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まだまだ現役の傑作モバイルPC「Surface Pro 8」のSSD不足をSSD換装で解消する!全工程を一挙解説!!

Micron 2400なら性能アップで快適度も向上 text by 芹澤 正芳

 Microsoftの2in1ノートPCとして人気の「Surface」。とくにProシリーズは歴代のモデルが高性能で使い勝手もよいため、旧モデルを使い続けている人も多いだろう。しかし、性能に不満はなくてもSSDの容量不足に悩んではいないだろうか。そこで、今回は容量不足解決の決定打となるSurface Pro 8のSSD換装手順を紹介していきたい。対応するサイズのSSDさえ用意すれば、意外とカンタンに大容量化が可能なのだ。

動画で解説! Surface Pro 8の大容量SSD換装!!

【Surface Pro 8のSSD交換でストレージ容量不足解決&性能アップ!M.2 2230のSSD選びから換装方法、システム移行まで解説!】

2230規格のM.2 SSDを用意するのがポイント

 Surface Proシリーズは薄型のモバイルPCなので、SSDの換装は容易ではないと思われがちだ。確かに旧モデルはそれが当てはまるが、比較的新しいSurface Pro X、Surface Pro 7+、Surface Pro 8、Surface Pro 9は、着脱が容易なM.2 SSDが採用されているうえ、搭載されているスロットへのアクセスもカンタンになっている。

 今回はSurface Pro 8(Core i5、メモリ16GB、SSD 256GB)を例に、SSD換装にチャレンジしていきたい。最大のポイントと言えるのが、対応するSSDのサイズだ。PCI Express接続のM.2 SSDが採用されているが、一般的な「2280」規格ではなく、より短い「2230」規格が使われている点に注意が必要だ。

今回はSurface Pro 8を例にSSD換装手順を紹介する
短い2230規格のSSDを採用している

 2230規格のM.2 SSDは、種類が2280よりも少なく、選択肢はさほど多くはない。とくに大容量かつ高性能となるとさらに厳しくなる。そこで今回はNAND型フラッシュメモリの開発から製造まで手がける大手メーカーMicronの「Micron 2400」を使用することにした。

Micronの「Micron 2400」。写真は1TB版で実売価格は1万4,000円前後

 Micron 2400は2230規格のコンパクトサイズながら、PCI Express 4.0 x4(Gen 4)接続に対応し、最大2TBの大容量モデルも用意。シーケンシャルリードで最大4,500MB/s、シーケンシャルライトで最大4,000MB/sと性能も十分だ。PCパーツショップや専門的なECサイトだけでなく、家電量販店でも販売されており、入手性も良好だ。

Micronの176層QLC NANDを搭載。コントローラはSilicon Motion製を採用

 今回は256GBからの大幅容量増を狙って1TBモデルを使用した。また、Surface Pro 8の標準SSDはPCI Express 3.0 x4(Gen 3)接続なので、4.0 x4化による性能向上も期待できる。そのほかスペックは下記にまとめた。

【Micron 2400の主なスペック】
容量512GB1TB2TB
フォームファクタM.2 2230
インターフェースPCI Express 4.0 x4
プロトコルNVMe 1.4
NANDフラッシュメモリMicron QLC NAND(176層)
コントローラ非公開
シーケンシャルリード4,200MB/秒4,500MB/秒
シーケンシャルライト1,800MB/秒3,600MB/秒4,000MB/秒
総書き込み容量(TBW)150TB300TB600TB
保証期間3年(制限付き保証)
実売価格8,000円前後14,000円前後26,000円前後

USBメモリに回復ドライブを作成する

 それでは、実際の換装作業に移ろう。今回の手順ではPCが初期化されるので、文書データやメディアファイルなど、SSD上に保存してある必要なデータ類はUSBメモリや外付けSSDなどにあらかじめバックアップしておこう。

換装用のSSD(写真一番右)のほか、左から順に、32GB以上のUSBメモリ、0.5mmまたは1mm厚のサーマルパッド、ピンセット、T3のトルクスドライバー、SIMピンを用意する

 新しいSSDのほかに必要なものは、回復ドライブ作成用のUSBメモリ。容量は16GBで作成できる場合もあるが、32GB以上を選んでおくと確実だ。また、Surface Pro 8にはType-C形状のUSBポートしかないので、USBメモリもType-Cに対応したものだと接続がラク。Type-A形状のUSBメモリを使う場合は、Type-Cへの変換ケーブルやコネクタも用意しておこう。

 工具としては、SSDを固定するネジを外すためのT3のトルクスドライバー(Amazonなどのネット通販やホームセンターなどで購入できる)、M.2スロットのフタを外すのに必要ないわゆる“SIMピン”が必要。精密ドライバーセットを持っている人は少なくないと思うが、T3のトルクスは付いていない場合もあるので事前に確認を。SIMピンはスマホに付属しているものでよい(ゼムクリップの先端を曲げたものなどでも代用可能だ)。

 また、必須ではないが、SSDをM.2スロットから引き抜くときに若干力を入れにくいので、物を掴みやすいピンセットも用意しておくとよりスムーズに作業できる。このほか、SSD冷却用のサーマルパッド(0.5mmまたは1mm厚)も用意しよう。サーマルパッドは2280サイズのことが多いので、必要な長さにカットしておく。

 まずは、物理的なSSD換装の前に、Windowsを起動して回復ドライブを作成する。USBメモリをSurface Pro 8に接続し、回復ドライブを実行。USBメモリに必要なデータが保存されるのを待つだけだ。

(1-1)Surface Pro 8のUSBポートにUSBメモリを接続して作業をスタート
(1-2)Windows 11の検索ボックスに「回復ドライブ」と入力し、表示された検索結果から回復ドライブを選択して実行
(1-3)ユーザーアカウント制御の「はい」を選択すると、「回復ドライブ」ウィザードが起動する。「システムファイルを回復ドライブにバックアップします」にチェックを入れて「次へ」をクリック
(1-4)使用可能なドライブにUSBメモリが選択されていることを確認して「次へ」をクリック
(1-5)最後に「作成」をクリックすれば、USBメモリに回復ドライブが作成される。完了まで待とう

M.2スロットにアクセスしてSSDを換装

 回復ドライブの作成が完了したら、USBメモリを外し電源を一旦オフに。電源ケーブルも外してSSDの物理的な換装作業を行なう。

 SSDのあるM.2スロットは、本体背面側、キックスタンドの内側にある。SSDスロットのカバーの横にある小さな穴にSIMピンを挿すとカバーが外れるので、T3のトルクスドライバーでねじを外し、SSDを取り外して換装用のMicron 2400の1TB版を取り付ける。

 最後にサーマルパッドをSSDと同サイズに切って上に貼り付け、カバーを元に戻す。これで物理的な作業は完了。適切な工具さえ用意すれば、作業に難しいところはない。

(2-1)キックスタンドを大きく開け、カバーの隅にある小さな穴にSIMピンを挿し込むと、簡単にカバーが外れる
(2-2)T3のトルクスドライバーでSSDを固定しているネジを外す
(2-3)SSDを少し浮かし引き抜く。指でも可能だが、スペースが狭く力が入りにくいので、ピンセットを使ったほうがスムーズ
(2-4)Micron 2400の1TB版を取り付けてネジを戻す
(2-5)サーマルパッドをSSDのサイズに切って、表面に貼り付け、フタを閉じる

回復ドライブを使ってWindows 11を再セットアップ

 USBメモリに作った回復ドライブを使って、Windows 11を再セットアップしていく。とくに難しい手順はないので、画面の指示に従って進める。

(3-1)電源ケーブルを接続し、回復ドライブのUSBメモリをSurface Pro 8に取り付ける
(3-2)音量のマイナスボタンを押したまま電源ボタンを押す。音量マイナスボタンは押し続ける
(3-3)画面下段に読み込み中を示すアニメーションが表示されたらマイナスボタンから指を放す
(3-4)これでキーボードレイアウトの選択画面が表示されるので「Microsoft IME」を選択する
(3-5)オプションの選択画面になるので「ドライブから回復する」を選ぶ
(3-6)ドライブから回復するでは「ファイルの削除のみを行う」を選択
(3-7)最後に「回復」を選ぶ。これでWindows 11の再セットアップが開始される。
(3-8)インストールが進行するのでしばらく待とう
(3-9)あとはWindows 11の初期設定を済ませれば通常通り使えるようになる

別途クローニングアプリを用意すれば丸ごと引っ越しも可能

 モバイルPCのSSD換装手順としてはこのほかにも、“クローニングアプリを使って元のSSDのクローンを新しいSSDに作成”→“元のSSDと新しいSSDを換装”という方法もよく使われる。

 この方法には、クローニングアプリのほかにSSDを一時的に外付け化するためのNVMe対応の外付けケースが必須。Micron製でもCrucialブランドのSSDなら、クローニングアプリの無償ライセンスが付属しているので、前者の用意が不要なのだが、Micron 2400には用意されていないので、別途入手する必要がある。

True Imageの後継製品「Cyber Protect Home Office」。Micron 2400にはクローニングアプリが付属しないので、別途アプリを用意する必要がある
クローニングを使ってSSDを換装する場合は、M.2 SSDを外付け化するケースも必要。NVMe用で2230規格のSSDが取り付けられる製品を用意すること

 実績や安定性を考慮すると、Crucialブランドで採用しているAcronis製のツールが有力候補だが、定番のクローニングアプリ「Acronis True Image」は、総合セキュリティ対策アプリ「Acronis Cyber Protect Home Office」にリニューアルされている。最新のパッケージ版Cyber Protect Home Officeを使って、クローニングを利用したSSD換装も試してみたが、作業の流れ自体は従来と変わりはなく、問題なく作業を終えることができた。

前段の作業として、新しいSSDを外付けケースにセットしてSurfaceに取り付けておく。元の環境にCyber Protect Home Officeをインストールして起動したら「ディスクのクローン作成」を選択
「ディスクのクローン作成ウィザード」が始まるので、「自動(推奨)」を選択して「次へ」
ソース ディスク(移行元。今回の場合は元の内蔵SSD。インターフェースはNVMe)、ターゲット ディスク(移行先。今回の場合はMicron 2400。インターフェースは外付けなのでUSBになっている)を選ぶ。新品のSSDを使うので“未初期化”状態になっている
クローンの作成方法を選ぶ。システムSSDの換装の場合は「このコンピュータのディスクを交換するには」を選ぶ
256GB→1TBに容量が大幅に増えるが自動的に最適な設定に調整してくれる。「選択完了」の手順まで進んだら「実行」を押し、しばらく待つ。クローニングが完了したら、電源を落としてSSDを物理的に換装すれば作業完了

 十分に整備された環境を再構築するのは大変なので、有償アプリを使ってでも引っ越しで済ませたい、という方にはこちらの方法もオススメ。

SSD換装で大容量化に加えて性能も向上

 SSDを換装することで、性能がどこまで変わるかもチェックしてみよう。まずはストレージの速度を測定する定番ベンチマークの「CrystalDiskMark 8.0.4」から実行する。

CrystalDiskMark 8.0.4の計測結果

 Micron 2400の1TB版はシーケンシャルリードで4,563.9MB/s、シーケンシャルライトで3,556.2MB/sとほぼ公称通りの性能を発揮できている。換装前に比べてランダムアクセスも含めて向上した。

 続いて、Microsoft Office、Adobeのクリエイティブアプリ、ゲームなどさまざな処理をシミュレートしてストレージの性能を測るPCMark 10のFull System Drive Benchmark、ゲームの起動、ロード、録画しながらのプレイなどゲームに関する多彩な処理速度をテストする3DMarkのStorage Benchmarkを試してみよう。

PCMark 10―Full System Drive Benchmarkの計測結果
3DMark―Storage Benchmarkの計測結果

 Micron 2400の1TB版はPCMark 10のスコアが約74%もアップと、アプリのレスポンスもよくなっているのが確認できた。Surface Pro 8でゲームをプレイする人はあまりいないとは思うが、3DMarkもスコアアップ。大容量化だけではなく。性能も向上していることを確認できた。

SSDの換装が手軽にできるSurface Proを持ってるなら注目

 近年のSurface Proシリーズなら、SSDの換装が簡単にできるようになっている。2230規格のM.2を用意すれば容量不足を解消できるだけではなく、Surface Pro 8のように、標準のSSDがGen 3接続のタイプなら、Gen 4接続のMicron 2400に変えることでストレージの性能向上も可能だ。ストレージが128GBや256GBモデルを使っているなら、換装するメリットは大きい。

 今回サンプルとして用意したSurface Pro 8は、第11世代のCore i5にメモリ16GB搭載とベースの性能は十分。若干頼りないSSDを強化すれば、まだまだビジネスやメディア鑑賞、軽めのクリエイティブ用途などにバリバリ活躍できるだろう。