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冷却重視のカード設計!ASRock「Radeon RX7800 XT Phantom Gaming 16G OC」【VIDEO CARD LABORATORY】

DOS/V POWER REPORT 2023年秋号の記事を丸ごと掲載!

残暑の熱も吹き飛ばすトリプルファン構成

3連ファンの大型クーラー
RX 7800 XTのリファレンスカードはギチギチに詰まったコンパクト感があるが、本製品では全長32.8cm、かつ3連ファンの大型クーラーを装備している

競合より格上スペックを格安で提供するAMD

 RDNA 3世代の新GPU「Radeon RX7800 XT」は、RDNA 3世代のWQHDゲーミング向けのGPUとして「RX 7700XT」と同時に投入されたGPUだ。

 コスト志向のRX 7700 XTが前世代のWQHD向けGPU(RX 6700 XT)のCU数増加版なのに対し、RX 7800 XTはメモリバス幅256bit、ビデオメモリ搭載量16GBと、RX 6800やRX 6800 XT相当のスペックを備えている。

 同じWQHD向けのRTX 4070搭載カードが8〜10万円で流通していること、さらにRTX 4080がビデオメモリ 16GB搭載であることからある思惑が読み取れる。すなわちRX 7800XTはAMDが成長率激しいWQHDゲーミングGPUでの優勢を取るために、あえて格上のスペックを持つGPUをぶつけてきたというわけだ。

GPU-Z
メモリバス幅256bit、ビデオメモリ16GBがRX7800 XT最大の強み。CU数はRX 7900 XTの7割程度に減っており、これが上位GPUとの差になっている

キツめのOC設定にふさわしい冷却重視のカード設計

2オンス銅レイヤーを配した高密度ガラス繊維PCBを採用
強めのファクトリーOCモデルだけあってGPU用に11フェーズ、メモリそのほか用に2+1フェーズの電源回路を搭載。補助電源の脇にLEDの強制消灯スイッチを配置している

 今回紹介するASRock「Radeon RX7800 XT Phantom Gaming 16G OC」は、同社製RX 7800 XT搭載の中でももっともOC設定が高い、ブーストクロック2,565MHzのカードだ。RX 7800 XTのリファレンスカードが全長26.4cm& 2連ファンで凝縮感のある設計なのに対し、本製品は32.8cm& 3連ファンで冷えを重視している(冷却性能は後述)。3基あるファンのうち中央は逆回転してヒートシンクに当たる気流をうまく散らす設計など、同社がこれまで培ってきたノウハウもふんだんに投入されている。

裏面には強度確保用の金属板も入っているが、カード重量は実測1.26kgと見た目のわりには軽い。GPU付近の歪みを防止するため、追加の補強フレームも取り付けられている
ASRock製のOCツール「ASRock TWEAK」を利用することでさらなるOC、もしくは静音モードでの動作が可能になる

 性能評価にはRX 7800 XTのリファレンスのほかに、一つ格上のRX 7900 XTや1世代前の同格RX 6800 XT、さらに価格的ライバルであるRTX 4070を準備。「3DMark」ではリファレンスに対してはスコアが3%前後上回るものの、CU数で上回るRX 6800 XTに軍配、さらにレイトレーシング系テストではRTX 4070におよばず(これは仕方のないところ)とRDNA 3世代としてはもう一声欲しい印象に。RX 7900 XTに対してはスコア差が大きく、負荷の高いFire Strike UltraやTime Spy Extremeでは20〜23%の差がある。また、RX 6800 XTとの差は、RX 6800 XTのほうがCU(Compute Unit)もInfinity Cacheも多いから、と推察される。RX 7800 XTのInfinity CacheはRX 6800 XTよりも1世代進んでいるが、残念なことに3DMarkでは効かなかったようだ。

下位モデルRX 7700 XTの登場でRTX 4070を完全包囲!?

ASRockのRadeon RX 7700 XT Challenger 12GB OCを使ってテストした。実売価格は70,000円前後

 RX 7800 XTと同時に発売されたRX 7700 XTは、RTX 4070よりやや安い価格帯に投入されたWQHDゲーミング向けのGPUだ。メモリバス幅192bit、かつビデオメモリ12GBというスペックは前世代のRX 6700 XTやRX 6750 XTの延長線上にあるが、RX 7700 XTのほうがCU数が多い。一方、RX 7800 XTでは、「BIOHAZARD RE:4」のようにビデオメモリを多量に消費するゲームでも4Kで安定して60fps以上出せるのに対し、RX 7700 XTは4Kで一気に息切れする印象。RTX 4070よりもやや性能は下だが、RTX 4060 Ti (8GB/16GB)ではもの足りないという人にとって、RX 7700 XTは費用対効果に優れるGPUになっている。

ブーストクロックが2,584MHzのファクトリーOCモデルだ(定格は2,430MHz)

解像度WQHD以上で本領を発揮 消費電力の大きさはRDNA 3の宿命

 3DMarkでは今一つな印象だったRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GOCだが、実ゲームでは少々異なる様相を見せる。「オーバーウォッチ2」、「Forza Horizon 5」のようにフルHDではRX7800 XTリファレンスカードと差がない(あっても誤差の範囲)ものもあるが、解像度が高くなるほどにリファレンスカードとの差は開く。フレームレートの上げ幅は少ない場合で1%、多い場合ではリファレンス仕様とのクロック増分に近い7%程度となった。前世代のRX 6800XTはCU数でRX 7800 XTより上だが、とくにファクトリーOCモデルである本製品に対してそのアドバンテージを発揮できていない。「Call of Duty:ModernWarfare Ⅱ」や「Starfield」では、解像度が上がれば上がるほど、より設計の進んだRX 7800 XTが有利になる。

 また、Radeon RX 7800 XT PhantomGaming 16G OCはリファレンスカードよりも大型のクーラーを採用しているため冷却性能も優秀だ。RX 7800 XTリファレンスカードは小型化されているためGPU温度、とくにGPUホットスポット温度が90℃に達するのに対し、本製品では86℃近辺で止まる。GPU温度そのものも65℃前後で踏みとどまるため、長時間ゲームを楽しみたい人には心強い。ただこれだけ温度差があっても、クロックに関してはリファレンスカードと大差ない。シェーダークロックはRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GOCのほうがわずかに高く、これがグラフィックスパフォーマンスの優位性を支えている。

 ただ残念なのは消費電力だ。リファレンスカードに比べ描画時の消費電力は約40W増えている。ファクトリーOCモデルの宿命とも言えるが、RTX 4070を基準にすると80W高いのは少々残念。ただ、RX 6800 XTよりも消費電力が抑えられており、この点はRDNA 3のプロセスにおける大きなアドバンテージだ。

KTUはこう見た!

 RX 7700 XTとRX 7800 XTは、WQHDゲーミング向けのGPUという点では同じだが、ポテンシャルは劇的に違う。RX 7800 XTは4Kでも攻められる余地がRX 7700 XTよりもずっと広く、価格差を考えると、少々頑張って1ランク上のRX 7800 XTを狙う意義は高い。RTX4070に比べレイトレーシングの性能では一歩劣るものの、BIOHAZARD RE:4のようにしっかり動くゲームもあり、Radeonでもレイトレーシングを積極的に使えて価格も高過ぎないという絶妙な塩梅だ。冷却力も高く、今後も長く使えるビデオカードになるだろう。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 7800X3D(8コア16スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI(AMD X670E)
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSDMicron Crucial T700 CT2000T700SSD3[M.2(PCI Express 5.0 x4)、2TB]
データSSDSilicon Power SP002TBP34A80M28[M.2(PCI Express 3.0 x4)、2TB]
電源Super Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W(1,000W、80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro
アイドル時OS起動10分後の値
高負荷時3DMark-Time Spyデモモード実行中の最大値
電力計HWBusters Powenetics v2
オーバーウォッチ 2マップ“Eichenwalde”におけるbotマッチ観戦中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
Call of Duty:ModernWarfare Ⅱゲーム内のベンチマーク再生中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
Forza Horizon 5ゲーム内のベンチマーク再生中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
BIOHAZARD RE:4序盤に訪れる村落付近を移動する際のフレームレートを「CapFrameX」で計測
サイバーパンク2077ゲーム内のベンチマーク再生中のフレームレートを「CapFrameX」で計測
Starfieldゲーム中の都市“ニューアトランティス”内を移動する際のフレームレートを「CapFrameX」で計測
温度およびGPUクロックの推移BIOHAZARD RE:4(解像度フルHD、最高画質+レイトレーシング)を10分プレイしたときの温度とGPUクロックをHWiNFO Proで測定

[TEXT:加藤勝明]

最終号「DOS/V POWER REPORT 2024年冬号」は絶賛発売中!

 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年秋号」の記事をまるごと掲載しています。

 なお、33年の長きにわたり刊行を続けてきたDOS/V POWER REPORTは、現在発売中の「2024年冬号」が最終号となります。年末恒例の「PCパーツ100選 2024」や「自作PC史&歴代パーツ名鑑」など、内容盛り沢山!是非ご覧ください!