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「自作PCとBTO PCのいいとこどり」、Powered by MSIのPCが作られるまでを聞いてみた

MSI×ツクモPCのポイント、ゲームもクリエイター用途も両立 text by 坂本はじめ

ツクモが販売する「Powered by MSI」モデルのPC

 主要パーツにMSI製のPCパーツを採用するBTO PC「Powered by MSI」。MSIが以前から力を入れている取り組みの一つだが、採用モデルが増えつつあるので、現在どのような状況になっているのか、どのようなモデルが「Powered by MSI」として認証されているのか、担当者の方にうかがってみた。

 また、「Powered by MSI」モデルの一例として、ツクモのAMD構成モデル「G-GEAR Powered by MSI GM5A-C211T/CP1」もテストしたので、実際の製品がどのようなモデルなのかも合わせて紹介しよう。

「自作PCとBTO PCのいいとこどり」、Powered By MSIの魅力を担当者に聞いてみたツクモは法人向けの特注モデルとして認証モデルをスタート

主要パーツがMSI製品で構成されたBTO PC「Powered By MSI」の取り組みに関して聞いてみた。
エムエスアイコンピュータージャパン MBプロダクトマーケティング/FAE 新宅 洪一 氏
株式会社ProjectWhite(現 株式会社ヤマダホールディングス) ツクモ商品企画部 鈴木 浩太 氏

――現在、どのようなPCが「Powered By MSI」となるのか、条件を教えてください。

[MSI 新宅氏]PCパーツの構成としては、マザーボードとビデオカードにMSIの製品が使用されていればPowered By MSIの要件を満たすことに今はなっています。

 ケースや電源、CPUクーラーなどもMSI製のパーツで構成できますが、この辺りは販売メーカーさんの要望に合わせることが多いです。特に電源は自社で普段使用している検証済みのモデルを使いたいと言われることも多いですしね。

――Powered By MSIのモデルを販売したいとなった場合、MSIに打診すれば販売できるのでしょうか?

[MSI 新宅氏]これまで協業しているメーカーさんだけでなく、声をかけていただければ喜んで協力させていただきたいと考えています。担当としては常にウェルカムといった感じですね。小規模の特注モデルから大量販売向けの定番モデルまで幅広く対応可能です。

[ツクモ 鈴木氏]ツクモの例だと、一番初めは法人案件の特注モデルから「Powered By MSI」のモデルはスタートしています。以前に専門学校で使用するPCの注文を受けた際に、性能も安定性も高く、なおかつ見た目も統一感のあるデザインといった要望があり、要件を満たすモデルとして「Powered By MSI」のモデルを制作しました。当時は一般ユーザー向けに販売する予定もなく、小規模な状態からスタートしています。

クリエイター関連用途やゲーム関連用途の場合、事務用PC的なデザインが嫌われることもあり、側面がガラスパネルで内部がかっこよく見えるモデルや、イルミネーションが美しいPCといったことが必須条件になった際に「Powered By MSI」の取り組みを積極的に利用していました。


ツクモの「Powered By MSI」モデルはBIOSも専用にカスタムされており、設定値などが市販品などとは異なるという。また、PC起動時に表示されるロゴもMSIコラボレーションになっている。
自作PCのような柔軟な構成に加え、メーカー製PCのような安定性が担保されたPowered By MSIは、「自作PCとBTO PCのいいとこどり」(MSI 新宅氏)とのこと。

――Powered By MSIのモデルは、販売メーカーとMSIがコラボレーションで制作するモデルといった位置づけなのでしょうか。また、どのような部分が魅力になるのでしょうか。

[MSI 新宅氏]製品企画の段階から協業してスタートするかたちがほとんどですね。販売メーカーさんからどのようなPCを構築したいのか聞いたうえで、組み合わせの相性や構成に問題が無いか確認をとったりと、バグフィックス的な作業も行います。

また、問題がある場合は代案を提案したりもしますし、そうした中からMSI側からの提案で生まれるモデルもあったりします。自作PCのような構成の自由さがあり、尚且つパーツメーカー側でPCとしての安定性などが確認されているモデルになるので、「自作PCとBTO PCのいいとこどり」といえますね。

[ツクモ 鈴木氏]販売メーカー側としても、そのモデルに合わせたチューニングを要望としてMSIさんに打診したり、ただMSI製のPCパーツで組んだモデルというだけでなく、一段上の安定性や快適性が得られるモデルになるよう取り組んでいます。

ファン回転数やメモリのプロファイル、CPUブーストの効き具合など、構成に合わせて特別なBIOSを制作してもらったり、起動時のロゴをコラボレーション仕様にしたりと、カスタムしている部分も多々あります。このため、ツクモの「Powered By MSI」モデルは基本的にユーザーがBIOS設定に触れる必要が無いものになっています。


ツクモではUnityトレーニングセンターで使用するためのPCを納入したことがあり、現在も動作確認が公式にとられているUnity推奨パソコンをラインナップしている。なお、販売されているのは推奨の等級としては最上となる「プレミアム」クラスのPCだ。

[MSI 新宅氏]以前に、ツクモさんと協力してUnityトレーニングセンター(Unityの公式教育施設)で使用するためのPCを制作したことがありました。Unityが安定して動作することや、長時間使用しても高いパフォーマンスを発揮することなどの条件を満たせるモデルに仕上げました。こうしたアプリケーションやゲームの認証を取得する際もPowered By MSIの取り組みは有効だと思います。

[ツクモ 鈴木氏]Unityトレーニングセンターでの例のように、専門学校など、信頼性が重視される用途にはPowered By MSIの取り組みは凄く効果があります。MSIさんはPCパーツメーカーとして定評がありブランドもあるので、購入される方から信頼を得やすい部分もありますね。もともとはこうした安定性が重視される業務用途向けに取り組んでいたのですが、専門学校で使ったユーザーさんから個人用に購入したいと問い合わせがあったりしたので、業務用のみから個人ユーザー向けにも販売するようになったというのが今の流れですね。今は業務用と個人用で売れ行きは半々くらいの割合になっています。

[MSI 新宅氏]Powered By MSIはこうした安定性などの面が大きなメリットですが、製品の安定供給といった面でもメリットがあると思います。MSIは開発と製造の両方を自社内で一貫して行っているので、製造や出荷の状況なども正確に把握できます。昨今半導体や関連部品の不足が問題になっていますが、なるべく安定供給できるよう力を入れています。

[ツクモ 鈴木氏]PCパーツの安定供給に関しては販売メーカーとしてはかなり魅力があります。企業同士のプロジェクトになるので安定的な部材の確保ができるようにもなりますし、特に今は半導体不足が問題になっているので、非常にありがたいと思っています。また、BTO PCは搭載パーツが選べないことも多々ありますが、人気のあるMSIのパーツが使われているPCが選べる点はユーザーさんには魅力になると思いますね。

[MSI 新宅氏]コンシューマーユーザーの方に喜ばれる部分にも力をいれますが、業務用に求められるスパルタンな部分も無くさないように今後も広めて行ければと思いますね。


ツクモのPowered By MSIモデルは安定性重視のためIntel/AMD環境それぞれ1モデルにしぼられている。
ビデオカードも各グレードでモデル数を絞り込んで選ばれている。

――Powered By MSIモデルが作られる際、パーツ選定はどのように行われるのでしょうか。

[MSI 新宅氏]まずは販売メーカーさんからの構成の案などをいただき、その構成で問題ないかチェックしたり動作検証を行います。その結果をフィードバックして製品化といった流れですね。相性の問題だけでなく、組み合わせによっては性能が発揮されにくい組み合わせなどもあるので、そうした際のフィードバックも行います。

[ツクモ 鈴木氏]マザーボードに関しては、安定性の確保などの面でモデルを絞って使用しています。絞った分しっかりと検証を行えますし、作り込むこともできます。また、Powered By MSIのモデルはツクモ側でも細かく検証を行います。ツクモでも検証を行い、MSIさん側でも検証を行うダブルチェックを毎回行っているので、こうした部分は普通のBTO PCとは違いますね。

今は業務用を想定していることもあり、販売時にカスタマイズ対応はしていませんが、将来的には安定性を確保したうえでカスタマイズ販売にも対応する予定です。


PCが梱包されている資材にもこだわっているという。配送時の衝撃で壊れない強度を維持しつつ大きさも小さくなるように考慮されている。
内部の緩衝材も柔らかすぎず硬すぎずと調整したものになっているという。

――現行のPowered By MSIを作成するにあたり、こだわった部分や苦労した部分などはありますか。

[ツクモ 鈴木氏]安定性は一番こだわっている部分ですね。静音性やスペック表では見えない部分の使い勝手にもこだわっています。品質管理が厳しく、高品質な製造が可能な長野の工場に専用のラインを設け組み立てを行っています。採用パーツだけでなく、製造の面でもこだわりをもって行っています。

他の部分では梱包材にもこだわっていますね。実際に輸送試験を行い、一定の衝撃をあたえても問題が発生しないかなどテストを行い、緩衝材を作り直したりもしました。大きすぎると邪魔になり送料もかかりますし、無理にコンパクトにすると輸送中の衝撃に耐えられずPCが壊れたりしますし、こうした部分も意識しています。

[MSI 新宅氏]輸送中の配慮という点ではビデオカード用のサポートステイを用意したこともありましたね。配送なども含め製品に関わる部分であれば積極的に協力しています。


ツクモの現在のPowered By MSIモデル。CPUとGPUの違いなどで4種類が用意されている。

[ツクモ 鈴木氏]現行のPowered By MSIモデルは、ゲームを楽しむ、ゲームを作るといった方をターゲットに構成を決めたモデルになります。ゲームだけで見ればGeForceの人気が高いのですが、クリエイター用途も含めるとRadeonの方が相性が良いアプリケーションなどもあるので、そうした点もラインナップを決める際に考慮しています。また、CPUもIntel/AMDどちらも好みに合わせ選べるようにしています。


――Powered By MSIモデルをどのようなユーザーに使って欲しいか、また、今後の計画などがあれば教えてください。

[MSI 新宅氏]ゲーマーやクリエイターのようなハイパフォーマンスを求める方に使ってもらいたいですね。動作の安定性には自信があるモデルなので、是非ヘビーユーザーに使ってもらえればと思います。

[ツクモ 鈴木氏]ゲームを楽しむ人、開発を行う人、プロフェッショナル系のクリエイターアプリケーションを使用する人など、スペック的にはそうした用途に十分耐えられるものになっているので、そうした方々に使ってもらえると嬉しいですね。

また、大阪のツクモなんば店内にある「ツクモ×MSIコンセプトストア」限定で水冷CPUクーラー搭載モデルを販売したことがあったのですが、こうしたモデルを通常モデルとして販売できるようにもしたいですね。また、安定性を確保したうえでのカスタム注文にも対応できるよう取り組んでいきたいと考えています。直近ではRyzen 7 5800X + GeForce RTX 3070 Ti構成のモデルや、Ryzen 5 5600X + GeForce RTX 3060 Ti構成モデル、Core i5-11400F + GeForce RTX 3060 Ti構成モデルなどもPowered By MSIモデルとして拡充予定なので、ラインナップの増加にも期待してもらえればと思います。

Ryzen 5 5600X + Radeon RX 6700 XTの「Powered by MSI」モデルツクモのAMD構成PCをチェック

G-GEAR Powered by MSI GM5A-C211T/CP1。

 それでは、実際にPowered by MSIモデルとして販売されているPCの実力をチェックしてみよう。

 今回紹介するのは、ツクモのゲーミングPCブランド「G-GEAR」とMSIのコラボレーションモデル、「G-GEAR Powered by MSI GM5A-C211T/CP1」だ。

スリットにイルミネーション用RGB LEDを組み込んだフロントパネルを搭載。
左側面に配置された強化ガラスパネルから内蔵パーツのビジュアルを楽しめる。
フロントパネルインターフェイス。USB 3.0(1基)、USB 2.0(2基)、音声入出力、電源スイッチ。
ケースには「MSI MAG VAMPIRIC 010」のG-GEARカスタマイズモデルを採用。

 MSIのミドルタワーケース「MSI MAG VAMPIRIC 010」のG-GEARカスタマイズモデルに、6コア12スレッドCPUのRyzen 5 5600Xと、Radeon RX 6700 XT搭載ビデオカード「MSI Radeon RX 6700 XT MECH 2X 12G」を搭載したゲーミングPCで、マザーボードにもMSI製の「B550-A PRO」を使用している。

 現在は即納可能な完成品PCとして販売されており、販売価格は199,800円。

CPUのRyzen 5 5600X。ゲームをはじめ多くの処理で高い性能を発揮するZen 3ベースの6コア12スレッドCPUだ。
Radeon RX 6700 XTを搭載する「MSI Radeon RX 6700 XT MECH 2X 12G」。
AMD B550チップセット搭載マザーボード「MSI B550-A PRO」。

3DCG制作も今時のゲームも楽しめるMSI×ツクモの「Powered by MSI」PC

 ここからは、G-GEAR Powered by MSI GM5A-C211T/CP1の実力を、ベンチマークテストとゲームでチェックする。

 まず実行したのはCINEBENCH R23。CPUベンチマークテストとして知られるこのテストでは、マルチコアテストで「10,010pts」、シングルコアテストで「1,538pts」を記録しており、AMD最新の6コア12スレッドCPUであるRyzen 5 5600Xの性能をしっかり発揮できているようだ。

 3DCGソフト「Blender」のオフィシャルベンチマークでは、CPUのRyzen 5 5600Xでレンダリングした場合と、OpenCLに対応するRadeon RX 6700 XTでレンダリングした場合の2パターンでテストを実行してみた。

 Ryzen 5 5600Xのトータルのレンダリング時間が「56分22秒」なのに対し、OpenCLを用いたRadeon RX 6700 XTは「16分51秒」を記録。Blenderをはじめ、クリエイティブの分野ではGPU性能を活用できる処理が増加しており、ゲーミングPCの高いGPU性能をゲーム以外の場で活用できるようになっている。

 バトルロイヤルゲーム「フォートナイト」では、画面解像度をフルHD(1,920×1,080ドット)、クオリティプリセットを「最高」、グラフィックスAPIをDirectX 12にそれぞれ設定してプレイしてみた。

 6月に更新された「チャプター2 - シーズン7(v17.00)」以降、最高プリセットの画質と負荷が高まったフォートナイトだが、今回のPCはほとんどのシーンで130~140fps程度のフレームレートを記録。勝利を目指すゲーマーの要求にしっかり応えられる確かな性能を備えている。

100fpsを余裕で上回る高速描画を実現。高画質設定でもスムーズな表示でフォートナイトを楽しむことができる。

 カプコンのサバイバルホラー「バイオハザード ヴィレッジ」では、フルHD解像度でグラフィックス自動設定を「レイトレーシング」にした状態でプレイしてみた。

 描画負荷の高いリアルタイムレイトレーシングを有効化した設定だが、プレイ中のフレームレートは100fps前後を達成している。より高解像度や高品質な描画設定を適用すれば、よりハイクオリティな映像でバイオハザードシリーズ最新作を楽しめるだろう。

自動描画設定「レイトレーシング」を適用しても100fps前後の高フレームレートを実現できた。バイオハザード最新作を高画質設定でプレイするのに十分な性能を備えていることは疑いない。

自作PCの自由さにメーカーお墨付きの安定性も手に入る「Powered by MSI」のPC信頼できるPCを購入する際の目印に

 「Powered by MSI」のPCは、自作PCと同等の構成の自由さやパフォーマンスに加え、MSIと販売メーカーが協力することで安定性も高めた点が魅力のモデルだ。製品によってはMSIのコンプリートPC的な構成になっているモデルもあり、性能や安定性以外の点でも特長を持ったPCも販売されている。

 今回、一例として取り上げたツクモのG-GEAR Powered by MSI GM5A-C211T/CP1は、FPSやバトルロイヤルゲームでの高速描画を求めるゲーマーはもちろん、ハイクオリティな映像で没入感を得たいタイプのゲーマーの期待にも応えられる実力を備えており、長時間のプレイでも常に安定したパフォーマンスを発揮していた。自作PCの良さを持った完成品のPCが即購入できることは、すぐにPCを使いたいユーザーにとって大きなメリットになるだろう。

 安定して高い性能を発揮するPowered by MSIなゲーミングPCは、ゲーマーにとっても信頼できるマシンであると言えるだろう。

[制作協力:MSI]