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ZOTAC初のポータブルゲーミングPC「ZOTAC GAMING ZONE」の実力検証! 人気タイトルはどこまで遊べるのか!?AFMF 2の効果もチェック

10タイトルのゲームベンチを敢行 text by 芹澤 正芳

 2024年12月6日に発売がスタートするZOTAC初のポータブルゲーミングPC「ZONE」。SoCにRyzen 7 8840Uを中心とした構成の製品だが、実際の使い勝手はどうなのか。人気10タイトルでの性能検証、バッテリー駆動時間、動作音、温度など多角的にチェックしていく。

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Ryzen 7+有機ELパネル搭載のニューカマー

 まずは、基本スペックを紹介しておこう。ZOTAC GAMING ZONE(以下、ZONE)は本体、ディスプレイ、コントローラーなどが一体化したポータブルゲーミングPCだ。ディスプレイは7型のフルHD(1,920×1,080ドット)で、本体のサイズは本体サイズは285×115×35mmで重量は692g。

ZOTACのポータブルゲーミングPC「ZOTAC GAMING ZONE」。2024年12月6日発売で直販価格は135,300円

 SoCはポータブルゲーミングPCでの採用例が多い8コア16スレッドのRyzen 7 8840U。人気の理由は、Zen 4アーキテクチャーを採用する高いCPU性能に加えて、内蔵GPUのRadeon 780Mが内蔵タイプとしては非常に高性能である点だ。メモリはLPDDR5Xで容量は16GB、ストレージはPCI Express 4.0 x4接続の高速なNVMe SSDが採用されており、容量は512GB。ワイヤレス機能はWi-Fi 6EとBluetooth 5.2に対応している。OSはWindows 11 Home。

SoCは8コア16スレッドのRyzen 7 8840U。最大クロックは5.1GHz
GPUはRadeon 780M。CU(Compute Unit)が12基搭載されており、内蔵型としては高い性能を持つ

 ポータブルゲーミングPCとしては後発ながら、先行する競合機に対して差別化が図られている点も多い。その一つがディスプレイだ。本機はAMOLED(有機EL)を採用しており、広い色域が求められるDCI-P3規格のカバー率100%、800nitの高輝度、HDR対応とワンランク上の表現力を実現している。リフレッシュレートも120Hzと高く、ゲームも動画視聴も快適だ。

7型フルHDのディスプレイ。AMOLEDを採用しており、引き締まった黒の表現が楽しめる
リフレッシュレートは最大120Hzと高い

人気タイトル10本勝負! AFMF 2でどこまで伸びる

 入力デバイスなど注目ポイントはほかにもあるが、ともあれ気になるのは性能だろう。今回は10本のゲームを用意してフレームレートを測定する。

 Ryzen 7 8840U内蔵のRadeon 780Mは、DirectX 11/12のゲームなら何でもフレーム生成が可能な「AMD Fluid Motion Frames 2」(以下AFMF 2)を利用できるのも大きな強み。そのため、ここではゲームの画質設定は基本的に一番低くし、解像度はフルHDに固定。フレーム生成の有無の2パターンで測定する。FSRによるフレーム生成に対応したゲームはそれをそのまま活用し、非対応のゲームについてはAFMF 2を有効化した。また、本体の動作モードは「Performance」に設定している。

 なお、フレームレートの測定には基本的にゲーム内のベンチマーク機能またはCapFrameXを利用しているが、AFMF 2に関してはAMD Software: Adrenalin Editionのログ機能で測定している。

FSRによるフレーム生成に対応していないゲームはAFMF 2を有効化した。AMD Software: Adrenalin Editionで設定できる

 まずは軽めのゲームから試そう。「Apex Legends」、「オーバーウォッチ2」、「ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン」だ。Apex Legendsは、射撃練習場の一定コースを移動した際のフレームレート、オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレート、ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブンはアバロンの街の一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ測定している。

Apex Legendsのフレームレート
オーバーウォッチ2のフレームレート
ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブンのフレームレート

 Apex Legends、オーバーウォッチ2ともAFMF 2を使わなくても平均60fpsを大きく超えており、十分快適にプレイできる。AFMF 2を有効化すれば、さらにフレームレートを伸ばせるが、初代AFMFよりも半減したとはいえ、どうしても表示遅延が発生するため、シビアな撃ち合いのFPS/TPS向きとは言えない点は覚えておきたい。ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブンは描画負荷が軽いゲームなので最高画質でテストしたが、AFMF 2を使わなくても平均105.1fpsと十分快適だ。

 続いて、最大60fpsのゲームを実行してみよう。ここでは「エルデンリング」と「ストリートファイター6」を用意した。エルデンリングはリムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレート、ストリートファイター6はCPU同士の対戦を60秒間実行した際のフレームレートをそれぞれ測定している。ストリートファイター6は、最大120fpsまで設定できるが、対戦時は最大60fpsだ。

エルデンリングのフレームレート
ストリートファイター6のフレームレート

 エルデンリングを見ると低画質でも平均41.1fps、最小(1%)で21.2fpsとカクつきが出るシーンも。AFMF 2は“ゲーム外でフレームを追加する”技術なので、ゲームとしては最大60fpsキャップとなる場合でもそれを超えるフレームレートを出せるようになる。エルデンリングの場合はそれが活きて平均85.3fpsまで向上している。ストリートファイター6は、LOWEST設定なら平均はほぼ最大の59.6fpsに到達と問題なくプレイ可能だ。AFMF 2は有効化するとゲームがフリーズしてしまうため測定できなかった。シビアな入力が求められる格闘ゲームは表示遅延のあるAFMF 2とは相性がよくないので問題ないだろう。

 続いて、中量級として「Forza Horizon 5」と「Call of Duty: Black Ops 6」を試す。どちらもゲーム内のベンチマーク機能を利用した。

Forza Horizon 5のフレームレート
Call of Duty: Black Ops 6のフレームレート

 Forza Horizon 5は平均105.2fpsと十分高いフレームレートが出ており、あえてAFMF 2を使う必要はないだろう。Call of Duty: Black Ops 6はFSRによるフレーム生成にも対応しているが、Radeon 780Mはサポート外のようで有効化できなかったので、AFMF 2を利用した。その効果は高く、平均50fpsから平均119.1fpsまで向上と120Hzのリフレッシュレートが活きるフレームレートとなった。

 最後は重量級として「サイバーパンク2077」、「黒神話:悟空」、「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」を実行する。いずれもFSRによるフレーム生成に対応しているため、AFMF 2を使っていない。サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用、黒神話:悟空はベンチマークツールを利用、S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobylはザリシアの一定コースを移動した際のフレームレートを測定した。

サイバーパンク2077のフレームレート
黒神話:悟空のフレームレート
S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyのフレームレート

 重量級ゲームではあるが、フレーム生成を使えばサイバーパンク2077と黒神話:悟空は平均60fpsをオーバーを達成。S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobylも平均50.2fpsとなんとかプレイできるフレームレートが出ている。低画質設定という条件はあるものの、ほとんどのゲームをプレイできるのはうれしいところではないだろうか。

動作モードでどう変わる?性能、バッテリー駆動時間、動作音、温度をチェック

 本機には、動作モードとして「Performance」、「Balance」、「Quiet」がプリセットとして用意されている。PerformanceがTDP 28W、BalanceがTDP 15W、QuietがTDP 8Wでの動作になる。TDPやCPUとGPUに割り振る電力の割合を調整して独自のプリセットを作ることも可能だ。

 ここでは、PerformanceとBalanceで性能、バッテリー駆動時間、動作音、温度がどう変わるのチェックしてみたい。まずは、3DMarkで性能、PCMark 10のBatteryテストでバッテリー駆動時間を確認してみよう。

本体の動作モードは「Performance」、「Balance」、「Quiet」が初期のプリセットとして用意されている
3DMarkの結果
PCMark 10 Batteryの結果

 3DMarkの結果を見ると、PerformanceからBalanceにするとスコアは14%~17%ほど低下する。BalanceにするとTDPが15Wに制限されるので、その分CPUとGPUのクロックが上がらずスコアが下がってしまう。

 バッテリー駆動の結果は、負荷の高いGamingテストではPerformanceは59分だが、Balanceは1時間44分とかなり伸びる。バッテリー駆動でゲームを楽しみたい場合はBalanceに切り換えたほうがよさそうだ。その一方で、動画を再生し続けるVideoテストでは負荷が低いためか、PerformanceとBalanceであまり変わらなかった。動画視聴では動作モードを気にする必要はないだろう。

 続いて、動作音と温度を見よう。3DMarkのStress TestからCPUとGPUの両方に負荷がかかるTime Spy設定を選び、10分間連続して実行した。動作音は正面と上部、それぞれ10cm離れた位置に騒音計を設置して測定している。暗騒音は34.6dBだ。温度の測定は、「HWiNFO Pro」を使用した。CPUは「CPU (Tctl/Tdie)」、GPUは「GPU Temperature」の値だ。

動作音の結果
CPU/GPU温度の平均と最大

 Performanceでの動作音は、うるさいというほどではないがファンの音が多少気になるレベルになる。とはいえ、ヘッドセットを使ってプレイするぶんには問題ない程度だ。Balanceにすると、一気に動作音は小さくなり、ファンの音がほとんど気にならなくなる。静かにプレイしたいときにはこの設定がよいだろう。

 温度については、Performanceのほうが当然高くなるが熱くなるのは排気する上部周辺だけ。コントローラー部は熱くならないのでプレイに支障はない。冷却システムは有効に働いていると言ってよいだろう。

用途や好みに合わせて使いやすいコントローラー

 続いて、ゲーム機のキモともいえる操作系を詳しくチェックしておこう。

 ディスプレイに続いて、こだわりを感じられるのがコントローラー部分だ。十字キー、Xbox配列のボタン、2本のアナログスティックというオーソドックスな構成に加えて、左右にトラックパッドを配置。左でスクロール操作、右にマウス操作が割り当てられている。ディスプレイがタッチ操作対応なので、必要なのか?と思うところだが、両手でコントローラー部分を握ったまま親指でスクロールやマウス操作できるのは思いのほか便利。OSをスムーズに操作することも可能だ。

 また、特徴的なのがアナログスティックの周囲にダイヤルが備わっていること。画面と背面LEDの明るさ調整、音量調整を割り当てが可能。ゲームのシーンや状況に合わせて、明るさや音量をダイヤルを回してサッと調整できるのが便利だ。

 十字キーの感触はちょっと独特で、メカニカルキーボードのようなカチカチっとした入力感覚だ。Xbox ワイヤレス コントローラーの十字キーに近いが、ストロークはより浅く、素早い入力が可能だ。格闘ゲームで試したが、数試合で慣れたので筆者としては実用性に問題なしと感じた。

右側のコントローラー部分。ボタンはXbox配列だ。アナログスティックの下にあるのがトラックパッドでこちらはマウス操作
左側。十字キーはストロークが浅めでカチっと音が鳴る。こちらのトラックパッドはスクロール操作が可能だ
アナログスティックの周囲はダイヤルがあり、ディスプレイ、背面LEDの明るさ調整、音量を割り当てが可能だ

 トリガーは背面のスイッチによって押し込む深さの調整が可能。レースゲームのアクセルやブレーキは加減を調整しやすい深め、FPSや格闘ゲームでは反応速度を重視して浅めなどゲームに合わせて切り換えられる。また、バンパーとトリガーは斜めにカットが入っており、人差し指でどちらも押しやすくなっているのもポイントだ。背面には、二つのマクロボタンも用意されている。

バンパーとトリガーはナナメにカットされており、人差し指で押しやすい
トリガーは背面のスイッチで押し込む深さを変えられる
背面には二つのマクロボタンを配置
背面から見た左右トリガー/マクロボタン周辺

 インターフェースについては、天板に電源、音量、USB 4、ヘッドセット端子を用意。底面にはmicroSDカードスロットとUSB 4がある。USB端子が二つあるので充電しながらほかのデバイスを接続しやすいのがナイスだ。このほか、右側面にはストラップホール、背面にはキックスタンドも備わっており、細かな使い勝手を向上させている。

天板に電源、音量、USB 4、ヘッドセット端子
底面にmicroSDカードスロットとUSB 4。スピーカーも底面側にある
右側面にはストラップホールを用意
背面にはキックスタンドも内蔵
電源として65WでType-C接続のUSB PDが付属する

今ならまだ間に合う!? 数量限定の初回特典に注目!!

 直販で13万5,300円は、Ryzen 7 8840U搭載のポータブルゲーミングPCとして納得の価格と言えるのだが、見逃せないのがZOTACのオンラインストアでの予約者向けに数量限定の豪華な特典が付いていること。「キャリングケース」、「ドッキングステーション」、「ZOTAC GAMING ZONEオリジナルTシャツ」が付属する。

 とくに注目がドッキングステーションで単体販売の予定は今のところアナウンスされていない。ギガビットイーサ、HDMI出力、USB端子を備え、本体のスタンドとしても利用できる。さらに底面にはM.2スロットまで用意されており、ポータブルゲーミングPCの弱点であるストレージ容量の少なさをカバー可能。分解を伴う内蔵SSD換装に比べたら圧倒的に簡単で低リスクなのもポイントだ。

特典の一つ「ドッキングステーション」
背面には充電用のType-Cコネクタ、ギガビットイーサ、HDMI出力、USB 3.2 Gen 2がある
本体とはType-Cで接続。スタンドとして利用できる
左側面にはUSB 3.2 Gen 2 Type-C、右側面にはUSB 3.2 Gen 1を搭載
底面のカバーを外すとM.2スロットがある。冷却用のサーマルパッドも付属
M.2 SSDを1枚増設が可能。本体からは外付けSSDとして認識される

 キャリングケースは本体とACアダプター、ケーブルなどを収納できる。かなり固めなので衝撃にも強く、本体をピタッと固定できるので安心して持ち運びが可能だ。

特典の「キャリングケース」
開けたところ。中央に面ファスナーがあり、本体をガッチリ固定できる
スタンドとしても利用可能だ
底面にはスペースがあり、ACアダプターやケーブルを収納できる
専用ケースだけあって本体がピッタリはまる
ストラップも付属。クリップ式でベルト部分が分離可能
こちらも特典の「ZOTAC GAMING ZONEオリジナルTシャツ」。表にはZONEのロゴとキャラクターが、裏にはZONE本体の特徴が描かれている

美しき画面と操作系のデキは満足度◎。豪華特典も見逃すな!!

 ポータブルゲーミングPCとしては後発と言えるZONEだが、数々の小型PCを手掛けてきたZOTACだけあって、PCとしての完成度は折り紙付き。また、ダイヤルやトラックパッド、キックスタンドなどかゆいところに手が届く操作性や使い勝手のよさ、広色域のAMOLEDによって差別化を図っている点は高評価ポイントだ。692gとやや重めではあるが、ゲームはプレイしやすかった。

 豪華な特典まで考えれば、13万5,300円はお買い得。11月29日次点で数量限定の予約特典付きパッケージの受け付けが間もなく終了になりそうとのことなので、早めに決断することをオススメしたい。