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コストを抑えてRyzen 9000シリーズ用マザーを選ぶなら、機能充実で堅牢なASUSのB850搭載モデルを要チェック!

オススメのミドル~アッパーミドルCPUでの性能検証も実行 text by 芹澤 正芳

 ゲーム向け最強CPUとして君臨するAMD Ryzen™ 7 9800X3Dを筆頭に、AMDのRyzen 9000/8000/7000シリーズが利用できるAM5プラットフォームが絶大な人気を集めている。高いCPU性能に加えて、最低でも2026年までサポートが約束されているので将来性も高いためだ。

 発売当初は品薄続きだったRyzen 7 9800X3Dは安定して購入できるようになったほか、発売当初は7万円前後だった8コアのAMD Ryzen™ 7 9700Xは5万円前後に、5万5,000円前後だった6コアのAMD Ryzen™ 5 9600Xは3万4,000円前後となり、ミドル~アッパーミドルレンジモデルの買いやすさが一段と増している。

 そのためAM5環境への移行や導入を考えている人もいるだろう。そこで今回は機能とコストの“バランスよし!”と言えるAMDの最新ミドルレンジチップセット「B850」搭載マザーボードを紹介していく。

 ASUSは、ゲーム、クリエイター、高耐久、エントリーなど多彩なモデルを展開しているが、どれもが堅牢な設計による確かな安定性で年間販売トップシェアに贈られる「BCN AWARD」マザーボード部門を20年連続で受賞。その安心感が長期にわたるユーザーの支持につながっている。それは最新モデルでも同様だ。

ラインナップ充実のB850搭載モデル

 AMDの最新世代チップセットには、高機能から順にX870E/X870/B850/B840の4種類がある。いずれもCPUはAMDのRyzen 9000/8000/7000シリーズに対応。今回注目する「B850」はミドルレンジに位置するチップセットで、X870E/X870との違いは、USB 4がオプション扱い、ビデオカード用のx16スロットがPCI Express 4.0が基本仕様である点だ。ただ、実際の製品ではほとんどのx16スロットはPCI Express 5.0に対応しているため、機能差はそこまで大きくない。USB 4が不要ならB850は良コスパと言える。

最新のRyzen 9000ほか、Socket AM5対応CPUをサポートするミドルレンジチップセット、AMD B850を搭載したASUSのマザーボード
【チップセットスペック比較】
チップセット名B850B840X870EX870
CPUソケットAM5AM5AM5AM5
CPU OC×
メモリDDR5DDR5DDR5DDR5
メモリ OC
CPU
PCIe 5.0 レーン数
4×2424
CPU
PCIe 4.0 レーン数
2024××
接続バス4.0 x43.0 x44.0 x44.0 x4
チップセット
PCIe レーン数
8
(PCIe 4.0)
10
(PCIe 3.0)
12
(PCIe 4.0)
8
(PCIe 4.0)
SATA4484
USB 4オプションオプション

 ASUSのB850搭載モデルは、ラインナップが豊富。拡張性、Wi-Fiの有無、カラーリング、サイズなどで細かく分けられており、予算や目的に合わせて選びやすくなっている。また、従来と同じくROG STRIX、TUF Gaming、PRIMEの各ブランド/シリーズを展開しているのに加え、エントリー向けとして「AYW」や「MAX」を冠する製品も加わった。

 PCの組み立てをより簡単にしてくれるデザインコンセプト「Q-Design」の仕様・機能を積極的に取り入れているのも大きな特徴だ。M.2 SSDをツールレスで着脱できる「M.2 Q-Release」(M.2ヒートシンク用)および「M.2 Q-Latch」(M.2 SSD用)、ビデオカードをちょっと傾けるだけでロックを外せる「PCIe Slot Q-Release Slim」やボタンでロックを解除できる「PCIe Slot Q-Release」、Wi-Fiのアンテナを挿し込むだけで取り付けられる「Q-Antenna」、パーツの動作トラブルをLEDで確認できる「Q-LED」などがあり、いずれもベテランから初心者まで、PC自作の助けになるだろう。

M.2スロットのヒートシンクをワンタッチで取り外せる「M.2 Q-Release」
Wi-Fi用のアンテナを挿し込むだけで固定できる「Q-Antenna」

配線を美しく仕上げられる「BTF」対応が追加

 ほとんどのコネクタ類をマザーボードの裏面側に配置することで、表面からケーブルをなくすことができ、より見栄えのするPCに仕上げられるのがASUSの「BTF(Back-To-the-Future)」だ。

B850チップセット搭載でBTF対応の「TUF GAMING B850-BTF WIFI W」。見栄えするホワイトカラーだ

 BTF対応製品には、マザーボード、ビデオカード、PCケースがある。ビデオカードは補助電源を最大600W給電できる専用のコネクタにすることでケーブル接続を排除。PCケースはBTFマザーボードのコネクタ類に対応するスペースが設けられている。BTFはASUSだけではなく多くのPCパーツメーカーが参加しており、今後の拡充が期待されるところだ。

 また、前世代のB650チップセット搭載マザーボードにはBTFに対応するものはなかったが、B850ではホワイトカラーの「TUF GAMING B850-BTF WIFI W」が対応。ミドルレンジ仕様でも、ピラーレスのPCケースと組み合わせて美しい仕上がりを目指すことも可能となった。

BTFではほとんどのコネクタ類がマザーボードの裏面側に配置されている
x16スロットの後ろ側に最大600W給電可能な専用スロットを用意。BTF対応ビデオカードと組み合わせることで補助電源ケーブルの接続を不要にする

ASUSのB850マザーボードは複数のブランド/シリーズを展開中

 ASUSは用途、機能、デザイン、コストなど幅広いニーズに応えられるように複数のブランド/シリーズを展開している。B850搭載マザーボードでは主要ブランド/シリーズに加えて、ゲーム向けのエントリークラスとして「AYW」と「MAX」が追加された。ここでは改めて製品ラインナップの位置付けを紹介しておこう。

ゲーム目的の最適解「ROG」

ROG STRIX B850-A GAMING WIFI(写真左)、ROG STRIX B850-I GAMING WIFI(写真右)。堅牢で大規模な電源回路にそれをしっかり冷却する大型のヒートシンクなど充実したスペックの「ROG」。ホワイトカラーやMini-ITXもあり、見た目やサイズのこだわりにも柔軟に対応できる

 ASUSは複数のゲーミングブランドが存在するが、そのトップに立つのが「ROG」(Republic of Gamers)だ。B850マザーボードでは「ROG STRIX」を冠する製品を展開しており、長時間高負荷な状態が続くことを想定した強力な電源回路、M.2スロットのすべてにヒートシンクを搭載、ゲームに没頭できる低ノイズのサウンド機能など充実の内容。オーバークロックにも挑戦できるスペックをそろえ、幅広い用途に対応できる。PCIe Slot Q-Release Slimをはじめ、Q-Designも幅広く取り入れており、組み立て作業がしやすいのも強み。

質実剛健の高耐久設計「TUF Gaming」

TUF GAMING B850-PLUS WIFI(写真左)、TUF GAMING B850M-PLUS WIFI(写真右)。耐久性を重視したまさに“タフ”な設計が一番の特徴だが、硬派なデザインと良好なコストパフォーマンスもポイント。ATXとmicroATXサイズをラインナップしている

 LEDなどの装飾を最小限にしてコストを抑えつつ、耐久性の高い“ミリタリーグレード”のコンデンサやコンポーネントを採用し、安定性と信頼性を高めているのが「TUF Gaming」だ。電源回路も強力なものを採用、ARGBコネクタや高音質のオーディオなども搭載しており、ゲーミングはもちろんのこと、ドレスアップやクリエイティブワークなど幅広い用途に手堅く対応できるのも大きな特徴と言える。Q-Designを数多く採用しており、組み立てやすさも良好だ。

必要な機能をシンプルにまとめた「PRIME」

複数の拡張スロットとM.2スロットを備えるPRIME B850-PLUS WIFI-CSM(写真左)や、Wi-Fiをなくして価格をより抑えたPRIME B850M-A-CSM(写真右)などを展開。ATXとmicroATXサイズが用意されている

 必要十分な機能を搭載し、幅広いニーズに応えられるのが「PRIME」だ。スタンダードやメインストリームに位置付けられているシリーズで、電源回路や一部のM.2スロットにヒートシンクを搭載し、コストを抑えつつも冷却力や安定性はしっかり確保されている。ブラックとシルバーのツートンカラーも特徴的。Wi-Fiを搭載せずに、より低価格を重視したモデルもあり、予算に合わせて選びやすい。コストを抑えるため、Q-Designの導入はQ-Antennaなど一部に絞られている。

ASUSのオススメB850マザーボード・2025年9月版

 それでは、ここからはB850チップセット搭載でオススメのマザーボードを紹介しよう。今回は、装備も拡張性も充実の“ROG”から1枚、microATXサイズでも堅牢な電源回路を備える“TUF Gaming”から1枚チョイスした。また、B850チップセットのマザーとの組み合わせに適したアッパーミドル~ミドルレンジCPUを使用したベンチも併せて掲載する。

大規模な電源回路と充実の拡張性「ROG STRIX B850-F GAMING WIFI」

ゲーミングらしいハデさと力強さを感じさせるデザイン。電源回路のヒートシンク上部にはLEDが内蔵されている
【ベンチマークテスト結果】
Ryzen 7 9800X3DRyzen 5 9600X
Cinebench 2024
(Multi/Single)
1,346/133955/135
PCMark 10 Standard9,7619,480
3DMark FireStrike37,97235,267
3DMark SpeedWay4,1074,081
【検証環境】メモリ:DDR5-6000 32GB、ビデオカード:RTX 5060 Ti 16GB、SSD:M.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 4.0 x4)、OS:Windows 11(24H2)

 「ROG STRIX B850-F GAMING WIFI」は、80A対応SPSを16+2+2フェーズで構成する強力かつ大規模な電源回路を搭載する製品だ。電源部は2枚の分厚いヒートシンクが搭載され熱対策も盤石。AMD Ryzen™ 9 9950X3Dなど最上位クラスのCPUで、高負荷の状態が続いても安定して最大限性能を引き出せる。

16+2+2フェーズの80A SPSという高出力対応かつ大規模な電源回路を採用。ヒートシンクも分厚いものを搭載している
バックパネルインターフェイス。USB 20Gbps Type-Cをはじめ、12基ものUSBポートを搭載。2.5Gの有線LAN、Wi-Fi 7など充実の内容

 M.2スロットは4基もあり、すべてにヒートシンクを搭載。さらに2基はPCI Express 5.0 x4対応と高速なストレージ環境を構築可能だ。さらにバックパネルだけでUSB 20Gbps Type-Cなど合計12基、フロントパネル用のコネクタも含めると全部で19基もUSBポートを搭載しており、多くのデバイスを接続したいというニーズにも応えられる。

 ビデオカード用のPCI Express 5.0 x16スロットは、メタルシールドの強化型なのに加えてビデオカードをわずかに傾けただけでロックが外れるPCIe Slot Q-Release Slim仕様なので、大型サイズもスムーズに抜き挿しが可能だ。

CPUに近いPCI Express 5.0 x4対応のM.2スロットは分厚いヒートシンクを採用、ワンタッチで取り外しも可能だ。PCI Express 5.0 x16スロットはPCIe Slot Q-Release Slim仕様
M.2スロットは4基も用意されており、すべてにヒートシンクを搭載。2基はPCI Express 5.0 x4対応だ

 ネットワーク機能は、2.5Gの有線LANとWi-Fi 7を搭載。Wi-Fi 7は160MHzの2.9Gbps対応と高速なワイヤレス通信が行える。さらにWi-FiのアンテナはQ-Antennaなので、バックパネルに挿し込むだけで取り付け完了。アンテナは大きめなので、Bluetoothの長距離での安定接続も期待できる。

 オーディオはハイエンドモデルでの採用例が多いALC4080チップに、Savitech SV3H712アンプを組み合わせた「ROG SupremeFX」を搭載。高品質なコンデンサや分離回路設計も加わり、S/N比110dBの超低ノイズ環境を実現している。ファンコネクタを4基、CPU、水冷ポンプ用も加えると合計で7基もあり、強力な冷却環境を構築したいというニーズに応えられるのもポイントだ。

主なスペック

・拡張スロット:PCIe 5.0 x16×1、PCIe 4.0 x4(x16形状)×1、PCIe 4.0 x1×1
・主なインターフェース:M.2(PCIe 5.0 x4接続)×2、M.2(PCIe 4.0 x4接続)×2、SATA 3.0×2、USB 20Gbps×1、USB 10Gbps×4、USB 5Gbps×6、USB 2.0×8、DisplayPort 1.4、HDMI 2.1×1
・LAN:2.5GBASE-T×1
・無線:Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4

microATXでも堅牢な電源回路を搭載「TUF GAMING B850M-PLUS WIFI」

ミリタリーグレードの耐久性に優れた設計に加えて、硬派なデザインもTUF Gamingシリーズの特徴だ
【ベンチマークテスト結果】
Ryzen 7 9800X3DRyzen 5 9600X
Cinebench 2024(Multi/Single)1,330/131958/135
PCMark 10 Standard9,7989,571
3DMark FireStrike38,00335,192
3DMark SpeedWay4,0974,085
【検証環境】メモリ:DDR5-6000 32GB、ビデオカード:RTX 5060 Ti 16GB、SSD:M.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 4.0 x4)、OS:Windows 11(24H2)

 TUF GamingシリーズのmicroATXモデル「TUF GAMING B850M-PLUS WIFI」。このサイズとしては堅牢で大規模な14+2+1フェーズで80A DrMOSの電源回路を搭載しているのが大きな特徴だ。厚めのヒートシンクも備えており、上位CPUを使ってコンパクトなハイエンドPCを作りたいというニーズにもマッチする。M.2スロットは3基あり、すべてにヒートシンクを搭載。1基はPCI Express 5.0 x4対応とストレージの拡張性も高い。

14+2+1フェーズ(すべて80A)のDrMOSを採用する電源回路。microATXサイズとしては大規模でヒートシンクも厚めのものが採用されている
M.2スロットはmicroATXでは多めの3基。すべてにヒートシンクを搭載と冷却力も確保されている

 拡張スロットはビデオカード用のPCI Express 5.0 x16、PCI Express 4.0 x1が用意されている。ファン用のコネクタが6基、ARGB用コネクタが3基があり、microATXサイズとしては充実しているのもポイント。

 バックパネルは一体型でUSBポートはUSB 20Gbps Type-Cなど12基も用意されており、数多くのデバイスを同時に接続できる。ネットワーク機能は2.5Gの有線LAN、Wi-Fi 6Eが備わっており、必要十分だ。メモリスロットは4本あり、DDR5-8000までサポート。容量は最大256GBまで搭載できる。

バックパネルインターフェイス。12基ものUSBポートに、2.5Gの有線LAN、Wi-Fi 6Eなど充実の装備
ファン用コネクタを6基、ARGB用コネクタを3基備えているので冷却力を高めたい、ドレスアップしたというニーズにも応えやすい。SATAも4基サポート

 Q-Designも充実。5.0 x16スロットはワンタッチでロックが外せるPCIe Slot Q-Release仕様でM.2 SSDを押すだけで固定できるM.2 Q-Latch、動作トラブルをLEDで知らせるQ-LED、Wi-Fiのアンテナは挿し込むだけのQ-Antennaが備わっている。

 従来のLANポートよりも落雷や静電気に強いTUF LANGuard、耐腐食性に優れるステンレス鋼のバックパネル、メモリスロットやPCI Express 5.0 x16スロットは強化型などTUF Gamingらしいタフな作りも特徴だ。

主なスペック

・拡張スロット:PCIe 5.0 x16×1、PCIe 4.0 x1×1
・主なインターフェース:M.2(PCIe 5.0 x4接続)×1、M.2(PCIe 4.0 x4接続)×2、SATA 3.0×4、USB 20Gbps×1、USB 10Gbps×4、USB 5Gbps×6、USB 2.0×7、DisplayPort 1.4×1、HDMI 2.1×1
・LAN:2.5GBASE-T×1
・無線:Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3

選びごたえ抜群。ASUSのミドルレンジマザーボード

 今回は、ROG STRIX、TUF Gamingのマザーボードをピックアップしたが、ASUSのB850搭載モデルには、今大人気のAMD Ryzen シリーズのハイエンドモデルも十分に活かせる機能を備えつつ、さらにコストを重視した製品や、新たに加わった裏面コネクタ採用の「BTF」モデルなど、多彩な製品がラインナップされている。予算や用途、“作ってみたい”デザインなどに合わせて、ベストな1枚を探してみてはいかがだろうか。