週刊3Dプリンタニュース

3Dプリンタ大手「3D Systems」の副社長が来日、3Dプリンタの今後を語る

~3Dデータ共有サイトも続々誕生~

 先週はお盆休みで休載させていただいたが、週刊3Dプリンタニュースの第2回目をお届けする。

 今週は3Dプリンタ大手の一角、3D Systemes社の国内動向と続々オープンしつつある3Dデータ共有サイトの紹介だ。

3Dプリンタ大手「3D Systems」が語る業界動向「試作向け」から「量産向け」へ

JBCCホールディングス代表取締役社長の山田隆司氏

 3Dプリンタ市場は年々拡大しているが、3Dプリンタ市場で2強といえる存在が、3D Systems社とStratasys社である。どちらも米国の会社であるが、業務用3Dプリンタを中心に幅広い製品をリリースしており、3Dプリンタ市場を牽引している。3D Systems社は、CubeやCubeXといったパーソナル向け3Dプリンタも製造していることが特徴である。日本ではイグアスが3D Systems社の代理店となり、最近は、ヤマダ電機やツクモなど、量販店での販売にも積極的に取り組んでいる。

 8月8日に、3D Systems社の日本法人であるスリーディー・システムズ・ジャパンが、本社を東京・恵比寿に移転し、ショールームを開設したとのことで、報道機関や代理店などの関係者へのお披露目を行なった。また、8月14日には、3D Systems社副社長のミケレ・マルケサン氏の来日にあわせて、株式会社イグアスおよびその純粋持株会社であるJBCCホールディングス株式会社による3Dプリンタに関するメディア懇親会が開かれた。この懇親会では、JBCCホールディングスの代表取締役社長の山田隆司氏とミケレ氏が、3Dプリンタの現状や今後についてのプレゼンを行った。

イグアスの3Dプリンタへの取り組みについて。2014年3月期での3D関連の売り上げは、前年比+116%を計画している

 山田氏は、イグアスと3Dプリンタの関わりについて語った。

 イグアスは2005年に設立された事業会社であり、当初はIBM製品の付加価値をつけたディストリビューション事業やサプライ事業を主な事業としていたが、2009年から3D Systems社の代理店となり、同社製品の販売や保守事業を開始した。2012年には、渋谷に3Dプリンタショールーム兼スタジオとなる「CUBE」を開設した。CUBEは、ものづくり体験できる場を提供するために作られ、ケイズデザインラボやロフトワークと協同で、運営を行っている。

 イグアスの3D関連の売り上げは年々増加しており、今年度は前年比+116%の10億円を計画している。特に、今年度はパーソナル3Dプリンタ「Cube」の登場によって、SOHOや個人ユースが延びているという。

3D Systems社の副社長兼ジェネラルマネージャを務めるミケレ・マルケサン氏
3D Systems社が所有している7つの造形技術
3D Systems社のラインナップ、16万円~300万円のパーソナルモデルから1億円以上の業務用まで、幅広い製品を扱っている

 次に、3D Systems社の副社長のミケレ氏が、3D Systems社の沿革とイグアスとの関係について語った。

 3D Systems社は1986年に設立され、1987年に世界初の市販用光造形マシンを発表。2005年には大型SLSシステムを発表、2008年にはマルチジェットプリンタProJet HD3000の販売を開始した。約1000件の基本特許を取得しており、現時点では7種類の造形技術と100種類を超えるマテリアルをサポートする。イグアスは、ワールドワイドでも重要なパートナーであり、3Dプリンタを日本に普及させる上でも重要な役割を果たしているとした。

 3D Systems社の3Dプリンタは、車や運送分野のほか、航空機などでも広く使われており、最新戦闘機F-35では3Dプリンタで作られたパーツが45個採用されているとのことだ。車や航空機の次に大きな市場が医療分野であり、特に一人一人の器官の形状にあわせたパーソナル医療用機器の製造に3Dプリンタが使われている。

 こうしたBtoB市場はもちろん大きいが、3D Systems社が最近力を入れているのが、コンシューマー向け市場や教育分野である。簡単に3Dモデリングができるツールの開発にも力を入れており、iPad用の「Cubify Draw」やWindows用の「Cubify Sculpt」などをリリースしている。ミケレ氏は、3D Systems社のポリシーは「3Dプリンタの民主化」であり、今後は、3Dプリンタの用途がラピッドプロトタイピング(迅速な試作)らラピッドマニュファクチュアリング(迅速な量産)へと変わっていくというであろうと語った。3Dプリンティング技術は、クラウドやセンサー、モバイルなど他の技術と組み合わせることが重要であり、それによって今まで不可能だったことが可能になるという。

3D Systems社の3Dプリンタを導入している企業。ソニーやトヨタなど日本の大企業も3D Systems社の3Dプリンタを導入している
車や運送分野でも3Dプリンタが活用されている
最新の戦闘機にも3Dプリンタで使った部品が使われているという
車や航空機の次に大きい市場が医療分野であり、一人一人にあわせた医療用機器の製造に利用されている
最近、特に力を入れているのが、コンシューマー分野とのこと
例えば、スマートフォンのケースを自分の好きなようにカスタマイズして作るなど
3D Systemsが開発したiPad用アプリ「Cubify Draw」。指先一つで簡単に3Dモデル(実際には2.5Dといった感じだが)を作ることができる
3D Systemsが開発した3Dモデリングソフト「Cubify Sculpt」。3D入力デバイスを利用して、直感的な操作が可能
写真からフルカラーの3Dフィギュアを作るサービス「3DMe」も提供している
今後はクラウドやセンサー、モバイルなどと3Dプリンティング技術との組み合わせが重要になる
メディア懇親会は渋谷のFabCafeで行われ、ミケレ氏はプレゼン後、DJパフォーマンスを見せてくれた

3Dデータ共有サイトが続々オープン一から作らずとも「改良する楽しみ」を

3Dデータ共有サイト「3D CAD DATA.COM」。3Dデータの販売も可能だ
フィギュアデータに特化した3Dデータ共有サイト「DELMO」。正式オープンは8月下旬の予定

 3Dプリンタにとって、3Dデータが何よりも重要であることは第1回でも述べたが、3D CADソフトや3D CGソフトでデータを一から作るのは、ソフトに習熟していないとなかなか難しい。

 2Dのイラストや写真は、データを無料/有料でダウンロードできるサイトがいくつもあるが、3Dデータでも同様の共有サイトがあれば、気に入った3Dデータをダウンロードして、手元の3Dプリンタで出力することが可能になる。そのまま出力するだけでなく、ベースがあればディテールを追加するなどのカスタマイズが楽しめるというわけだ。海外では、MakerBotが運営するThingverseなど、3Dデータを共有するサイトがあり、数多くの3Dデータが公開されている。

 日本でもパーソナル3Dプリンタの盛り上がりを受け、8月7日にHanza Studioが3Dデータ共有サイト「3D CAD DATA.COM」の運営を開始、さらに株式会社アドウェイズ・ラボットも、3Dプリンタ用フィギュアデータ共有サイト「DELMO」を8月下旬にオープンする(現時点ではプレオープン中)。3D CAD DATA.COMでは、3Dデータの無料公開だけなく、有料販売もでき、投稿データの支持(Likeの獲得)が増えると、その獲得数に応じてフィラメントがもらえるというプログラムも提供されている。こうした3Dデータ共有サイトの登場は、パーソナル3Dプリンタの普及を後押しすることになるだろう。

(石井 英男)