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自作PCのケーブル配線に革命!CORSAIR「iCUE LINK」で組み立てがもっと楽しくラクになる!!

連結&デイジーチェーン接続でスッキリ、ライティングも集中制御 text by 芹澤 正芳

 ケーブル配線は自作PCにおける大きな悩みだ。とくに冷却を重視して、PCケースに複数の冷却ファンを装着したり、3連ファンの簡易水冷クーラーを導入すれば、ファンの電源ケーブルだけで6本以上になることも珍しくない。さらにLED内蔵のファンを選び、アドレサブルRGBのケーブルまで加わったら、もうPCケースの内部はケーブルだらけ。美しくまとめるのは難しくなってしまう。

 その悩みを一挙に解決してくれるのが、2023年9月1日より発売がスタートするCORSAIRの新システム「iCUE LINK」だ。対応デバイスを連結させたり、ケーブルでデイジーチェーン接続でき、それを「iCUE LINK システムハブ」で一括管理できる。CPUクーラーやケースファンのケーブル配線が劇的にラクになる非常に便利なモノ。ここでは、その「iCUE LINK」をフル活用してPCを1台組んでみる。PCケース内部のケーブルを減らしたいと考えているなら、ぜひともチェックしてほしい。

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電源もLEDもケーブル1本で済む手軽さ

 「iCUE LINK」では、簡易水冷のCPUクーラー「iCUE LINK Hi RGB」シリーズ、ケースファンの「iCUE LINK QX RGB」シリーズ、それらを一括管理できる「iCUE LINK システムハブ」、長さやコネクタの向きが異なる「iCUE LINKケーブル」をラインナップしている。

CORSAIRから届いた「iCUE LINK」の評価キット。「iCUE LINK」対応デバイスの簡易水冷クーラー、ケースファン、システムハブ、ケーブルなどがセットになっている

 最大の強みは、ファン同士を連結またはiCUE LINKケーブルでデイジーチェーン接続できること。例えば、PCケースの天面に2基のファンを取り付ける場合は、ファン同士を連結させ、ファンとiCUE LINK システムハブの間を1本のケーブルで接続するだけで済む。

iCUE LINKを利用したファン/クーラーの接続モデル図。ファンの連結やデイジーチェーンを使えば、ケーブル接続を最少化できる

 また、iCUE LINKケーブルは、電源とLEDの両方の接続を兼ねているため、電源とLEDのケーブルが別々である一般的なアドレサブルRGB内蔵ファンよりもスマート。さらに、デイジーチェーン接続を活用すれば、背面と天面などちょっと離れた場所にあるファン同士も最小限のケーブル接続で済ませられる。

iCUE LINKではファンの電源とLEDを一つのコネクタにまとめられている
ファン同士はケーブルなしの“専用コネクタ”で連結が可能。隣り合ったファンの間にケーブルがひらひら出る従来の2連/3連ファンとは見た目のスッキリさが段違い
デイジーチェーン対応なので、離れた場所にあるファン同士もiCUE LINKケーブルで直接接続できる。ケーブルのコネクタ部は、ストレート型とL字型がある

 ケーブル本数を減らせるのはケース内の配線をきれいに仕上げるうえで非常にありがたいのだが、これと同じくらい助かるのが“今までよりも抜き挿しが容易”なことだ。自作PCに関するケーブルとコネクタは、安全のための配慮もあるが、抜きにくく差しにくいものも少なくない。ケース内のスペースに限りがある場合、指やピンセットなどの工具も使いにくくて苦労する、なんてことも。iCUE LINKのケーブルやコネクタに関しては、「これは抜けちゃいそう」とか「外しにくくてコネクタかケーブルを痛めそう」という感触は少なく、“配線いじり”はストレスフリーに近い。

 PCケースに組み込んでからケーブルを這わせる場所などを簡単に調整できるのは、配線の美しさにこだわる人ほどうれしいはずだ。

最大14台のiCUE LINK対応デバイスを接続できる「iCUE LINK システムハブ」。幅52×奥行き52×高さ18mmとコンパクトだ

 そして「iCUE LINK システムハブ」では、最大14台のiCUE LINK対応デバイスを一括管理できる。簡易水冷クーラーやケースファンへの電源供給や回転数制御を担う存在で、iCUE LINKケーブルは2本まで。複数のファンを使う場合は、連結やデイジーチェーンを活用して、iCUE LINK システムハブへのケーブル接続は最小限にする必要がある。ケーブル接続をスッキリさせるためのシステムなので、当然と言えば当然だ。

iCUE LINKケーブル×2のほか、運用に必要なケーブル(電源、USB 2.0ピンヘッダ、ファンコネクタ)をすべて接続してみた。電源は6ピンのPCI Express補助電源を変換して使用。これで、3台のファン+CPUクーラー(3台のファンを搭載)をまとめて制御できる。従来のシステムの場合、ファンハブとLEDハブが別だったり、ケーブルだけで6本以上(しかもファン電源分岐ケーブルも使う)になったりと、とにかくごちゃごちゃしてしまう

 iCUE LINK システムハブを使うには、電源供給用にPCI Express用の6ピン電源接続が必要なほか、マザーボードに制御用のUSB 2.0ピンヘッダ、モニタリング用にファンコネクタの接続が必要となる。接続しているデバイスの制御はWindows用アプリの「iCUE」で行なう。

 ケーブルを整理する際には、長すぎる/短すぎるケーブルにも頭を悩まされがちだが、iCUE LINK システムハブには長さ60cmと10cmのiCUE LINKケーブルも付属していた。状況に応じて使い分けたい。

接続したデバイスの制御には、CORSAIRおなじみの管理アプリ「iCUE」で行なう。クーラー、ファン、LEDまで集中管理できる

iCUE LINK対応デバイス活用でケーブルスッキリ作例に挑戦

 ここからは、iCUE LINKを活かして自作PCをセットアップしていこう。

 まず、iCUE LINK対応デバイスからは、36cmクラス簡易水冷クーラーの「iCUE LINK H150i RGB」、12cm角ファンの「iCUE LINK QX120 RGB」を3基と「iCUE LINK システムハブ」をセットにした「iCUE LINK QX120 RGB スターターキット」、配線をよりしやすくするため片方がL字型で長さ20cmの「iCUE LINK Slim Cable 200mm」を使用した。

36cmクラス簡易水冷クーラーの「iCUE LINK H150i RGB」。こちらにも「iCUE LINK システムハブ」が付属している
ラジエータには二つのiCUE LINKコネクタを用意。一つはファン接続用、一つはiCUE LINK システムハブへの接続に使用する
水冷ヘッドから出ているものはチューブだけ。ほかのケーブル類はないのでCPUソケット周辺がスッキリしている
12cm角ファンの「iCUE LINK QX120 RGB」
ファンには温度センサーがあり、PCケース内の温度に合わせた細かな制御を可能にしている

 PCケースはiCUE LINKを使うならと、同じCORSAIRから「4000D Tempered Glass Black」を選択した。前面と背面に12cm角ファンを1基ずつ備えているが、今回はiCUE LINKを使うため、標準のファンはどちらも取り外すことにした。

ミドルタワー型でExtendedATX対応の「4000D Tempered Glass Black」。奥行、高さともに50cmを切る比較的コンパクトサイズながら、内部、裏面配線スペースともに十分作業がしやすいゆとりのある設計。大型マザーも組み込める使いやすいケースだ

CORSAIRと言えばやはり“ゲーミング”のイメージが強い。そこでそのほかのパーツはゲーミング性能重視で選択。CPUは「Ryzen 9 7950X3D」、ビデオカードは「Radeon RX 7900XT」、マザーボードはMSIの「MEG X670E ACE」と、AMDで固めてみた。

CPUは16コア32スレッドでゲーム向けに大容量キャッシュを搭載したAMDの「Ryzen 9 7950X3D」を選択
ビデオカードはRadeon RX 7900 XT搭載カードを使用。シンプルなデザインのリファレンス仕様モデルで、ASRockをはじめ各社から発売されている
マザーボードはMSIのX670Eチップセット搭載モデルの中でも上位に位置する「MEG X670E ACE」をチョイス

 メモリについては、iCUEアプリでLEDが制御できるように、同じCORSAIRから「VENGEANCE RGB DDR5 MEMORY FOR AMD(CMH32GX5M2B6000Z30K)」を選択。ストレージはCORSAIR「Force MP600 1TB」、電源は余裕を持って1000W出力のCORSAIR「RM1000e」を選んだ。

メモリはCORSAIRの「VENGEANCE RGB DDR5 MEMORY FOR AMD(CMH32GX5M2B6000Z30K)」。DDR5-6000対応で16GB×2枚のセットだ。上部にLEDを備える

内部のケーブルはかなりスッキリ

 各パーツを組み込んだ。簡易水冷のiCUE LINK H150i RGBは前面から吸気する形で設置、3基のiCUE LINK QX120 RGBは、天板に排気方向で2基、背面に同じく排気方向で1基設置した。ケースファンや簡易水冷クーラーのケーブルを直接マザーボードに接続する必要がないので、内部はかなりスッキリできる。

 iCUE LINK システムハブに二つあるiCUE LINKコネクタには、片方iCUE LINK H150i RGBと接続するケーブル、もう片方には3基つなげたiCUE LINK QX120 RGB(連結した2基を天面に、そこからデイジーチェーンして1基を背面にそれぞれ配置)と接続するケーブルを取り付けている。

組み上げたところおよび内部。ケースファンのコネクタ接続がなく、水冷ヘッド周りのケーブルもなくなったので、内部はスッキリさせやすい
L字型のiCUE LINKケーブルがあると、こういう場所でのデイジーチェーン接続がしやすくなる。かさばる分岐ケーブルをどうにか押し込んだり、ピンヘッダやハブまでケーブルを引き回したり、余ったケーブルをまとめて隠したり、という手間がなくなった
iCUE LINK システムハブは底面がマグネットになっているのでPCケースの裏面に貼り付けしやすい。ハブからクーラーやファンに延びるケーブルが減ったので後日のメンテナンスもかなり楽

iCUEアプリでファン回転数やライティングを一括制御

 iCUE LINKデバイスで固めると便利なのが、Windowsの「iCUE」アプリで水冷ヘッドやファンの回転数、ライティングの制御が一括で行なえることだ。Muralsという機能を使えば、iCUE対応デバイスのLEDをまとめて同じ色や発光パターンにできるため、統一感のあるPC周りの“雰囲気”を簡単にセットアップできる。

iCUEを使えば水冷ヘッドやファンの回転数を一気に設定できる
Muralsを利用すれば、対応デバイスのLEDをワンクリックで統一が可能だ
ライティングをカンタンに統一できるのが非常に便利。ただし、今回の構成ではマザーボード上のLEDだけはMSI Centerアプリによる制御が必要

 今回はメモリもCORSAIR製なので、iCUEでLEDの制御が可能ではあるが、基本的にはマザーボード制御になるため、今回の環境ではちょっと設定が必要だった。まず、マザーボードのLED制御であるMSI Centerアプリ内の「Mystic Light」の設定で「Mystic Lightは、システムの再起動後にサードパーティ製RGBソフトウェアを上書きします」をオフにする。

 次はiCUE上で、設定メニューにある「プラグイン」の中から、「MSI Plugins」をインストール。そしてソフトウェアとゲームのメニューにある「ソフトウェアのインテグレーションを有効にする」をオフにする。この一連の設定を行なうことで、メモリのLED発光の制御が可能になった。

メモリをiCUEで制御するには、まずMSIの統合管理ツールであるMSI Centerで「Mystic Light」の設定にある「Mystic Lightは、システムの再起動後にサードパーティ製RGBソフトウェアを上書きします」をオフに
iCUEの設定→プラグインにある「MSI Plugins」をインストール
同じくiCUEの設定→ソフトウェアとゲームにある「ソフトウェアのインテグレーションを有効にする」をオフにするでメモリが制御可能になる

 なお、iCUE対応のキーボードやマウスを使えば、それらもMuralsでライティングを統一できる。同じメーカーのデバイスをそろえることの強みが分かるシーンだ。

キーボードやマウスもiCUE対応にすればライティングの統一はよりしやすくなる
各パーツのLEDはアドレサブルRGB対応。対応機器のLEDをすべて連動させたアニメーション発光も可能

万能性の高い性能に

 組み立てたマシンの基本性能もチェックしておこう。PCMark 10のExtended、3DMarkのFire Strike、TimeSpy、Speedwayを実行した。

PCMark 10 Extendedの計測結果
3DMark―Fire Strikeの計測結果
3DMark―Time Spyの計測結果
3DMark―Speed Wayの計測結果

 総じて高スコアだ。クリエイティブな作業に対応できるだけのパワーがあり、3DMarkのスコアを見る限り、4K解像度でも多くのゲームを高画質で楽しめる。iCUE LINKによる“映え”だけではなく、全方位の処理に強い万能型のPCに仕上がった。

 iCUE LINKはケーブル配線もライティングも従来の自作PCより美しく仕上げられる実に頼もしい新システムだ。こだわりが強い人ほど、その利便性は魅力的に映るはず。ケーブルマネジメントは、まだまだ進化がありそうだ。

スポットライトで照らしている部分がiCUE LINK システムハブ。ハブ周辺のケーブルはこれまでのシステムよりはるかに整理しやすい。難点はマザーボードや各種パーツに接続されるケーブル類(とくに太い電源関連)で、ここは今も変わらずの状態。なんとかきれいにまとめようと試みたが……将来的にはここもスッキリしてほしいところ