週刊3Dプリンタニュース

「親子3Dプリンタ教室」体験記

~パーソナル3DスキャナもMakerBotから登場~

 今回で3回目となった「週刊3Dプリンタニュース」、今回は親子向け3Dプリンタ教室のレポートと、パーソナル3Dプリンタの雄「MakerBot」が発表したパーソナル3Dスキャナの話題をお届けしよう。

小学生でも楽しめる!親子3Dプリンタ教室

親子3Dプリンタ教室は、水道橋のコワーキングスペース「ネコワーキング」で開催された。ネコと一緒に仕事ができるスペースだが、夏の間はネコはいないとのこと
教室にはMakerBot Replicator 2が置かれており、子供たちがその動きに見入っていた。奥にいるのが、講師の石井氏
石井氏は、普段からMoIを使ったモデリング講座を担当しており、説明は丁寧でわかりやすい

 8月17日と18日、親子対象の3Dプリンタ教室「夏休みに3Dプリンターでつくろう!親子でパソコン工作教室!!」が、東京・水道橋のコワーキングスペース「ネコワーキング」で開催された。

 この教室は、3Dプリンタを利用した最先端のモノづくりを手軽に体験できるというもので、一般社団法人3Dデータを活用する会(3D-GAN)と東京03の共催で実施された。筆者も小3の娘と共に参加してきたので、その様子を紹介する。この教室は、8月17日の10時~13時、14時~17時、8月18日の10時~13時、14時~17時の4回行われたが、筆者と娘は17日の14時からの回に参加した。

 この教室で講師を務めたのは、3D-GAN理事の石井正明氏である。まず、3Dプリンタでのモノづくりの概要を説明、次にメインである3Dモデリングの実習が行われた。3Dモデリングソフト「MoI」を利用して、実際に3Dモデリングを体験するというものだ。

 この教室は、あくまで子供が主役であり、基本的には子供が3Dモデリングソフトの操作を行い、操作が難しいところは親が助けるという形で実施された。MoIは、この種のソフトとしては操作しやすいほうだが、やはり初めて3Dモデリングを行う子供が、一から3Dモデルを作成するのはちょっと無理があるので、あらかじめ用意された基本形状を元にモデリング作業を行い、各自オリジナリティを加えて3Dモデルを完成させるという手順で行われた。

 最初に、ビューの切り替え方法やオブジェクトの回転や移動、拡大縮小、部品の選択操作といった基本操作を一通り練習してから、実際のモデリングを開始した。

初めてMoIに触れる娘だが、すぐに操作に慣れて、サクサクと作業を進めていた。今回のモデリング作業中、9割くらいは娘が自分一人で操作していた
2つめにモデリングを行う「ソフトクリーム」。クリームのパーツがバラバラに配置されているので、サイズや位置を変更しながら積み重ねていく
作成した5つの3Dモデルの中から、一つ選んで、それを実際に造形してもらえる。娘は最後にモデリングした「部屋のネームプレート」を選択した。送られてきたのは1週間後で、なかなか綺麗に造形できていた。下部の左右には、4つめに作成したくまのフィギュアを縮小して入れている

 今回の教室で作成したのは、全部で5つの3Dモデル。操作手順は、石井氏がプロジェクター画面を利用して解説してくれるので、初めての3Dモデリングを行う子供も、すぐに理解していた。操作テキストやレポート執筆のための参考資料も配布されたが、こちらも丁寧でわかりやすい。

 5つの3Dモデルは、それぞれモデリングで重要な操作を学べるようにできている。例えば、最初に作成する「鳥かご」では、あらかじめ鳥かごの周りのワイヤの一部と土台、中に入る小鳥の身体と頭が用意されており、小鳥の頭を移動して、身体にくっつける操作や鳥かごの周りのワイヤを規則正しく増やす回転配列操作などを学べる。2つめの「ソフトクリーム」では、クリームを構成するパーツがバラバラの状態で用意されており、パーツの変形操作および球や円柱の追加操作を学べる。3つめの「ペットボトルキャップカバー」では、2Dのスケッチを描いて押し出すことで3Dのオブジェクトにする操作を学べ、4つめの「フィギュア」では、左右対称の形状を作成するミラー機能や、オブジェクト同士のブーリアン演算を学べる。最後の「部屋のネームプレート」では、文字のモデリングや、これまでに作った3Dモデルを縮小して、ネームプレートに貼り付ける操作も学べる。この5つの3Dモデル作成を行うことで、3Dモデリングの基礎が一通り学べるカリキュラムだ。

 最後の、自分達で作成した5つの3Dモデルの中から、好きな3Dモデルを一つ選び、事務局がそのデータを元に3Dプリンタで造形、後日、参加者に造形品が送られてくることになる。また、作成した3Dモデルデータは、持参のUSBメモリなどで持ち帰ることもできる。筆者の娘は、この教室での3Dモデリング体験がとても楽しかったようで、自宅でもMoIの体験版(30日間利用可能)を使って、自由にモデリングして遊んでいる。造形物は、受講からちょうど1週間後の8月24日に送られてきた。教室に置かれていたMakerBot Replicator 2で出力したと思われるが、造形物の出来も見事であった。

 教室の受講費用は親子一組で8,000円だが、作成した3Dモデルの造形料金も含まれていることを考えると、かなりリーズナブルだ(3Dプリンタ出力サービスを利用した場合、品質は高いが、これくらいのサイズでも数千円はかかるので)。3D-GANによる親子を対象にした3Dプリンタ教室は今回が初めてだが、参加者からの評判もよく、今後も続けていきたいとのことだ。

MakerBotからパーソナル3Dスキャナが登場

MakerBot Digitizerの外観。本体のサイズは41.1×47.5×20.3cm(幅×奥行き×高さ)で、重量は2.1kgと軽い

 8月22日、パーソナル3Dプリンタ「Replicatorシリーズ」で有名なMakerBotが、パーソナル3Dスキャナ「MakerBot Digitizer」(以下、Digitizer)を発表した。

 3Dスキャナは、その名の通り、3D物体をスキャンし、3Dデータを作成してくれる周辺機器である。3Dスキャナで得られる情報は、物体表面の点の位置の集合体(点群)で、アプリケーションが適切に補間を行い、3Dデータとして構成する。これまでもさまざまな3Dスキャナが開発・販売されているが、基本的には業務向け製品であり、その価格も数十万円から数百万円以上、物理的なサイズも大きかった。今回の「Digitizer」は、机の上に気軽におけるサイズ(41.1×47.5×20.3cm)で、本体価格も1400ドルと個人にも手が届く範囲に収まっている。Digitizerは同日予約を開始しており、出荷開始は10月中旬の予定だ。

 Digitizerは、スキャンしたい物体を置くためのターンテーブルと、スキャン用130万画素CMOSカメラ、クラス1のレーザー2基から構成されており、物体に当てられたレーザーによるパターンをカメラが読み取り、3Dデータを生成する仕組みだ。本体がコンパクトなため、スキャン可能な物体の大きさは直径20cm、高さ20cmの円筒に入るものまでとなる。分解能は0.5mmで、位置精度は±2mmである。生成される3Dモデルのポリゴン数は約20万で、スキャンにかかる時間は約12分である。業務用製品に比べると精度は低いが、個人が物体を気軽に3Dデータ化したいという用途には最適であろう。

 ただし、3Dスキャナがあるからといって、3D CADソフトや3D CGソフトを使った3Dモデリングが不要になるわけではない。当たり前だが、3Dスキャナは現実にある物体しかスキャンできず、さらに外から見えない内部の凹凸などは再現できない。とはいえ、こうした低価格なパーソナル3Dスキャナが普及すれば、小さな子供が粘土で作った物体を3Dスキャンして、3Dプリンタで複製して保存するといったことも簡単にできる。3Dプリンタと3Dスキャナの関係は、2Dプリンタと2Dスキャナとの関係にも似ており、3Dプリンタの使い道をさらに広げてくれることは間違いない。

(石井 英男)