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変えてはいけないところ、変えるべきところ。ニプロンが見つめる“電源の未来”

DOS/V POWER REPORT 2024年冬号の記事を丸ごと掲載!

 現在、自作PC向けATX電源を国内開発、販売している唯一のメーカーであるニプロン。主力は産業向けで、半導体製造装置や医療機器、駅の切符の券売機、ATMなど身近なところで使われている。

 そんなニプロンがなぜPC用電源も作っているのか。それは「止まってはいけない」インフラでも制御用としてPCが使われており、そうしたPCでは「安価で低品質な電源を使われるようなことがあってはならない」からだと言う。

なぜ今もAT電源を作り続けるのか

 自作PCでは、時にマザーボードと電源の相性問題を耳にするが、ニプロンに言わせれば「相性なんてものはない。必ず原因がある」とのこと。そこを究明し、カスタム品を導入することもあるそうだ。

 また、そうした電源は20年、30年と長期展開される。30年近く前の規格であるAT電源「PCS-250-H11」が今も購入可能というのにはさすがに驚いた。世にはデジタル電源も増えてきているが、ニプロンはアナログ回路にこだわる。「電源の基本はアナログ。デジタルは安く製造しやすい半面、いじれる範囲が狭い。アナログのほうが突き詰めやすい」のだと言う。

 そんなニプロンも時代に合わせて1,000Wクラスの電源をラインナップ。最新の12VHPWRケーブルも試作中だが、12VHPWRは端子の発火の報告もあり、12V-2x6の動向も見ながら採用していく考えとのことだ。

 その12V-2x6だが、電源側としてはほとんど違いはないと言う。ただし信号側ピンが短く、きっちり嵌合して信号通信できれば電力を流す、という構造。一方で電力ピンは長くなり、よりきっちりと嵌合するようになっているとのことだ。

 ニプロンは電源の未来についても見据えている。PCの消費電力は年々増加する傾向にある。日本の100Vコンセントで、今後のウルトラハイエンドPCをまかなえるのだろうか。「電源の変換効率が90%だったとしても、実効では1,300 ~ 1,350Wくらいが限界なのでは」と課題を語った。電源は10年に一度くらいの頻度で大きな技術革新が起きるそうだ。PC用の電源においても、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)が使われることで進化するのかもしれない。

今回取材に対応いただいた株式会社ニプロンの営業本部 東部営業部 部長代理 西海 大士氏(左)、東京技術センター 研究本部 TTC開発部 部長 有野和敏氏(中央)、営業本部 空営業部 係長 西野雅隆氏(右)

壊れない+ノンストップの最強電源も

 「ノンストップ電源」は停電になっても自動でバッテリ駆動に切り換わり、その間に正規の終了処理を行ないマシンを保護する

AT電源がまだ買えます!

 さすがに懐かし過ぎる「DOS/V機」で使われていたAT電源。「PCS-250-H11」は今でも継続販売されている。もちろんそこにニーズがあるからだ

[TEXT:石川ひさよし]

DOS/V POWER REPORT「2024年冬号」の記事をまるごと掲載

 今回は、2023年末に休刊したDOS/V POWER REPORT「2024年冬号」の記事をまるごと掲載しています。

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