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ソニーが源流のSSDメーカーNextorageがPC市場に本格参入!Gen 4 SSD「Gシリーズ」はランダム性能が強い!! text by 北川 達也
最大読み出しもGen 4最速級の7,300MB/s、ゲーミングやクリエイティブ用途に
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- Nextorage
2023年3月31日 00:00
群雄割拠の個人向けSSD市場に近年新たに登場したNextorageは、PCI Express 4.0対応でシーケンシャルリード7,300MB/sのNVMe SSD「Gシリーズ」の国内販売を開始した。同社からはこれまでヒートシンク搭載型の「NEM-PAシリーズ」などが登場しているが、こちらはPS5の増設用SSDとして高く評価されている。
今回販売が始まったGシリーズは、ヒートシンクレスの仕様。ゲーマー向けであることをより鮮明に打ち出した製品だ。本稿では、NextorageがPC向けSSDとして本格的に参入するGシリーズの性能を詳しく見ていく。
ソニー源流のストレージメーカーとコントローラ大手Phisonが“合体”
まずはじめに、Nextorageについて簡単に紹介しておこう。
Nextorageは、ソニーでメモリースティックやUSBメモリなど、メモリ型のストレージを開発をになっていた部門を源流とするストレージメーカーである。メモリースティックの時代からさまざまなストレージ製品を手がけてきたわけだが、ここに、SSDの頭脳/心臓であるコントローラ技術でトップを走るPhisonが資本参加し、現在にいたる。主な製品は、SSDやメモリカードといったストレージで、プロジェクタ製品もラインナップしている。
“Nextorage”という会社としてはまだ若いものの、ノウハウの蓄積、技術レベルの高さ、産業用メモリでの高品質実績を重ねており、すでに実績は十分。注目すべき国内ストレージメーカーと言える。同社に話をうかがったところ、資本関係のあるPhisonとの技術的な協力体制は非常に密とのことだが、それと同時に事業としての自由度や独立性はきわめて高いと言う。実際の製品開発はNextorageとPhisonの両方の技術を融合させる形で行なわれているとのことで、ファームウェアなどの独自のチューンなども行なわれているそうだ。
Gシリーズは、そんな同社が発売するPCゲーマー向けのPCI Express 4.0対応NVMe SSDである。搭載コントローラはもちろんPhison製の「PS5018-E18」をベースとした8チャンネルコントローラ。採用する搭載NANDメモリは、Miconの176層3D TLC NAND型フラッシュメモリだ。
記憶容量は1TB、2TB、4TBの3モデルが用意されており、公称最大読み出し速度は全モデル共通で7,300MB/s、書き込み速度は、1TBモデルが6,000 MB/s、2TB/4TBモデルが6,900 MB/s耐久性はそれぞれ、700TB、1,400TB、3,000TBと非常に高く、仕様面はトップクラスのものだ。
型番 | NE1N1TB | NE1N2TB | NE1N4TB |
容量 | 1TB | 2TB | 4TB |
インターフェース | PCI Express 4.0x4 | ||
プロトコル | NVMe 1.4 | ||
コントローラ | 8チャンネルコントローラ | ||
NANDフラッシュ | 176層 3D TLC NAND | ||
DRAM | DDR4 1GB | DDR4 2GB | DDR4 2GB |
シーケンシャルリード(最大) | 7,300 MB/s | 7,300 MB/s | 7,300 MB/s |
シーケンシャルライト(最大) | 6,000 MB/s | 6,900 MB/s | 6,900 MB/s |
ランダムリード(最大) | 750,000 IOPS | 1,000,000 IOPS | 940,000 IOPS |
ランダムライト(最大) | 1,000,000 IOPS | 1,000,000 IOPS | 1,000,000 IOPS |
TBW | 700 | 1,400 | 3,000 |
保証期間 | 5年(制限付き保証) |
シーケンシャルもランダムも現役屈指の書き込み性能を発揮
それではGシリーズの性能をベンチマークテストで見てみよう。性能のチェックに利用したのは、Gシリーズの1TBモデルと2TBモデルである。この2製品の性能を最大速度を計測する「CrystalDiskMark 8.0.4」とストレージの体感性能を計測する「PCMark 10 Full System Drive Benchmark」、ゲーム使用時の体感性能を計測する「3D Mark Storage Benchmark」を用いてチェックした。比較対象としては、Gen 3 SSD、Gen 4初期型コントローラ(PhisonのE-16)を搭載したSSDを用意した。
CPU | Intel Core i5-11600K(6C12T) |
マザーボード | Intel Z590チップセット搭載マザーボード |
メモリ | DDR4-3200メモリ 32GB(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2) |
システムストレージ | M.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB) |
グラフィックス | Intel UHD Graphics 750(CPU内蔵) |
電源 | ATX 750W 電源(80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro(22H2) |
まずは、最大速度を確認できるCrystalDiskMarkの結果を見ていこう。Gシリーズの最大シーケンシャル速度は、1TBモデルの読み出しが7,031.3MB/s、2TBモデルが7,010.3MB/sであった。両者ともに公称最大読み出し速度に届いていないのは、Intelプラットフォームでベンチマークを行なっているためだ。AMD環境でベンチマークを実施すると、公称最大読み出しとほぼ同等の速度が出ることを確認している。
また、書き込み速度は、1TBモデルが5,956.2MB/s、2TBモデルが6,850.6MB/sで、ほぼ公称速度と同等の速度が出ている。この書き込み速度は、PCI Express 4.0対応SSDの中でも最速クラスの速度である。また、4KB QD1T1のランダム読み出し速度/書き込み速度も非常に速く、これも現役最速クラスの速度である。
次に、実際の体感性能の実力をスコア化できるPCMark 10 Full System Drive Benchmarkと3DMark Storage Testを計測した。PCMark 10のスコアは1TBモデルが「3,214」、2TBモデルが「3,286」、3DMarkは1TBモデルが「3,478」、2TBモデルが「3,435」となった。最速クラスの製品にこそおよばなかったものの、Gen 4 SSDとしては十分に高いスコアで、いずれも優秀な結果と言ってよいだろう。前世代のSSDと比較すると大きな差が付いており、体感速度も向上している。
SSDは空き容量が減ってくると性能に変化が生じるケースがある。そこで、空き領域が減ったときのランダムリード性能も計測してみた。
このテストは、テストツールを使用して各SSDの最大記憶容量の10%~100%分のデータをあらかじめ書き込み、記録済みデータを対象にランダムリード性能計測する、というもの。たとえば、“10%”でのテストは最大記憶容量の10%分のデータを記録して、そのデータを対象としてランダムリード性能を計測。“100%”はSSDの記憶可能な領域全体にデータを記録し、全エリアを対象にランダムリードを性能を計測している。
このテストの結果だが、Gシリーズは現役最速のランダム読み出し性能をマークした。Gシリーズは、1TBモデルはデータの記憶容量が30%まで、2TBモデルは50%まで1,050MB/s前後の読み出し速度をマークしている。筆者はこれまで数々のSSDをテストしてきているが、この方法のランダムリードのテストで“1,000MB/s超え”という速度が出ること自体がほとんどない。1TBモデルと2TBモデルの両方でこの値を叩き出すというのは驚きの結果だ。
また、1TBモデルは100%で755MB/s、2TBモデルも100%で746.3MB/sまで読み出し速度が下がっているが、一般的なPCI Express 4.0/3.0対応のSSDは多くの場合、もともと最大読み出し速度がこのぐらいにとどまっているがほとんど。つまり、Gシリーズはデータを記憶容量ギリギリまで保存した状態で、初めてほかのSSDと同じぐらいのランダムリード速度になるというわけで、この性能は本機の大きな武器の一つと言えそうだ。
個性的なSLCキャッシュの挙動で書き込み性能の高さは現役随一
次にGシリーズのSLCキャッシュの使い方をチェックしたので説明しておく。GシリーズのSLCキャッシュは、性能確保とNANDの長寿命化を両立する「ダイナミックSLCキャッシュ」という技術を用いているとのことで、最大3分の1までキャッシュサイズを確保するとしている。
計測データからもこのことが観測でき、「条件付きで全容量割り当て」を行なう挙動をしているものと推測できる。具体的な挙動としては、基本的には記憶容量全量をSLCキャッシュの最大容量として割り当てるが、連続書き込み時に割り当てられるSLCキャッシュの最大容量が制限する、というものだろう。
たとえばGシリーズの1TBモデルの場合、SLCキャッシュとして割り当てられる最大容量は、記憶容量1TBモデルの3分の1、つまり、約330GBぐらいになる。ただし、これには制限があり、連続してデータを書き込む場合は、この容量がさらに約3分の1に制限される。つまり、1TBモデルの場合、連続書き込みを行なうと約100GB強ほど記録したところでSLCキャッシュへの記録は一旦終了する。そして、これ以降も書き込みが続く場合は、その書き込みはTLC領域へのダイレクトライトに切り換わる。
一方、断続的にシーケンシャルライトを行なった場合は、ダイレクトライトに切り換わることなく、SLCキャッシュを使い切るまで速度が低下しない。
注目しておきたいのは、ダイレクトライト時の書き込み速度である。Gシリーズの1TBモデルは、TLC領域へのダイレクトライト時に平均1963.6MB/sの速度で書き込み、2TBモデルはなんと3,886.2MB/sもの速度で書き込めている。
2TBモデルで同様のテストをしてみると、その書き込み速度は速度低下後でも十分過ぎるほどの記録速度だ。4Kや8Kなどのファイルサイズの大きな動画などの連続書き込みなどにおいて大きな威力を発揮することは間違いないだろう。
ちなみに、Gシリーズは、書き込み性能が高いため発熱は大きめの部類に属しているが、今回テストしていた限りでは、マザーボードに標準添付しているヒートシンクで十分放熱できていた。たとえば、10分間のシーケンシャルライトのテスト時のSSDの温度は、1TBモデルで最大52℃、2TBモデルで最大54℃だった。ヒートシンクなしでの運用はさすがにオススメできないが、通常はマザーボード付属のヒートシンクでの運用で問題ないだろう。
書き込み性能は現役随一!ゲーマーやクリエイター向きの高性能SSD
NextorageのGシリーズは、各種ベンチマーク結果からも分かるように読み出し/書き込みといったストレージとしての基本性能に非常に優れた製品だ。
なかでもランダム読み出し性能と書き込み性能に関しては、現在発売中のPCI Express 4.0対応SSDの中でも1、2を争うぐらい高速な製品に仕上がっている。最大記憶容量4TBのモデルもラインナップされており、ハイエンドのゲーミングPCはもちろん、クリエイター向けのPCを作るのに向いたパワフルで高性能な製品と言えるだろう。
Gシリーズを皮切りにPC向けSSD市場に本格参入を果たしたNextorage。同社はPCI Express 5.0対応SSDの市場投入も予定している。国内に誕生したストレージメーカーの一社として、その動向に今後も注目していきたい。