【 2012年10月18日 】
TrinityのGPU特性をチェックしてみた、高クロックメモリで性能アップ
メモリ次第で大きく変わる性能、“フルHDでゲーム”も現実的に   Text by 瀬文茶


Trinity最上位の「A10-5800K」
 去る10月2日、AMDからデスクトップ版Trinityこと第2世代AMD Aシリーズ APUが発売された。

 強力な内蔵GPUのグラフィックス性能が注目を集めるデスクトップ版Trinityだが、グラフィックス性能とメモリクロックの関係性に関してはあまり知られていない。

 そこで、今回、最上位モデル「A10-5800K」を使い、メモリクロックによってグラフィックス性能がどう変わるのかテストを行った。.

 DDR3-1333〜DDR3-2133までの4パターンでチェック

 TrinityやLlanoなど、AMDがAPU(Accelerated Processing Unit)と呼ぶ製品が、CPUとGPUを統合したプロセッサであることは、本誌の読者であれば既にご存知の事だろう。これらの製品が備えるGPUには、ビデオカードのように専用のビデオメモリが用意されていないため、メインメモリの一部をビデオメモリとして利用している。

 今回行うテストの趣旨は、APUがビデオメモリとして利用するメインメモリの動作クロックが、APUのグラフィックス性能にどの程度影響を与えるのかチェックするというものだ。

 テストはTrinityが正式サポートするDDR3-1333/DDR3-1600/DDR3-1866と、さらに伸びしろがあるのかチェックするため、オーバークロック動作となるDDR3-2133の計4パターンでベンチマークテストを実施してみた。なお、メモリはすべて4GB×4枚の構成で動作させている。

 使用したメモリは下記の4モデル。


DDR3-1333対応品
SUPER TALENTW1333UX8GV

DDR3-1600対応品
AMDAE38G1609U2K

DDR3-1866対応品
G.SKILLF3-1866C9Q-16GAB

DDR3-2133対応品
CORSAIRCMZ16GX3M4X2133C11R

・テストPCの構成
APUAMD A10-5800K
マザーボードGIGABYTE GA-F2A85X-UP4(A85X)
起動ディスクIntel SSDSC2MH120A2K5(120GB)
OSWindows 7 Professional(64bit)
 ・各メモリの動作設定値
・DDR3-1333対応品 CL 9-9-9-24(電圧1.50V)
・DDR3-1600対応品 CL 9-9-9-28(電圧1.50V)
・DDR3-1866対応品 CL 9-10-9-28(電圧1.50V)
・DDR3-2133対応品 CL 11-11-11-28(電圧1.50V)


 メモリで大きく変わるGPU性能、スコアが2倍になる例も

 それではベンチマーク結果を紹介する。今回は「3DMark 11」と「PSO2キャラクタークリエイト体験版」のベンチマーク機能を利用して、メモリクロックによるグラフィックス性能の変化をチェックした。GPUのドライバはテスト時点で最新のCatalyst 12.8を使用している。

 まず、3DMark 11だが、下記のような結果となった。


メモリクロック別3DMark 11スコア

 最も動作クロックの低いDDR3-1333と、最も動作クロックの高いDDR3-2133では、総合スコアやGraphics Scoreで約20%、最も差の大きいScoreでは約36%の差がついている。

 続いて、PSO2のベンチマークスコアの結果。ベンチマークはゲーム内のグラフィッククオリティを選択可能だったので、中画質に相当すると思われる「簡易描画設定:3」と、最高画質に相当すると思われる「簡易描画設定:5」の2パターンで行った。


メモリクロック別PSO2ベンチマークスコア(簡易描画設定:3)

メモリクロック別PSO2ベンチマークスコア(簡易描画設定:5)

 3DMark 11以上にメモリクロックの差がスコアに反映されており、DDR3-1333とDDR3-2133では1.8〜2.1倍もの大差がついている。DDR3-1333とDDR3-2133をデュアルチャンネルで動作させた場合、理論上の最大メモリ帯域はそれぞれ約21GB/sと約34GB/sなので、このスコア差はメモリ転送帯域の上昇率を上回る結果だ。

 3DMark 11とPSO2で、メモリクロックの変更によるパフォーマンスの変化量には差があったが、どちらのテストにしてもメモリクロックの向上に伴いベンチマークスコアも上昇している。どの程度影響するのかはケースバイケースだが、メインメモリの動作クロックがAPUのグラフィックス性能に影響を与えていることはこの結果から確認できる。


 高クロックメモリでゲームはより快適に、フルHD/高画質設定で妥協無く遊べるタイトルも

 メインメモリの動作クロックがAPUのグラフィックス性能に影響を与えることは、ベンチマークテストの結果で確認できたが、このパフォーマンスアップは実際のゲームシーンでどの程度の恩恵をもたらすものなのか。ゲームのフレームレートをリアルタイム表示可能な「Fraps」を用いて、DDR3-1333とDDR3-2133で動作させた際のfpsを測定した結果を紹介する。

 まずは「Call of Duty:Modern Warfare 3」だ。fps測定時の解像度は1920×1080ドットで、描画設定は設定可能な最高画質に設定して行った。

 測定地点はACT1:BLACK TUESDAYのスタート地点で、DDR3-1333動作時は29fps、DDR3-2133動作時は41fpsを記録している。メモリクロックの向上により、約4割ほどfpsがアップしたことになる。

 通しでプレイした訳ではないが、DDR3-1333動作時に30fpsを割り込むようなシーンが目立ったのに対し、DDR3-2133動作時は概ね30fps以上を維持できていた。十分に高クロックメモリの恩恵を十分感じられる結果だ。

 それにしても、CoD MW3をフルHD解像度でプレイ可能なレベルで動作させられることには驚いた。この設定では60fpsには届いていないとは言え、A10-5800KのGPUが実用性のあるものだということを改めて認識させられた。


DDR3-1333メモリ使用時

DDR3-2133メモリ使用時

グラフィッククオリティの設定

© 2012 Activision Publishing, Inc. ACTIVISION, CALL OF DUTY, MODERN WARFARE, CALL OF DUTY MW3, CALL OF DUTY BLACK OPS and stylized roman numeral II are trademarks of Activision Publishing, Inc. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.


 続いてはファンタシースターオンライン2(PSO2)。こちらは1920×1080ドット時と1280×720ドットの2つの解像度で、グラフィッククオリティは最高の「簡易描画設定:5」に設定して行った。測定地点はチュートリアルステージの開始地点だ。

 DDR3-1333動作時の測定結果が、1280×720ドットで48fps、1920×1080ドットでは29fpsであったのに対し、DDR3-2133動作時にはそれぞれ69fpsと42fpsであった。ベンチマークテストで記録した1.8〜2.1倍という差には届かないものの、44%前後パフォーマンスが向上している。


DDR3-1333メモリ使用時(1280×720)

DDR3-2133メモリ使用時(1280×720)

DDR3-1333メモリ使用時(1920×1080)

DDR3-2133メモリ使用時(1920×1080)

© SEGA




 最後はBATTLEFIELD 3だ。fps測定時の解像度は1920×1080ドットで、描画設定を低にしている。

 測定結果はDDR3-1333動作時が18fps、DDR3-2133動作時が25fpsとなっており、約39%の差がついた。ただ、いずれも30fpsにも満たない結果となっており、高クロックメモリ使用によるパフォーマンスアップは確認できるものの、快適にプレイできるレベルには達していない。

 描画設定やビデオメモリsのボトルネック以前に、DirectX 11世代のFPSであるBATTLEFIELD 3のフルHD解像度動作は、A10-5800KのRadeon HD 7660Dには荷が重いようである。


DDR3-1333メモリ使用時

DDR3-2133メモリ使用時

© 2012 Electronic Arts Inc.


 Trinityを使うならメモリクロックにこだわりたい

 今回行ったテストの結果から、メインメモリの動作クロックはA10-5800Kのグラフィックス性能を大きく左右し得る要素であることはお分かりいただけだろう。

 最近は4GBメモリの2枚セットであれば、DDR3-1333対応品とDDR3-2133対応品の価格差は2,000〜3,000円程度になっており、新規に用意するのであれば高クロックメモリを選んでもそれほど大きな負担にはならないだろう。また、DDR3-1333対応品とDDR3-1600対応品の値差はほぼ無い状態なので、内蔵GPUの性能を引き出したいのであれば、なるべく高クロックなメモリと組み合わせて使うことをお勧めしたい。

 高クロックメモリへの投資を高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれだが、ビデオカードが搭載出来ないコンパクトなPCなど、APUの性能がPCのグラフィックス性能を決定するような用途なのであれば、組み合わせるメモリの動作クロックにこだわる価値はある。

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AMD A10-5800K

※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。