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NASが凄く進化していたの知ってた!?障害/メンテでも“止まらない”高可用性にAI検索で変わるデータの価値、QNAPの最新技術をCOMPUTEXで聞いてきた
(COMPUTEX AKIBA出張所 / QNAP編)
- 提供:
- QNAP
2026年6月24日 00:00
QNAPと言えば、個人ユーザーには「NASの会社」としてよく知られている。一方で、ビジネスユーザーの間ではエンタープライズクラスの性能要求に応えるストレージおよびネットワークソリューションの会社として存在感が高まってきている。
そんな同社が「COMPUTEX 2026」で出展していたブースでは、企業の幅広い業務を支えるストレージやネットワーク機器が目白押し。「高可用性(High Availability : HA)」をキーワードに、障害が発生したりメンテナンスを行う際に、動作を止めることなく対応できるモデルをアピールしていた。簡単に説明すると、システム自体を二重化/分散化したり、バックアップ動作のためのCPUや電源を組み込んだり、データに冗長性を持たせるなどの機能が該当する。NASが提供するサービスを止めないための機能が今回の目玉だ。
また、「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Max-Q」(以降RTX PRO 6000)を搭載したNASを使い、自然言語を使ったローカルNAS上での画像・映像検索機能を実演。特定のシーンを検索したり、特定の条件を満たす人物のみが映っているシーンがスムーズに検索できるデモが行われていた。
ハイエンドクラスの製品を通して、QNAPは何を目指しNASをどのように進化させていこうと考えているのか、担当者に話をうかがった。
コントローラーが故障しても停止させない「高可用性」モデル「データを止めない」かつ「データを失わない」ストレージを提供
――最初に、QNAPが目指していることをお聞かせください。
[QNAP]現在我々が注力しているのは、「データを止めない」かつ「データを失わない」ストレージ基盤の実現です。中堅〜エンタープライズ企業をメインのターゲットとしながら、AI時代に求められるデータ処理インフラとして、映像制作・医療・製造業など、ストレージのダウンタイムが業務に直結する業種へのアプローチを強化しています。より高い可用性の実現を目指し、製品開発を行っています。
――「データを止めない」という点では、具体的にどのような取り組みがありますか。
[QNAP]搭載した複数のドライブに分散してデータを保存することで、いくつかのドライブ故障してしまったとしてもデータを復元できるようにしているのが、NASをはじめとするQNAPのストレージソリューションの重要な機能であり、役割でもあります。
ただ、故障するのは搭載ドライブだけではありません。ストレージを制御するコントローラー部分も経年劣化などによって故障することがあり、そうなるとドライブが無事でもアクセスが不可能になります。
コントローラー故障時のインパクトは、ストレージの大容量化が進むほど指数関数的に大きくなります。ユニットを丸ごと交換しなければならず、別ユニットの調達・ストレージ移設・起動確認といった作業が即座に必要になり、調達リードタイムそのものがダウンタイムになってしまいます。数十TBを超えるようなデータを抱えていれば、その間の業務停止コストは計り知れません。
それに対する我々の1つの回答が、コントローラー部分のアクシデントにおいてもダウンタイムをゼロにする「デュアルアクティブ・アクティブコントローラー」を採用した「ES1686Adc」をはじめとするESシリーズです。
これは、1つの筐体にデュアルコントローラー、つまりCPUを含むロジックボード部分や電源を2つ内蔵しているものです。普段は2つのコントローラーが協調して冗長化された(複数の)ストレージを制御し、万一どちらかのコントローラーが故障したときには、瞬時にもう一方のコントローラーに全体の制御を切り替え稼働し続ける仕組みになっています。
故障したコントローラーは取り外し、新しいコントローラーに交換することで、元のデュアルアクティブ・アクティブコントローラーに復旧できる構造になっています。これにより、故障時だけでなくファームウェアアップデートのような通常は一時停止が免れないメンテナンス時にも、平常通り稼働し続けられます。
――ターゲットとしてはやはり大規模システムを運用している企業ということになりますよね。
[QNAP]24時間365日、1秒たりとも止めたくないシステムを運用しているなら、こうしたシステムの価値を高く感じていただけるものと思います。従来のストレージのように、数年ごとに新しい筐体を購入して大規模なデータ移行を行う、といった作業が不要で、クラスター全体を長期間運用し続けることができ、将来的な再投資コストの削減にも貢献します。
他には、コストと可用性のバランスを取ったアクティブ・パッシブ構成のストレージソリューションもラインアップしています。この場合は一方が待機状態のため、アクティブな方でトラブルが発生してから切り替わって再稼働するのに数秒はかかりますが、一時的な停止が許容されるサービスにはコストと機能面で良い構成です。
――デュアルアクティブ・アクティブコントローラーに代表されるようなシステムの安定稼働以外の面で、今ストレージに求められている機能などはありますか。
[QNAP]NASをはじめとするストレージソリューションの多くでは、筐体に内蔵するストレージを追加して容量拡張していく(スケールアップする)ことはこれまでも比較的容易にできました。
しかし、1つの筐体内に搭載できるストレージの数や容量の上限は大きくなく、それらを制御するコントローラー部分は変わらないため性能を上げられません。古い機材のままでは業務の変化に追従できない可能性があり、大きな課題となります。
増え続けるデータや、AIの導入によって多様化・複雑化する業務プロセスに対応するには、より高い処理性能をもつストレージに移行し続けるしかありません。しかし、そうすると移行のタイミングでたびたび業務が停止しかねないのもネックになります。
こうした課題を解決するのが、スケールアウト型と呼ばれるストレージです。台数を増加させることで容量だけでなく処理能力も向上させられるタイプのストレージになります。
弊社のモデルであれば、OSにQuTS MEGA Scale-outを採用するストレージノード「QSN-3000」や「QSN-3050」などが該当します。単一ノードに3.5インチSATAストレージを12台、2.5インチSATAストレージを6台、計18台搭載できる2Uサイズで、この筐体を最低3台から最大96台まで、必要に応じて1台ずつ追加(スケールアウト)し、PB(ペタバイト)クラスの容量にも対応します。
これは、再利用する機会が少ないデータのバックアップというよりは、常にアクティブに使い、しかも増加し続けるデータを保管しておく用途で活躍します。例えば医療分野の研究機関におけるゲノム解析のような領域で活用されています。
ノード単位で故障しても全体の停止にはつながらず、稼働し続けながらノードの追加もできます。1台に集約するよりも複数ノードで分散させる方が、冗長性・拡張性・運用コストの面で有利ですので、我々としてはPBクラスのストレージ環境にはスケールアウト型を強く推奨しています。
RTX PRO 6000搭載NASでローカルAI実行、コスト削減にも寄与検索はAI活用で大幅進化、これまではできなかったことが可能に
――今回、RTX PRO 6000を搭載した「QAI-h1290FX」など、ローカルAI処理が可能なNAS製品を展示していました。これらを開発した経緯を教えてください。
[QNAP]企業などの組織では、オンプレミスでの推論や、学習データの保管・管理のニーズが急増しており、そうした用途をカバーできる高スループット・低レイテンシなNASの需要が高まっています。
「QAI-h1290FX」にオプションで搭載できるRTX PRO 6000は、96GBの大容量・広帯域なVRAMを備えているので、その性能を活かして巨大なAIモデルによる推論処理、高度な学習処理を実行できます。ローカルAIであれば社外秘のデータをAIに処理してもらうのも問題ありません。
一般的なビジネス用途としては、たとえばNASに保存している数年分の経営データ、売上データなどを元にレポートやプレゼン資料を作成したり、帰宅する直前に翌日使う資料の作成をAIに依頼して夜の間にまとめてもらったり、といった活用方法が考えられます。
また、2026年5月に発表して以降、研究機関やソフトウェア開発会社などから多数の引き合いをいただいています。大容量データをAIで分析するとなると、クラウドAIではコストが青天井となりますが、ローカルAIなら24時間稼働させても(電気代以外は)料金がかかりません。ストレージとGPUが1つになったこのシステムは、そうした点で理にかなっていると考えています。
――想定されている具体的な用途を教えてください。
[QNAP]主な用途としては、「社内データの安全なAI活用」、「最新のAIエージェントの導入」、「変化の激しいAIトレンドへの柔軟な対応」の3つが挙げられます。
まず、社内ナレッジの活用という点では、RAGベースの社内検索システムや、次世代のAIアシスタント「QuAgent」といったQNAP独自のAIソリューションをすぐに構築したいというニーズに対応します。
さらに、自社ツールにとどまらず、サードパーティ製の最先端AIを活用したいという要望にも応えられます。従来のLLMやRAGはもちろん、近年注目を集めている「OpenClaw」や「Hermes Agent」などのAIエージェント、TTS(音声合成)、画像・動画生成モデルにいたるまで、幅広いアプリケーションを組み込んで運用可能です。
また、Ollama、vLLM、llama.cppといった主要な推論フレームワークに対応しているため、Gemma、Qwen、DeepSeek、gpt-ossなどの主要なオープンモデルを、自由に選択・切り替えることができます。
つまり、QAI-h1290FXは「あらゆるAIツールを載せる柔軟な器」であり、お客様はAI市場の急速な進化に合わせて、社内のAIシステムを自由にアップデートしていけます。これらを支える96GBの大容量VRAMは、大規模モデルを単独で動かすだけでなく、vLLMによる複数ユーザーからの同時並列推論(同時アクセス)にも余裕を持って対応できます。
――NAS上のローカルAI用ツールはどういった形で使えるようになっているのでしょうか。
[QNAP]QNAPのNAS用OSであるQuTS hero上では、ローカルAI処理を実現する代表的なソフトウェアを一覧し、NASに簡単にインストールできるようにもしています。
AnythingLLMやOpen WebUIといったAIツール、画像・動画生成を行なうStable DiffusionやComfyUIなど、用途や好みに合わせて選べますし、もちろん他のAIツールも手動インストール可能ですので、ローカルAIの利便性の高さをすぐに実感していただけることと思います。
――既存のAIモデルデータの保管や、新たなAIモデルの生成(RAGやファインチューニングなど)には大容量ストレージが不可欠だと思います。そうした場面において、NASにGPUを直接搭載するアプローチは、アーキテクチャとして理にかなった環境と言えるのでしょうか。
[QNAP]はい、非常に理にかなっています。その理由は、AI処理(特にLLMの推論)が持つ特有の課題を、NASとGPUの統合が見事に解決できるからです。
まず前提として、現在の主要なオープンモデル(Gemma、Qwen、DeepSeek、gpt-ossなど)は、パラメータ数や量子化精度、KVキャッシュ、コンテキスト長などによって変動するものの、数GBから数百GBという膨大なメモリとストレージ容量を必要とします。
加えて、AI処理において極めて重要なのが「データとモデル(GPU)の距離」です。RAG(検索拡張生成)やAIセマンティック検索を実用的な速度で動かすには、ベクトルデータベースやソース文書への高速なアクセスが不可欠であり、これがそのまま推論のレイテンシ(遅延)を左右します。もしデータを持つNASと、処理を行うGPUサーバーが物理的に別筐体になっていれば、ネットワーク通信がボトルネックとなり、データ転送のオーバーヘッドや帯域コストが常に発生してしまいます。
そこで、NASにGPUを統合するという選択が活きてきます。データとコンピュート(計算資源)が同一筐体内に同居することで、転送オーバーヘッドは実質ゼロになります。さらに、NASが本来最も得意とする「大容量ストレージ」「高速なI/O」「データ保護機能」を、そのままAIのワークロードに活かせるようになります。これはAI処理のアーキテクチャとして、合理的かつ理想的な構成です。
また、運用の柔軟性という面でも強みがあります。QNAP NAS上でDocker形式やLXD形式のコンテナを統合的に管理・実行するための専用アプリ「Container Station」を活用すれば、Ollama、vLLM、llama.cppといった主要な推論エンジンをアプリ上で手軽かつ柔軟にデプロイできるため、お客様の用途に合わせて最適なAI環境をいつでも選択・構築することが可能です。
――将来的にユーザーが好みのビデオカードを追加できるモデルの投入なども検討していますか。
[QNAP]SOHOやカスタム向けのラインナップには、すでにユーザー側でGPUを追加・換装できるPCIe拡張対応モデルが存在します。SOHOや中小企業のお客様であれば、まずは手持ちのGPUやミドルクラスのGPUからスタートし、必要に応じて段階的にAIワークロードを拡張していくことが可能です。
ここで、GPUの用途の変化と、それに伴うQNAPの対応の進化について少しお話しさせてください。
数年前までのGPU搭載NASの主な用途は動画のトランスコードやエンコード処理であり、ユーザーのニーズもそこに収まっていました。当時のGPUはサイズも消費電力も比較的小さかったため、従来のNASの筐体設計にそのまま収まるものだったのです。
しかし近年のAIブームにより、GPUを取り巻く環境は一変し、急速に大型化・高消費電力化が進んでいます。たとえばRTX PRO 6000クラスになると、カードのサイズ、300W~600Wに達する電源容量、そして冷却設計のすべてにおいて、これまでのNASの前提を大きく超えてしまいます。
そこでQNAPは、拡張性のある筐体や強化された電源・冷却システムといった「ハードウェア設計」から、Container Station、GPUパススルー、AI向け管理ツールなどの「ソフトウェア」にいたるまで、AI新世代に向けて全面的にアーキテクチャを見直してきました。その到達点の一つが「QAI-h1290FX」です。
私たちは「最初からQAI-h1290FXクラスのハイエンド機を導入する」という選択肢だけでなく、「手持ちのNASにGPUを追加してAIを始める」「ビジネスの成長に合わせてアップグレードする」というアプローチも大切にしています。今後はこの段階的に拡張していけるAI NASの選択肢を、より幅広い価格帯やフォームファクタで広げていく方針です。
――少し戻りますが、GPU活用の例としてAIセマンティック検索の話も出ていましたが、従来の検索とどう違うのか教えてもらえないでしょうか。
[QNAP]従来のキーワード検索には、実は業務上の多くの限界があります。たとえば、わずかな誤字・脱字やOCRの読み取り精度の問題でファイルが見落とされてしまったり、「EV」「電気自動車」「電動車」のように同じ概念であっても表記が異なれば別物として扱われてしまったりします。さらに、画像や図表、グラフに埋め込まれた“意味”までは検索できず、「自動車業界」といった上位概念での横断的な検索も困難でした。
これに対してAIセマンティック検索は、文書やデータの持つ“意味”をベクトルとして理解します。そのため、言葉の表現が違っていても、概念が近ければ的確にヒットさせることができます。
具体的な活用例を3つご紹介します。
1つ目は、「表記揺れを超えた検索」です。たとえば「電気自動車のバッテリー技術」と検索した際、社内文書内に「EV」「リチウムイオン電池」「車載電源システム」といった異なる言葉しか使われていなくても、概念的な関連性をAIが判断して資料をしっかりと見つけ出します。社内で部署や人によって使う用語がバラバラであっても、過去の情報資産を確実に発掘できるようになります。
2つ目は、「上位概念からの横断検索」です。例えば新規顧客への提案資料を作成する際、「自動車業界向け提案」と検索すると、A社向け、B社向け、C社向けといった形式で過去に提案を行った資料が傾向ごとに分けられ、自動的に候補資料としてあげられます。さらに、規模や業歴が類似している他業界の企業への提案資料まで、横断的に参照することも可能です。
3つ目は、「VLM(Vision Language Model:視覚言語モデル)を組み合わせた視覚情報の検索」です。PDFに埋め込まれた図表や製品写真、設計図面、グラフ、手書きのメモまでがインデックスの対象になります。これまでテキスト化が難しく、実質的に眠っていた膨大な情報資産が、初めて検索可能なデータへと生まれ変わります。
このように、長年NASに蓄積されてきた過去のデータ資産が、AIの力によって初めて本当の意味で“生きたデータベース”になる。これこそが、QNAPがAIセマンティック検索に力を注いでいる最大の理由です。
「NASへ届く前」に脅威を叩くQNAP ADRAスイッチとNASの連携が実現するNDRソリューションも
――今回ブースではセキュリティ関連の製品も大きくアピールされています。ランサムウェア対策として「QNAP ADRA」が紹介されていますが、どのような経緯で生まれたソリューションなのか教えていただけますか。
[QNAP]QNAP ADRAの生まれた背景は、サイバー攻撃の手口が高度化する中で、「入口を守るだけでは不十分」という認識がセキュリティ業界全体で広まってきました。ランサムウェアや内部侵入型の攻撃は、ファイアウォールをくぐり抜けてネットワーク内部に潜伏し、じわじわと被害を拡大させます。
QNAPとしても、NASがターゲットになる攻撃事例を多数把握しており、「NASに到達する前に、ネットワーク内で脅威を検知・封じ込める仕組みが必要だ」という判断から生まれています。ユーザーからのセキュリティ強化要望と、QNAPとしての能動的な取り組みの両面があると言えます。
ネットワークスイッチ側でデータのパケットに異常を検知した際、NASにそのデータが届く前に遮断して被害を防ぐ機能になります。
――パケットの監視など、データに異常があるかなどの処理はCPU性能が高いNASで行った方が高速かつより強固な仕組みが利用できそうなイメージがありますが、機能としてはネットワークスイッチ側に搭載するのがベストなのでしょうか?
[QNAP]「NASの方がCPUが強力なのに、なぜネットワークスイッチに?」というのは自然な疑問です。答えは「ネットワークスイッチはネットワーク上のすべてのポートを支配下に置ける」という点にあります。
ネットワークスイッチはネットワーク内を流れる全パケットをリアルタイムに監視できる立場にあります。一方、NASは「自分宛の通信」しか直接見ることができず、NASに到達してからでは手遅れになるケースが多い。これがQSWシリーズ(Security Switch)をプラットフォームとして選んだ理由です。
ただし、実際の脅威判断には処理能力が求められます。そこで今回ソリューションではすべての処理をネットワークスイッチだけで行うのではなく、NASとの協調動作になっています。各機器の役割と担当について、実際の処理の流れに沿って見ると以下のようになります。
まず、ネットワークスイッチである「QSW」が全ポートのパケットを常時監視し、怪しい通信を検知します。次に、検知された通信の詳細な解析と脅威の最終判断を、ADRAエンジンを搭載した「QNAP NAS」が実行します。そして、その判断結果に基づき、NASからスイッチ(QSW)に対してポートの遮断といった具体的な制御指示が出される仕組みになっています。
ネットワークスイッチが「目と耳」、NASが「頭脳」として機能するイメージです。これにより、検知の網羅性と判断の精度を両立しています。
従来の境界型セキュリティ(外からの侵入を防ぐ)から、ゼロトラスト(内部も含め常に疑う)へのシフトが加速しています。この流れの中で、ネットワーク内部の挙動を常時監視するNDR(Network Detection & Response)は、ゼロトラストを実装する上で不可欠なレイヤーになってきています。ネットワークインフラを担うスイッチが、内部の不審な動きをキャッチする役割を持つのは、アーキテクチャとして非常に理にかなっています。
NDRは、ネットワークを常時監視し、不正な通信(不正アクセス、サイバー攻撃など)を自動で検知して遮断する機能です。以前は、NDRはセキュリティ機能を備えた高額なセキュリティアプライアンスの専売特許でしたが、QNAPのNDR対応NASと、NDR対応スイッチを組み合わせることで同等の機能を実現できるようになりました。
また、セキュリティ機能をなるべくコストを抑え「追加」できるソリューションもラインアップしています。その1つが「TS-x73A」シリーズなどのNDR対応NASです。このモデルは通常QTSオペレーティングシステムで動作しますが、ZFSベースのQuTS heroオペレーティングシステムに切り替えて使用することも可能です。
QuTS heroを採用するNASを所有していれば、対応スイッチと組み合わせるだけで追加料金なしにNDRを利用できます。新たにアプライアンス製品を導入する必要がなくなり、コスト節減につなげられますので、小規模な組織や部署単位での導入もしやすくなるはずです。
――QNAPでは、SD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)とVPNを組み合わせた「QuWAN SD-WAN」サービスが提供されています。ネットワークのセキュリティを高めるのにVPN環境は有効なのでしょうか。また、「QHoraシリーズ」のエッジルーターにはリアルタイム侵入防御を行うIPS(Intrusion Prevention System、不正侵入防止システム)機能が搭載されていますが、こうした機能などもルーターは標準的に備えるべき要件になっていくとお考えですか。
[QNAP]ゼロトラストの時代になっても、ゲートウェイ面の防御が不要になるわけではありません。ランサムウェアを例にとると、侵入経路はインターネット越しの通信ですし、C2サーバー(攻撃者の指令サーバー)との通信も外部とのやり取りになります。
最終的なデータの持ち出しもネットワークのゲートウェイを通過します。なので、この境界のポイントを「QHoraシリーズ」のIPS機能のシグネチャベース検出およびリアルタイムブロックでしっかりと捕捉し、侵入を阻止することは、現在もそしてこれからも引き続き非常に有効な防御手段です。
シグネチャベース検出やリアルタイムブロックといった「IPS機能はルーターの標準機能になっていくか?」という点については、私たちはYESだと考えています。サイバー攻撃の件数・巧妙さが増す中で、パケットフィルタリングや異常検知は、ネットワーク機器が備えるべき基本要件になりつつあるからです。
また、「QuWAN SD-WAN」についても、拠点間の通信を安全に暗号化しつつ一元管理できるため、多拠点展開する企業のセキュリティ水準を底上げする効果があります。VPNと比較した場合でも、運用の柔軟性やネットワーク全体の可視性(見える化)という面で、SD-WANには大きな優位性があると考えています。
監視カメラの映像確認をチャットから。怪しい人物も即特定
――ブースでは監視カメラにフォーカスした展示も目を引きました。こちらもAIの活用などが目につきましたが、機能を紹介していただけますか。
[QNAP]QNAPのNASでは多様なメーカーのIPカメラ(監視カメラ)を一元管理する「QVR Surveillance」という機能を用意しています。これを2026年秋にアップデートし、自然言語による映像即時検索を可能にする予定で、そのデモを展示しました。
――QVR Surveillanceの概要について教えてください。
[QNAP]QVR Surveillanceは、QNAPのNAS上で動作するビデオ監視管理プラットフォームです。IPカメラの映像をNASに直接録画・管理でき、別途専用NVR(ネットワークビデオレコーダー)を用意する必要がありません。
VLM・MCP対応により、従来の「録画して後から確認する」受動的な監視から、「リアルタイムで意味を判断し、自律的に対応する」能動的な監視へと進化しています。
従来バージョンでも、あらかじめ文章やキーワードを登録しておくことで映像検索はできていました。それに対し新バージョンでは、事前にワード登録しておかなくても、その場で気になった文章を入力すればマッチする映像データを表示します。
たとえば「弁当を持った人」と入力して検索を実行すると、NASに保存された監視カメラ映像から見つけ出して表示します。また、NASのローカルAIやChatGPTなどのクラウドAIと組み合わせることもでき、さまざまな応用が可能です。
AIツールのチャット画面から文章で指示すると、監視カメラの稼働状況や、どんな特徴をもつ映像が何件あるのか、といった統計情報などを取得して人間が理解しやすい形で表示します。QVR SurveillanceのUIから操作した場合には把握に手間がかかるようなことも即座に回答します。
QVR SurveillanceとAIツールとの連携には、ChatGPTやClaudeなどで動作カスタマイズに用いられる「スキル」機能を使用していますので、普段使っているAIツールからこのスキルを有効化して利用できるようにするのも容易です。
NASに保存しているファイル検索ツール「Qsirch」も進化しています。NASに搭載したGPUの性能を活かして画像・映像を自然な文章や音声入力で検索でき、目的のデータを素早く、効率的に見つけることができるようになっています。
――VLMやMCPはコンシューマーのNASでもあると嬉しい機能だと思いますが、ゆくゆくは普及モデルなどにも搭載していきたいと考えていますか。
[QNAP]VLMやMCPは現在エンタープライズ・プロフェッショナル向けが中心ですが、ローカルAI処理の民主化という大きな流れの中で、コンシューマー上位機・普及モデルへの展開も視野に入れています。
ホームユーザーにとっても「自宅の防犯カメラ映像をAIが意味的に理解して通知してくれる」体験は非常に価値があります。処理負荷の軽量化やエッジAIの進化とともに、段階的に普及モデルへの搭載を検討していく方針です。
エンタープライズレベルの技術が個人ユーザーでも触れられるように
――こうしたエンタープライズ向けの機能はいずれコンシューマー製品にも取り入れられるのでしょうか。
[QNAP]今回ブースで紹介しているものの多くは現時点ではエンタープライズ向けの技術ではありますが、そこで培った高可用性・高信頼性の設計思想は、コンシューマー向けのモデルにも順次フィードバックしていきます。もちろん搭載チップの進化を待たなければ実装できない機能などもありますが、「データを止めない」かつ「データを失わない」ための製品開発は、セグメントを問わず一貫した理念になっています。
また、ローカルAIへの注目度が高まり、大規模データを扱うニーズは大企業だけでなく中小企業や個人にも広がってきています。必然的にNASのようなストレージソリューションが欠かせない、ということになると思いますが、ただ大容量にするだけではデータの蓄積に従って管理が困難になり、故障時のリスクも高まります。
QNAPでは、そうした課題に対してNAS用OSが備えるスナップショット機能(データ整合性を考慮した差分記録)のようなソフトウェアレベルでカバーし、さらにハードウェアレベルで高可用性・高信頼性を担保しています。
今後NASを選ぶ際には、AI時代に適応可能な可用性や信頼性があるかどうかという観点も重要です。そういったことを頭の片隅に置いていただければ幸いです。



































