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第8世代Core i5搭載の「dynabook Z7」を1TB NVMe SSDに換装、リード3GB/s超え環境に強化
SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 佐藤岳大
2021年8月24日 00:01
今回SSD換装の事例として紹介するのは、第8世代Coreプロセッサーを搭載するダイナブック株式会社の15.6インチ薄型ノートPC「dynabook Z7(P1Z7LBBL)」だ。
2019年に発売されたモデルで、15.6型ながら約17.6mm/約1.4kgという薄型軽量設計が特徴。用意したのはCore i5-8265U/8GBメモリ/Optane 32GB+512GB SSD仕様のモデルで、これを1TBのNVMe SSDへ換装し、大容量化を狙う。換装の手順と合わせ、換装の前後でどれだけの変化があるのかを紹介しよう。
※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。
第8世代Core搭載の薄型ノート「dynabook Z7」のSSDをアップグレード
今回使用するdynabook Z7は、2019年に発売されたモデル。第8世代のモバイルCoreプロセッサー(Whiskey Lake-U)を搭載し、薄さと堅牢性を両立したノートPCだ。
中古品として入手しているので、新品の時から若干の変更があるかもしれないが、CPUに4コア8スレッドのCore i5-8265U(ベース1.6GHz/ブースト時3.9GHz)、メモリにDDR4-2400 4GB×2(デュアルチャネル)、ストレージに32GB Optane Memory+512GB SSDを備えるモデルで、ディスプレイは15.6インチ/1,920×1,080ドット。
そのほか、最大40Gbps転送が可能なThunderbolt 3対応のType-Cポートや、Wi-Fi 6無線LAN/Bluetooth、microSDカードリーダーなどを搭載している。OSはWindows 10 Home 64bit。
dynabook Z7(P1Z7LBBL) | |
---|---|
CPU | Core i5-8265U(4コア/1.6GHz/ブースト時3.4GHz) |
メモリ | DDR4-2400 4GB×2 |
ストレージ | 512GB SSD + 32GB Optane Memory |
GPU | Intel UHD Graphics |
ディスプレイ | 15.6インチ/1,920×1,080ドット |
OS | Windows 10 Home 64bit |
換装に使うのは1TB/NVMeのSamsung SSD 980
今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 980の1TBモデル「MZ-V8V1T0B/IT」。最大速度リード3,500MB/s・ライト3,000MB/sのNVMe接続モデルで、インターフェイスはPCIe 3.0 x4レーン。
Samsung SSD 980は250GB~1TBまでの3製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。
ノートPCでM.2 NVMe SSDへの換装を行う際、相性が出ることがある。このため、SSD換装の際には事前に下調べを行い、動作実績のあるモデルから選ぶことをお勧めしたい。
また、ノートPC側のM.2スロットは製品により仕様が異なり、大きく分けると、SATA接続のみ、SATA接続とNVMe接続両対応、NVMe接続のみ対応といった3パターンが存在する。SATA SSDからNVMe SSDに換装する場合、ノートPC側がSATA/NVMe両対応である必要があるので注意しよう。
このほか、ノートPC側のM.2スロットはモデルによりPCI Expressのレーン数や世代が異なり、モデルによってはSSDの公称値通りの性能が出ないケースもある。これは故障では無いので覚えておこう。
古いSSDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介
ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。
NVMe SSD用の外付けケースは税込4千円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。
換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう
PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。
今回使用しているSSD外付けケースはAOTECHのAOK-M2NVME-U31G2。NVMe SSDに対応したUSB 3.2 Gen2接続のケースで、SSDの取り付けも比較的簡単だ。
M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応したモデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。
データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単
今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。
Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。
USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、移行ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そうした際は、大概外付けケース側のUSBコントローラとの相性に問題がある可能性が高いので、ケースを替えるか、デスクトップPC上でデータのコピーを行うなどテストしてみてもらいたい。
「Samsung Data Migration 4.0」を利用した際の外付けケースとの相性に関しては別記事で紹介しているので、そちらも参照してもらいたい。
dynabook Z7の分解難易度は中程度、分解工具はプラスドライバーのみだがSSD交換にはマザーボードの取り外しが必要
ここからはdynabook Z7の分解作業に入るが、工具は通常のプラスドライバーのみで問題ない。ただし、M.2スロットがマザーボード裏面側に配置されているため、SSDの換装にはコネクタ類を取り外しマザーボードを取り外す必要があり、難易度としては中程度だ。
SSD換装時はPCを必ずシャットダウンし、機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気をつけよう。
本機の場合、背面パネルを固定しているネジは露出している11本と中央のゴム足で隠された1本だ。
背面パネルはネジと少数のツメで固定されているため、簡単に外れる。ただし無理に外そうとした場合ツメを破損するおそれもあるので、慎重に行おう。
コネクタ類の取り外しだが、まずは安全のためバッテリーのコネクタを外す。あとはその他のコネクタを順次取り外し、ネジを外せばマザーボードが取り出せる状態になる。
一部のフレキシブルケーブルのコネクタにはラッチ機構(グレーのツメ)があるため、ケーブルを引き抜く前に解除しよう。
マザーボードを取り外したら、裏面のM.2スロットにアクセスできるようになる。コピーしたSSDへ換装しよう。
作業が終わったら今までの手順を逆にたどって元に戻していく。コネクタが確実に接続されていることをよく確認しよう。今回はバッテリーのコネクタを外した関係か、UEFIがリセットされ時刻設定が必要となったが、現在時刻に設定したところ無事にOSが起動した。
冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。
保証が切れている使い込んだノートPCなどであれば、SSDの換装は投資に見合った効果が得られやすいので、PCを買い換える前に試してみる価値はある。
大容量SSDへの換装で空き容量が大幅に増加、シーケンシャルライトの値も大きく向上
実際にSSD換装を行い得られたメリットも紹介しておこう。今回は容量と速度の2点を紹介する。
1TB SSDで空き容量は一気に拡大、より扱いやすいPCに
まずは容量の面だが、dynabook Z7には512GBのSSDが搭載されており、回復領域などを除いたシステム上から見た容量は約463GBだ。
空き容量は約401GBに限られ、用途によっては意外と空き容量のなさに困る。容量の大きいアプリケーションなどをインストールすると空きが無くなってしまったり、動画や画像などを置いておくには心もとない容量だ。こまめにファイルを削除したり、Windowsアップデートのファイルも定期的に整理する必要も出てくる。
1TB SSDに換装すると空き容量は868GBと2倍以上になり、使い勝手の良さも向上する。音楽や写真などのライブラリを構築したり、多数のファイルを置きっぱなしにしてもゆとりがあり、空き容量を気にしながら使うシーンはほぼなくなるだろう。容量面での制約を気にせず済むため快適だ。
SSD換装で速度は全体的に大幅向上、シーケンシャルライトは5倍以上高速に
速度の方だが、Crystal Disk Markの実行結果からも見て分かる通り、特に書き込み速度が大きく向上。接続もPCIe 3.0 x4となっており、dynabook Z7はSamsung SSD 980の速度をしっかり引き出せていると言える。
ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。
今回とりあげたdynabook Z7は、搭載CPUの世代も比較的新しく、ストレージにゆとりがあればまだまだ使える性能をもったモデルだ。4コア/8スレッドの十分な性能やThunderbolt 3ポートも備え、15.6型としては今も珍しい持ち運びの容易さで、家庭内でも使いやすい。
PCを買い換えるほどではないといった場合や、予算を抑えて環境を快適にしたいというユーザーは、ノートPCのSSD換装もPCを快適にする選択肢の一つとして考えてみてはいかがだろうか。
[制作協力:Samsung]