特集、その他
Ryzen 7 7700Xが5GHz以上で使える!高性能水冷クーラー「CORSAIR iCUE H115i RGB ELITE」の実力
Socket AM5正式対応品で安心な1台 text by 坂本はじめ
2022年10月15日 00:00
CORSAIRのオールインワン水冷クーラー「iCUE H115i RGB ELITE」は、7月の発売時からSocket AM5への対応をアピールしていた製品だ。
そして、Socket AM5を採用するRyzen 7000シリーズがついに登場したので、8コア16スレッドCPUのRyzen 7 7700Xを用意し、CORSAIRの新作280mmオールインワン水冷クーラーの実力をチェックしてみた。最新CPUの性能がしっかりと引き出せるのか、結果を見てもらいたい。
Socket AM5正式対応の280mmオールインワン水冷クーラー水冷ヘッドは側面も光るデザインに
CORSAIR iCUE H115i RGB ELITE(CW-9060059-WW)は、発売時点からSocket AM5に正式対応していたCORSAIRの新作オールインワン水冷クーラー「iCUE RGB ELITE」のひとつで、280mmサイズのラジエーターを備えている。対応CPUソケットは、AMDのSocket AM5/AM4/sTRX4/sTR4と、IntelのLGA 1700/1200/115x/1366/2011/2066。
iCUE RGB ELITEシリーズは、水冷ヘッドに16個のRGB LEDが内蔵されており、ヘッド上部の半透明パーツによってディフューズされた、柔らかく滑らかなLEDイルミネーションが楽しめる。透過部分にCORSAIRロゴが描かれたトップカバーはマグネット固定により着脱可能となっており、ヘッドの取り付け方向に応じてロゴの向きを変更できるこだわり設計だ。
iCUE H115i RGB ELITEには、標準で2基の140mmファンが同梱されている。この標準ファンはCORSAIR AF ELITEシリーズファンの140mmモデルで、CORSAIR AirGuideテクノロジーに基づくアンチボルテックス羽根や、静粛性に優れた流体軸受け(FDB)を採用している。
ファンやLEDは、PC上からユーティリティソフト「iCUE」から制御する。水冷ヘッド側面のUSB Type-CコネクタとマザーボードのUSB 2.0ヘッダーを、専用の制御用ケーブルを通じて接続することによってPC上でH115i RGB ELITEが認識されるようになる。専用の制御ケーブルにはファンやSATA電源コネクタが接続できるほか、マザーボードへの回転数出力用のファンコネクタも用意されている。
iCUE H115i RGB ELITEのSocket AM5用リテンションキットは、Socket AM4兼用となっている。Socket AM5が標準で備えるバックプレートに専用のスタッドを立てて固定するタイプとなっており、これらのパーツはツールレスでも取り付けることが可能だ。
Socket AM5は、Socket AM4とCPUクーラー固定用パーツがある程度共通しているものの、原則として標準バックプレートの取り外しができなくなっているため、全てのSocket AM4対応CPUクーラーが取り付けられる訳ではない。確実に使えることを望むなら、iCUE H115i RGB ELITEのようなSocket AM5正式対応製品を選択するべきだろう。
最大温度/最大消費電力でなるべく高クロック動作するRyzen 7 7700Xを冷やせるのかiCUE H115i RGB ELITE冷却性能テスト
ここからは、Socket AM5に対応するAMD最新のCPU「Ryzen 7 7700X」を使って、iCUE H115i RGB ELITEの冷却性能をテストする。
マザーボードには「ASUS TUF GAMING X670E-PLUS」を用意したほか、AMDの新たなオーバークロックメモリプロファイル「EXPO」に対応したDDR5-6000メモリ「DOMINATOR PLATINUM RGB 32GB(CMT32GX5M2B6000Z30)」、奥行き140mmとコンパクトな850W電源「CORSAIR RM850e」など、CORSAIRの最新パーツを使用してテスト環境を構築した。
Ryzen 7 7700Xを含むRyzen 7000シリーズは、Socket AM5で強化された電力供給能力を生かして電力リミットが緩められており、前世代のCPUよりもアグレッシブにCPUクロックをブーストするCPUとなっている。
このブースト動作に、製造プロセスが微細化されたことによる熱密度の上昇も相まって、全てのCPUコアが全力稼働するようなシチュエーションでは、ジャンクション温度(TjMAX)である95℃に到達してもなお、可能な限り高いCPUクロックを維持しようという挙動となっている。
動作温度のリミットよりも先に供給電力のリミットに達した場合などはこの限りではないが、水冷クーラーなどでも動作温度は95℃に張り付いたままになり、クーラーの冷却能力を使い切ったうえで最大クロックで動作しようとする挙動になる場合が多い。
このように温度マージンを使い切るのが基本とでも言うような挙動となったRyzen 7000シリーズでは、温度をどこまで下げられるかではなく、温度マージンを使い切った状態でどれだけ高いCPUクロックを維持できるのかが重要になってくる。冷却性能が低ければCPUはジャンクション温度を守るためにクロックを緩めざるを得なくなって性能が低下してしまうからだ。
さて、それでは280mmオールインワン水冷であるiCUE H115i RGB ELITEなら、Ryzen 7 7700Xをどの程度のクロックで動作させられるのかを確認してみよう。
30分の長時間テストでも平均5GHz以上を維持!Ryzen 7 7700Xの電力リミットを使い切らせてみせた
今回の冷却性能テストでは、CINEBENCH R23の「Multi Core」を最低実行時間30分に延長して実行。テスト実行中の動作温度や消費電力、ファンスピードなどをiCUEのモニタリング機能と、HWiNFO64 Pro v7.30を使って取得した。
なお、iCUE H115i RGB ELITEのファンやポンプの動作については、標準プリセットの「安定」と「最速」を設定した場合の2パターンで計測を行った。テスト時の室温は約26℃。
テストの結果、プリセットの「安定」と「最速」のどちらでもCPU温度はほぼ95℃に達している一方で、CPUクロックについてはどちらも平均5,100MHzを超えている。Ryzen 7 7700Xのベースクロックは4.7GHzなので、しっかりブースト動作を維持していることが分かる。
また、注目すべきはCPU消費電力で、どちらのプリセットでもCPU消費電力は平均で約142Wとなっている。Ryzen 7 7700Xの電力リミット(PPT)の上限値は142Wであり、温度だけでなく電力のマージンも使い切っていると言う状態だ。
冷却能力が足らず、サーマルスロットリングが強く作動すればリミッターがかかり消費電力も低下するので、このような結果にはなることはまずない。iCUE H115i RGB ELITEはRyzne 7 7700Xからほぼフルパワーを引き出せていると言ってよいだろう。
なお、CINEBENCH R23「Multi Core」のスコアは、プリセット「安定」が19,428で、プリセット「最速」は19,454と差がつかなかった。どちらのプリセットでもCPUから最大限に近いパワーを引き出せているので、この結果特に不思議なものではない。
モニタリングのデータなども見る限り、ファン/ポンプの動作が標準の「安定」の状態で、電力リミット(PPT)が142W設定のRyzen 7 7700Xがちょうど冷やしきれる性能といった結果になった。ファンの最大回転数の差が「安定」と「最速」で300rpmほどなので大きな差はつかなかったが、電力リミット142Wであれば「最速」の設定は若干余力があると見ることもできる。
Socket AM5で確かな冷却性能が得られるオールインワン水冷クーラーRyzen 7 7700Xの性能をしっかり引き出したいユーザーにおすすめ
Socket AM5に正式対応しているiCUE H115i RGB ELITEは、Ryzen 7 7700Xが電力リミットを使い切るほどのパフォーマンスを引き出すことができた。Ryzen 7 7700Xをしっかり冷やせることを求めるユーザーにとって、間違いのない選択肢となるCPUクーラーであると言えるだろう。
冷媒温度をベースにファン回転数を適宜調整する「安定」プリセットでも、しっかりRyzen 7 7700Xを冷やせていたうえ、ファン回転数も「最速」プリセットより絞れていたところをみると、無駄にファンを回すことなく運用できるのもiCUE H115i RGB ELITEの魅力だ。
Ryzen 5000/7000系の8コアCPUは、コアの構成などの関係で熱密度が集中するため、消費電力に対して冷やしにくい面があるが、8コアのRyzen 7 7700Xを平均5GHzで長時間動作させられた点は、長時間連続して負荷がかかるようなゲーミング用途やクリエイター用途でも性能面で期待できる製品と言えるだろう。
Socket AM5環境の新調を検討しているのであれば、Socket AM5正式対応水冷クーラーの「iCUE RGB ELITEシリーズ」は、ぜひともチェックするべき製品である。
[制作協力:CORSAIR]