこと第10世代CoreプロセッサとIntel Z490チップセットと、第11世代CoreプロセッサとInte Z590チップセットの組み合わせでは、ストレージまわりの速度にどこまで差が出るのか改めて確認してみたい。ストレージには、現役最速クラスのPCI Express 4.0 x4対応NVMe SSDを用意した。

「Core i7-11700K+Z590」と「Core i7-10700K+Z490」で対決

 まずは、Intel 500シリーズチップセットでPCI Express 4.0に対応するための条件を整理しておこう。まず、PCI Express 4.0環境を使用するには、第11世代Coreプロセッサーと、対応マザーボードが必要だ。そして、PCI Express 4.0に対応するのはCPU直結のレーンと接続されたPCI ExpressスロットやM.2スロットのみで使える点に注意。チップセット経由のスロットはPCI Express 3.0接続になる。スロットごとの対応規格はマザーボードのマニュアルなどで確認しておこう。

たとえばASUSTeKのROG STRIX Z590-F GAMINGは、1基目と2基目のM.2スロットがPCI Express 4.0対応、3基目と4基目は3.0対応だ

 Intel 500シリーズでは第10世代Coreプロセッサも利用できるが、その場合はPCI Express 3.0対応になる。PCI Express 4.0対応SSDの速度は活かせないので注意が必要だ。ちなみに、Intel 400シリーズのうちZ490とH470は第11世代Coreプロセッサに対応しているが、PCI Express 4.0を使えるか、PCI Express 3.0までの対応になるかはマザーボードの設計しだい。そのため、今から新たに第11世代Coreプロセッサで自作するならIntel 500シリーズを選択するほうがよいだろう。

 さて、ここからは実際にテストを行なっていこう。用意したのは以下のとおり。

【検証環境】
CPU(第11世代Core環境)Intel Core i7-11700K(8コア16スレッド)
マザーボード
(第11世代Core環境)
ASUSTeK ROG STRIX Z590-F GAMING
(Intel Z590)
CPU(第10世代Core環境)Intel Core i7-10700K(8コア16スレッド)
マザーボード
(第10世代Core環境)
ASUSTeK ROG STRIX Z490-G GAMING
(Intel Z490)
メモリセンチュリーマイクロ CB8G-D4U3200H
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB)×2
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3070搭載カード
CPUクーラー28cmクラスラジエータ搭載簡易水冷クーラー
電源1000W/80PLUS Gold認証電源ユニット
OSWindows 10 Pro 64bit版

 ストレージには、PCI Express 4.0 x4対応で現役最速クラスのWestern Digital「WD_BLACK SN850 NVMe SSD」の1TB版を用意。公称シーケンシャルリードは7,000MB/s、シーケンシャルライトは5,300MB/sだ。WD_BLACK SN850 NVMe SSDの仕様や性能については、こちらのレビュー記事で詳しくレポートされているが、市場トップクラスの仕様と実使用環境での性能、ゲームでのレスポンスを向上させる“ゲームモード”を採用するなど、人気・実力ともに兼ね備えた強力な製品だ。

 また今回は、比較用としてPCI Express 3.0 x4対応のWestern Digital「WD_BLACK SN750 NVMe SSD」の1TB版も用意している。こちらの公称シーケンシャルリードは3,470MB/s、シーケンシャルライトは3,000MB/sだ。

テストにはWestern Digitalの最新PCI Express 4.0モデル「WD_BLACK SN850 NVMe SSD」を使用した
比較用として同じくWestern DigitalのPCI Express 3.0モデル「WD_BLACK SN750 NVMe SSD」も用意
比較用のZ490マザーボードには、ASUSTeKの「ROG STRIX Z490-G GAMING」を使用した

これを第11世代Coreプロセッサ環境、第10世代Coreプロセッサ環境のそれぞれでベンチマークテストを行ない、速度の差を見ていく。まずは、最大性能をチェックする定番ストレージベンチマークの「CrystalDiskMark 8.0.3」から。

CrystalDiskMark 8.0.3の計測結果

Z590マザーではWD_BLACK SN850はシーケンシャルリード6,952.3MB/s、シーケンシャルライト5259.0MB/sとほぼ公称どおりの速度が出ているが、Z490マザーではPCI Express 3.0までの対応なので最大3.500MB/s程度しか出ない。インターフェースの限界点が非常によく分かる結果と言える。さらに注目してほしいのがランダムアクセスだ。WD_BLACK SN850だけではなく、WD_BLACK SN750もZ490マザーのほうが速度が出ていない。第10世代CoreプロセッサとZ490の組み合わせでは、M.2スロットは必ずチップセット経由となる。Z590マザーのM.2スロットはCPU直結(少なくとも1基は)なのでボトルネックが少なく、速度が出やすいと考えられる。

 続いて、実アプリでの処理速度を見るPCMark 10のStorage(Full System Drive Benchmark)の結果を見てみよう。

PCMark 10―Storage(Full System Drive Benchmark)の計測結果

 WD_BLACK SN850はZ490マザーでは約15%スコアがダウン。実アプリの処理でもZ590マザーのほうが優位なのが分かる。下の個別処理時間は、PCMark 10 Storageの結果からゲームの起動時間に関するものを「ゲーム」、Adobe系アプリの処理時間を「クリエイティブ」、Microsoft Officeの処理時間を「Office」として集計したもの。すべてZ590マザーのほうが短時間で処理が終わっており、ゲーム、クリエイティブ、オフィスどの系統のアプリを使うにしてもPCI Express 4.0対応環境を整えたほうが快適になるのが分かる。厳密にはCPUが異なるので、単純にストレージまわりだけの性能差ではないが、そこも含めてこれが“世代差”というものだろう。

PCMark 10―Storage(個別処理速度)の計測結果

 ちなみに、WD_BLACK SN850とWD_BLACK SN750の比較で見てみると、PCI Express 3.0までの対応と同条件になるZ490マザーでもあらゆる処理でWD_BLACK SN850が勝利。シーケンシャルリードやライトだけではなく、実アプリでの使用感でも新しいSSDのほうが優秀ということが分かる。

 次にPCの総合的な性能を測定する「PCMark 10」の結果をチェックする。

PCMark 10の計測結果

 このベンチマークはストレージ性能よりも、CPU性能が大きく影響する。Z590マザー搭載のCore i7-11700KとZ490マザー搭載のCore i7-10700Kは同じ8コア16スレッドとはいえ、前者は新たなアーキテクチャ「Cypress Cove」を採用して基本性能を底上げしている。ここでも、CPUとストレージの両方を合わせた“世代差”を感じる結果だ。

 続いて、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」のロード時間を見てみる。

ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマークのローディングタイムの計測結果

 大差とまでは言えないものの、順当にZ590マザーのほうが速くロードが完了している。また、WD_BLACK SN850はWD_BLACK SN750に対して1秒以上ロード時間を短縮できており、ゲームに対する強さの進化も感じられる結果だ。

 また、Z590マザー使用時のWD_BLACK SN850とWD_BLACK SN750の温度もチェックしておこう。マザーボードのM.2スロットにあるヒートシンクを装着したい状態で、TxBENCHを使い、書き込み範囲を100GBに設定して10分間シーケンシャルライトを続けたときの温度を「HWiNFO64」で追っている。

CPUに一番近いM.2スロットを使用し、ヒートシンクも装着している
SSD温度の推移

 注目は“性能で上回るWD_BLACK SN850のほうが温度の上昇がゆるやか”ということ。最大温度はどちらも62℃だったが、テスト中はWD_BLACK SN850が最大5,100MB/s前後で書き込みするのに対して、WD_BLACK SN750は最大3,000MB/s前後。これだけの速度差があって温度は変わらないというWD_BLACK SN850の優秀ぶりが見える結果だ。

Intel環境でもPCI-E 4.0 SSDは効く! 性能重視なら最新世代パーツで固めたい

 第11世代CoreプロセッサとZ590マザーボードの組み合わせは、PCI Express 4.0に対応し最新NVMe SSDの性能を引き出せるようになっただけではなく、前世代に対してCPU性能も進化している。それはPCMark 10の結果からも明らかだ。高速なストレージ環境、より高い性能を求めるなら、PCI Express 4.0に対応するWD_BLACK SN850のような、最新世代のパーツで固めるのが“正解”と言ってよいだろう。

 また、PCI Express 3.0での利用となるZ490環境であってもWD_BLACK SN850のほうが高速であることも分かった。現状まだPCI Express 3.0環境という人も、今SSDを購入するなら、最新設計・最新仕様のWD_BLACK SN850がオススメ。将来を見据えた賢いパーツ選びという点も考慮したい。

[制作協力:テックウインド]