特集、その他
「自作視点」でみるWindows 8、
Windows 8が引き出すパーツ性能とは?
(2012/12/19 14:00)
10月に発売されたWindows 8。最新OSであるWindows 8は、同時に最新ハードウェアの機能・性能を100%引き出せるOSでもある。
登場間もないため、「Windows 8でないと使えない」というデバイスや機能はまだ少ないが、Windows 7でサポートされていた機能でも、Windows 8ではサポートが拡大されていることもある。また、USB 3.0や4Kセクタのように、古いOSでは利用できない機能も徐々に登場してきている。
タブレットやタッチが大きくフィーチャーされているWindows 8だが、今回は「自作ユーザーの目から見たWindows 8の魅力」というテーマで幾つかのポイントを確認してみた。
USB 3.0外付けSSDがさらに高速になる「UASP」
USB 3.0は理論値5Gbpsの高速インターフェースだ。Windows 7の頃から普及が始まり、既に利用されている方も多いだろう。
USB 3.0は、USB 3.0チップメーカーやIntel/AMDといったチップセットベンダーが提供しているドライバを利用することで、Windows 7でも利用できた。ただしドライバが提供されているのはWindows Vista以降のOS向けであり、例えばWindows XPでは利用できない。そして、Windows 8とWindows 7におけるUSB 3.0は同じというわけでもない。
Windows 8では高速なUSB 3.0外付けデバイスを、さらに高速に利用できる「UASP」をサポートしている。UASPは、簡単に説明すれば、USB 3.0インターフェース内の信号のやりとりを、より効率的に行うプロトコルだ。これまでのUSB 3.0でボトルネック、無駄となっていたコマンドのやりとりを見直し、最適化したことで、USB 3.0インターフェースの高速性を最大限に引き出すことができる。
UASP自体は、USB 3.0だけのものではなく、USB 2.0でも利用できた。……というよりも、例えば、これまでにもマザーボードメーカーのユーティリティなどでUSB高速化ツールというのが付属する例があるが、そうしたUSB高速化ツールでもUASPをサポートしていたものがある。Windows 8では、これをOSが標準サポートしたことで、特別に何かをインストールすることなく利用できる。また、これまでWindows 7時代のUSB高速化ツールは、不安定になることも多かったが、今回テストした限りでは不安定な挙動は見られなかった。
では、実測での速度の違いを見てみよう。
上の2つのスクリーンショットは、上2つがUASP非対応ケースにおけるWindows 7とWindows 8での比較、下2つはUASP対応ケースにおける比較だ。
まず、上2つはUASP非対応なので主にドライバの違いが影響する。シーケンシャル・512Kリード/ライトに関してはWindows 8、Microsoftドライバの方が高速で、512Kリードに関しては約100MB/sの速度差が出ている。ただし、4K・4K QD32ではWindows 7環境の方が速いという結果になった。とりあえずドライバの違いでこの程度の違いがあると把握していただいた上で、下2つの比較に移ろう。
ドライバの違いだけでもかなりの速度差が出ていたわけだが、UASP対応ケースとWindows 8の組み合わせではさらに大きな速度差が計測された。シーケンシャルリード/ライトでの速度の向上も大きいが、512Kリードでは約2倍で、さらに4K QD32リード/ライトはさらに大幅な向上が見られる。4Kに関してはWindows 7の方が速い結果となったが、全体的な速度ではWindows 8+UASPが圧倒的だ。
【コラム】Windows 8はファイルコピー操作も快適になった
USB 3.0外付けHDDなどを使ってバックアップを行う場合、とくにエクスプローラーを用いてファイル・フォルダ単位でコピーする作業が、それまでのコピーと比べて状況を把握しやすくなっている点もWindows 8のポイントだ。
例えば2つのエクスプローラーを左右に並べ、フォルダをコピー中、もうひとつフォルダをコピーしようとする。Windows 7の場合、ひとつ目のコピーのダイアログが表示されている上に、2つ目のコピーのダイアログが表示され、その重なりをマウスでドラッグしないと全体の進捗度合いを把握するのが難しかった。
一方、Windows 8ではひとつのダイアログに、ひとつ目のコピー、2つ目のコピーと言う具合で追加されていき、ひとつのダイアログだけで全体の進捗が把握できる。
動画性能が大幅向上ブラウジングや写真処理が性能アップ
Windows 8とWindows 7では、同一環境でのPCMark 7のスコアも大きく違っている。
Windows 7は4732 PCMarkなのに対し、Windows 8では5480 PCMarksと、実に748 PCMarksの差を付けWindows 8のスコアの方が高い。Feature Testスコアで見ていくと、System Storege scoreに関してはほぼ互角、若干Windows 8の方が低いスコアとなっていたが、その他の項目はWindows 8の方が高く、少なくとも100ポイント、最も大きな差となったComputation scoreでは6731ポイントも上回っていた。PCMarkは、Vantage以降、コンポーネント毎のベンチマークというより、シチュエーション毎のベンチマークへと変わったため、シチュエーション内の個別のベンチマークスコアで傾向を見ていこう。
2つのOSで大きく異なっているのは、主にimage関連テスト、Video関連テスト、そしてWeb Browsing関連テストだ。
image関連テストは、Windows 8でサポートされたDirectX 11.1が、デスクトップ描画や画像処理にGPUを活用している点が影響していると見られる。Video関連テストは、再生テストのスコアに変化は無いが、トランスコーディングが関わるテストの全てが向上している。Web Browsing関連テストは、これはWindows 8がInternet Explorer 10(IE10)を採用している点が影響しているだろう。IE10ではブラウザ自体のエンジンに関する向上に加え、GPUアクセラレーションが利用でき、それもWindows 7、IE9世代より効率アップしているとされる。
検証環境 |
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CPU:Intel Core i5-2500K CPU @ 3.30GHz |
ビデオカード:NVIDIA GeForce GTX 650 |
メモリ:8GB |
SSD: PLEXTOR PX-128M2P ATA Device |
UEFIブートでOS起動が高速化
これもよく言われていることだが、Windows 8は起動が速いという。Windows 8では、UEFIブートに対応している点がこの大きな要因だ。
下のビデオはWindows 7での起動と、Windows 8でUEFIブートを指定した際の起動を比較したものだ。もちろん、環境は同じもの。
起動速度は、そもそもWindows 7で大きく改善されており、さらにシステムにSSDを用いていることもあり、結果だけ見ると「大差」というほどではない。
ただOSの起動は、たとえ1秒、2秒といったわずかな差でも、体感上は結構気になるもの。UEFIについては、BIOSチューニングすることでさらに高速に起動することが判明しており、チューニングを突き詰めればさらにOS起動は高速にできる。そうしたチューニングも、自作PCの楽しみ方のひとつだろう。
また、Windows 8ではUEFIにおける「Secure Boot」も利用できる。Secure Bootは速度ではなくセキュリティに関係する機能だ。Microsoftのセキュリティチームの解説によると、署名されたOSローダーとウイルス対策ドライバーのみを初期起動することでルートキットや改ざんされたドライバが実行されることを防ぐと言う。こうした新しいセキュリティ機能が利用できるのも、より新しいOSの強みと言える。
さらなる大容量HDDのための布石!4K Nativeのサポート
2.5TB、3TBといった大容量HDDの登場に合わせ、「4Kセクタ」というのがホットワードとなった。セクタというのは、HDDの最小記録単位。従来の512Bから4KB容量拡大した4Kセクタは、大容量HDDの物理的な記憶容量を無駄なく論理容量として利用できるほか、やりとりの単位を大きくすることで処理効率の向上も見込まれている。4Kセクタには、Windows Vista SP1以降のOSが対応している。
ただし、Windows 8より前のOSがサポートする4Kセクタは、「AFT」(Advanced Format Technology)と呼ばれる過渡的な方式だ。それを解説するために、まず下のキャプチャを見ていただきたい。
上のキャプチャは、ExamDiskというツールを用い、SSDの情報を表示したものだ。2段目にある「ロング・セクタ情報」という部分がセクタ情報になる。そこには論理セクタと物理セクタという2つのセクタサイズが記載されている。AFTでは、物理セクタは4K(4096バイト)であるものの、論理セクタは512バイトのままであることが分かる。
AFTで論理セクタが512Bのままであるのは、ハードウェアとしては4Kセクタでも、ソフトウェア側からは512Bセクタに見えるということだ。物理セクタと論理セクタが異なるため、相互に変換が必要となるが、それはHDDのファームウェアが処理を行っている。簡単に言えば、新しい技術を導入するにあたり、従来技術との互換性を考慮し、ワンクッション入れたというのがAFTだ。
ではWindows 8ではどうなのか? もちろん、512BセクタもAFT 4Kセクタも利用可能だが、Windows 8がホットなのは、論理セクタ4Kのものもサポートできる点。4K Nativeと呼ばれる完全に4KセクタのHDDやSSDは、まだ、実質流通していないが、今後、徐々に登場してくるものと見られる。
気にしなくてもTrimが効く
SSDで長期使用におけるパフォーマンス低下を防ぐ機能が「Trim」だ。Windows 7でもTrim自体はサポートされていた。しかし、SSDメーカー各社のツールを導入することで対応していたので、Trim自体はサポートしていても利用されていない、といった状況もあったのではないだろうか。Windows 8ではTrimの機能が、OS側に統合されたため、ツールを意識せず、常時利用できる状況になっているのが大きな違いだ。
また、Windows 8におけるTrimは、「デフラグ」に統合されている。Windows 7ではSSD利用のセオリーとして「デフラグはオフにする」と言われており、Windows 7自身もシステムにSSDを検知した場合には、デフラグをオフにする機能を搭載していた。
ところがWindows 8の場合、SSDでもデフラグをオンにしておかないとTrimが効かないことになる。また、デフラグと言うと、「データの断片化を防ぐためにデータ格納場所を移動させる」というHDD用のイメージが強い。Windows 7でデフラグをオフにした方が良いとされていたのは、「書き換え」を頻繁に行うことで、SSDの寿命が短くなることを恐れてのことだ。ただ、Windows 8におけるSSDのデフラグは、こうしたデータの移動処理は行わないとされている。システムがSSDをしっかり検知していれば、HDDとは異なるSSD用のデフラグ、つまりTrimが行われるということであるようだ。最後にもう一度、「Windows 8ではSSDでもデフラグはオン」で利用しよう。
Windows 8でPCの「体感」に関わる部分が大きく向上する
ここまで、Windows 7とWindows 8で、ストレージ性能やブート速度、メディア性能を比較してきた。Windows 8と言うと、ユーザーインターフェースやタッチといった点にフォーカスされがちだが、こうしたデバイス部分でも確実に進歩しているのが見て取れる。Windows 8を使ってみると、「軽い」と感じることが多いと思うが、それはこうした向上が積み重なっていることに起因する。
ただ、UEFIブートも、USB3.0のUASPも、対応ハードウェアとの組み合わせが必須であり、この点は注意したい。動画のトランスコード処理における向上も、おそらくハードウェア支援機能、つまりGPUを利用しているものと見られ、それが正しい場合、ハードウェア支援機能対応するGPUでなければ意味が無いことになる。ソフトウェア、つまりOSと、ハードウェアの組み合わせが重要だ。
またその一方、今回の結果を見る限り、Windows 7世代のハードウェアでも、Windows 8の方がWindows 7よりもパフォーマンスを引き出せると言える。