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PCIe Gen 5 SSDは高速&低発熱の新時代へ突入!Crucialの最新モデル「Crucial T710/P510」と旧世代との対決で見えた進化

最速か高コスパか。選択肢が広がった新世代のM.2 SSD text by 芹澤 正芳

 Micronの個人向けブランド「Crucial」から最新のPCI Express Gen 5 SSDが登場した。ハイエンドモデルの「Crucial T710」とエントリークラスの「Crucial P510」だ。

 同社のPCIe Gen 5 SSDは、この2モデルが3世代目。旧世代のPCIe Gen 5 SSDと性能や発熱を比較し、何がどう変わったのか。PCIe Gen 5 SSDの“ハイエンド”と“エントリー”という位置付けの違いはどのあたりにあるのか。ベンチマークテストなどを通じてチェックしていく。

最新コントローラーで14,900MB/sに到達した「Crucial T710」

 Crucialの新たなPCIe Gen 5 SSDハイエンドとして登場したのが「Crucial T710」だ。

MicronのCrucial T710

 PCIe Gen 5対応のSilicon Motion SM2508コントローラー(8ch、最大3,600MT/s)とMicronの276層第9世代3D TLC NANDを組み合わせ、最大シーケンシャルリード14,900MB/s、ライト13,800MB/sを実現。前世代のCrucial T705が最大シーケンシャルリード14,500MB/s、ライト12,700MB/sだったので、さらに底上げされた。PCIe Gen 5 x4の理論値が約16,000MB/sなので、ほぼ限界に到達していると言ってよいだろう。

【T710の主なスペック】
容量1TB2TB4TB
型番CT1000T710SSD8CT2000T710SSD8CT4000T710SSD8
インターフェースPCI Express 5.0 x4
コントローラーSilicon Motion SM2508
NANDフラッシュメモリMicron 276層第9世代3D TLC NAND
DRAMLPDDR4 1GBLPDDR4 2GBLPDDR4 4GB
シーケンシャルリード14,900MB/s14,500MB/s
シーケンシャルライト13,700MB/s13,800MB/s
総書き込み容量(TBW)600TB1,200TB2,400TB
保証期間5年
実売価格33,000円前後47,000円前後77,000円前後

 コントローラーのSM2508はTSMC 6nmプロセスで製造された新世代のコントローラーで、12nmプロセスのものに比べて消費電力50%削減をうたっているのが大きな特徴だ。速度面のピーク性能を向上させつつ、コントローラーの消費電力は最大3.5Wに抑制。これにともなって発熱も抑えられているという。

T710の基板全景
コントローラーは8chのSilicon Motion SM2508を採用。TSMC 6nmプロセス製造で高速かつ低発熱、低消費電力を実現
NANDフラッシュメモリはMicronの276層第9世代3D TLC NANDを搭載。最大3,600MT/sだ

 容量のラインナップは1TB/2TB/4TB。現在Crucialの公式ページでは詳細は明らかになっていないが、Webサイトの写真にもあるように、ヒートシンク付きモデルも予定されているとのことだ。

2025年8月末時点では日米のCrucialのサイトには詳細な情報がないが、製品Webページには、LEDを内蔵したヒートシンク付きモデルの写真が掲載されている

Phisonの新コントローラーで低価格Gen 5を実現「Crucial P510」

 Micronは2025年にもう1機種、PCIe Gen 5 SSDを投入している。PCIe Gen 5 SSDのエントリークラスにあたる「Crucial P510」だ。

MicronのCrucial P510。T710と同様にシンプルなデザイン

 NANDフラッシュメモリは、T710と同じMicronの276層第9世代3D TLC NANDだが、コントローラーにDRAMレス対応のPhison PS5031-E31T(4ch、最大3,600MT/s)を組み合わせることで、低価格、低発熱となっているのが最大の特徴だ。

 最大シーケンシャルリード11,000MB/s、ライト9,500MB/sとGen 5 SSDとしてトップ性能ではないが、それでもGen 4 SSDのハイエンドクラスよりも高速だ。価格を抑えつつ、Gen 5対応のM.2スロットを活かしたいと思っている人にはオススメと言える。

【P510の主なスペック】
容量1TB2TB
型番CT1000P510SSD8CT2000P510SSD8
インターフェースPCI Express 5.0 x4
コントローラーPhison PS5031-E31T
NANDフラッシュメモリMicron 276層第9世代3D TLC NAND
DRAMなし
シーケンシャルリード11,000MB/s10,000MB/s
シーケンシャルライト9,500MB/s8,700MB/s
総書き込み容量(TBW)600TB1,200TB
保証期間5年
実売価格17,000円前後32,000円前後

 Phisonの第1世代のGen 5対応コントローラーと言えるPS5026-E26はTSMC 12nmプロセス製造だったが、PS5031-E31TではTSMC 7nmプロセス製造を採用し、低消費電力、低発熱を実現。1TB/2TBをラインナップし、こちらもヒートシンク付きが用意されている。

P510の基板全景
コントローラーは4chでDRAMレス対応のPhison PS5031-E31T
NANDフラッシュメモリはT710と同じくMicronの276層第9世代3D TLC NANDを採用
P510はヒートシンク付きモデルも販売中。比較的薄型でも表面積を十分に確保した構造で、使い勝手はよさそうだ

Crucialの歴代Gen 5 SSDと全面対決

 ここからは性能テストに移ろう。比較対象として、Micron初のGen 5 SSD「Crucial T700」とさらにスペックを強化した「Crucial T705」を用意した。すべて2TBモデルで統一している。それぞれのスペックは以下にまとめた。

【ベンチに使用したCrucial SSDの主なスペック】
モデルT710P510T705T700
型番CT2000T710SSD8CT2000P510SSD8CT2000T705SSD3CT2000T700SSD3
インターフェースPCI Express 5.0 x4
コントローラーSilicon Motion
SM2508
Phison
PS5031-E31T
Phison
PS5026-E26
NANDフラッシュメモリMicron 276層
第9世代3D TLC NAND
Micron 232層
3D TLC NAND
DRAMLPDDR4 2GBなしLPDDR4 2GBLPDDR4 2GB
シーケンシャルリード14,500MB/s10,000MB/s14,500MB/s12,400MB/s
シーケンシャルライト13,800MB/s8,700MB/s12,700MB/s11,800MB/s
総書き込み容量(TBW)1,200TB1,200TB1,200TB1,200TB

 検証に使用するSSD以外の検証環境は以下の通り。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-14900K(24コア32スレッド)
マザーボードASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 5060 搭載カード
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5
(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSDM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 4.0 x4)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
電源1,000W(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(24H2)

 まずは、データ転送速度を測る定番ベンチマークの「CrystalDiskMark 9.0.1」から見てみよう。

CrystalDiskMark 9.0.1の計測結果

 シーケンシャルリードではT710とT705は同等だが、シーケンシャルライトではT710が1,000MB/s以上上回った。ランダムリード、ライトも優秀だ。注目はP510だろう。シーケンシャル性能はほぼ公称通りだが、ランダム性能を見るとT705やT700を上回る。DRAMレスながらレスポンスのよさが垣間見える結果だ。

 次はOffice系、クリエイティブ系、ゲーム系などさまざまなアプリの動作をシミュレートするPCMark 10のFull System Drive Benchmarkを試そう。アプリに対するレスポンスのよさを確認できるテストだ。

PCMark 10のFull System Drive Benchmarkの計測結果

 ここではT710とT705がほぼ同スコアとなった。6,200超えは素晴らしく高いスコアで、アプリのレスポンスや処理速度は優秀だ。現時点での現役最速SSDと言ってよいだろう。エントリークラスということでT710のスコアには及ばないものの、P510の4,561というスコアも十分高く、トップレベルのGen 4 SSDを上回るものだ。

 続いて、ゲームの起動やロード、コピー、録画しながらのプレイなどゲーム関連のさまざまな処理をシミュレートする3DMarkのStorage Benchmarkを実行していこう。総合的なスコアに加えて、個別の結果からゲームロード時のバンド幅を抜粋したものも掲載する。

3DMark Storage Benchmarkの計測結果
3DMark Storage Benchmarkのゲームロード時のバンド幅の計測結果

3DMark Storage Benchmarkでは2,500以上のスコアで「高速」と判定されるが、6,000超えは凄まじい高さだ。ここでもT710とT705は激しいトップ争いとなった。P510もハイエンドGen 4 SSDを余裕で上回るスコアとなり、ゲーム用途でも十分優秀だ。

 続いて、TxBENCHを使用して連続で書き込みを実行した際の温度を確認する。マザーボードのヒートシンクを取り付け、バラック組の状態でテストしている。室温はエアコンで25℃に調整した。テストは5分間連続して行ったが、P510のみ終盤(約4分30秒すぎから)に転送速度が若干回復し、温度が再上昇するという状況が観測されたため、ここでの比較では、P510のデータは4分30秒までの値に着目したものとしている点をご了承いただきたい。

5分間連続書き込み時の温度(P510のみ)

 注目したいのはT710、T705、T700の温度差だ。T710はT705とほぼ同等の性能を見せたが、最大温度は11℃、平均で6℃も温度が低くなっている。さらに性能で明確に上回るT700よりも温度は低い。TSMC 6nmプロセスで製造されたSM2508コントローラーはそのうたい文句にあるとおり、高性能、低発熱であることが確認できた。

 P510はさらに低発熱で、T710よりもさらに最大6℃、平均9℃も低い。ハイエンドGen 4 SSDを上回る性能を持ちながら、小型のPCケースでも余裕を持って運用できるGen 5 SSDと言ってよい。

 最後に、SLCキャッシュの推定容量と挙動についてまとめておく。T710は最初10,000MB/s前後で約380GB書き込んだ時点で切れて速度低下が起こり、その後は3,950MB/s前後で推移。P510は開始6,500MB/s前後で約71GBで切れてその後は2,000MB/s前後で推移した。

 旧モデルについては、T705は開始8,000MB/s前後で約224GBで切れてその後は3,920MB/s前後。T700は開始7,500MB/s前後で約225GBで切れてその後は3,630MB/s前後で推移した。T710はキャッシュ量も多く、その後の速度も優秀だ。大容量のデータを扱う人には魅力的に映るだろう。

5分間連続書き込み時の温度および転送速度の推移。P510は終盤に転送速度が若干回復し、それに伴って温度が再度上昇している

“使いやすいGen 5 SSD”が予算別に選べるようになった

 Crucial T710はGen 5 x4接続の限界に近い性能を見せながら、前世代ハイエンドのT705よりも低発熱を実現するなど、確かな進化を見せた。現役最高峰の性能を求めるなら“コレ!”と言える存在だ。一方のCrucial P510はハイエンドGen 4 SSDを上回る性能を持ちながら低発熱、かつ2TBモデルは最安で3万円を切る店舗もあるなど導入しやすさが強みだ。

 かつてのように、巨大なヒートシンクを取り付け、PCケース内のエアフローを十分に確保する、というような細やかな気遣いは、エントリーモデルのP510はもちろん、ハイエンドのT710であっても不要になった。使い勝手の改善は、パフォーマンスの向上と同様に、大きな製品の進化・改善と言える。パフォーマンス志向のハイエンドユーザーはもちろん、コスト重視のユーザーでもGen 5 SSDが選択肢に入れられるようになった今回のラインナップ拡充。Gen 5 SSD対応のマザーボードを持っているなら、今こそ導入のタイミングではないだろうか。