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リード27GB/s超え!SSD 990 PRO×8 RAID搭載のモンスターマシンは8K RAW動画も軽々編集OK

64コアのRyzen Threadripper PRO搭載のハイエンドワークステーションの実力 text by 坂本はじめ

990 PROx8 RAIDを搭載するワークステーションの動画性能をチェック!

 今回編集部にやってきたのは、ツクモのBTO PC「ワークステーションモデル WA9A-D223/WB」を超豪華仕様にカスタマイズしたハイエンドPC。

 64コア/128スレッドCPUのAMD Ryzen Threadripper PRO 5995WXに256GBのメインメモリを搭載するモンスターマシンに、Samsungの最新鋭SSD「990 PRO」8台で構築したRAID 0ボリュームを搭載することで、ストレージへの要求性能も高い8K RAWや4K RAWの動画編集をどれだけ快適にこなせるのか試してみた。

全てのストレージをSamsungの最新SSD「990 PRO」で統一64コア/128スレッドCPUを搭載したモンスター級PC

 ツクモの「ワークステーションモデル WA9A-D223/WB」は、ツクモがeX.computerブランドで展開しているデスクトップPCのひとつで、AMDのワークステーション向けプラットフォーム「sWRX8」を採用したBTO PCだ。今回テストするWA9A-D223/WBは、標準構成から搭載パーツを大きく変更したカスタマイズモデルとなっている。

ツクモ「ワークステーションモデル WA9A-D223/WB (カスタマイズモデル)」。
今回使用しているPCは、CPU、メモリ、GPUを最上級にアップグレードしたカスタムモデルとなっている。

 具体的なカスタマイズ内容としては、CPUをSocket sWRX8最上位の64コア/128スレッドCPU「AMD Ryzen Threadripper PRO 5995WX」に変更したほか、GPUをウルトラハイエンドの「GeForce RTX 3090」、メモリを256GB(32GB×8枚)に強化。

Socket sWRX8最上位CPUの「AMD Ryzen Threadripper PRO 5995WX」にカスタム。
AMD Ryzen Threadripper PRO 5995WXは、64コア/128スレッドという圧倒的なマルチスレッド性能を備えている。
CINEBENCH R23のMulti Coreスコアは「66,782」。一般的なデスクトップ向けCPUとは一線を画す圧倒的なスコアだ。

 さらに、NVMe SSDとPCIe 4.0 x16レーンに対応するRAIDカード「Highpoint SSD7540」を追加し、Samsungの最新鋭SSDである「990 PRO」の2TBモデルを8枚フル搭載。システム用SSDも990 PROの1TBモデルに変更した。

 一般的な自作PC環境の場合、PCIe 4.0 x16レーンまたはPCIe 5.0 x16のレーンは1本しか利用できず、ビデオカードとRAIDカードを搭載した場合はそれぞれ帯域を分け合うかたちになり、それぞれx8レーン接続となる。

 ただし、今回用意したワークステーション向けのAMD Ryzen Threadripper PROとAMD WRX80チップセット搭載マザーボードの環境であれば、PCIe 4.0 x16レーンスロットを最大7本利用可能だ。複数枚の拡張カードを搭載してもそれぞれがx16レーン分の速度をフルに利用可能なので、ビデオカードとRAIDカードを同時に搭載しても帯域をシェアすることなく性能を発揮することができる。

RAIDカード「Highpoint SSD7540」に8枚のSamsung SSD 990 PRO(2TB)を満載。
RAIDカードは冷却用ヒートシンクを備え、ビデオカードのような見た目となっている。
システム用SSDにも990 PRO SSD(1TB)を搭載。内蔵ストレージは全て990 PROで統一している。

単体で7,450MB/sのリード性能を実現、Samsungの最新鋭SSD「990 PRO」

 今回のPCには、システム用だけでなくRAIDカードにまでSamsungの最新鋭SSD「990 PRO」を搭載している。ここで改めて990 PROというSSDについて確認しておこう。

 990 PROはSamsungがPCIe 4.0対応SSDの最高峰を目指した最新鋭SSDで、リード最大7,450MB/s、ライト最大6,900MB/sという、インターフェイス(PCIe 4.0 x4)の限界に迫る圧倒的な速度を実現しており、1TBと2TBの2モデルが発売されている。

Samsung SSD 990 PRO(1TB)。
CrystalDiskMarkの実行結果。OSがインストールされた状態ではあるが、7GB/sを超えるリード性能を発揮している。

 2月に最新ファームウェアが公開されたので、使用の際はファームウェアをアップデートしよう。Samsung SSD Magician上からか、専用アップデータを使用しての更新が可能だ。

 なお、今回のテストは新ファームウェア更新前での検証となってしまったが、新旧ファームウェアで速度面での性能に関しては大きな差がつくことは無いので、その旨ご了承いただきたい。

8台の990 PROで構成したRAID 0ボリュームはリード27GB/s超えの速度を実現

 RAIDカードである「Highpoint SSD7540」に搭載した8台の990 PRO(2TB)は、全てのSSDを束ねてRAID 0ボリュームを構築している。

 これによって、Windows上から利用可能な記憶容量は14.6TBという大容量となっており、速度についてはCrystalDiskMarkで測定したところ、リード最大27.8GB/s、ライト最大25.7GB/sという驚異的な速度を達成していた。Highpoint SSD7540のインターフェイスはPCIe 4.0 x16(理論値で最大約31.5GB/s)なので、RAIDカードの限界に近い速度を発揮していることが伺える。

8台の990 PRO(2TB)で構成したRAID 0ボリューム。記憶容量は14.6TBとなっている。
CrystalDiskMarkの実行結果。リード最大27.8GB/s、ライト最大25.7GB/sという驚異的な速度を実現している。

 動画編集時に要求されるストレージ性能を計測する「Blackmagic Disk Speed Test」では、リード16.5GB/s、ライト約11.5GB/sを記録。

 動画解像度ごとに転送速度をフレームレートに変換した「How Fast?」のリード性能をみてみると、Blackmagic RAW形式なら4K RAWで4,138fps、8K RAWで2,590fpsとなっており、これは60fpsの動画であれば68本以上、8Kでも43本以上を同時に読み出せる能力があるということを意味しており、動画編集時にRAWファイルを保存しておくストレージとして申し分の無い性能を実現していると言える。

Blackmagic Disk Speed Testの実行結果。

Premiere ProとDaVinci Resolve 18で「4K RAW」動画を編集10ストリーム以上でも快適に編集可能

 まずは、デジタルフィルムカメラの「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」で撮影したBlackmagic RAW形式の4K RAW(4K60p)を、8台の990 PROで構成したRAID 0ボリュームに保存して、動画編集作業を試してみた。

 テストした動画編集ソフトは「DaVinci Resolve Studio 18」と「Premiere Pro」の2本。DaVinci Resolve Studio 18ではデコード品質を「1/4解像度」、Premiere Proではプレビュー品質を「1/4」に設定して、複数の4K RAWファイルの読み出しが必要な画面構成でプレビュー再生を行ってみた。

DaVinci Resolve Studio 18。
Premiere Pro。

 DaVinci Resolve Studio 18とPremiere Proは、どちらも1画面に12本の4K RAWを表示するような状況を作っても、大きなコマ落ちを生じることなくプレビュー再生が可能だった。

 プレビュー再生中、RAID 0ボリュームには3.5GB/s前後の読み出しが発生しており、タイムライン上でシークを行うと4GB/sを超える読み出しが発生する場合もあるが、RAID 0ボリュームはこの負荷に十分対応できており、ストレージ性能のボトルネックを感じるシーンは無かった。

DaVinci Resolve Studio 18でプレビュー再生中。3.5GB/s前後の読み出しが発生している。
Premiere Proでプレビュー再生中。こちらでも3.5GB/s前後の読み出しが発生している。

 また、プレビュー再生中はどちらの動画編集ソフトでもCPU使用率が50%近くに達しており、64スレッドに処理が集中していた。全てのコアを活用できないのはWindowsにおけるプロセッサーグループの壁によるものだが、重要なのはBlackmagic RAWのデコードにはGPUも使用するものの、CPUパワーがかなり必要であるという点だろう。

DaVinci Resolve Studio 18やPremiere Proでプレビュー再生を行うとCPU使用率が50%前後で頭打ちになる。これはWindowsのプロセッサーグループという仕組みによるものだ。
プレビュー再生中はGPUにもある程度の負荷がかかっているが、Blackmagic RAWの再生にはCPUパワーの方が重要なようだ。

ニコン Z 9で撮影した8.3K RAW動画も快適に編集可能

 続いてテストしたのが、ニコンのフラッグシップミラーレスカメラ「Z 9」で撮影した8K RAW動画の編集だ。なお、便宜上8K RAWとしているが、実際にはニコン独自のRAW形式であるN-RAWで撮影した8.3K30p(8,256×4,644ドット、29.97fps)動画である。

 テスト時点ではPremiere ProはN-RAWをサポートしていないので、DaVinci Resolve Studio 18で編集作業を試してみた。テスト時のデコード品質は「1/4解像度」。

DaVinci Resolve Studio 18でN-RAW形式の8K RAW動画をテスト。
N-RAWのデコード品質は「1/4解像度」に設定した。

 8K RAWを1画面に8本表示した状態でプレビュー再生を行ってみたが、多少のカクつくシーンもあるものの動作の重さを感じることはなく再生可能で、タイムラインでのシークもスムーズに行うことができた。

 再生時に生じるストレージからの読み出しは1~2GB/s程度で、8台の990 PROで構成したRAID 0ボリュームにとってはかなり余裕がある状況なのだが、ここから更に同時に表示する8K RAWファイルの本数を増やして12本などにするとプレビューのカクツキが頻発して滑らかな映像は得られなかった。どうやら、N-RAWのデコード中はCPU負荷以上にGPU負荷がかなり高くなる傾向があるようで、前述したストレージの読み出し性能やCPUパワー的には余裕がある状況でも、先にGPU性能が限界に達していた。

8K RAW×8本でプレビュー再生中。ストレージへのアクセス速度は1~2GB/s程度。
N-RAWのデコードはGPU負荷が高いようで、CPUやストレージより先にGeForce RTX 3090がボトルネックとなっていた。

モンスター級のワークステーションなら高解像度RAW動画も十分に編集可能ストレージには速度と容量の両方が必要

 本格的な映像作品を製作したいユーザーにとって、撮影可能な機材が増えつつある4K RAWや8K RAWを扱う機会は今後増えていくだろう。今回テストしたPCは、モンスター級のスペックを備えた高価なワークステーションマシンであり、誰でも気軽に手を出せるものではないが、既に8K RAWや4K RAWを扱える性能を備えたマシンが存在していることは覚えておきたい。

 また、ストレージ性能に関しては、今回テストに用いたSamsung SSD 990 PROほどの速度があれば、RAIDを構築しなくても4K RAWや8K RAWを扱うことはできる。ただし、今回テストに用いたRAW動画は、4K RAWでも5分の動画で80GB程度の容量を必要とするため、長尺のRAW動画を扱う場合は記憶容量がネックになる。容量を補う手段として、今回テストしたようなRAIDボリュームを構築するのは有効な選択肢であると言えるだろう。

[制作協力:Samsung]