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ソニーが源流のSSDメーカーNextorageがPC市場に本格参入!Gen 4 SSD「Gシリーズ」はランダム性能が強い!! text by 北川 達也

最大読み出しもGen 4最速級の7,300MB/s、ゲーミングやクリエイティブ用途に

PCI Express 4.0対応のNVMe SSD「Gシリーズ」。1/2/4TBの3モデルをラインナップ

 群雄割拠の個人向けSSD市場に近年新たに登場したNextorageは、PCI Express 4.0対応でシーケンシャルリード7,300MB/sのNVMe SSD「Gシリーズ」の国内販売を開始した。同社からはこれまでヒートシンク搭載型の「NEM-PAシリーズ」などが登場しているが、こちらはPS5の増設用SSDとして高く評価されている。

 今回販売が始まったGシリーズは、ヒートシンクレスの仕様。ゲーマー向けであることをより鮮明に打ち出した製品だ。本稿では、NextorageがPC向けSSDとして本格的に参入するGシリーズの性能を詳しく見ていく。

「Gシリーズ」の製品パッケージ。白を基調としたシンプルなデザインが目新しい

ソニー源流のストレージメーカーとコントローラ大手Phisonが“合体”

 まずはじめに、Nextorageについて簡単に紹介しておこう。

 Nextorageは、ソニーでメモリースティックやUSBメモリなど、メモリ型のストレージを開発をになっていた部門を源流とするストレージメーカーである。メモリースティックの時代からさまざまなストレージ製品を手がけてきたわけだが、ここに、SSDの頭脳/心臓であるコントローラ技術でトップを走るPhisonが資本参加し、現在にいたる。主な製品は、SSDやメモリカードといったストレージで、プロジェクタ製品もラインナップしている。

 “Nextorage”という会社としてはまだ若いものの、ノウハウの蓄積、技術レベルの高さ、産業用メモリでの高品質実績を重ねており、すでに実績は十分。注目すべき国内ストレージメーカーと言える。同社に話をうかがったところ、資本関係のあるPhisonとの技術的な協力体制は非常に密とのことだが、それと同時に事業としての自由度や独立性はきわめて高いと言う。実際の製品開発はNextorageとPhisonの両方の技術を融合させる形で行なわれているとのことで、ファームウェアなどの独自のチューンなども行なわれているそうだ。

今回はテスト用に1TBモデルと2TBモデルをそれぞれ試用した。ラインナップ中、リード/ライト性能がもっとも高いのは2TBモデル。容量、TBWともに大きい4TBモデルもラインナップされているので、クリエイターなどにもオススメ

 Gシリーズは、そんな同社が発売するPCゲーマー向けのPCI Express 4.0対応NVMe SSDである。搭載コントローラはもちろんPhison製の「PS5018-E18」をベースとした8チャンネルコントローラ。採用する搭載NANDメモリは、Miconの176層3D TLC NAND型フラッシュメモリだ。

1TBモデルの基板。コントローラにプリントされたロゴはNextorageのものだが、ベースとなっているのはPhisonのGen 4向け高性能コントローラのE18。NANDはMicron製の176層タイプで、チップは片面実装
2TBモデルの基板。表面のチップ構成は1TBと同様。1TBモデルとは異なり、両面実装になっている

 記憶容量は1TB、2TB、4TBの3モデルが用意されており、公称最大読み出し速度は全モデル共通で7,300MB/s、書き込み速度は、1TBモデルが6,000 MB/s、2TB/4TBモデルが6,900 MB/s耐久性はそれぞれ、700TB、1,400TB、3,000TBと非常に高く、仕様面はトップクラスのものだ。

【Gシリーズの主なスペック】
型番NE1N1TBNE1N2TBNE1N4TB
容量1TB2TB4TB
インターフェースPCI Express 4.0x4
プロトコルNVMe 1.4
コントローラ8チャンネルコントローラ
NANDフラッシュ176層 3D TLC NAND
DRAMDDR4 1GBDDR4 2GBDDR4 2GB
シーケンシャルリード(最大)7,300 MB/s7,300 MB/s7,300 MB/s
シーケンシャルライト(最大)6,000 MB/s6,900 MB/s6,900 MB/s
ランダムリード(最大)750,000 IOPS1,000,000 IOPS940,000 IOPS
ランダムライト(最大)1,000,000 IOPS1,000,000 IOPS1,000,000 IOPS
TBW7001,4003,000
保証期間5年(制限付き保証)
スケジュールの都合でテストは見送ったが、大容量の4TBモデルもラインナップされる。2TBモデルと同じく、両面実装でNANDは8チップ構成

シーケンシャルもランダムも現役屈指の書き込み性能を発揮

 それではGシリーズの性能をベンチマークテストで見てみよう。性能のチェックに利用したのは、Gシリーズの1TBモデルと2TBモデルである。この2製品の性能を最大速度を計測する「CrystalDiskMark 8.0.4」とストレージの体感性能を計測する「PCMark 10 Full System Drive Benchmark」、ゲーム使用時の体感性能を計測する「3D Mark Storage Benchmark」を用いてチェックした。比較対象としては、Gen 3 SSD、Gen 4初期型コントローラ(PhisonのE-16)を搭載したSSDを用意した。

【検証環境】
CPUIntel Core i5-11600K(6C12T)
マザーボードIntel Z590チップセット搭載マザーボード
メモリDDR4-3200メモリ 32GB(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
システムストレージM.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB)
グラフィックスIntel UHD Graphics 750(CPU内蔵)
電源ATX 750W 電源(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(22H2)

 まずは、最大速度を確認できるCrystalDiskMarkの結果を見ていこう。Gシリーズの最大シーケンシャル速度は、1TBモデルの読み出しが7,031.3MB/s、2TBモデルが7,010.3MB/sであった。両者ともに公称最大読み出し速度に届いていないのは、Intelプラットフォームでベンチマークを行なっているためだ。AMD環境でベンチマークを実施すると、公称最大読み出しとほぼ同等の速度が出ることを確認している。

CrystalDiskMarkの計測結果。Intel環境で計測したため読み出し速度が公称速度に届いていないが、書き込み速度はほぼ公称値どおりだ。この速度はGen 4 SSDとしては現役最速クラス

 また、書き込み速度は、1TBモデルが5,956.2MB/s、2TBモデルが6,850.6MB/sで、ほぼ公称速度と同等の速度が出ている。この書き込み速度は、PCI Express 4.0対応SSDの中でも最速クラスの速度である。また、4KB QD1T1のランダム読み出し速度/書き込み速度も非常に速く、これも現役最速クラスの速度である。

 次に、実際の体感性能の実力をスコア化できるPCMark 10 Full System Drive Benchmarkと3DMark Storage Testを計測した。PCMark 10のスコアは1TBモデルが「3,214」、2TBモデルが「3,286」、3DMarkは1TBモデルが「3,478」、2TBモデルが「3,435」となった。最速クラスの製品にこそおよばなかったものの、Gen 4 SSDとしては十分に高いスコアで、いずれも優秀な結果と言ってよいだろう。前世代のSSDと比較すると大きな差が付いており、体感速度も向上している。

PCMark 10 Full System Drive Benchmarkの計測結果
3DMark Storage Testの計測結果

 SSDは空き容量が減ってくると性能に変化が生じるケースがある。そこで、空き領域が減ったときのランダムリード性能も計測してみた。

 このテストは、テストツールを使用して各SSDの最大記憶容量の10%~100%分のデータをあらかじめ書き込み、記録済みデータを対象にランダムリード性能計測する、というもの。たとえば、“10%”でのテストは最大記憶容量の10%分のデータを記録して、そのデータを対象としてランダムリード性能を計測。“100%”はSSDの記憶可能な領域全体にデータを記録し、全エリアを対象にランダムリードを性能を計測している。

データ保存容量に対するランダムリード性能。Gシリーズは現役最速の速度を発揮した

 このテストの結果だが、Gシリーズは現役最速のランダム読み出し性能をマークした。Gシリーズは、1TBモデルはデータの記憶容量が30%まで、2TBモデルは50%まで1,050MB/s前後の読み出し速度をマークしている。筆者はこれまで数々のSSDをテストしてきているが、この方法のランダムリードのテストで“1,000MB/s超え”という速度が出ること自体がほとんどない。1TBモデルと2TBモデルの両方でこの値を叩き出すというのは驚きの結果だ。

 また、1TBモデルは100%で755MB/s、2TBモデルも100%で746.3MB/sまで読み出し速度が下がっているが、一般的なPCI Express 4.0/3.0対応のSSDは多くの場合、もともと最大読み出し速度がこのぐらいにとどまっているがほとんど。つまり、Gシリーズはデータを記憶容量ギリギリまで保存した状態で、初めてほかのSSDと同じぐらいのランダムリード速度になるというわけで、この性能は本機の大きな武器の一つと言えそうだ。

個性的なSLCキャッシュの挙動で書き込み性能の高さは現役随一

 次にGシリーズのSLCキャッシュの使い方をチェックしたので説明しておく。GシリーズのSLCキャッシュは、性能確保とNANDの長寿命化を両立する「ダイナミックSLCキャッシュ」という技術を用いているとのことで、最大3分の1までキャッシュサイズを確保するとしている。

 計測データからもこのことが観測でき、「条件付きで全容量割り当て」を行なう挙動をしているものと推測できる。具体的な挙動としては、基本的には記憶容量全量をSLCキャッシュの最大容量として割り当てるが、連続書き込み時に割り当てられるSLCキャッシュの最大容量が制限する、というものだろう。

 たとえばGシリーズの1TBモデルの場合、SLCキャッシュとして割り当てられる最大容量は、記憶容量1TBモデルの3分の1、つまり、約330GBぐらいになる。ただし、これには制限があり、連続してデータを書き込む場合は、この容量がさらに約3分の1に制限される。つまり、1TBモデルの場合、連続書き込みを行なうと約100GB強ほど記録したところでSLCキャッシュへの記録は一旦終了する。そして、これ以降も書き込みが続く場合は、その書き込みはTLC領域へのダイレクトライトに切り換わる。

 一方、断続的にシーケンシャルライトを行なった場合は、ダイレクトライトに切り換わることなく、SLCキャッシュを使い切るまで速度が低下しない。

1TBモデルに対してシーケンシャルライトを10分間行なった場合のグラフ。連続記録を行なうと約100GBで書き込み速度が低下しているが、これはSLCキャッシュの枯渇ではない
1TBモデルに対して100GBの容量をシーケンシャルライトしたら2秒書き込み停止を繰り返し10分間記録を行なった場合のグラフ。100GB記録ごとに2秒停止すると、約100GB記録した地点で速度低下が発生することなく、SLCキャッシュの枯渇まで記録できている

 注目しておきたいのは、ダイレクトライト時の書き込み速度である。Gシリーズの1TBモデルは、TLC領域へのダイレクトライト時に平均1963.6MB/sの速度で書き込み、2TBモデルはなんと3,886.2MB/sもの速度で書き込めている。

 2TBモデルで同様のテストをしてみると、その書き込み速度は速度低下後でも十分過ぎるほどの記録速度だ。4Kや8Kなどのファイルサイズの大きな動画などの連続書き込みなどにおいて大きな威力を発揮することは間違いないだろう。

2TBモデルに対してシーケンシャルライトを10分間行なった場合のグラフ。連続記録を行なうと約210GBで書き込み速度が低下しているが、その速度は3886.2MB/sと非常に速い
2TBモデルに対して100GBの容量をシーケンシャルライトしたら2秒書き込み停止を繰り返し10分間記録を行なった場合のグラフ。SLCキャッシュの枯渇まで記録できている

 ちなみに、Gシリーズは、書き込み性能が高いため発熱は大きめの部類に属しているが、今回テストしていた限りでは、マザーボードに標準添付しているヒートシンクで十分放熱できていた。たとえば、10分間のシーケンシャルライトのテスト時のSSDの温度は、1TBモデルで最大52℃、2TBモデルで最大54℃だった。ヒートシンクなしでの運用はさすがにオススメできないが、通常はマザーボード付属のヒートシンクでの運用で問題ないだろう。

書き込み性能は現役随一!ゲーマーやクリエイター向きの高性能SSD

 NextorageのGシリーズは、各種ベンチマーク結果からも分かるように読み出し/書き込みといったストレージとしての基本性能に非常に優れた製品だ。

 なかでもランダム読み出し性能と書き込み性能に関しては、現在発売中のPCI Express 4.0対応SSDの中でも1、2を争うぐらい高速な製品に仕上がっている。最大記憶容量4TBのモデルもラインナップされており、ハイエンドのゲーミングPCはもちろん、クリエイター向けのPCを作るのに向いたパワフルで高性能な製品と言えるだろう。

 Gシリーズを皮切りにPC向けSSD市場に本格参入を果たしたNextorage。同社はPCI Express 5.0対応SSDの市場投入も予定している。国内に誕生したストレージメーカーの一社として、その動向に今後も注目していきたい。