パワレポ連動企画

今時のCPUを理解するための基礎知識 ~冷却事情とプラットフォーム編~

【パワレポ連動:真夏のCPU完全ガイド(3)】

DOS/V POWER REPORT 2016年9月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2016年9月号」の総力特集「CPU×90! メモリ×50!! CPUクーラー×100!!! マザー×200!!!! 関連パーツもフルコンプでお届け すべて見せます! 真夏のCPU完全ガイド」を掲載する。

 第3回目では最新のCPUの冷却事情とSkylakeで一新されたプラットフォームについて解説する。TDPの低下に伴い、オーバークロックなど一部の用途を除けばそれほど冷却に気を遣う必要は無くなってきた。また、PCケース側の対応に伴い簡易水冷クーラーの導入も容易になっている。

 本特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2016年9月号は全国書店、ネット通販にて7月29日(金)に発売。特別企画はフルHDで遊ぶならこのクラス「ミドルレンジ戦線激化!Radeon RX 480&GeForce GTX 1060登場!!」、ただ風を送るだけじゃ無い!ドレスアップパーツとしても使える「サイズも形も色もいろいろ ケースファン・オールスターズ」、手の平におさまるハイレゾプレイヤーを作ろう「1万円チョイでこの高音質!Raspberry Piで作るハイレゾオーディオプレイヤー」を掲載。。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は、「ケースに入るCPUクーラーの高さがすぐ分かる組み立て式チェッカー」。電子版の場合はデータをダウンロードしてプリンタで印刷しご利用ください。


-真夏のCPU完全ガイド-
冷却事情とプラットフォームを再点検


今時のCPUを理解するための基礎知識
冷却事情

 現在のCPUの冷却事情をまとめてみよう。CPUの放熱のしやすさという点では、近年はほとんど変わっていない。むしろ世代が更新されるたびに電力効率は改善されているので放熱はしやすくなっており、普通に使う分にはシビアに発熱に気を使う必要はなくなっている。

 もっとも、その電力効率の改善によってPC構成の壁がなくなり、小さなケースに高性能なCPUやビデオカードを搭載するなど構成の自由度が向上しているため、TDPやエアフローに気を使う場面がないわけではない。小型ケース向けの背の低いCPUクーラーの選択肢も増えている。

 また、フォームファクターを問わず、大型ラジエータの搭載を意識したPCケースが増えており、簡易水冷クーラーが導入しやすくなっているのも最近の傾向だ。単純な冷却能力と言うよりも、静音性との高度な両立やデザイン面からの需要もある。

低下傾向にあるCPUの消費電力

■通常モデルは65W

 冷却のしやすさはTDPが目安になる。最近の傾向としてOC対応モデルは余裕を持ってTDPが高めに設定されているため、大幅に下がったという印象はないものの、全体としては低下していると言える。右の消費電力の実測結果も電力効率を裏付けるものだ。TDPが示すとおり、放熱もしやすくなっていると言えるだろう。

新旧CPUのTDP
システム全体の消費電力

【検証環境】

マザーボード:ASUSTeK X99-A II(Intel X99)、ASUSTeK Z170-PRO(Intel Z170)、ASUSTeK MAXIMUS IV GENE-Z(Intel Z68)
メモリ:センチュリーマイクロ CK8GX4-D4U2400(PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×4)、Micron Crucial CT4K4G4DFS8213(PC4-17000 DDR4 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)、Corsair Vengeance LP CML16GX3M4X1600C8(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4 ※PC3-10600として2枚のみ使用)
ビデオカード:ASUSTeK STRIX-GT970-DC2OC-4GD5(NVIDIA GeForce GTX 970)
SSD:Micron Crucial m4 CT128M4SSD2(Serial ATA 3.0、MLC、128GB)
電源:Sea Sonic Xseries XP2S SS-660XP2S(660W、80PLUS Platinum)
OS:Windows 10 Pro 64bit版
アイドル時:OS起動10分後の値
電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

CPUクーラーの高さは「16cm」が目安

■干渉に注意

サイズ 虎徹
高い冷却性能、静音性を両立し、さらに手頃な価格を実現してロングセラーとなった大定番クーラー

 サイドフロー型クーラーは大口径のファンを搭載しやすいメリットがあるが、PCケースのサイドカバーと干渉しやすい。サイドフロー型の中でも中間的な大きさの「虎徹」の高さは16cmある。

 PCケースのスペックに搭載可能クーラーの高さが記載されていることがあるが、測定箇所の違いなども考慮し、多少余裕を見ておいたほうが無難だ。

CPUクーラーの多様化も進んでいる

■自由度アップ

水冷
簡易水冷型
ラジエータをCPUソケットから離して設置できるため、サイズなどの自由度が高く、冷却能力を高めやすい。ただし、大型ラジエータはケース内に搭載スペースを確保する必要がある

 小型のケースに入るLow Profileタイプのトップフロー型や干渉しにくいコンパクトなサイドフロー型など、PCのスタイルに合わせた選択肢が増えてきた。

 また、クリアパネルで中身を見せることを強く意識した製品や、大型ラジエータの搭載を想定した冷却拡張性の高い製品が増えているPCケースのトレンドを反映し、簡易水冷型クーラーのバリエーションも増えている。

空冷
トップフロー型
純正クーラーと同様のスタイル。VRMなどマザーボード上の部品に直接エアフローを当てやすい。一方、ファンの搭載しやすさではサイドフローに見劣りする
サイドフロー型
文字どおり横方向に吹き付けるスタイル。ケースファンのエアフローと同調させやすい上、搭載ファンの口径、ファンの数の自由度が高く、冷却と静音性を両立しやすい

今時のCPUを理解するための基礎知識
プラットフォーム

 Skylake世代では、新ソケットのLGA1151を採用し、プラットフォームが一新されている。旧世代との互換性がないため旧世代ユーザーにとってはよけいにコストがかかる要因ではあるが、性能面、将来性という点でのメリットは大きい。

 具体的には、チップセットレベルで最大20レーンのPCI Express 3.0に対応したほか、システムバス帯域が倍増し、32GbpsM.2スロットやThunderbolt 3、USB 3.1などの高速インターフェースを搭載しやすく、性能のボトルネックになりにくくなっている。

 現行のチップセット内の比較で言えば、最上位のZ170とH170の差は主にOC機能とPCI Express 3.0のレーン分割への対応の有無。逆に言えば、OC機能が不要でマルチGPUもしないのであれば、H170で十分ということになる。定格運用前提なら電源部なども高耐久である必要はない。

 ただ、マザーボードレベルで見ると、Z170モデルのほうが演出などにも凝った製品が多い傾向だ。Z170の機能は不要でも、そういう部分からZ170モデルを選ぶのもよいし、すっぱりと割り切ってH170でコストパフォーマンスを追求するのもよいだろう。

チップセットが違うとここが違う

■OC対応がポイント

 Intel CPU向けでは、チップセットにも序列がしっかり付けられている。

 最上位のZ170とH170の基本仕様は近いが、Z170には、OC機能とPCI Express 3.0のレーン分割対応という優位がある。B150もシステムバス帯域は上位と共通だが、RAID機能が省かれているほか、PCI Express 3.0のレーン数が少ないために拡張性はかなり制限される。実際の製品もmicroATXやMini-ITXのシンプルな製品が多い。

Intelのメインストリーム向けチップセットの仕様
レーン分割
Z170は、CPU側のPCI Express 3.0 x16をx8/x8などに分割できる。ただ、この機能を有効にしていないマザーボードもあり、マルチGPUへの対応状況は個別に確認が必要
オーバークロック
アンロックモデルのTurbo Boost倍率やベースクロックを変更して性能向上や電力の最適化が図れるのは最上位であるZ170チップセットのみの特典だ
32Gbps対応M.2
システムバス帯域が倍増したことで、Z170、H170モデルの多くが32Gbps対応の高速M.2スロットを備える。PCI Expressレーンが少ないB150マザーでは省かれがちだ

DDR4とDDR3、帯域の違い

■速くて安いDDR4

 Skylake世代のCPUは、DDR4-2133とDDR3-1600(厳密にはDDR3L)の両対応だが、LGA1151対応マザーボードの多くはDDR4専用だ。DDR3が使えるマザーボードもあるが、メモリ価格は全体的に下がり続けており、約1年前のDDR3の価格で2倍の容量のDDR4が買える状況だ。

 現時点でのDDR3との比較でもDDR4のほうが安く、DDR4の新規導入に抵抗はないだろう。

規格の違いと価格
メモリ帯域(理論値)

[Text by 鈴木雅暢]


DOS/V POWER REPORT 2016年9月号は7月29日(金)発売】

★総力特集「CPU×90! メモリ×50!! CPUクーラー×100!!! マザー×200!!!! 関連パーツもフルコンプでお届け すべて見せます! 『真夏のCPU完全ガイド』」
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★連載「最新自作計画 ~最小級ATXケースで作るパワフルゲーミングPC~」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」
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