忍者増田のレトロゲーム忍法帖

ゲーセン通いに一苦労の田舎少年、忍者増田が『ディグダグ』にハマった苦労話

~ナムコ『ディグダグ』編 壱ノ巻~

忍者増田氏とファミコン版『ディグダグ』
(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 忍者増田氏が名作レトロゲームを紐解き、その作品にまつわるエピソードや、今改めてプレイしてみての感想を語る連載「忍者増田のレトロゲーム忍法帖」。

 第二弾のタイトルはバンダイナムコエンターテインメントの戦略的穴掘りゲーム『ディグダグ』(ファミリーコンピュータ版およびWii用バーチャルコンソール アーケード版)。こちらを全四回に分けてお届けしよう。

(編集部)

『ディグダグ』は忍者増田が最初に熱中したアーケードゲーム

忍者増田氏の雄姿。『ディグダグ』の「ポンプアクションを意識している」とのこと

 今回のお題は『ディグダグ』(アーケードゲーム版は1982年登場)でござる。『ディグダグ』は、拙者がアーケードゲームで一番最初に夢中になった作品ではないかと思います。

 主人公の「ディグダグ」を操って地中を好きに掘り進める自由度の高さ。敵にモリ(銛)を撃ち込み膨らませてパンクさせるという退治法のユニークさ。そして岩を落として敵をまとめて倒すと高得点を獲得できるという戦略性……。

 などなど、今でこそこうして『ディグダグ』の魅力を冷静に分析できるでござるが、中学生だった当時は、プレイしていてただ感覚的に「おもしろい!」と思っただけでした。

 でも英語辞典で「dig」という単語を引き、「ああ、『DIG DUG』というタイトルは、“掘る”という意味のdigと、その過去形のdugを合わせた言葉なんだなあ。ウマいなあ」などと妙な部分に感心していたりはしました。中坊だから英語を覚えたいお年頃だったのです。ゴダイゴの『モンキーマジック』を頑張って日本語に訳そうとしたりもしてました。もちろん中坊にはとても無理だったけど。

ファミコン版『ディグダグ』(1985年発売)の箱とカセット。当時ナムコのファミコンゲームは、「ナムコット」というブランド名だった

田舎の少年がアーケードゲームをプレイする苦労

アーケード版のタイトル画面
※以下、アーケード版のゲーム画像は、Wii用バーチャルコンソール アーケード版を使用
アーケード版の最初のステージ。まだモンスターも少ない

 初めて拙者が『ディグダグ』をプレイした場所はどこだったのか、もうすっかり忘れてしまいましたが、きっと隣町のゲームセンターだったんじゃないかと思います。

 拙者の住んでいた町は、ゲームセンターなどない田舎町。ゲームセンターでゲームをプレイするには、隣町まで遠征しなければなりませんでした。でも、遠征とか単純に面倒くさいし、実行するにはできるだけ「友達と一緒」という条件も加えられます。なぜだかわかりますか?

 拙者のようなシャバ憎が1人で隣町のゲームセンターに行くと、見知らぬ不良どもに絡まれる可能性があるからです。当時はまだ拙者も忍者じゃなかったし、ゲーム少年がゲームをプレイするためには、それなりに苦労も伴う時代でござった。

 なので、地元でゲームをプレイするほうが楽だし、そうするに越したことはないわけです。ゲームセンターはなくても、地元でアーケードゲームをプレイする手立てはありました。喫茶店などに置いてあるテーブル筺体を狙うのです。

 当時、田舎の喫茶店でも、普通のテーブルに混じってポツンと1~2台、ゲームのテーブル筺体が置かれていたりすることがありました。家族で食事に行ったりしたときに、それを発見するわけです。親から「どこに食べに行く?」と聞かれると、拙者は必ずテーブル筺体が置かれている店の名前を答えていたものです。田舎の少年は田舎の少年なりに、そうやって貪欲にアーケードゲームをプレイしていたわけでござるな。

増田少年が住む田舎町にも『ディグダグ』がやってきた!! が……

 そんなある日、友達が『ディグダグ』のテーブル筺体が置いてある地元の喫茶店を発見しました。友達はいつも、その喫茶店に1人で行って思う存分『ディグダグ』をプレイしているということだったので、「俺も行く!」と一緒に行くようになりました。

 大好きな『ディグダグ』が近場でプレイできる……! 田舎の子供にとっては、金鉱を掘り当てたような喜びです。『ディグダグ』だけに。なーんて、微妙にウマくないですね。この喫茶店には喜々として通い詰めました。

ステージが進むにつれて地層の色が変わっていく。写真はアーケード版の5面
9面では地層の色がさらに濃くなっているのが分かる
ハイスコア獲得画面。スコアが大きく表示されてBGMが流れたあと、ネーム入れに移行

 でも、そんな幸せも当然終焉を迎えることになります。2~3人の中坊が喫茶店に入り浸り、メシも飲み物も注文せず、ただゲームだけをギャーギャーとプレイしている……。そんな状況を大人がいつまでも黙って見ているはずがありません。

 そのうち、店長だかオーナーだか、少々イカつい男の人が出てきて、「ここ喫茶店やろ? 子供だけで来てゲームをするのはアカンで」と言われてしまいました。怒るという感じではなく、優しく諭すように言ってくれたのが救いではありました。茨城の田舎町にある喫茶店のオヤジなのに、なぜか関西弁だったのを覚えているでござる。


 貪欲に『ディグダグ』をプレイしていた増田少年だったが、地元の喫茶店ではプレイができなくなってしまった。それでも『ディグダグ』が遊びたい増田少年は果たしてどうしたのか? 次回に続く。

 ※次回掲載は11月29日(火)で、同日には増田氏出演の生放送「忍者増田のレトロゲーム忍法帳:生動画絵巻」を実施予定。



注釈

  1. ディグダグ
    キャッチコピーは「戦略的穴掘りゲーム」。戦略的というだけあって、足止めや誘導を駆使して一気に岩石落としで高得点を狙うのが基本。でも、ついつい怖くなってプクプクポンで(モリでパンクさせて)倒してしまう。
  2. アーケードゲーム
    業務用ゲーム機械のこと。コンピュータゲームの他にもピンボールやクレーンゲームなども含まれる。日本での最初のブームといえばインベーダーゲーム。
  3. モンキーマジック
    「Monkey Magic」といえば西遊記。ゴダイゴの楽曲で、全編英語の歌詞。「ガンダーラ」と共に今でも口ずさめる人は、読者の中にもいるのでは?
  4. ゲームセンター
    アーケードゲームを遊ぶためのアミューズメントスポットだが、今とは違って店内が薄暗く、怖いお兄さん(高校生)がたむろしていたりした。
  5. シャバ僧
    その昔、怖い高校生ぐらいのお兄さん達が真面目な学生や根性の無い輩に向かって、バカにして使っていた言葉。あぁ、不良系マンガとか懐かしいですね。
  6. テーブル筐体
    喫茶店やレストランにおいてあったアーケードゲーム用の筐体。名前の通りテーブル型になっており、コーヒーカップなどを置いてプレイできるのが特徴。縦積みの100円玉がよく似合う。
  7. ネーム入れ
    アーケードで良いスコアを出した時に、3~8文字程度のアルファベットを入力できた。ちょっとしたヒーロー気分。ただし、大体は1日で電源が落とされるのでその日限りの命だったりする。

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

増田厚(ペンネーム:忍者増田)

 茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。