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パワーアップしたCoreプロセッサー(第14世代)の性能を最大限引き出せる新ゲーミングマザー! ASRock「Z790 NOVA WiFi」

最新Core i9-14900Kをガッツリ回せる22フェーズ電源回路搭載 text by 芹澤 正芳

 2023年10月17日、Raptor Lake RefreshことIntel Coreプロセッサー(第14世代)が発売された。今回は新たなチップセットは登場せず、Intel 700/600シリーズが引き続き対応環境となる。最上位のCore i9-14900Kはコア数こそ24コア32スレッドと前世代のCore i9-13900Kと同じだが、最大クロックは5.8GHzから6GHzにアップ。その性能を最大限引き出すために、各社から強力な電源回路を搭載した“リフレッシュ版”とも言えるZ790チップセット搭載マザーボードが登場している。

 ここで紹介するASRockの「Z790 NOVA WiFi」もその一つ。同社のゲーミングマザー“Phantom Gaming”に属するモデルで、大規模な電源回路に加え、高い拡張性、充実のゲーム向け機能を備えている。ここでは、それらスペック解説に加え、Core i9-14900Kをパワーリミット無制限および定格のMTP 253Wで動作させたときの消費電力や電源回路(VRM)の温度、動作クロックなどを交えたレビューをお届けする。

ASRockのZ790チップセット搭載マザーボード「Z790 NOVA WiFi」

6GHz動作も安心の20+1+1フェーズ電源回路

 ARockの“Phantom Gaming(PG)”シリーズには、“Riptide”や“Lightning”などの名称を持つバリエーションがあるが、今回新たに“フラグシップゲーミング”という位置付けで加わったのが“NOVA”を冠する本製品、「Z790 NOVA WiFi」だ。Phantom Gamingの新たな最上位モデルにふさわしく、電源回路は20+1+1フェーズと90A SPSの組み合わせという大規模なもの。最大6GHz動作になるCore i9-14900Kをパワーリミット無制限で運用することも意識した設計で、同社既存製品でPhantom Gamingよりも上位にあたる「Z790 Taichi」(24+1+2フェーズ)に迫る。

 コンデンサにもASRockでは初という高耐久の「20K Long Lasting Power Caps」を採用。さらに電源回路のヒートシンクには冷却ファンも内蔵と熱対策も万全となっている。動作音を増やすことになるファンの搭載は好みが分かれるところだが、Core i9-14900Kなど上位CPUを高負荷で長時間動かすと電源回路はどうしても熱くなる。ハイエンド構成で自作する場合ほど、電源回路にファンがあったほうが安心なのは確かだ。

90A SPSを組み合わせた20+1+1フェーズの強力な電源回路を備える
電源回路の冷却にはファンを搭載するヒートパイプ内蔵の大型ヒートシンクを採用。高負荷な状況が連続しても安心と言える

 PCI Express x16スロットは2基あるが、CPUに近い方がGen 5対応でx16動作。もう1基はGen 4対応でx4動作になる。どちらも強化スチール仕様だ。Gen 3のx1スロットも1基用意されている。

2基あるx16スロットはどちらも強化スチール仕様。CPUに近いほうがGen 5対応だ

 注目はM.2スロットが6基もあること。SSDを複数搭載してゲームをガッツリとインストールしたり、動画編集で大きなファイルを扱ったりする人にとってはうれしい仕様だろう。CPU直結がGen 5とGen 4の2スロット。残りは6スロットはチップセット経由でGen 4対応だ。

 すべてのスロットにヒートシンクが搭載されており、熱対策も盤石と言える。スロットに装着したSSDをフックを回転させるだけで固定できるのも便利だ。さらに、Gen 5スロットのヒートシンクはワンタッチで取り外しが行える(そのほかのヒートシンクはネジ止め)。

 CPUに一番近いGen 5対応のM.2スロットに取り付けたシーケンシャルリード7,000MB/sクラスのM.2 SSDに対して、ヒートシンクを接続した状態で10分間連続で書き込みを行う高負荷なテストを行なったが、コントローラの温度は最大で65℃、NANDは57℃とまったく問題のない温度だった。980 PROは比較的発熱の大きいSSDであることを考えると、十分な冷却力があると言える。

M.2スロットは6基も用意されている。すべてヒートシンク搭載だ
Gen 5のM.2スロットはヒートシンクがワンタッチで外せる作りになっている

 メモリはDDR5対応で、スロットは4本で強化仕様だ。DDR5-7800までサポートで最大192GBまで搭載が可能となっている。

対応メモリはDDR5でスロットは金属を使った強化仕様となっている

 インターフェースも見てみよう。バックパネルのUSBは、USB 3.2 Gen 2x2(Type-C)が1ポート、USB 3.2 Gen 2(Type-C)が1ポート、USB 3.2 Gen 2が4ポート、USB 3.0が3ポート、USB 2.0が2ポートだ。このうち2ポートが電源を安定供給するUltra USB Power仕様、2ポートがマウスやキーボードを低ジッター・低レイテンシーで接続できるLightning Gaming仕様となっているのが、ゲーミングマザーらしいところだ。

 内蔵GPU用の映像出力としてDisplayPortとHDMIが用意されている。PCケースのUSBポート用として、USBピンヘッダで、USB 3.2 Gen 2x2 Type-Cが1ポート分、USB 3.0が4ポート分、USB 2.0が4ポート分が用意されている。ネットワーク機能は、有線LANがKiller E3100Gによる2.5G LAN、無線LANはWi-Fi 7(IEEE802.11be)対応だ。Bluetooth 5.4もサポートする。

紫のポートが電源供給を安定させるUltra USB Power仕様、オレンジのポートがマウスやキーボードを低ジッター・低レイテンシーで接続できる“Lightning Gaming”仕様だ
オーディオコーデックは7.1チャンネル対応の「Realtek ALC4082」。バックパネルにはS/P DIF出力も搭載している
基板裏面には剛性を高めるバックパネルが装着されている
ASRcokではおなじみとなりつつあるビデオカード固定用のホルダーも付属する
VRMヒートシンク部分、マザーボード下側のM.2ヒートシンク下にLEDを内蔵。下側は複数のLEDがあるが、M.2 ヒートシンクとの組み合わせにより間接照明的に発光演出を楽しめる

新世代CPU、Core i9-14900Kとの組み合わせでブン回してみた!

 それではここからは、Core i9-14900Kと組み合わせて実際に動かしてみよう。まずは、UEFIメニューや動作中の温度、クロック、消費電力などをチェックから。検証環境は以下のとおりだ。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-14900K(24コア32スレッド)
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
システムSSDM.2 NVMe SSD 1TB(PCI Express 4.0 x4)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 4090 Founders Edition
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
電源1,200W(80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro(22H2)
今回のマザーボードのテストに使用したCoreプロセッサー(第14世代)の最上位、Core i9-14900K。コア数はPコア×8基+Eコア×16基、スレッド数は32。物理形状は引き続きLGA1700

 UEFIによるCPUのパワーリミット設定は、基本CPUクーラーのタイプで決まる。ここではCore i9-14900Kを取り付けた場合となるが、選択肢は4種類あり、「360~420mm Liquid Cooler」では無制限、「240~280mm Liquid Cooler」ではPL1が253W、「120~140mm Liquid Cooler」ではPL1が180W、「Air Cooling」ではPL1が125Wに設定される。PL2はいずれも無制限と言える4,095W設定だ。PL2は時間制限付きの電力リミットなので、瞬間的にはどの設定でもパワーリミット無制限で動作することになる。PL1、PL2のリミットは手動でも設定が可能だ。

UEFIによるCPUのパワーリミットはCPUクーラーの設定によって変化する
パワーリミットはLong Duration Power Limit(PL1)とShort Long Duration Power Limit(PL2)の項目で手動設定が可能だ

 また、本機には新機能として「CPU Indicator」が追加され、UEFIに「CPU Quality」という項目が追加されている。これは“CPUの余力”を評価したスコアで、この数値が大きいほど手動でのオーバークロック設定時にスコアが伸びる可能性があることを示していると言う。オーバークロック耐性は使用するCPUの個体差によるところも大きい。この機能を手元のCPUの評価に活かしてみるのもいいだろう。なお、いつものお約束だが、実際のオーバークロックへの挑戦は自己責任のもとで行なっていただきたい。

UEFIのEZ Modeトップページに追加されたCPU Indicatorによるスコア評価「CPU Quality」
OC Tweaker内の「CPU Indicator」詳細画面。各Coreの詳しい評価が確認できる

 また、DDR5メモリのOC設定として、IntelのOCメモリ規格「XMP」とAMDのOCメモリ規格「EXPO」の両方に対応。今回のテストにはXMP/EXPO両対応のメモリモジュールを使用したが、どちらのプロファイルも読み込みが可能だった。またDDR5-7400の高クロックメモリまで対応しており、筆者が手持ちのDDR5-7200メモリを試しに取り付けたが問題なく認識、Windowsも動作した。

メモリOC用のXMP、EXPOどちらのプロファイルの読み込める
DDR5-7400まで対応としている。DDR5-7200メモリで問題なく動作することは確認できた

 ASRockおなじみの自動ドライバインストール機能の「Auto Driver Instraller」も搭載されている。OSインストール後、ネットワークに接続すれば必要なドライバ類を自動でインストールしてくれる便利な機能だ。

OSインストール後、ネットワークに接続すると自動的に「Auto Driver Instraller」が起動する
必要なドライバ類を自動的にダウンロードして導入してくれる

 いよいよCore i9-14900Kの挙動をチェックしてみる。パワーリミットは無制限(360~420mm Liquid Cooler設定)と定格253W(PL1、PL2とも手動で設定)の2種類でテスト。DDR5はXMPプロファイルを読み込んでDDR5-5600駆動とし、簡易水冷のファン設定はiCUEアプリで「安定」とした。

 まずは「CINEBENCH 2024」のMulti Coreテスト、「サイバーパンク2077」(フルHD、画質“レイトレーシング:ウルトラ”、DLSS“バランス”)をそれぞれ10分間実行し、CPU温度、VRM(電源回路)温度、Pコアの実行クロック、CPUの消費電力の目安となるCPU Package Powerおよびシステム全体の消費電力チェックする。

 VRM温度に関しては、付属の物理的な温度センサーをVRMとヒートシンクの間に設置している。Z790 NOVA WiFiは物理的な温度センサーを3つまで取り付けられるのも特徴。VRM以外にもマザーボードやPCケースの好きな箇所の温度を測定できる。温度推移が気になる人にとってはうれしい機能だ。

物理的な温度センサーを付属しており、最大3つまで取り付けられる。温度はUEFIやHWiNFOなどで確認可能だ

 それぞれの確認にはハードウェア情報を表示できるアプリ「HWiNFO Pro」を使用し、CPU温度は「CPU Package」、VRM温度は「Auxiliary」、Pコアの実行クロックは「P-core 0 T0 Effective Clock」、CPU Package Powerは同じ名称の「CPU Package Power」という項目を追った結果だ。システム全体の消費電力はラトックシステムの電力計「REX-BTWATTCH1」を使用している。

 室温は22℃。システム全体の消費電力以外は、参考として前世代の上位モデル「Core i9-13900K」のパワーリミット無制限でCINEBENCH 2024実行時の値も入れている。14900Kとのクロックなど挙動の違いにも注目してほしい。

CPU温度の推移
VRM温度の推移

 CINEBENCH 2024はCPUの全コアに負荷をかける強烈なベンチマークだ。CPU温度はパワーリミット無制限では、36cmクラスの簡易水冷クーラーを持ってしてもCPUが許容できる最大値の100℃にすぐ到達してしまうが、これは14900K、13900Kとも同じ動きだ。定格の253Wに設定した場合は、最大95℃、おおむね85℃前後で推移し、無制限設定時よりもだいぶ余裕が生まれる。サイバーパンク2077はゲームとしては高負荷だが、全コアに負荷がかかるほどではないので、パワーリミットに関係なく78℃前後での推移となる。

 VRMの温度は大型ヒートシンクに加えてファンも搭載されているため最大でも45℃と低めの推移となった。CPU負荷が大きいはずのCINEBENCH 2024よりもサイバーパンク2077のほうがVRM温度が高いのはビデオカードから出る熱の影響を受けているためと考えられる。CINEBENCH 2024はビデオカードを使わないベンチマークだからだ。ハイエンドのビデオカードを使ってのゲームプレイでは、よりVRMの放熱は重要になると言ってよいだろう。

Pコア(P-core 0)の実行クロックの推移

 Pコアの実行クロックを見ていこう。CINEBENCH 2024はパワーリミット無制限では、約5.5GHzで推移、253Wでは約5.3GHzで推移となった。14900Kの253Wと13900Kのパワーリミット無制限がほぼ同クロックで推移しているのがおもしろい。14900Kは13900Kよりも最大クロックが200MHz底上げされているが、それがそのまま動作クロックの推移として現れている。この部分だけでも、Z790 NOVA WiFiがキッチリ14900Kの性能を引き出せていると見てよいだろう。サイバーパンク2077は負荷がかかるシーンでもCPU使用率は100%にはならず、2.3GHz~3.9GHzの間で推移した。

CPU Package Powerの推移
システム全体の消費電力

 CPU Package PowerはCPUの消費電力の目安だ。CINEBENCH 2024のパワーリミット無制限では定格の253Wと大きく超えて、318W前後で推移した。13900Kは290W前後で推移だ。定格の253Wでは、ほぼ253Wで推移と設定通りの挙動となった。設定したリミットで超安定して動作するのは強力な電源回路があってこそだろう。サイバーパンク2077はパワーリミットに関係なく195Wでの推移となった。

パワーリミット無制限と定格の253W設定で性能をチェック

 ここからは、ベンチマークで性能をチェックしよう。温度やクロックのテストと同じく、パワーリミットは無制限と定格253Wの2種類でテストする。

 まずはCPUパワーを測る「CINEBENCH 2024」から。このテストだけは参考までにCore i9-13900K(パワーリミット無制限)も加えている。

CINEBENCH 2024の計測結果

 動作クロックが高くなるパワーリミット無制限がトップスコアではあるが、253W設定と1%程度しか変わらない。13900Kとも1.5%ほどの差。CINEBENCH 2024でクロック200MHzの差だと、この程度しかスコアが変わらないということだろう。

 続いて、PCの基本性能を測る「PCMark 10」、3D性能を測る「3DMark」を実行する。

PCMark 10の計測結果
3DMarkの計測結果

 PCMark 10は総合スコアで約1.2%の差だ。確かにパワーリミット無制限のほうがスコアはよいが消費電力も発熱も大きくなる。ワットパフォーマンスという視点で見れば、253W動作のほうが上と言えるだろう。3DMarkはビデオカードの依存度が高いテストなので、それほど差は付かない。唯一、Fire StrikeははCPUの計算力を見るPhysics testが含まれているので、差が出ているがそれでも約5%の違いだ。

 続いて実ゲームの性能もテストしておこう。人気のFPS「レインボーシックス シージ」、ステルスアクションの最新作「アサシン クリード ミラージュ」、重量級の代表と言えるRPGの「サイバーパンク2077」を用意した。それぞれゲーム内のベンチマーク機能でフレームレートを計測している。

レインボーシックス シージの計測結果
アサシン クリード ミラージュの計測結果
サイバーパンク2077の計測結果

 ゲームに関しては、パワーリミット無制限と253Wでほぼ差が出ていない。ゲームはCore i9-14900Kの24コア32スレッドを使い切るような場面がほとんどないためだ。それに、Z790 NOVA WiFiは253W設定できっちり253W分の性能を引き出して安定動作するという点でも、パワーリミット無制限と差が出にくくなっている。

14900Kの性能を十分に引き出せる“頼りになる安定感”が魅力

 従来のPGシリーズマザーボードを上回る強力な電源回路を備えつつも、VRMヒートシンクにファンも装着されるなど、Core i9-14900をフルパワーで稼働させても電源部分は温度が低く安定動作する点で“安定感”に優れ、テスト結果でもその安定感は十分に証明できている。ゲーミングマザーボードのシリーズに属する製品だが、クリエイティブ用途でも安心して長時間使えるだろう。新たに“フラグシップゲーミング”グレードとしてシリーズに加わったこのZ790 NOVA WiFiは、ハイエンド志向のゲーマーのとってよい相棒となってくるマザーボードだ。