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第13世代Coreを使うならVRM性能にこだわれ!i9もイケるミドルクラスマザー「MSI MAG B760 TOMAHAWK WIFI」
12+1+1フェーズの強力VRMを搭載したB760マザーボード text by 坂本はじめ
2023年1月3日 23:00
MSI MAG B760 TOMAHAWK WIFIは、Intel 700シリーズ・チップセットの新モデル「B760」を搭載したミドルレンジクラスのマザーボード。同時期に発売されるPBP=65W仕様の第13世代Coreプロセッサと組み合わせるのに好適な製品のひとつだ。
ミドルレンジというと、コストとパフォーマンスのバランスを重視している印象があるが、MSI MAG B760 TOMAHAWK WIFIの設計は第13世代Coreの性能をしっかり引き出すことを重視している。特に、大型ヒートシンクや75AのSPSを採用したVRMは強力で、CPUが要求する電力をしっかり供給することによって最大限の性能を引き出すことができる。
今回は、MSI MAG B760 TOMAHAWK WIFIが備えるハイスペックなVRMに注目しつつ、PBP=65W版第13世代Coreの最上位モデル「Core i9-13900」との組み合わせでどのような性能を発揮するのかチェックしてみよう。
装飾用LED非搭載のオールブラックモデル「MSI MAG B760 TOMAHAWK WIFI」
MSI MAG B760 TOMAHAWK WIFIは、チップセットにIntel B760を搭載するLGA1700対応マザーボード。基板サイズは305×244mmで、フォームファクターはATX。対応メモリはDDR5。
装飾用のLEDを排し、黒で統一されたカラーリングを採用するMAG B760 TOMAHAWK WIFIは、上位機種である「UNIFY」の設計を受け継ぐ質実剛健のミドルレンジモデルであり、最新CPUである第13世代Coreのパフォーマンスを存分に引き出せるようにデザインされている。
MAG B760 TOMAHAWK WIFIが搭載するDDR5メモリスロットは4本で、着脱が容易な両ラッチ式のスロットを採用、最大メモリクロックは「DDR5-7000+(OC)」とオーバークロック動作もサポートされている。
バックパネルインターフェイスにはUSB 3.2 Gen 2x2(20Gbps)や2.5GbE、Wi-Fiアンテナ用コネクタなどを備えている。無線機能にはIntel Wi-Fi 6E AX211を内蔵するWi-Fiモジュールが搭載されており、Wi-Fi 6EとBluetooth 5.3に対応している。
ストレージ向けのインターフェイスには、PCIe 4.0 x4接続に対応するM.2スロットを3本するほか、6Gbps SATAも4本備えている。
拡張スロットは、もっともCPU寄りに配置されたGPU向けのPCI Express x16スロットがCPUに直結されており、PCIe 5.0 x16接続に対応。残りのスロットは、PCI Express x16スロット(PCIe 3.0 x4)と、PCI Express x1スロット(PCIe 4.0 x1)で、いずれもB760チップセットと接続されている。
CPU用に12フェーズのVRMを搭載するMSI MAG B760 TOMAHAWK WIFI
質実剛健な設計を採用するMAG B760 TOMAHAWK WIFIでも、特筆すべきなのがCPUに電力を供給するVRMの仕様だ。
MAG B760 TOMAHAWK WIFIはCPU用に12フェーズのVRMを搭載しており、MOSFETには75Aに対応するSPS(Smart Power Stage)を採用している。この構成のVRMは、下位チップセットを搭載するミドルレンジクラスのマザーボードとしてはかなり強力なもので、第13世代Coreの上位モデルが要求する大電力に対応するために搭載されたものだ。
高効率で発熱の少ないSPSを採用する一方で、MAG B760 TOMAHAWK WIFIのVRMには大型の冷却用ヒートシンクが搭載されている。如何に高効率なSPSであっても、CPUに対して200Wを超える出力をすれば少なからず発熱する。大型のヒートシンクはその発熱をしっかり処理するためのものだ。
CPU冷却性能の高さで人気のオールインワン水冷クーラーは、CPUソケット周辺を冷却する能力を持たない製品が多く、VRMの冷却がケースファンのエアフロー任せとなってしまう場合がある。MAG B760 TOMAHAWK WIFIが搭載する大型ヒートシンクは、そのようなシチュエーションでもVRM温度を健全に保つのに役立つものだ。
65W版の最上位CPU「Core i9-13900」を搭載してパフォーマンスをチェック3種類の電力リミット設定でCINEBENCH R23のスコアを比較
ここからは、PBP=65W版の最上位モデル「Core i9-13900」をMAG B760 TOMAHAWK WIFIに搭載して検証を行う。
今回は、CPUクーラーにオールインワン水冷クーラーである「MSI MAG CORELIQUID 360R V2」を搭載し、ケースに収めないバラック組み状態でテストを行うのだが、この状態はケースファンによるエアフローが得られないので、ほぼ無風状態で冷却しなければならないVRMにとっては厳しい条件だ。この状態でどこまでVRM温度を冷やせるのかに注目だ。
MAG B760 TOMAHAWK WIFIにCPUを搭載してBIOSを起動すると、初回時にCPUクーラータイプを選択する画面が表示される。これは、使用するCPUクーラーに応じて電力リミットをチューニングする機能で、「Boxed Cooler(CPU付属の純正クーラー)」、「Tower Air Cooler(タワー型空冷クーラー)」、「Water Cooler(水冷クーラー)」の3種類から選択できる。
Core i9-13900を搭載した場合に設定される電力リミットは、Boxed Coolerが「PL1=65W/PL2=219W」で、Tower Air Coolerは「PL1=PL2=288W」、Water Coolerは「PL1=PL2=Unlimited(4,096W)」となっている。今回はこの3種類の電力リミット設定を全てテストしてみた。
CPUベンチマークテストであるCINEBENCH R23のMulti Coreを、最低実行時間=30分で実行した結果が以下のグフラだ。
PL1が65Wに制限されるBoxed Coolerのスコアがもっとも低い「21,807」で、Tower Air Coolerが「36,432」、Water Coolerは「37,266」。電力リミットを緩めるほど、Core i9-13900は高いパフォーマンスを発揮していることが確認できる。
同じCPUであっても、電力リミットの設定ひとつでこれほどまでに性能が変化するのは面白い。
ここからは、CINEBENCH R23のMulti Coreを実行中、CPUやマザーボードのVRM温度がどのように変化していたのか、電力リミットの設定ごとに確認してみよう。
Boxed Cooler (PL1=65W)設定時のモニタリングデータ65W版CPUらしさを感じられる省エネ&低発熱動作
Boxed Cooler設定でCINEBENCH R23のMulti Coreを30分連続実行した場合、CPU温度は平均40.1℃、Pコアクロックが平均2.90GHz、Eコアクロックは平均2.40GHz、CPU消費電力は65.5Wだった。
テスト開始直後はPL2のリミット値である219Wの電力消費が許容されるため、69.0℃のCPU温度や、208.6WのCPU消費電力のように高い最大値が記録されているものの、平均値や推移グラフからはテスト実行中の大部分はPL1のリミット値である65Wによって、電力リミットスロットリングが発生していることが伺える。
MAG B760 TOMAHAWK WIFIのVRM温度については、平均で42.0℃、最大でも43.5℃という無風状態とは思えないほど低い温度を保っている。
テスト開始前と、テスト開始から29分程度が経過した時点のVRM周辺をサーモグラフィで撮影したものが以下の画像だ。
無風状態なのでヒートシンクや基板の温度は上昇しているが、いずれも40℃未満となっている。風を当てて冷やすに越したことはないが、CPUの消費電力が65W程度であればヒートシンクによる自然冷却でも十分に対応できることが分かる結果だ。
Tower Air Cooler (PL1=288W)設定時のモニタリングデータ288Wの電力消費に無風状態で耐えきれるVRM
Tower Air Cooler設定でCINEBENCH R23のMulti Coreを30分連続実行した場合、CPU温度は平均91.5℃、Pコアクロックが平均4.97GHz、Eコアクロックは平均3.94GHz、CPU消費電力は287.0Wだった。
CPU消費電力は瞬間的に325Wに達しているものの、平均値としては電力リミット値の288Wに近い値になっており、Core i9-13900が電力リミットのマージンをほぼ使い切っていることが分かる。
このような大電力を消費している状況で無風状態でありながら、VRM温度は平均75.2℃、最大83.5℃となっており、高温ではあるもののVRM温度によるサーマルスロットリングやシャットダウンは発生しなかった。
VRM周辺を撮影したサーモグラフィの画像では、テスト終了直前にCPUソケット上側のヒートシンクや基板が67℃を超える温度に上昇していることが確認できる。
流石に高い温度になってはいるが、平均で288Wという大電力を30分近く供給し続けている状況で、VRM周辺が無風状態であることを考えれば、オーバーヒートを起こしていないことを評価すべきだ。ミドルレンジクラスのマザーボードとしてはかなり優秀な結果であると言えるだろう。
Water Cooler (PL1=4,096W)設定時のモニタリングデータ360mm水冷でも冷やしきれない400Wに迫る超高発熱
Water Cooler設定でCINEBENCH R23のMulti Coreを30分連続実行した場合、CPU温度は平均98.9℃、Pコアクロックが平均5.07GHz、Eコアクロックは平均4.07GHz、CPU消費電力は323.6Wだった。
CPU消費電力は最大で382.0Wに達しているが、流石に360mmクラスのオールインワン水冷でもこの発熱には対応できず、CPUは温度リミットの100℃に達してサーマルスロットリングが作動している。平均消費電力の323.6Wや、Tower Air Cooler設定を超える平均CPUクロックは、熱保護機能がサーマルスロットリングによって安全を確保した上での数値であり、CPUの動作自体に問題がある状態ではない。
一方、VRM温度は平均が82.1℃で、最大93.0℃に達しているが、これでもVRMのオーバーヒートによるサーマルスロットリングやシャットダウンは発生していない。ただし、推移グラフを見ると、温度上昇は徐々に緩やかになっているものの、テスト終了直前でも上昇傾向であり、300Wを超える電力を供給しているさいの発熱を無風状態で処理するのは厳しい様子が見てとれる。
VRM周辺を撮影したサーモグラフィの画像では、上側のヒートシンクや基板の温度が70℃を超えている様子が確認できる。
300W以上の電力を供給し続けてもこの程度の温度に抑えられているのは、SPSを採用したVRMの効率の高さと、ヒートシンクの優れた放熱性能によるものだ。とはいえ、流石に300W以上の発熱を自然放熱任せにするのは厳しいものがある。そもそもVRMは風を当てて冷却すべきコンポーネントなので、大電力を消費するCPUを利用する場合はVRMに風を供給できるようなエアフローを構築すべきだ。
電力リミット無制限でも最上級CPUを動かせる強力なVRMが魅力CPU性能を重視したいユーザーにおすすめのB760搭載マザーボード
Intel B760チップセット搭載した新世代ミドルレンジマザーボードのMSI MAG B760 TOMAHAWK WIFIは、第13世代Coreでも最上位クラスの24コア(8P+16Eコア)/32スレッドCPUを電力リミット無制限で動かせるほど強力なVRMを備えている。大型ヒートシンクを備えたVRMは放熱性にも優れているので、強力な水冷CPUクーラーとの組み合わせにも好適だ。
また、PBP=65W版CPUとの組み合わせでは、BIOSでCPUクーラータイプを選択するだけで電力リミットを切り替えられる仕様がより魅力的に機能する。Boxed Coolerを選択すれば65W版ならではの省エネ動作を実現できる一方、Air Tower CoolerやWater Coolerを選択すればCPUが持つポテンシャルをしっかり引き出せる。
強力なVRMと電力リミットを簡単に選択できるMSI MAG B760 TOMAHAWK WIFIは、ミドルクラスのマザーボードでもCPU性能を重視したいユーザーにおすすめできる一枚だ。
[制作協力:MSI]