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Z690マザー最安値クラスでもCore i9-12900Kはド安定!乗り換え向きで実力派のGIGABYTE「Z690 UD DDR4」
DDR4対応でメモリ資産を引き続き活用、兄弟機のDDR5版もZ690マザー最安クラス text by 芹澤 正芳
2021年11月16日 00:00
2021年11月4日(木)に発売された第12世代CoreプロセッサーとZ690チップセット。最上位CPUのCore i9-12900Kは消費電力の“新指標”、MTP(Maximum Turbo Power)が241Wに達することもあり、各社ともZ680搭載マザーボードでは電源回路を重視しているのが特徴だ。
GIGABYTEでは、ゲーマー向け「AOURS」シリーズとして19(105A SPS)+1+2フェーズでしかもダイレクト駆動という強烈な電源回路とナノカーボンベースプレートを備えるDDR5対応の「Z690 AORUS MASTER」(実売価格75,000円前後)、同じくダイレクト駆動の16(90A SPS)+1+2フェーズ電源を備えるDDR5対応の「Z690 AORUS PRO」(同48,000円前後)、Z690では貴重なmicroATXサイズでDDR4対応の「Z690M AORUS ELITE DDR4」(同28,000円前後)を発売中。
ここでは、ゲーム、クリエイティブなど用途を問わずに使える高耐久がウリの「Ultra Durable」シリーズからDDR4対応の「Z690 UD DDR4」(同28,000円前後)を紹介する。ATXサイズのZ690マザーでは最安値クラスだが、Core i9-12900K使用時のCPUクロックの安定度やVRM温度がどうなのかチェックしていきたい。なお、ほぼ同仕様でDDR5対応の「Z690 UD」も発売されている(同30,000円前後)。
侮ることなかれ! ダイレクト駆動の16+1+2フェーズ電源を採用
GIGABYTEの「Ultra Durable」シリーズは、パーツの品質にはこだわりつつ、機能面をシンプルにまとめたスタンダードなモデル。「Z690 UD DDR4」もその流れをくみ、RGB LEDなどハデな装飾を持たない見た目としてはあっさりとした作りだが、これは「羊の皮を被った狼」だ。
Z690チップセット搭載マザーボードとしては確かに低価格の部類にはなるが、電源まわりは16+1+2フェーズで、60A Power Stageと低ESR、長寿命のタンタルポリマーコンデンサが採用されている。CPUだけで16フェーズという規模は、Z590世代のマザーボードならば完全にアッパーミドル以上。しかもフェーズダブラーを使わないダイレクト駆動により、電圧の安定と高い電力効率を実現している点も見逃せない。MTP 241WのCore i9-12900Kをフルパワーで動かしても安心できる設計だ。さらに電源部は大型ヒートシンクに1.5mm厚で5W/mKと高い熱伝導率を持つサーマルパッドを挟んだ強力な冷却になっているのも心強い。
PCI Expressスロットは、CPUに一番近いx16スロットがPCI Express 5.0対応だ。重いビデオカードを支えられるように高耐久仕様になっている。x16形状のスロットはあと2本あるが、CPU側から数えて2本目がPCI Express 3.0 x4仕様、3本目がPCI Express 3.0 x1仕様だ。PCI Express 5.0 x16の分割動作には対応していない。
M.2スロットは3本用意されており、すべてPCI Express 4.0 x4仕様。CPUに一番近い側がCPU直結でヒートシンクも用意されている。残り2本はチップセット経由での接続で、ヒートシンクは備えていない。このあたりはコストカットを感じる部分だが、最近はヒートシンク搭載のNVMe SSDも多いので、それほど気にするところではないだろう。
メモリはDDR4対応で、DDR4-5333の高クロックモデルもサポートされている。ただし、高クロックのOCメモリが動作するかは、メモリやCPUの個体差によって変わる。確実というわけではない点は覚えておきたい。
そのほかのインターフェースもチェックしておこう。バックパネルのUSBは、USB 3.2 Gen 2x2(Type-C)が1ポート、USB 3.2 Gen 1が1ポート、USB 3.2 Gen 1が4ポート、USB 2.0が4ポートだ。映像出力はHDMI 2.1とDisplayPort 1.2を搭載。PCケースのUSBポート用として、USBピンヘッダで、USB 3.2 Gen1 Type-Cが1ポート分、USB 3.2 Gen 1が2ポート分、USB 2.0が4ポート分が用意されている。バックパネルカバーは組み込み済みだ。ネットワーク機能は有線LANがRealtekの2.5G LAN。無線LANは備えていない。
便利なGIGABYTE独自アプリとしては「App Center」がある。Windowsをセットアップすると自動的にポップアップが表示され、インターネットに接続されていれば、アプリのインストールを行なえ、必要なドライバーも一気に導入可能だ。今回はWindows 11 Proをセットアップしたが、LANドライバは自動的にインストールされたのでインターネット接続もスムーズで、「App Center」の導入に困ることはなかった。
冷却ファン制御機能として「Smart Fan 6」を搭載している。各ファンコネクタに対して、温度ごとの回転数を設定が可能だ。手動で細かく指定できるほか、「EZ Tuning」ボタンを押せば自動で最適な温度と回転数に調整してくれる
このほか、Z690 UD DDR4に限ったことではないが、Z690マザーを使う上で注意しておきたいのが「Intel VMD(Volume Management Device)」だ。これはシステムストレージのパフォーマンスを最大5%向上させるという技術だが、これが有効になっているとNVMe SSDにWindows 10/11をインストールする際、「Intel VMDドライバー」を手動で組み込む必要がある。無効にしておけば、通常どおりに手間いらずでWindowsのインストールが可能だ。
Intel VMDの有効、無効はUEFIメニューで行なえる。GIGABYTEのZ690マザーの一部は初期状態ではIntel VMDが有効になっているとのことだが、通常どおりにWindows 10/11をインストールしたい場合は、UEFIを一旦確認して無効にするか、最新版のUEFIにアップデートしよう(最新版ではデフォルトでIntel VMDが無効になっている)。もし、Windows 10/11をインストールでNVMe SSDが認識しない場合は、Intel VMDを確認してみよう。
同仕様でDDR5対応の「Z690 UD」
冒頭でも触れたがZ690 UD DDR4にはDDR5対応版の「Z690 UD」(実売価格:30,000円前後)もラインナップ。メモリスロットの形状以外はまったく同じレイアウト。こちらは対応メモリがDDR5-6000までとなっている。
Core i9-12900Kの実力を引き出せるのか! VRMの温度もチェック
ここからは実際のパーツを組み込んで、ベンチマークや冷却のテストを行なっていく。今回はCPUのパワーリミット設定はすべて「Auto」とした。Z690 UD DDR4に関しては、Auto設定だとパワーリミットは無制限になる。テストの使用したパーツは以下のとおり。
CPU | Intel Core i9-12900K(8P+8Eコア24スレッド) |
メモリ | DDR4-3200メモリ 32GB(PC4-28800 DDR4 SDRAM 16GB×2) |
SSD | M.2 NVMe SSD[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB] |
ビデオカード | GIGABYTE AORUS GeForce RTX 3070 MASTER 8G (rev. 2.0) (NVIDIA GeForce RTX 3070) |
CPUクーラー | GIGABYTE AORUS WATERFORCE X 360(簡易水冷、36cmクラス) |
電源 | 1000W ATX電源(1,000W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro |
まず注目してほしいのが、各部の温度とCPUのブーストクロックの安定性だ。ストレステストアプリ「OCCT 9.1.4」のCPUテスト(テストモード:通常、負荷タイプ:一定)を10分間動作させたときのCPU、VRM(電源まわり)、チップセットの温度をチェックする。温度の確認にはハードウェア情報を表示できるアプリ「HWiNFO64」を使用し、CPU温度は「CPU Package」、VRMは「VRM MOS」、チップセットは「PCH」という項目を追った結果。室温は23℃だ。
CPU温度から見ていこう。全コアの使用率が100%になる非常に負荷の高いテストだが、温度は最大でも76℃とパワーリミット無制限のCore i9-12900Kがガッチリと冷えている。AORUS WATERFORCE X 360が優秀ということだろう。また、VRMは最大で62℃とこちらも十分低い。スタンダードモデルという位置付けのZ690 UD DDR4だが、Core i9-12900Kも余裕を持った運用が可能だ。チップセットに関しては、このテストで大きな負荷はかからないので参考程度に見てほしい。
さらに、このテスト時のCPUクロックも同じく「HWiNFO64」で追ってみた。Pコアは4.9GHz、Eコアは3.7GHzでほぼビタッと安定。たまにブレても1MHz程度だ。これなら安定度に不安なし! と言ってよいだろう。
それではパフォーマンスを見てみよう。まずはCPUパワーを測る「CINEBENCH R23」、PCの基本性能を測る「PCMark 10」、Microsoft Officeを実際に使用してアプリ性能を測る「PCMark 10 Applications」、3D性能を測る「3DMark」、画像処理、動画編集、Microsoft Officeの性能を測る「UL Procyon」を実行する。
続いて実ゲームの性能もテストしておこう。根強い人気のFPS「レインボーシックス シージ」、定番バトルロイヤルTPS「フォートナイト」、発売されたばかりのFPS「Call of Duty: Vanguard」とレースゲーム「Forza Horizon 5」を用意した。レインボーシックス シージとForza Horizon 5はゲーム内蔵のベンチマーク機能を使用、フォートナイトはソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、Call of Duty: Vanguardはキャンペーンモードをプレイした際のフレームレートを「CapFrameX」で計測している。
あくまで今回の組み合わせでは、このフレームレートが出るという参考程度に見てほしいが、レインボーシックス シージなら4K解像度でも平均151fpsを出せている。フォートナイト、Call of Duty: Vanguard、Forza Horizon 5は最高画質設定でも4Kで平均60fps以上を出しており、今回の構成なら最新ゲームも十分快適にプレイできるだろう。
最後にストレージ性能を確認する。Z590チップセットではNVMe SSDのピーク性能がRyzen環境よりも若干低い傾向にあったので、今回の環境でCrystalDiskMark 8.0.4を実行してみた。NVMe SSDは公称シーケンシャルリード 7,000MB/s、同ライト 5,000MB/sのPCI Express 4.0対応製品を使用している。なお、今回のテストではIntel VMDは使用していない。
シーケンシャルもランダムも問題ない速度が出ている。今回試す限りでは、Z690ならピーク性能が低くなることはなさそうだ。ちなみに、M.2のヒートシンクを装着してテストしているが、5分間連続で書き込みを実行してもコントローラは75℃、NANDは61℃と十分冷えていた。これならハイエンドNVMe SSDも安心して使用できる。
予算を抑えつつ12900Kが活かせるスゴさ
Alder LakeはDDR5とDDR4両対応ということで、マザーボード選びに悩むところだが、予算を抑えるならDDR4対応が一番だ。すでにDDR4メモリを持っている人は使い回せるし、新たに購入するにしてもDDR5メモリに比べて安価で入手性もバツグンに高いからだ。とくにZ690 UD DDR4はZ690マザーで最安値クラスながら、強力な電源回路を持ち、Core i9-12900Kも安心して使える。Core i7やCore i5ならもっと余裕ということ。
Z690 UD DDR4はスタンダードモデルということもあって、Wi-Fiを持たない、光らない、M.2ヒートシンクも一つだけと上位モデルに比べて装備や機能面では見劣りする部分はあるが、こと安定性はまったく問題ナシ。Alder Lakeでこれから自作するこれで十分と思わせるだけの実力を見せ付けた。DDR4でぐっと予算を抑えて、あるいはDDR5は導入しつつコストは圧縮して第12世代Coreへと移行したいときにオススメしたい1枚。i5-12600Kやi7-12700Kとの組み合わせにもよい価格バランスと言える。
【お知らせ】ライブでAlder Lake向けマザーボード選びのポイントを解説! DDR5/4性能比較も
11月16日(火)21時より、“改造バカ”高橋敏也氏と“PC自作業界のスタン・ハンセン”こと芹澤正芳氏が、ライブ配信でAlder Lake向けマザーボード選びのポイントとZ690 UDを解説します。高性能な第12世代Coreを活かすにはマザーボードのどこに注目して選べば良いのか分かりやすく解説します。気になるDDR5とDDR4利用時の性能差にもベンチマーク検証を交えて言及。
ゲストとして日本ギガバイトのスタッフもお招きして、最新のZ690マザーボード事情について楽しく、わかりやすくお伝えします。
[制作協力:GIGABYTE]