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空冷クーラーでもCore i9 14900Kは大丈夫?CORSAIRの高性能モデル「A115」でどこまでいけるのか試してみた

140mmファン×2基搭載のツインタワー型ハイエンドモデル text by 坂本はじめ

CORSAIR A115

 2024年2月、CORSAIRの新作CPUクーラー「A115」が発売された。140mmファンとツインタワー型の大型ヒートシンクを採用するA115は、最近のCORSAIRブランドでは珍しい空冷式のハイエンドCPUクーラーだ。

 CORSAIRブランドでリリースされた最新鋭ハイエンド空冷CPUクーラーは、果たしてどのような製品に仕上がっているのか。2024年2月時点でもっとも冷却が難しいCPUのひとつである「Core i9-14900K」でのテストを通して、その実力をチェックしてみた。

CORSAIRの新作CPUクーラー「A115」TDP 270W対応をうたう最新鋭のハイエンド空冷モデル

 CORSAIR A115は、140mmファンを2基搭載するツインタワー型の空冷CPUクーラー。6本のヒートパイプを搭載する大型のヒートシンクを採用しており、最大で270WのTDPに対応するとしている。

2基の140mmファンを標準搭載するCORSAIR A115
本体はリテンション部分を除きほとんどのパーツが黒で構成されている
6mm径ヒートパイプを6本搭載
ツインタワー型の大型ヒートシンクを採用
ヒートシンクのカラーはマットブラック

 対応CPUソケットは「Intel LGA1700/1200/115x」および「AMD Socket AM5/AM4」で、2024年時点の主要なデスクトップ向けプラットフォームをサポート。

 A115が標準で2基搭載している冷却ファンは、CORSAIRブランドの140mmファン「AF140 ELITE」。PWM制御に対応しており、ファンスピードを400~1,600rpmの範囲で可変。その他のスペックは、風量15.3~84.5CFM、静圧0.1~1.73mm-H2O、ノイズレベル5~33.9dBA。マザーボードとの接続用として、4ピンFANコネクタの2分岐ケーブルが同梱されている。

A115のリテンションキット。Intel LGA1700/1200/115xとAMD Socket AM5/AM4をサポートする
140mmファン「AF140 ELITE」は、4ピンFANコネクタを採用でPWM制御に対応する

 CPUと接するベース面には、最新のCPU向けに最適化したと言う「凸型銅製冷却プレート」を採用。出荷時のベース面にはCORSAIRブランドの高性能サーマルグリス「XTM70」を塗布。「XTM70」は、TDP 250W以上のCPUにも対応をうたう非伝導性のグリスで、高い熱伝達性と合わせ乾燥やひび割れにも強い点がメリットとしてあげられている。

同社の「XTM70」が塗布された出荷時のベース面
最新CPUに最適化したという凸面銅製冷却プレートを採用

スライドロック式のファンマウントシステムを採用メモリの高さに応じてファン搭載位置を調整可能

 CORSAIR A115は、独自のスライドロック式ファンマウントシステムを採用。これにより、140mmファンをヒートシンク上部から挿しこむ形で簡単に取り付けられるほか、メモリや周辺パーツの高さに合わせてファン搭載位置の調整が可能だ。

スライドロック式のファンマウントシステムを採用
冷却ファンの搭載位置を任意で調整可能
A115専用のファンレールセット
レールセットを取り付けたファンをヒートシンク上部から差し込む形でマウントする

 ファンの搭載位置を上側にずらす場合、CPUクーラーの高さも増すため組み合わせるPCケースの搭載能力による制限を受けるが、A115はもっとも低い位置にファンをマウントした状態での高さが164.8mmと、140mmファン搭載クーラーとしては比較的低く抑えられているため、大きめのタワーケースであればファンを上側にずらした状態で搭載できるケースも少なくないだろう。

 また、A115はヒートシンク中央と前方だけでなく後方にもファンをマウントできる。同梱されているレールセットはファン2基分なので3基のファンを同時に搭載は出来ないが、前方にファンを搭載できない場合には、ヒートシンク後方側にファンを取り付けるという選択が可能だ。

A115は前方と中央のほか、後方にもファンをマウントできる
ユーザーが好みの配置にファンを搭載可能だ。

Core i9の性能は十分引出せる「CORSAIR A115」の冷却能力Core i9-14900Kの電力リミット「無制限」と定格の「253W」でテスト

 ここからは、CORSAIR最新の空冷CPUクーラーであるA115の冷却性能をテストする。

 今回は、Intel最新の24コア/32スレッドCPU「Core i9-14900K」を搭載したIntel Z790環境を用意。電力指標のMTPが253Wに設定されているCore i9-14900Kで、電力リミットを253Wに設定した場合と無制限に開放した場合で、A115がCPUをどこまで冷やせるのか確かめてみよう。

 テスト実行時の室温は約25℃で、テストに使用した機材は以下の通り。

Cinebench 2024「CPU (Multi Core)」での冷却性能テスト

 まずは、3DCGレンダリング性能を計測するベンチマークテスト「Cinebench 2024」で「CPU (Multi Core)」を実行。Core i9-14900Kが備える全てのコアに高負荷をかけたさいのモニタリングデータから、A115の冷却性能を確認してみた。

Cinebench 2024

 計測したモニタリングデータを確認してみると、CPU温度は電力リミット「無制限」で平均98.4℃(最大105℃)、253W設定では平均86.6℃(最大97℃)を記録。このとき、CPUの発熱量とも言える消費電力は無制限設定で平均305.9W(最大353W)、253W設定で平均252.8W(最大287W)だった。

 無制限設定では温度リミット、253W設定では電力リミットにより、それぞれスロットリングが作動した結果、CPUの平均クロックは無制限設定で「Pコア5,476MHz/Eコア4,340MHz」、253W設定では「Pコア5,426MHz/Eコア4,266MHz」となっている。なお、A115のファンスピードは最大の約1,600rpmとなっており、A115が最大限の冷却性能を発揮した結果であることが分かる。

電力リミット「無制限」のモニタリングデータ
電力リミット「253W」のモニタリングデータ

 Cinebench 2024のベンチマークスコア自体は、電力リミット無制限で「2,104」、253W設定で「2,094」となっており、電力リミット設定の違いによってCPUから引き出せた性能自体に大差はないもいのの、これは少し絞ると電力効率が劇的に改善するというCPUの特性によるところが大きい。

 Cinebench 2024でのテスト結果で注目したいのは、冷却が難しいCPUのひとつであるCore i9-14900Kに搭載したA115が、253W設定であれば電力リミット一杯まで性能を引き出しつつも100℃を大きく下回る温度での動作を実現できたことと、電力リミット無制限であれば平均CPU消費電力が305.9Wに達するところまでブースト動作を実現できていることだ。

 A115は最大でTDP 270Wに対応するとうたっているが、270Wという数値が大げさではないと言えるほど優秀な冷却性能を備えている。

サイバーパンク2077での冷却性能テスト

 GPUだけでなくCPUへの負荷も高いことで知られる「サイバーパンク2077」でも、A115の冷却性能をテストしてみた。

 今回は、グラフィックプリセット「レイトレーシング:ウルトラ」をベースに、DLSS超解像を「クオリティ」、DLSSフレーム生成を有効に設定。画面解像度「フルHD/1080p(1,920×1,080ドット)」で30分間連続プレイした際のモニタリングデータを計測した。

 なお、ここではCPU消費電力が概ね253W以下にとどまることから、電力リミット「無制限」でのみテストを実行している。

サイバーパンク2077
30分間連続でゲームをプレイした際のCPU温度のモニタリングを行った

 ゲーム実行中のCPU温度は平均80.5℃(最大91℃)で、CPU消費電力は平均204.9W(最大255W)を記録。

 A115のファンスピードは終始最大の1,600rpmとなっているが、サーマルスロットリングの作動しないCPU温度に抑え込んだことで、CPUクロックはPコア5,700MHz、Eコア4,400MHzという全コア稼働時の最大ブーストクロックを維持している。

 画面解像度をフルHDに抑えることで、CPU負荷が厳しくなる高フレームレート(平均185fps程度)を意図的に作り出したこのテストだが、A115の冷却性能は平均200Wを超える電力を消費しながら最大ブーストするCore i9-14900Kを見事に冷やし切ってみせた。

Core i9-14900Kの性能を引き出せるハイエンド空冷クーラー「CORSAIR A115」

 CORSAIR A115は、CORSAIRが作り上げた最新鋭のハイエンド空冷CPUクーラーらしく、Core i9-14900Kから高いパフォーマンスを引き出せるほど優れた冷却性能を備えていた。

 A115の販売価格は税込み15,580円前後。空冷CPUクーラーとしてはなかなか高価な製品ではあるが、優秀な冷却性能やユニークなファンマウントシステムには価格相応の価値を見いだせるものだ。

 大型のヒートシンクを採用しているため、物理的に搭載できるか否かを事前に確かめておく必要はあるが、空冷CPUクーラーで高い冷却性能を求めるユーザーにとっては面白い選択肢となるだろう。