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【SSD&HDDの基礎知識:基本編】SSDとHDDの仕組、性能、コスパの違いと使い分けを完全理解

起動ドライブに向いているのは?SSD時代のHDDの役目は? text by マルオマサト

“PCパーツの基礎知識”シリーズ第2回のテーマは「ストレージ」。SSDとHDDだ。OSやアプリ、各種データの保存場所であるストレージは、PCには欠かせないパーツ。高速化・大容量化が著しいSSDの時代になってもHDDが広く使われているのはなぜ? 同じ容量なのに値段が全然違うHDD/SSDがあるのはどうして? 一体どれを買えばいいの? などの疑問の答えを前後編で解き明かしていく。

「ストレージ」って何をするパーツ?

・OSやアプリケーションをインストールする場所
・文書や写真、動画などのファイルを保存スペース
・メインメモリに置ききれない“一時データ”の置き場

プログラムやデータの入れ物

 ストレージは、OSやプログラム、データを保存しておくパーツだ。CPUが使うプログラムは一旦メモリに読み込まれてから実行されるが、日常的な処理でもストレージへのアクセスは結構頻繁に発生しているので、体感的な速さ、快適さへの影響が大きい。そのため、容量とともに性能はストレージ選びの大きな要素の一つになっている。

 PCが今のスタイルになって以降、ストレージとして使われてきたのがHDD(Hard Disk Drive)だ。電力と磁力の相互作用により、モーターで高速に回転するプラッタと呼ばれる円盤に磁気でデータを記録する。その記憶容量の大きさが最大の強みだ。

デスクトップPC用のHDDは3.5インチ型の製品が主流。写真はWestern Digitalの一般PC向けHDD「WD Blue」

 近年HDDに代わってストレージの主役になっているのはSSD(Solid State Drive)だ。従来の磁気メディアではなく半導体メモリ(NAND型フラッシュメモリ)を記録媒体とするストレージだ。動く部品がなく、電気的な操作のみでデータの読み書きができるので、性能に優れるだけでなく、振動や衝撃に強く、静音性にも優れる。

一般PC向けのSSDは現在、小型カード形状のM.2 SSDと、2.5インチSSDの2種類が広く普及している。より高速なのはM.2かつNVMeに対応した製品。写真はトップクラスの性能を誇るWestern DigitalのM.2 NVMe SSD「WD_BLACK SN850 NVMe SSD」(左)、価格と容量のバランスに優れるロングセラーの2.5インチ Serial ATA SSD「WD Blue 3D NAND SATA」
M.2 SSDはマザーボードのM.2スロットに、2.5インチSSDとHDDは、ケーブルでマザーボードのSerial ATAコネクタに接続して使う。使用するCPUやチップセット(およびマザーボード)により、M.2スロットの接続先となるPCI Expressのバージョンが異なる場合もあるので注意。「PCI Express 4.0(またはGen4)対応SSD」の場合は、PCI Express 4.0対応のCPUおよびマザーボードを使用し、4.0対応のM.2スロットに取り付ける必要がある

適材適所での使い分けが重要

 HDDの基本構造はこのところ大きく変わっていないが、プラッタに記録できるデータの密度の向上、高速化・安定化に寄与するヘリウムガス充填モデルの登場などの先端技術の進歩により大容量化が進んでいる。大容量・高性能モデルの登場により、一般ユーザーが使うような普及価格帯の製品(Western Digitalの場合ならWD Blueなど)の低価格化や大容量化という恩恵が得られている。

HDDのごく基本的な構造は、高速回転するプラッタとその半径方向を動くヘッド/アーム、これらを制御する基板で構成される。プラッタ上のデータをヘッドで読み出し/書き込みすることでデータをやり取りするというものだ
(1)アームの先端に読み出し用/書き込み用それぞれのヘッド(磁気ヘッド)が付いている。一般的に読み出しヘッドよりも書き込みヘッドのほうが大きい
(2)データを記録する円盤。金属に磁性体を塗布したもの。アナログレコードやCDのように同心円でトラックが区切られ、円周方向にデータが記録されている
(3)マザーボードなどと接続し、データ転送を行なうインターフェース。歴史の長い規格で、現在はSerial ATA 3.0(Serial ATA 6Gb/sとも)が主流。SSDには物足りない転送速度だが、HDDにはこの規格で十分
(4)Serial ATA電源ケーブルを接続するコネクタ。15ピンのSerial ATA電源コネクタが一般的。2.5インチSSDやHDDは2本のケーブルの接続が必要

 一方、もとはHDDと同じ仕組が随所で用いられていたSSDだが、NANDやコントローラの高性能化などが進んで近年は状況が変化。製品の形状(フォームファクター)は2.5インチからM.2に変わり、接続方式(インターフェース)も高速化。SSD製品の高速化・多様化が進み、価格や性能の差が生じている。

SSDの形状は、HDDと互換性がある2.5インチから普及した。中身はM.2 SSDとあまり変わらない。M.2 SSDは小さなカード型。小さな基板にコントローラとNAND型フラッシュメモリを搭載したシンプルな構造だ
(1)NAND型フラッシュメモリに対する読み書きの制御を行なうチップ。性能や信頼性のカギを握る重要な半導体だ
(2)データを実際に記録するメモリチップ。通電しなくともデータを保持できる「不揮発性メモリ」の1種だ
(3)一時的にデータをキープするなど読み書きを効率化するための高速小容量のメモリ。低価格製品では省かれていることも多い
(4)マザーボードのM.2スロットに挿し込むエッジコネクタ(電気接点)。データのやり取りはPCI Express規格を使用するものが主流。SSD以外にもM.2無線LANカードなどもあるが、端子部分の切り欠き位置が異なっている。HDDや2.5インチSSDと異なり、ケーブルが1本も必要ないのがM.2 SSDの特徴
(5)Serial ATAケーブルを接続するコネクタ。形状はHDDとまったく同じ
(6)PCの電源ユニットに接続する電源コネクタ。形状、使用するケーブルはHDDと同一

 SSDは価格(容量あたりの単価)がHDDに比べると高く、1台あたりの容量も少ない。低コスト化、大容量化も進んではいるが、HDDならば4TBが1万円以下で買えるのに対し、SSDではまだまだ1台で4TBという選択肢自体が少ない。SSDの中では安いモデルでも、HDDと同じ容量にするには5倍前後のコストがかかる。たとえば、クリエイティブ用途では大容量のストレージが必要になるが、大容量構成になるほどすべてSSDで実現するのは難しい。性能と容量のバランス、データの重要度などを考え、SSDとHDDは“適材適所”で使いわけることが重要だ。

機能はよく似ているHDDとSSD。同じ“ストレージ”であっても両方が今なお使用され続けているのは、性能や価格の違いにより、役割が異なり、それぞれの得意分野があるため。“適材適所”が重要キーワードとなる

 さらに、同じSSDやHDDであっても、製品により性能や価格にレンジがあり、使用時に留意すべき特徴がある。広く知られているところとしては、最高速クラスのSSDに頻繁に見られる“SSDにおける高負荷時の発熱の大きさ”や、HDDの“CMR方式とSMR方式”の違いなどだ。これらは製品選びのポイントではあるが“一長一短”である場合がほとんどで、たとえば「速ければ熱くなりやすい」、「従来のCMR方式は万能タイプだけど、密度が高められるSMR方式は容量が上げやすい」といったように、一概にどれがよい・よくないとは言えない。つまりここでも“適材適所”を検討する必要があり、特徴に応じた対策や使い方をすることで、そのメリットを十分に活用することが重要になるのだ。

高速なNVMe SSDはコントローラを中心にかなりの発熱がある。一定時間読み書きを連続的に行なっていると放熱用のヒートシンクを使用していてもこのグラフのように温度が上昇する。対策せずにいると、高熱からSSDを守るために一時的に性能を下げる“サーマルスロットリング”という保護機能が働き、転送速度が大きく落ち込む
最新のマザーボードには、多くの製品でM.2接続のSSDの放熱のためのヒートシンクが標準で搭載している。たいていの場合がマザーボードのヒートシンクをしっかりつけておけばサーマルスロットリングは回避可能。もし、ヒートシンクがない(もしくは足りない)場合は、ヒートシンク付きのSSDを選んだり、市販のSSD用ヒートシンクを取り付けたりするのがベターだ
従来型のCMR方式では、一定間隔のトラックにデータを記録していくが、SMR方式では隣接するトラックの一部に重なるように記録。記録密度がCMR方式よりも高いのが特徴。シンプルな構造でレスポンスがよいCMR方式、密度的な効率に優れるぶん仕組が複雑なSMR方式、と言える

 さて、“適材適所”を検討するときに欠かせないのは“性能”の見極めだ。ストレージの性能を判断する上で頭に入れておきたいのは、シーケンシャルアクセスとランダムアクセスの違いだ。前者は連続したデータの転送速度を示す。実際の処理においては、ファイルコピーなどの速さにかかわってくる。SSDの構造上、高速化しやすく、SSD間で差が大きくつきやすい部分だ。

 ランダムアクセスは、小サイズのファイルをランダムに読み書きする性能。アプリの起動などの操作時のレスポンスに効いてくる。体感的にはより大きい要素で、SSDとHDDの差がとくに大きい部分でもある。なお、ランダムライトはキャッシュを効かせやすいため、ランダムリードのほうがより本質的な性能が現われやすい。

同じSSDでも性能は大きく異なる。Western DigitalのSSD、Serial ATA 3.0接続の「WD Blue 3D NAND SATA」、NVMe/PCI Express 3.0接続の「WD Blue SN550 NVMe SSD」、NVMe/PCI Express 4.0接続の「WD_BLACK SN850 NVMe SSD」を例に、ベンチマークテスト「Crystal Disk Mark 7.0.0」で比較してみた
左から、WD Blue 3D NAND SATA、WD Blue SN550 NVMe SSD、WD_BLACK SN850 NVMe SSDのテスト結果。インターフェースの限界性能、コントローラやNANDの性能の違いでこれだけ結果に差がある(いずれも1TBモデル)。シーケンシャルリード/ライト(最上段のSEQ1M)はファイルコピーの速度に、最下段の4Kランダムリード/ライト(RND4K Q1T1)は、PCやアプリの起動や操作のレスポンスに効いてくる
こちらは人気HDD「WD Blue」でとくにコスパのよい6TBモデルの計測結果
上記のCrystal Disk Markの計測結果から通常使用上とくに重要な項目をピックアップし、1つのグラフにまとめてみた。NVMe SSDの読み書き性能は非常に高く、OSやアプリのインストール先として最適であることがよくわかる
一方、GB単価という切り口で見てみると、6TBクラスのHDDの価格バランスの優秀さは圧倒的。データの保管先としては現在もっともすぐれたストレージと言っていいだろう。Serial ATA SSDとミドルレンジ~エントリークラスのSSDの価格差はほとんどなくなってきている

後編予告

現在のPCのストレージについて、必ず押さえておきたいもっとも基本的な知識の解説はここまで。次回公開の後編では、SSDやHDDの具体的な製品の選び方に直結する、SSDのNANDの違いや、SSD/HDDの用途の差などの情報をお伝えしつつ、具体的なストレージの使用例、PCに組み込む際の構成例などの実践的な情報を解説する。

覚えておきたい「ストレージ」関連用語

HDD(Hard Disk Drive)
コンピュータの外部記憶装置。密閉容器中で高速回転する磁気ディスク、ヘッド、モーター、制御回路が収められている。
Serial ATA
シリアルインターフェースを使ったATA規格。「Serial ATA Working Group」が2000年に発表、2001年に最初の規格をリリース。従来のATAは、16bitのデータ線を持つパラレル転送方式のインターフェースで、物理的には、制御線やグランドを含む40ピンのインターフェースとして設計されている。Serial ATAは、これをシリアル転送方式に改めたもので、信号用の7ピン(Serial ATA Signal)と給電用の15ピン(SerialATA Power)という、シンプルでコンパクトな仕様。基本的には、内蔵デバイスの接続を想定したインターフェースだが、ケーブル長は1mと、パラレル時代の約2倍に延長されている。
SMR(Shingled Magnetic Recording)
HDDの記録トラックの一部を重ね書きすることで、プラッタあたりの記録密度を増やす技術。瓦記録とも呼ばれる。従来の方式は「CMR(Conventional Magnetic Recording)」。
AHCI(Advanced Host Controller Interface)
Intelを中心としたAHCI Contributor Groupが策定する、Serial ATA用のホストコントローラのインターフェース規格。NCQやホットプラグなどの機能を提供する。主にSerial ATA+HDDに最適化されたプロトコルであるため、より高速な最新SSDでは、後述するSSDに最適化されたNVMeに移行している。
SSD(Solid State Drive)
NAND型フラッシュメモリを採用した記録装置のこと。従来のPC用ストレージの主流だったHDDに代わるものとして、HDDと同じATAインターフェースを採用した製品が登場。現在はより高速なPCI Express接続のものも普及している。USBメモリや各種メモリカードも構造はほぼ同じだが、一般的にはSSDとは分類しない。
NAND型フラッシュメモリ(NAND-type flash memory)
NAND回路を使用した、電気的に一括消去・再書き込みが可能な不揮発性(電源を切ってもデータが消えない)メモリ。単にNANDと呼ばれることも。フラッシュメモリは、フローティングゲートと呼ばれる絶縁膜に覆われた記憶領域に、絶縁膜を越えて電荷を注入・引抜することにより書き込みと消去を行なう。主なフラッシュメモリには、回路構成の異なるNAND型とNOR(ノア)型があり、いずれも消去はブロック単位で行なう。NAND型は、複数のセルを直列につないでラインを共有するシンプルな構造で、ブロックよりも小さなページ単位ながら読み書きも一括して行なう。ランダムアクセスは苦手だが、集積度が高く安価なため、メモリカードなどに広く使われている。一方のNOR型は、個々のセルにラインを接続した構造でアドレス線を持つため高価だが、高速なランダムアクセスが行なえるのが特徴。主にプログラム格納用のメモリとして使われている。

1つのメモリセルに記録できるbit数の違いにより、SLC(1セルに1bit)、MLC(1セルに2bit)、TLC(1セルに3bit)、QLC(1セルに4bit)などといった記録方式がある。1セルに記録できるbit数が少ないほど高速だが、bit数が多いほど大容量化が容易
M.2
内蔵カードの端子および形状を定めた規格の一つ。現在は内蔵用SSDに使われる例が多い。対応するインターフェース、カードの幅/長さ、端子の切り欠きの位置などに複数の規定があるが、自作PCでよく使用されるM.2 SSDの場合は、インターフェースはSerial ATAもしくはPCI Express(通信プロトコルはNVMe)、幅22mm、長さは80mm、切り欠き位置を示すKeyはMまたはB+Mという仕様が一般的。
NVMe(Non-Volatile Memory express)
PCI Express上でデータをやり取りするためのプロトコルの一つで、ストレージの接続に用いられる。従来のSerial ATA+AHCIがHDDを前提に最適化されたものであったのに対し、PCI Express+NVMeは、フラッシュメモリ(=不揮発性メモリ)を搭載したストレージ、つまりSSDなどでの利用に最適化されている。並列処理、マルチスレッド性能に優れる。物理的なインターフェースは、PCI Expressカードスロット、M.2、U.2がある。自作PCで一般的なのはM.2。
SLCキャッシュ
TLCやQLCタイプのNAND型フラッシュメモリを採用したSSDにおいて、NANDの一部の領域をSLCのように扱うことで高速なキャッシュとして利用する技術。
S.M.A.R.T.(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology)
HDD、SSDの自己管理解析報告機能。対応ドライブとコントローラでは、ドライブの状況や総合的な診断情報を得られる。