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GeForce RTX 5070とRTX 5060 Ti 16GBモデルはどっちを選べばいいの!?ゲームやAIなど12のテストと、ZOTACの搭載カード比較で徹底チェック!

旧世代のRTX 4060 Ti/3060 Ti/2060もテスト、買い換えの目安も探る text by 芹澤 正芳

GeForce RTX 5070とGeForce RTX 5060 Ti(16GB版)の性能差をチェックしていく

 2025年の3月から4月にかけてNVIDIAから「GeForce RTX 5070」と「GeForce RTX 5060 Ti」が発売された。売れ筋となるミドルレンジからアッパーミドル帯のGPUであり、特に後発のRTX 5060 Tiには、ビデオメモリ16GBモデルもラインナップされている。

 このRTX 5060 Ti 16GBモデルの4月下旬時点での実売価格は、もうちょっとがんばればRTX 5070に手が届きそうという水準となっており、「この差だとどちらを買えばいいんだろう?」と迷っている人もいるだろう。そこで本稿では、旧世代のミドルレンジGPUも加えて、12種類のテストで性能を比較していく。新規購入・乗り換えの参考になるはずだ。

ビデオメモリ量に注目のRTX 5070とRTX 5060 Ti

 NVIDIAの最新世代GPU、GeForce RTX 50シリーズ。2025年4月末時点ですでに、RTX 5090/5080/5070 Ti/5070/5060 Ti/5060が発表されている(RTX 5060は5月発売予定)。前述のとおり、今回はその中でもミドル~アッパーミドル帯のRTX 5070/5060 Tiにスポットを当てる。スペックは以下の表にまとめた。参考として位置付けの似た旧世代GPUのスペックも掲載した。

【GeForce RTX 5070/5070 Tiおよび旧世代GPUの主なスペック】
GPU名RTX 5070RTX 5060 TiRTX 4060 TiRTX 3060 Ti
CUDAコア数6,1444,6084,3524,864
AI TOPS988759353
ベースクロック2.16GHz2.41GHz2.31GHz1.41GHz
ブーストクロック2.51GHz2.57GHz2.54GHz1.67GHz
メモリサイズGDDR7 12GBGDDR7 16GB/8GBGDDR6 16GB/8GBGDDR6 8GB
メモリバス幅192bit128bit128bit256bit
メモリ帯域幅672GB/s448GB/s228GB/s448GB/s
RTコア第4世代第4世代第3世代第2世代
Tensorコア第5世代第5世代第4世代第3世代
アーキテクチャーBlackwellBlackwellAda LovelaceAmpere
DLSSDLSS 4DLSS 4DLSS 3DLSS 2
NVENC第9世代×1第9世代×1第8世代×1第7世代×1
NVDEC第6世代×1第6世代×1第5世代×1第5世代×1
カード電力(W)250180165/160200
システム電力要件(W)650600550600
価格目安(発表時)108,800円79,800/69,800円88,800/69,800円54,780円

 RTX 5070はCUDAコア6,144基、メモリバス幅192bit、ビデオメモリはGDDR7が12GBだ。RTX 5060 TiはCUDAコア4,608基、メモリバス幅128bitと、CUDAコア数は約33%減り、バス幅も狭くなっており、基本スペックには結構差がある。その一方で、RTX 5060 Tiには前述のとおりビデオメモリがGDDR7 16GBの大容量モデルが用意されている。高解像度でのゲームやAIなどビデオメモリを求める処理なら、もしかするとRTX 5060 TiがRTX 5070を上回る可能性があるのでは?という期待感も出てくるところ。

 価格面では、RTX 5070搭載カードは最安値クラスで10万円後半(4月下旬時点)、16GB版のRTX 5060 Ti搭載カードは8万円強から10万円前後。製品しだいのところはあるが、差はあると言えばあるが大差と言うほどでもないようにも見える。

 今回はゲーム、クリエイティブワーク、AI処理、消費電力の面からRTX 5070と16GB版のRTX 5060 Tiを比べていく。基本性能からワット・コストパフォーマンスまで見えてくるはずだ。

ZOTACのRTX 5070/5060 Ti搭載カード。デザインイメージは一貫しているが、サイズ感、性能には違いがある。下位のRTX 5060 Tiのほうがビデオメモリ容量が多い、というところが悩ましいポイント

人気ゲーム4本でパフォーマンスの差をチェック

 それでは、早速性能チェックに移ろう。テスト環境は以下のとおりだ。比較対象として旧世代のGeForce RTX 4060 Ti/3060 Ti/2060を搭載したカードも用意した。ドライバは、原稿執筆時点で最新だった「Game Ready 576.02」を使用した。モンスターハンターワイルズのテストのみ不安定な挙動があったので「Game Ready 572.83」に変更している、

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 9950X3D(16コア32スレッド)
マザーボードAMD X870E 搭載マザーボード
メモリDDR5-6000 32GB(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSDM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 5.0 x4、2TB)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
電源1,000W(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(24H2)

 まずは、ゲームにおける基本的な3D性能を測定する定番ベンチマーク「3DMark」から見ていこう。

3DMarkの計測結果

 これはグレード別、世代別にキレイに分かれた。RTX 5060 TiはRTX 5070に対して27%~50%のスコアダウンと基本性能には大きな差が見える。

 続いて実際のゲームでの結果を見てみよう。まずは、DLSS 4のマルチフレーム生成に対応しないタイトルから、定番FPSの「Apex Legends」、ハンティングアクション「モンスターハンターワイルズ」の公式ベンチマークを試す。Apex Legendsは射撃訓練場の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。

 なお、今回DLSS SR/FSR SRの“SR”とは“Super Resolution”の略で、モンスターハンターワイルズだけは画質ウルトラのプリセットに従って「クオリティ」設定を採用したが、それ以外のゲームではすべて「バランス」設定とした。“FR”は“Frame Generation”の略で、フレーム生成を指す。“MFG”は“Multi Frame Generation”の略で、DLSS 4のマルチフレーム生成を指し、1フレームに対して3枚の生成をMFG x4と表記している。

Apex Legendsのフレームレートの計測結果
モンスターハンターワイルズのフレームレートの計測結果

 Apex Legendsはフレームレート上限のあるタイプのゲームで、最大300fpsで頭打ちになる。RTX 5070はWQHDまでほぼ上限に達しているが、RTX 5060 Tiだと上限に達するのはフルHDだけだ。このゲームは描画負荷がそれほど高くないので最高画質でも旧世代GPUで十分プレイができる。

 その一方でモンスターハンターワイルズの最高画質設定は描画負荷が強烈に高い。4Kで平均60fpsをクリアできるのはRTX 5070だけだ。GPUの処理能力に加え、ビデオメモリ量が重要となるゲームではあるが、残念ながらビデオメモリ容量の多いRTX 5060 TiでもRTX 5070は上回れなかった。

 なお、RTX 4060 Ti以下はフルHDでも快適なプレイは難しい。RTX 3060 TiのフレームレートがRTX 4060 Tiよりちょっと高いのはアップスケーラーとフレーム生成にFSRを利用しているのが影響していると考えられる。ちなみに、RTX 3060 Ti/2060ではDLSSのフレーム生成非対応なので、FSRを採用している。

 続いてRTX 50シリーズ最大の特徴と言ってよいDLSS 4のマルチフレーム生成に対応したゲームを実行しよう。「サイバーパンク2077」、「アサシン クリード シャドウズ」を用意した。DLSS 4を利用できるのは、原稿執筆時点ではRTX 50シリーズのみだ。

サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレート、アサシン クリード シャドウズはゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。

サイバーパンク2077のフレームレートの計測結果
アサシン クリード シャドウズのフレームレートの計測結果

 RTX 5070とRTX 5060 Tiの性能差は3DMarkと同じ傾向だ。20~40%ほどRTX 5070のフレームレートが高くなる。その一方でマルチフレーム生成の威力は高く、旧世代GPUとの差は大きく開いた。

 ポイントとなるのは、ミドルレンジのRTX 5060 Tiでも、どちらのゲームともに、4Kかつレイトレーシングをゴリゴリに使った高画質設定で平均60fpsをクリアしている点。高フレームレートを求めるならRTX 5070ということにはなるが、60fpsを目安にするなら、RTX 5060 Tiも4Kゲーミングを視野に入る。これはGPU選択における大きなポイントになるはずだ。

AI処理では16GBのビデオメモリが活きるシーンも

 ビデオメモリ容量が重要になることが多いAI処理ではどうだろうか。さまざまな推論エンジンを実行する「Procyon AI Computer Vision Benchmark」、AIによる画像生成速度を測る「Procyon AI Image Generation Benchmark」、LLM(大規模言語モデル)の処理速度を測る「Procyon AI Text Generation Benchmark」を試した。

Procyon AI Computer Vision Benchmarkの計測結果
Procyon AI Image Generation BenchmarkでStable Diffusion XL(FP16)の処理を実行した結果
Procyon AI Text Generation Benchmarkの計測結果

 Procyon AI Computer Vision Benchmarkはグレード別、世代別に分かれた順当な結果になった。Procyon AI Image Generation BenchmarkもRTX 5070とRTX 5060 Tiの差は順当と言えるが、RTX 4060 TiよりもRTX 3060 Tiのほうが圧倒的にスコアが高いのはちょっと意外だった。おそらくRTX 3060 Tiのほうがメモリバス幅とメモリ帯域幅が広いためだろう。

 注目はProcyon AI Text Generation Benchmarkのテストでもっともパラメーター数が多くなる「Llama-2-13B」だ。RTX 5060 TiがRTX 5070のスコアを上回った。メモリバス幅で劣るRTX 5060 Tiが勝利しているのは16GBのビデオメモリ量が効いているのだろう。そしてビデオメモリが6GBのRTX 2060は動作すらできなかった。

CGレンダリングと画像処理での性能も確かめる

 続いて、3DCGアプリの「Blender」を使ってGPUによるレンダリング性能を測定する「Blender Open Data Benchmark」とAdobeのPhotoshopとLightroom Classicを実際に動作させてさまざまな画像処理を行ってスコア化する「Procyon Photo Editing Benchmark」を試そう。

Blender Open Data Benchmarkの計測結果
Procyon Photo Editing Benchmarkの計測結果

 Blender Open Data Benchmarkはグレード別、世代別にピッタリと合うスコア差になっている。ビデオメモリ量はあまり影響はしないようだ。Procyon Photo Editing BenchmarkはGPU性能が影響する「Image Retouching」でRTX 5060 Tiがトップに立った。ただ、全体的にスコア差は小さい。PhotoshopとLightroom Classicによる画像処理は旧世代GPUでも現役と言ってもよさそうだ。

ワットパフォーマンスはRTX 5060 Tiが良好

 続いてカード単体とシステム全体の消費電力をチェックしよう。カード単体はビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を使用した。サイバーパンク2077の各解像度での消費電力を測定している。システム全体はOS起動10分後のアイドル時とサイバーパンク2077実行時(解像度はWQHD)の最大値を計測している。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用した。

カード単体の消費電力
システム全体の消費電力

 カード単体で見るとRTX 5060 Tiの消費電力はRTX 5070よりも60Wほど低くなる。フレームレートの差を考慮しても、RTX 5060 Tiのワットパフォーマンスは良好と言ってよいだろう。その一方で、RTX 3060 Tiの消費電力の大きさが目立つところだ。システム全体の消費電力も同じ傾向だ。RTX 40シリーズは電力効率のよさで知られているが、今回の結果からもそれが見える。

ZOTACのRTX 5070とRTX 5060 Tiでカード本体の違いをチェック

 ここまで性能をチェックしてきたが、搭載カードのデザイン・構造も、RTX 5070とRTX 5060 Tiでだいぶ様子が変わってくる。具体的なハードウェア面の違いを、ZOTACのRTX 5070とRTX 5060 Tiのカードを例に確認していこう。

 まずはRTX 5070を搭載する「ZOTAC GAMING GeForce RTX 5070 SOLID OC」から。ブーストクロックを定格の2,512MHzから2,542MHzへと向上させたファクトリーOCモデルだ。上位GPUを搭載した製品や同社の上位グレード製品(“AMP”を冠するモデル)に比べればややコンパクトだが、3連ファンを搭載してカード長は304.4mm、厚さは2スロット相当だ。補助電源は16ピン(12v-2x6)。

RTX 5070を搭載する「ZOTAC GAMING GeForce RTX 5070 SOLID OC」。3連ファンを採用し、カード長は304.4mm。4月下旬時点の実売価格は11万円前後
バックプレートも搭載。後部は空気が抜けるように大きくカットされている
カードを端子側から見たところ。基板自体はカード長の半分強までで、ヒートシンクがクーラー後部まで続いている
補助電源は16ピンでカード中央付近にある
出力はDisplayPort 2.1b×3、HDMI 2.1b×1の4系統

 RTX 5060 Tiを搭載するのが「ZOTAC GAMING GeForce RTX 5060 Ti 16GB TWIN EDGE OC」だ。ブーストクロックを定格の2,572MHzから2,602MHzまで向上させた同じくファクトリーOCモデルだ。より上位のGPUを搭載したカードに比べるとグッとコンパクトなのが特徴で、カード長が220.5mm、2スロット厚に収まっており、小型PCにも組み込みやすい。補助電源は以前からの8ピンなので古めの電源ユニットでも使えるのも強みだ。

16GB版のRTX 5060 Tiを搭載する「ZOTAC GAMING GeForce RTX 5060 Ti 16GB TWIN EDGE OC」。ツインファンで、カード長は短めの220.5mm。
バックプレートを搭載。こちらも後部が大きくカットされている
カードを端子側から見たところ。基板はRTX 5070搭載カードよりもさらに短い。ヒートシンクがクーラーの端まで延びているのは同様
補助電源は以前からの8ピンでカードやや後方にある
出力はDisplayPort 2.1b×3、HDMI 2.1b×1の4系統

地力の差はビデオメモリ容量だけでは埋まらないが大容量必須な用途の“入門機”としては有用

 単純なハードウェア面に着目して見ると、カードがコンパクトで補助電源も8ピンなことから対応できるPCが幅広い、という点でZOTAC GAMING GeForce RTX 5060 Ti 16GB TWIN EDGE OCのほうが扱いやすい。一方で価格差は1万3,000円ほどとそこまで大きな差ではなく、特にゲームにおいてはほとんどのシーンでGPU性能の差(=CU数の多さ)から、RTX 5070のほうが性能はやはり上。

 ただし、ビデオメモリ16GB環境を要求されるモンスターハンターワイルズの高解像度テクスチャパックのように、ビデオメモリ容量12GBだと“動作しない”あるいは“足りない”シーンも徐々に増えてきた。また、AI用途では、そもそも16GB以上のビデオメモリがないと動かないアプリもある。GPUの単純性能の差もあるので過信は禁物だが、「そもそも動かない」と「動く」の間には越えられない大きな壁がある。もっと本格的にAI用途に活用するなら、より上位のGPUを選ぶべきだが、まずは大容量ビデオメモリを使うAI用途も試してみたい、ということであれば、RTX 5070 Ti以上の上位モデルに比べればぐっとお求めやすいRTX 5060 Tiは一つの選択肢となり得る。

 ゲーム性能を重視するなら、現状ではGPU性能を重視してRTX 5070を選んでおくのが手堅いチョイスと考えてよいだろう。しかし、小さいとは言えない価格差もあるので、予算的な制限があるならば、今後のビデオメモリ容量要求増に備える意味も含めて、RTX 5060 Ti 16GBも損のないアイテムと言える。最終的には用途と予算をベースにジャッジしてみていただきたい。