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SSD×8枚RAIDで約59GB/s、世界最速級なPCをInter BEEのSamsungブースで触ってきたぞ!

Ryzen Threadripper Pro搭載ワークステーションに990 PROを8枚搭載 text by 久保勇

 11月13~15日に開催された映像/音楽制作者向けの大規模展示会「Inter BEE 2024」。PCメーカーも多数出展しており、Samsungのブースでは世界最速級のストレージを備えたワークステーションが展示されていました。

 ストレージの速度はリード58,963MB/sと、最高速が約59GB/sにもなる別世界の性能を持ったPC。実際に触れられる状態で展示されており、動画編集ソフトでのレスポンスを確認したり、ベンチマークやファイル転送などを試させてもらったりしました。今回は会場にあったストレージ世界最速級のPCがどのようなものなのだったのかご紹介します。

990 PRO 2TB×8枚RAIDで世界最速級のストレージを構築実測で約59GB/sを叩き出すモンスターマシン

当日取材時に実行した際のベンチマーク速度。

 Samsungブースに展示されていたストレージ最速PCでベンチマークを実行してみましたが、リード58,963MB/s・ライト53,374MB/sと、とんでもない速度を発揮。速すぎてよくわからない領域に突入していました。

 使用されていたデモ機は、Lenovoのワークステーション「ThinkStation P8」を特別にカスタマイズしたもの。Lenovo公式の製品ラインアップには存在しない構成ですが、販売代理店のアスクが取り扱っているモデルに関しては、今回構築したような特別仕様のモデルも相談をもらえれば受注販売が可能とのこと。

 デモ機の主な構成は、CPUにAMDの「Ryzen Threadripper PRO 7975WX(32コア/64スレッド)」、ビデオカードにNVIDIAの「GeForce RTX 5000 Ada世代」、メモリは128GB(32GB×4枚)を搭載。超高速ストレージ部分は、HighPointのRAIDカード「Rocket 7608A」にSamsung製SSD「990 PRO」2TB×8枚の組み合わせで構築されています。

Lenovo ThinkStation P8の特別カスタムモデルでデモ。
PCの構成表。
Ryzen Threadripper PRO 7975WXにGeForce RTX 5000 Adaと、クリエイター用途ではかなりの高性能モデル。
RAIDカード+SSDはケースの最上段側に搭載されています。

 使用されているRAIDカードのHighPoint Rocket 7608Aは、M.2 SSDを最大8枚搭載可能なモデル。PCIe 5.0×16レーン接続対応で、理論値の帯域は64GB/sで、メーカー公称値で実測の最高速度は56GB/sとされています。

 組み合わされているSSDはPCIe 4.0×4レーン対応のSamsung 990 PRO 2TB×8枚。公称値は最高7,450MB/sとされているので、8枚あればRAIDカード側の帯域を使い切ることができます。実測でHighPointの公称値以上の速度が出ているので、今回の環境は性能がフルに発揮されていると言えるのではないでしょうか。

SSD×8本を搭載したHighPoint Rocket 7608A。
Rocket 7608AはPCIe 5.0×16レーン接続のRAIDカードで、公称最大速度は56GB/s。
搭載SSDのSamsung 990 PRO。今回は2TBモデル×8枚構成で使用。

 PCIe 5.0対応SSDを使えば、SSDの枚数を減らしても最高速が発揮できるかと思われますが、SSDをなるべく多く搭載することで得られるメリットもあります。一つは単純に容量を大きくできることで、SSDの搭載枚数が多いほど最大容量を増やすことが可能。もう一つがSSDの枚数が多いほどキャッシュ容量が増える点。990 PROの2TBモデルは最大で226GBのSLCキャッシュが利用可能、今回の8枚構成であればキャッシュ容量は合計で1,808GBにも達するので、ほとんどの作業が高速なキャッシュ容量内で行えるようになります。

 キャッシュ容量が実行性能に影響を与えるケースも多く、SSDの理論値に近い速度が実作業でも発揮されるような環境を構築したいのであれば、キャッシュ容量を増やすためにあえてSSDの枚数を多くする構成は理にかなったものと言えます。

8K動画のRAWファイルを編集するにはこんな構成のPCが欲しい!クリエイターの羽仁 正樹氏に最速PCのどこが凄いか聞いてみた

羽仁 正樹氏が空撮した都市の8K動画作品。

 約59GB/sの速度が発揮されている今回のデモ機ですが、実用面でも意味のある性能であることをアピール。

 映像クリエイターの羽仁 正樹氏協力のもと、8K解像度で撮影されたRAW動画の編集をデモ。DaVinci Resolve Studioを使い、リアルタイムで8K動画がコマ落ちなどせず編集できることが紹介されていました。

映像クリエイターの羽仁 正樹氏
羽仁氏が撮影した8K動画素材を使い、超高速ストレージが如何に快適なのかが紹介されていました。

 羽仁氏によると、Nikon RAW(N-RAW)やREDCODE RAWで撮影した8K動画素材をコマ落ちせずそのまま編集できる環境はほとんどなく、コマ落ちを許容したとしてもまともに動作するPCの方が少ないそうで、今回のデモ機は驚くレベルの快適さとのこと。

 8K動画は現在のPCに対しては負荷が高すぎるので、低解像度化した作業用のプロキシファイルを作成して編集作業を行うケースがほとんどとのことですが、今回のデモ機はプロキシファイルを用意しなくても8K解像度のファイルそのものを使って作業が行える、桁違いの性能を持ったPCと言えるそうです。

 実際にDaVinci Resolve Studioで簡単な編集作業をしてみると、読み込み待ちでちょっと止まったり、バーを早く動かしても引っかかったりといったようなことはなく、フルHD解像度の動画を編集しているような軽さ。8K動画素材と言われなければ、快適すぎて重いファイルを編集しているとわからないレベルの高性能さでした。

リアルタイムプレビューは常に59.94fps表示でコマ落ち無し。
8,256×4,644ドット/59.940fpsのN-RAW形式の素材が今回使われていました。
編集時にバーを早く動かしても、コマ落ちしたり止まったりすることなく快適。
撮影素材そのままでリアルタイムかつ快適に作業が行えるのは、大幅な効率改善に繋がるとのこと。

 PCを操作した時の快適さもですが、プロキシファイルを生成しなくても良くなるのはクリエイターには大きなメリットになるそうです。実際に編集作業に入る前には、撮影してきたデータをPCに転送する時間と、プロキシファイルを生成する待ち時間は何もできない状態になります。プロキシファイルを使う必要がない高性能なPCが使えれば、プロキシファイル生成の時間を丸ごとカットできることになり、作業時間をその分減らせます。

 高解像度の動画編集は待ち時間との闘いで、撮影データの取り込み、データのバックアップ、プロキシファイル生成、編集後のデータの書き出し、完成データの転送と、作業を止められてしまう場面は多いそうです。プロキシファイル生成の時間がカットできれば、その分早く作業を進めたり、クオリティアップに時間を使ったりもできるので、こだわる価値がある部分とのことでした。

 羽仁氏によると、最高の状態で記録して残したい、より多くの状態を素材を残したいとなるのがクリエイターのサガとのこと。今回のPCで性能的には十分すぎるのか聞いてみたところ、8K動画がリアルタイムで編集可能であれば、素材はより多くのアングルで撮影して編集したくなったり、より複雑な処理に挑戦してみたくなったりするので、PCの性能は今後もっと上がっていって欲しいのが本音とのことでした。

 今回のデモ機は動画編集中のストレージ性能はとてつもないものですが、制作した動画は完成品として他の環境に移したり、バックアップをとったりすると思います。今回、実際にデモ機から超高速にデータが転送できる実例として、HighPointの8ベイタイプのエンクロージャー「RocketStor 6542AW」を使用して転送時間を見せてもらいました。

HighPointのエンクロージャーRocketStor 6542AWと接続して、約20GBのファイル転送時間を確認。
RocketStor 6542AWで構築した外付けストレージのベンチマーク速度。
PCとはインターフェイスカードを介して接続する仕組みで、ケーブルの接続コネクタの規格は400Gbps対応のCDFP。
FastCopyを利用して約20GBの動画データを転送した際にかかった時間は1.5秒。
タスクマネージャーでデータ転送時の速度を見てみましたが、実効値で15.4GB/sは出ているようです。

 RocketStor 6542AWにはSamsungのデータセンター向けSSD PM9A3が搭載され、ベンチマークの実測でリード27,012MB/s・ライト23,771MB/sが出る環境を構築。約20GBの動画ファイルをデータ転送アプリのFastCopyを利用し、デモ機からRocketStor 6542AWに移動させた際の時間はわずか1.5秒。Windows標準のエクスプローラーを使ってデータを転送した場合はもう少し時間がかかるそうですが、それでも数秒とのこと。OS上から見て実測で15.4GB/sくらい出ていたので、かなりの速度。もし映画の動画ファイルを転送したとしたら、本当に数秒で転送可能な速度です。

 なお、USB4(40Gbps)くらいまでであれば、Windowsのエクスプローラーを利用して多少転送速度にロスがあったとしても、それがボトルネックになって実用上問題が発生するようなことはほぼないものの、今回のCDFP接続(400Gbps)のエンクロージャーを使用するような環境では、使用アプリケーションの影響によるロスが無視できないレベルになってくるそうです。使用するデータ転送アプリケーションの影響で1~2割程度のロスがあった場合、数GB/s単位で速度が低下することになり、ボトルネックとなる可能性があります。今回のデモ機では性能が最大限発揮させるためにFastCopyが使用されていましたが、高速な環境ほどデータ転送に使用するアプリケーションに何を使うか意識すべきで、アプリケーション側の高速ストレージへの最適化も重要になってくるだろうとのことでした。

 ちなみに、羽仁氏も、これが自分の作業場にあればバックアップの時間が大幅に短縮できるのに……と話していたので、クリエイターには内蔵ストレージだけでなく外付けストレージの超高速化も待たれているようです。

動画に強いSamsungのストレージミラーレスカメラやアクションカムでSSDやSDカードを実機デモ

Inter BEE 2024のSamsungブース。

 Inter BEE 2024のSamsungブースでは、58GB/sオーバーの超高速ストレージ搭載PCのほかにも多数の製品を展示。

 ビデオカードの外見でM.2 SSDを16枚搭載可能なRAIDカードや、外付けSSDとカメラの組み合わせ例、アクションカメラやドローンなどでのSamsung製microSDカードの動作例、映像編集ソリューションなど、様々な製品が展示されていたのでご紹介します。

HighPointのSSD搭載可能なPCIe 4.0×16レーン接続RAIDカードSSD7749M2。
SSDはカード側に搭載可能で、最大で16枚のM.2 SSDに対応。
カードの背面には使用時のガイドが貼られていました。
動画録画向け外付けSSDの紹介エリア。ニコン Z9やBlackmagic Cinema Camera 6K、パナソニック LUMIX DC-GH7Lなど、ミラーレスカメラと同社製外付けSSDの組み合わせ例を紹介。
iPhone 16 Pro/Pro MAXでのProRes 4K/120fpsでの録画動作例もアピール。
SSDよりもiPhone側の発熱の方が問題になるようで、ファンが取り付けられていました。
GoProやOsmo Action 4/5、Osmo Pocket 3など小型ビデオカメラと同社製micoroSDカードの組み合わせを紹介。
Osmo Action 4を使って4K60pの長時間録画デモも実施。
ドローンでの使用例も。
映像制作プロダクション向けのソリューションも展示。
撮影/編集に関わる人数が多い場合や、編集スタジオが複数の地域に分散している場合でも、データの同期や管理を一括して行えるシステムを紹介。
Blackmagic Replay機能を用いたマルチカム収録システムの紹介も。
OWCのUSB4接続対応SSD外付けケース「Express 1M2」とSamsung 990 PROの組み合わせ例も紹介。
カードリーダーやSDカード、microSDカードを収納できるケース。
収納ケースなどが付属した放送局向け外付けSSDパッケージ品。