トピック

ラピトリ/SOCD対応のゲーミングキーボードでより高速な操作が可能に、「CORSAIR K70 PRO TKL」を試す

テンキーレス/MGX Hyperdrive磁気スイッチ採用の高性能モデル text by 白倉甲一

CORSAIR K70 PRO TKL(CH-911921G-JP)

 様々な機能が開発され進化してきたゲーミングキーボード。昨年は「ラピッドトリガー」が注目されたが、今年は「SOCD(Simultaneous Opposing Cardinal Directions)」が話題になっている。

 「SOCD」は、左右や上下といった相反された入力が検出された状態のことで、これを上手くかつ高速に処理できる機能を搭載したキーボードが複数社から登場している。WASDキーを使って移動入力を行う際に、方向転換などの動作が従来より素早く行えるため、一時はチート機能なのではと話題になったこともあった。

 今回紹介するCORSAIRの「K70 PRO TKL」は、同社が「FlashTap」と呼ぶ「SOCD」に関する処理に対応した機能を備える新型テンキーレスゲーミングキーボード。本体の仕様やデザインと合わせ、ゲームにおける「FlashTap」機能の有効性など使用感も見ていこう。

ラピッドトリガーとFlashTapはどんな機能?ゲームプレイ時により高速な操作が可能に

 キーボード本体の紹介の前に、ゲーミングキーボードで注目されることの多い「ラピッドトリガー」と、「SOCD」に対応するCORSAIRの機能「FlashTap」を確認しておこう。今回紹介するK70 PRO TKLには、「ラピッドトリガー」と「FlashTap」の両方の機能が搭載されている。

キャラクター操作がより高速に行えるラピッドトリガー機能

 「ラピッドトリガー」機能は、磁気式や光学式のメカニカルキースイッチの特性を生かしたもの。磁気式や光学式のスイッチは、接点に接したか接していないかといった2段階の反応ではなく、キーを押し込んだ際の変化量を基準にON/OFFを制御している。これを活用することで、押し込む際は0.4mmで反応、0.1mm戻せばキーを離した状態になるといったようなことができる。

 キーを離した状態として認識されるリセットポイントを適切に設定すれば、同じキーを再度押す際に、完全にキーを離さなくても少し戻して押し込めばそのまま入力を受け付けてくれる。WASDキーで移動を操作するゲームなどでは、通常のキーボードよりも理論上高速に操作可能になる場面があり、その分有利だと言える。

「ラピッドトリガー」対応のキースイッチは、指を少しでも戻した時点でキー入力がリセットされる設定にできる。決まった位置までキーが戻らないとキー入力がリセットされない通常のメカニカルスイッチとはこの部分が大きく異なる。同じキーを2度押す場面などではより高速な入力が可能になる。
スイッチが反応するストローク量は0.1~1.0mmの間で設定可能。入力判定となるアクチュエーションポイントと、キーを離したと認識されるリセットポイントは個別に設定できる。なお、「ラピッドトリガー」使用時は二次動作ポイントは設定不可となる。

素早い切り返し操作を可能にするFlashTap機能

 「FlashTap」機能は、上下左右といった相反する入力が同時に行われた際の「SOCD」と呼ばれる状況下でより素早い操作を可能にする機能だ。

 ゲームによって判定が異なる部分もあるが、FPS系ゲームなどで左右移動時にA/Dキーを同時押した状態になると、静止状態となる場合が多い。相反する機能が割り振られたキーが同時に押されている間は相殺状態になる。場合によっては一瞬棒立ちになってしまうこともあり、意識的にA/Dキーなどは同時押しを避ける必要がある。

 「FlashTap」機能を使用した場合には、最後に押した方のキーを優先して反映するといった挙動になる。左から右へ移動する際、Aキーを押したままでもDキーの入力が可能になるので、その分高速な入力が可能になる。敵の銃弾を左右動いてかわす際など、素早く反復動作をする時には特に効果が期待できる機能だ。

「FlashTap」機能を有効にすると、ゲームで左右に移動する時にA/Dキーが同時押し状態になった際、入力が相殺されずに最後に押していた方のキー入力が有効となる。右から左といった切り返しの動作がより早く行える。
Fn+右Shiftを同時押しする事でFlashTap機能のON/OFFが切り替えられる。キーバックライトの状況でON/OFFが確認できる。

 なお、この記事を作成した時点では「FlashTap」機能を利用するには、最新ファームウェアにアップデートする必要があった。購入時に「FlashTap」機能が利用できない場合は、ユーティリティの「iCUE」を使ってアップデートを行おう。

ファームウェアはユーティリティの「iCUE」から更新可能。
ダイアログに従って進めるだけなので、更新は簡単。

ラピトリ/SOCDサポートに磁気スイッチ採用の最新テンキーレスキーボード使い心地の良いパームレストも付属

 それでは「K70 PRO TKL」の外観や基本仕様から見ていこう。テンキーレス仕様のモデルで、本体サイズは約366×135×40(幅×奥行き×高さ)mm、本体重量は約967g。付属のケーブルは1.8mで、キーボード側のUSB端子はUSB Type-C。

 ダイヤルや設定変更用の追加ボタンなどを盛り込みつつも、インジケーターランプなどの位置を工夫する事で使い勝手を損なわず本体サイズを必要最小限に抑えた設計になっている。ラピッドトリガーやSOCDなどに対応する機能も備えた最新仕様のモデルだ。

4つ角が丸みがかかっていて堅苦しくないフレームレスデザイン。
背面。4隅に滑り止め、上部2つの滑り止めはチルトスタンドも兼ねている。
今回レビューしている型番CH-911921G-JPのモデルは、日本語配列/かな無し仕様。
本体の右上部分にはゲームモード切替、機能追加用のマルチキー、メディアコントロール用のダイヤルが搭載されている。ダイヤルは複数の機能を登録可能で、FN+F12キーを押すことで機能を切り替えて使える。
インジケーターランプはESCキーの隣の余白にあり、スペースを有効活用したデザインになっている。
ケーブルは着脱式で、コネクタ形状はUSB Type-C。1.8mのケーブルが付属している。

 カラーは2種類あり、今回のレビューで使用しているのホワイト/日本語配列(CH-911921G-JP)のほかに、カラーバリエーションとしてブラック(CH-911911G-JP)も販売されている。ホワイトモデルは、キーキャップや外周部分のフレームは白色、アルミ製のトッププレートはヘアライン加工された銀色となっている。

 本体背面にはチルトスタンドを備え、傾斜をつけて使用することが可能。ホワイトの筐体にマッチするグレーのパームレストも付属しており、長時間使用時の負担軽減も考慮されている。クッション性のある素材で使い心地もなかなか良く、マグネット固定式なので使用時にずれにくい。

チルトスタンドを閉じた状態。この状態でも多少の傾斜がありそのままでも打ちやすい。
チルトスタンド使用時。程よい角度の傾斜になる。
付属のパームレスト、エンボス加工の施されたクッション性のある素材でできている。
キーボード本体のカラーにマッチするグレーをベースにしたカラーリング。
キーボード本体とはマグネットでくっつくので、使用時に簡単にずれてしまうようなことはない。
使い心地も好印象。長時間の使用する際などには手首への負担を軽減してくれるだろう。

 キースイッチには「MGX Hyperdrive 磁気スイッチ」を採用。1億5000万打鍵の高耐久性があり、リニアストロークタイプで打感のグラつきが少なく精確かつ高速な入力を実現。CORSAIR独自の「CORSAIR AXON(アクシオン)」技術により、最大で8,000Hzの超高速ポーリングレートにも対応。遅延の無さと入力の高速性がアピールされている。

 キー入力に関連した機能も豊富。0.1~4.0mmの範囲でアクチュエーションポイントも調整可能で、好みの感触にカスタマイズできる。前述した「ラピッドトリガー」や「FlashTap」などの機能も備えている。

MGX Hyperdrive 磁気スイッチを採用。
リニアストロークタイプで、高い耐久性と精確かつ高速な入力が可能。RGBイルミネーション搭載で好みのカラーに変更可能。
RGB LEDのキーバックライトを搭載、視認性もなかなか良い印象。
バックライトのカラーや発光パターンは、ユーティリティソフトの「iCUE」上から自由にカスタマイズ可能。

 「ラピッドトリガー」機能はオフになるが、ユーティリティソフトの「iCUE」を利用してキー入力に二次動作ポイントを設定することもできる。ゲームコントローラーのアナログスティックのように、浅い位置ではゆっくり移動、深い位置まで押し込むと走り出すというような、ユニークな使い方も可能だ。

アクチュエーションポイントは0.1~4.0mmで好みの高さに調節可能。
ある程度の深さまで押し込むと別の動作に切り替える設定もでき、それぞれでリセットポイントも設定できる。

高速入力でキャラコントロールがより快適に!FlashTapは特にスピード感のあるタイトルで活躍

 ラピッドトリガーや可変アクチュエーションポイントがFPS系タイトルで有効なのはもちろん、K70 PRO TKLに搭載された「FlashTap」はゲームにおいてどれほどの性能を発揮するか、実際に「VALORANT」と「Apex Legends」の2タイトルをプレイして試していこう。

「VALORANT」は基本操作はしやすいものの、操作方法によるFlashTapとの相性には注意

「FlashTap」機能の恩恵もあってピーク操作も安定して行えた。ただし、「FlashTap」機能は逆方向キーを入力してストッピングを行っているユーザーは注意が必要。
ラピッドトリガー対応なので、細やかなキー入力を高速かつ確実に行える。

 まずは「VALORANT」からだが、移動中に射撃を行うと銃弾がばらけてしまうので、銃を撃つ際には移動をやめ、一瞬静止状態になって敵を狙う必要がある。いわゆるストッピング技術が重要なタイトルだ。

 ストッピングを行うにはキーから完全に手を離すやり方と、移動している方向と逆方向を同時押しする事で静止状態に移行するというテクニックがある。「FlashTap」機能は逆方向の入力をしてもストッピングせず移動してしまうため、後者のやり方を行う場合には相性が良くない。

 守りのシーンや敵がどこにいるのかわからないときに重要な、壁から一瞬身を乗り出すといったいわゆるピーク動作には「FlashTap」機能がかなり有効で、左右の移動の切り返しが素早く行える。有効な場面があるだけに、ストッピングを逆方向キーの同時入力で行っているユーザーには悩ましく、評価が割れる部分だろう。

 なお、基本操作に関しては「ラピッドトリガー」対応機らしい高速かつ細やかなキー入力が可能で、操作はしやすい印象だった。

FlashTapが最大に活用できる「Apex Legends」、SOCD対策機能のあるキーボードとの相性は◎

「Apex Legends」は、「ラピッドトリガー」や「FlashTap」の機能と相性が良い。
銃弾を避けつつ攻撃する際など、切り返し動作を行う場面は「FlashTap」機能の恩恵が受けられるシーンだ。

 次に「Apex Legends」だが、このゲームではストッピングの操作は必要なく、スピーディーに動き回るアクション要素が強めのFPSゲームだ。一瞬でも早く動き出したいシーンが多いので、「FlashTap」機能の恩恵を大きく受けられるはず。

 実際に「FlashTap」機能を有効にしてプレイしてみると、思った通り「Apex Legends」とは相性が良い。「レレレ撃ち」と言われるような、左右に細かく動きながら敵の弾を避けつつ銃撃するシーンでは、反転動作が行いやすい「FlashTap」機能や、繊細なキー操作に最適な「ラピッドトリガー」機能の高速入力性がガッチリはまる。

 「FlashTap」機能はゲームタイトルや場面によって合う合わないはあるものの、有効に使えた際の効果は大きい。Fn+右Shiftキーを押せば、ゲーム中でも即座に「FlashTap」機能のON/OFFを切り替えられるので、ゲームタイトルや自分のプレイスタイルに合わせ選択を切り替えて使いこなすのがよさそうだ。

「SOCD」へ対応した機能も備える高品質ゲーミングキーボード性能だけでなくデザイン性を求めるユーザーにもおススメ

 ゲーム向け機能を多数盛り込みデザインもすっきりとしている「K70 PRO TKL」。CORSAIRの長年培ったキーボード技術だけではなく、最近話題の「SOCD」に対応する機能も備えた最新モデルとして、実際のゲームでその性能を遺憾なく発揮できる1台といえるだろう。

 また、ゲーミングキーボードらしい鮮やかなLEDイルミネーションを備えつつも、筐体は丸みを帯びた柔らかさのあるデザインで、武骨でいかにもななデザインではなく洗練された部分を感じられるのも好印象だ。ホワイトの色味も奇麗なので、PC周りのカラーをホワイトで統一したいユーザーにもにもおススメしたいモデルだ。