忍者増田のレトロゲーム忍法帖

忍者増田が力説! 『いたスト』に「運」での大逆転なし!?

~『いただきストリート』編 参ノ巻~

忍者増田氏と『いただきストリート ~私のお店によってって~』のファミコンカートリッジ。

 登場する個性的なキャラクターたちの魅力に加えて、「株」という要素によって奥が深くなった初代『いたスト』。プレイを振り返りつつ、『いたスト』の奥深さを紐解いていく。



差がつくと逆転するのが難しいゲーム。でも運による大逆転がないところがいい

ゲーム終了後は、このような成績表が表示され、自分のプレイ内容を振り返ることができる。
最後のマップ「宇宙星雲」で優勝すると、エンディングが見られる。キャラクターたちがロケットに乗って地球に戻っていく?

 『いたスト』は、自分がどれだけ買い物料を得たか、逆に払ったか、そして株でどれだけ儲けたかなどの数値を、プレイ後に成績表として出してくれます。この辺もプレイのモチベーションを上げてくれる、コンピューターゲームらしい要素ですね。

 株で勝つと、なんか頭を使って勝った感が大きいのでござる。買い物料の額で勝つのももちろん嬉しいけれど、サイコロ運が良くてたまたま相手が止まってくれたような気もしちゃうし。昔プレイしていたときも、株の儲け額トップでの勝利にこだわっていたことを思い出したでござるよ。

 『いたスト』を久しぶりにプレイして、思い出したことがもうひとつ。ゲーム終盤、資産に差がついてしまうと、なかなか逆転するのが難しいゲームだったなぁと。今回、『いたスト』を一緒にプレイしてくれた担当編集のT殿は、2戦とも後半の巻き返しができないまま最下位を迎えてしまいました。こういうところが『いたスト』の欠点という見方もできるかもしれません。ただ拙者個人は、『いたスト』の、運による大逆転がないところが好きなのでござるが。

 のちに発売された『カルドセプト』シリーズなんかは、非常に『いたスト』に似た要素を持つゲームだと思うんだけど、このゲームは高い土地に止まっても、戦いに勝てば金を払わずにその土地を奪い取ることが可能。『いたスト』に比べて逆転できる可能性が残されている仕様に、うまいなあと唸った記憶があります。ただ、『いたスト』より覚えることが多いゲームなので、そこは好みでござるな。拙者はどっちも好きです。

エンディングのスタッフロールのあとに表示されるサービス画面。何種類かあるらしいが、このけいこの画面が一番セクシー。
セクシーなエンディング画面を見て鼻の下を伸ばす増田氏。

『いたスト』シリーズでは初代の音楽とキャラクターが一番好き

 拙者は『いたスト』の続編も何作かプレイしていますが、一番やったのは2作目の『いただきストリート2 ~ネオンサインはバラ色に~』かなあ。マップ数も5から15に増え、いろんな物件が建てられる「空き地」の追加、そして突如ゲームに登場して買い物料の高い店に止まっていくキャラクター「マハラジャ」の存在など、様々な新要素が導入され、ゲームとして大幅にグレードアップしていました。

エンディングのスタッフロールには、ゲームデザインの堀井雄二氏ほか、当時のアスキー関係者の名前もズラリ。
今は亡き当時のログイン編集長、小島文隆氏の名前も。その下に書かれている「AKINA」というのは、まだゲームタイトルが決まっていなかったとき、ボードゲームを作るプロジェクトのコードネームとして名付けていたものらしい。当時の某関係者から、アイドルといえば中森明菜がいた時代なので、ミーハー的にそんな名前に決定した……ということを聞きました。

 でも、キャラクターと音楽に関しては、初代『いたスト』のほうが好きでしたね。初代『いたスト』のキャラクターデザインは荒井清和さん、音楽はゲヱセン上野さんが担当していました。拙者は当時、アスキーのログイン編集部に所属していて、おふたりも同じくこの時期にアスキーで働いていたので、よく知る方々ですが、決して身内贔屓でのヨイショではありません。

 音楽については、『いただきストリート サウンド・マップ』というサントラCDも買ったほど好きだったでござるからな。このアルバムは、上野さんがPC-9801のMIDIシーケンサーで作成したデータ(ファミコン用に変換する前のシーケンスデータ)を元に、戸田誠司さんがMacintosh IIとシンセサイザーでゴージャスなアレンジを施したという、今ではなかなか手に入らない名盤です。拙者は特に「アメリカ大陸」のBGMが好きだったなあ。

『いたスト』は『モノポリー』ライクなゲームで終わらない大秀作

 さて、今まで散々『モノポリー』の名を出してきましたが、『いたスト』はただの『モノポリー』ライクなゲームで終わっていないところがさすがだと思います。『モノポリー』的なルールをベースに、コンピューターゲームのいろんな良さを融合させた、完成度の高い大秀作というのが拙者の結論です。今初代をプレイしても充分に楽しめちゃうよ。

 ちなみに、例の親戚のお兄ちゃんは、拙者が薦めてから間もなくして、ファミコン本体と『いたスト』を買ったようでした。コンピューターゲームなんてほぼやらない人だったのに、家族みんなでハマっているという噂も聞きました。子供のころ、拙者に『バンカース』を教え、何度も遊んでくれたことへの恩返しが、ほんの少しだけできたような気がしたでござるよ。


 今プレイしても充分に楽しめる、完成度の高い大秀作と結論付けた初代『いたスト』。親戚のお兄ちゃんにもしっかりとその魅力が伝わっていた模様。

 さて、次回から2週に渡って『いたスト』でゲスト対談! ゲストはレトロゲームに詳しい上に、現在はゲーム会社の社長を務める横山裕一氏。 はたしてどんな話が飛び出してくるのか、こうご期待。

 ※次回掲載は2月21日(火)を予定しています。

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『いただきストリート』シリーズは今このプラットフォームで遊べる

『いただきストリート』シリーズを今遊ぶには(参考価格/価格は税込表記)
『いただきストリート ~私のお店によってって~』
ファミコンカセット(中古品/付属品無し)
1,000円前後~
『いただきストリート2 ネオンサインはバラ色に』
スーパーファミコンカセット(中古品/付属品無し)
300円前後
『いただきストリート3 億万長者にしてあげる!~家庭教師付き!~』 PlayStation 2版(中古品/付属品無し)600円前後
『ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート Special』 PlayStation 2版(中古品/付属品無し)800円前後
『ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート ポータブル』PSP版(中古品)700円前後
『いただきストリートDS』ニンテンドーDS版(中古品)1,500円前後
『いただきストリートWii』Wii版(中古品)2,000円前後
※2017年1月調べ

注釈

  1. 成績表
    ゲーム終了時に表示される結果表のこと。誰がどれ位の買い物料をもらったのか、何回買い物料を払ったのかなどの成績が赤裸々に表示される。上手い人ほど株の儲け額が大きいし、運がいい人ほど買い物料での収入が多い傾向になるような気がします。
  2. 大逆転
    人生何が起こるかわからない、という意味では常に逆転のチャンスがあるわけですが、『いたスト』ではなかなか難しい。ま、本物の人生だって大逆転は難しいんですけどね。
  3. カルドセプト
    大宮ソフトが開発するトレーディングカードゲームの要素を含んだボードゲーム。最初はセガサターンで発売され、その後も様々なプラットフォームで続編が誕生。根強いファンに長く愛され続けているシリーズとなっている。最新作は2016年にニンテンドー3DS用ソフトとして任天堂から発売された『カルドセプト リボルト』。
  4. いただきストリート2 ~ネオンサインはバラ色に~
    1994年にエニックス(現在のスクウェア・エニックス)から発売された『いたスト』の第二弾(スーパーファミコン)。マップもファミコン版のそれから3倍に増えている。また、発売元の影響なのか、ところどころに『ドラクエ』をモチーフにした要素が散りばめられているのも特徴。
  5. 荒井清和
    漫画家、イラストレーター。著書は『べーしっ君』、『TVウォッチャーの逆襲』、『カズ撃ちゃ当たる!!』など。ファミ通のクロスレビュアーのイラストや、初代『いたスト』、ファミコン版『オホーツクに消ゆ』などのゲームのキャラクターデザインも担当している。すぽぽーん!
  6. ゲヱセン上野
    本名、上野利幸。ライター、プログラマー、作曲家。初代『いたスト』のBGMを担当した。パソコン版『オホーツクに消ゆ』のプログラマーとしても知られる。穏和なジェントルマンだが、お茶目な一面もあり、ログイン編集者時代には仕事の電話を受けている増田氏を、からかって笑わせるなどの妨害工作も行っていたという。
  7. 戸田誠司
    ミュージシャン、音楽プロデューサー、作曲家、編曲家。現在バラエティー番組ではすっかりおなじみになったYOUと、かつて「FAIRCHILD」というバンドを組んでいた。戸田氏はベース、プログラミング、作曲を担当。FAIRCHILD時代、ログイン編集部はコンピューターにも造詣が深い戸田氏と仲が良く、増田氏は戸田氏からの電話を上司に繋いでいたらしい。

増田厚(ペンネーム:忍者増田)

 茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。