パワレポ連動企画
“マザボ愛”があふれ出る 怒りの座談会 前編
~DOS/V POWER REPORT主力執筆陣がホンネで語る~
マザーボード100選 2015(7)
(2014/12/16 12:10)
このコーナーでは、こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新号と連動、同誌2015年1月号の特集記事「マザーボード100選 2015」をほぼまるごと掲載する。
第七回目の今回は、DOS/V POWER REPORTの主力執筆陣が、2014年のマザーボード事情について「ホンネ」で語り合う座談会の前編を掲載する。後編については後日、掲載予定だ。
なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年1月号は、絶賛発売中。1月号では今回の特集のほか、“即戦力”になるフリーソフト特集、次期OS「Windows 10」Technical Preview使用レポート、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事が載っている。また、特別付録として「マザーボード&ベアボーン超図鑑 2015」と題した小冊子が付いてくるなど、盛りだくさんの内容だ。
- DOS/V POWER REPORT 2015年1月号 Special Edition -
Haswell Refreshが起こしたマザーボードの差別化
[佐々木] 2014年は、5月のHaswell Refresh発売時にIntel Z97/H97搭載製品がリリースされましたが、CPUやチップセットに大きな機能追加はなく、マザーボードメーカーはチップセットの進化に頼った製品作りがやりにくくなりました。しかし、それが逆にマザーボードメーカーに刺激を与え、個々の製品の差別化のために独自機能を強化するきっかけになったのではと考えています。
[鈴木] そうですね。各社M.2スロットの実装の方法も工夫されていましたし、PCI Express 3.0 x4をやってきたのが当初ASRockのみだったのは意外でしたが、高速化のメリットもあり普及し始めたのは喜ばしいです。一方SATA Expressはドライブも出てきていませんが、10Gbpsと上限が見えていますね。
[竹内] ASUSTeKはファンコントロール機能のFan Xpert 3が素晴らしいですね。上位グレードしかフル機能が使えませんが。
[佐々木] やはりそれが、高価なマザーボードを買うメリットですからね。ソフトとハードの制御を絡めた技術では、ASUSTeKが2、3周先行している印象です。
[竹内] ちなみに、ASUSTeKのサイレント設定だと、低負荷時にケースファンが停止するのがちょっと怖くて……。
[佐々木] それは、ファンを停止することをよしとするか否かの問題で、意見の分かれるところですね。きちんと温度監視をしているなら止めてもよいと思う人と、止めること自体がリスクであると考える人がいます。
[鈴木] 確かに。とある電源メーカー担当も、ファンを完全に止めるとクレームが来るから、問題がなくてもファンを停止させないモードを用意していると言っていました。
[滝] 話は変わりますが、Haswell Refreshは思ったよりも古いUEFIで動かなかったですね。画面が暗転したままで。
[鈴木] Intel ME(Management Engine)レベルから更新する必要がありましたね。専用ツールを使って、UEFIの構造自体を変えるような感じでした。CPUに大きな更新はないように思えたんですけれども。
[滝] サウンド機能は充実しましたよね。ハイレゾ音源の再生にも対応していますし。
[鈴木] 付加価値としては、よいと思います。ヘッドホンアンプの強化が目立ちましたが、これってケースのフロント出力用の回路が強化されているマザーが多いんです。でも、気が付かないでバックパネル側にヘッドホンをつないでいる人が結構いる気がします。これはもったいないので一度仕様を確認していただきたい。
[佐々木] その場合、ピンヘッダケーブルなどにもよいものを使いたくなりますね。どこかのメーカーが付属品として付けてくれませんかね。別売りでもいいです(笑)。あと、最近はUSB DACを意識したUSBポートも増えましたね。
[滝] MSIはその辺りが結構充実していまして、今期はその点で評価しています。また、最近は、リアルタイムでゲームプレイを記録配信できる「XSplit Gamecaster」の機能や、省電力性能を推し進めた「ECO」シリーズなど、特定ユーザーの用途に合わせた製品作りをしてきているところがよいですね。MSIの見方が変わりました。ああいった製品作りが、マザーボードの新しい流れを作りそうな気がしています。
[佐々木] マザーボードの価格で、5、6万円するような高価なものが目立ち始めたのは、Intel 9シリーズからでしょうか。このハイエンド帯の価格上昇はどう思われますか。
[滝] これまでの感覚からすれば高過ぎです。けれども、MSIのゲーミングマザーに搭載されたヘッドホンアンプ用のチップは、3、4万円するような単体のUSB DACに搭載されているようなグレードで、それを考えれば割安に感じます。あと、X99搭載の「X99S GAMING 9 AC」で、AVerMediaのビデオエンコードモジュールを搭載するなど、トレンドを追ったがために製品価格が上がってきているのは納得していますよ。
[佐々木] ASRockもハイエンドの製品には、プロのオーバークロッカーの設定を搭載するなど、細部の作り込みはこだわってコストをかけていますよね。
2014年のMini-ITX事情はどう変わったのか?
[佐々木] ところで、Intel 9シリーズ搭載のMini-ITXマザーの市場はどんな感じですか。
[竹内] 昨年は3万円台の高価格マザーボードが数製品あったのですが、ASUSTeK MAXIMUS IMPACTシリーズ以外は後が続きませんでしたね。ユーザーもまだMini-ITXにそこまでの金額は出せないということかも。
[滝] 小型好きの竹内さんなら、MAXIMUS VII MPACTの多機能ぶりは大の好物なんじゃないですか?
[竹内] いや、やはりシンプルさも重要です。
[一同] (笑)
[佐々木] Webの投票では非常に人気があるんですがね。
[竹内] それは、実際に組んだことのない人が多いこともあるのでは? 実際自作すると、あれほど地獄を見るマザーボードはないです。CPUクーラーのファンコネクタの位置やPCI Expressスロットとの干渉など、解決しなくてはならないことがたくさん出てくる。実際使うとなるとパーツレイアウト的にもASUSTeK H97I-PLUS辺りがベストです。大型CPUクーラーも付けやすいですし。
[佐々木] ユーザーのニーズはまちまちですけれども、確かに大型のCPUクーラーが付くというのは小型マシンの可能性を大きく高めてくれます。
[滝] MAXIMUS VII IMPACTくらいになると、少し大きめのMini-ITXケースがお勧めですね。あと、Intel 9シリーズのMini-ITXマザーは、M.2スロットが使えるものに注目です。接続するケーブルが二つ減りますし。
[竹内] ファンコネクタの数がそんなに増えてはいないのは残念です。
[佐々木] Mini-ITXでも数が必要ですか?
[竹内] ゲーミング向けを中心にMini-ITXケースでも結構ファンの数が増えていますから。
[鈴木] Mini-ITXマザーは、もうそろそろ無線LANを標準にしてもよいと思いますね。置き場所を選ばないというのが、小型PCのよさでもあるわけですから。
[竹内] 昨年は「ん!?」というパーツレイアウトのメーカーもありましたが、2014年のMini-ITX製品は各社とてもよくなりました。ただ例外はAMD対応の製品で、サイドフローのCPUクーラーが付けにくい構造です。ほかのパーツとの干渉も回避しにくい。
[鈴木] 結局、マザーボード基板のレイヤーを増やして配線を引き回せばうまくレイアウトできるのですが、レイヤーを増やせばコストがかかり、AMDマザーの販売数ではそのコストを回収できない。結果的にレイヤーは増やせないという、よくない循環です。
[竹内] しかし、小型フォームファクターとAMDのAPUって本来相性がよいはずなんですけれどもね。
[佐々木] AMDは、cTDPなど発熱の面でもおもしろい取り組みがあり、設定の自由度も高いですから、もう少し、魅力を活かせるマザーボードが欲しいですね。
Pentium G3258でZ97マザーボードが再評価
[佐々木] 2014年6月には、Devil's CanyonとPentium G3258がリリースされ、それに伴ってZ97/87以外のマザーボードでも、倍率ロックフリーCPUのOCが、事実上解禁されました。
[滝] これはとても評価したい点です。ただ、やはり、ローエンドクラスのH81やB85搭載マザーでは、あまりOC耐性は高くありませんでした。
[鈴木] 結局VRMなどが弱いですから、CPUのグレードが上がるほどOCでも差が付きやすくなりますね。
[佐々木] ローエンドマザーのOCが解禁されたことで、やはりハイエンドマザーのほうがOCが伸びるという事実が浮き彫りになり、ハイエンドマザーが再評価されたのはよかったなと思います。
[滝] でもPentium G3258と安いマザーでOCするのは楽しいですよ。OC初心者向けとしてASRockのZ97 Anniversaryなども発売されて、こういう試みもおもしろかったかった。でも、OCしても上限4.2GHzの安全域にとどまり、期待したほど伸びませんでした。トレンドを追う着眼点はよく、OC設定も簡単で便利でしたが、もう一歩進めてほしかったです。
座談会出演ライターの2014年マザーボード5大トピック
鈴木雅暢
- MSIドラゴンの勢い止まらず。同社のデザインや演出の力を再認識した。他社の販売戦略にも影響を与えたようだ。
- ASUSTeKの「Fan Xpert 3」はファンコンとして理想の域に達した。ここは、競合他社もぜひ追随してほしい。
- ビデオカードとの連係の動き(ブランドやデザインの統合、ファンコントロール可能な製品)は歓迎したい。
- Z97/H97登場以降、M.2スロットがほぼ標準装備に。ASRockのUltra M.2はよい差別化要因に。個人的には、これを多数搭載したゴリ押しモデルがあってもよいと考える。
- IEEE802.11ac 普及でWi-Fiへの認識に変化も。個人的にはローエンドモデル以外は、ATXマザーを含めてもう標準装備でもよいと考えている。
滝 伸次
- PCI Express接続の高速ストレージインターフェース(M.2、SATA Express)の普及。
- H97、B85マザーなど、Z97/87以外のチップセット搭載マザーでのOCが事実上解禁に。
- スタンダードモデルにも、耐久テスト後出荷する品質保証モデル(GIGA-BYTEのBlack Edition)が登場したこと。
- ASUSTeKが他社製品との競争のためマザーボードの価格を若干引き下げ、「ASUSTeK=高い」というイメージが薄れた感がある。
- 消費税率アップと円安でマザーボードの価格も上昇傾向に。
竹内亮介
- 多数の新製品や各種の改良など、スモールフォームファクターの隆盛が継続中。
- マザーボードのレイアウトがさらに進化して、組みやすくてトラブルが起きにくくなった。
- 円安の影響を受けてか、激安パーツの店頭取材でも、マザーボードの価格が高くなってきているのが実感できる。
- マザーボードに添付されるファン制御ユーティリティが進化して、さらに使いやすくなった。
- スモールフォームファクター好きとしては、M.2スロットの普及がうれしい。ただし、まだまだ肝心のM.2 SSD が割高な点が残念。
【DOS/V POWER REPORT 2015年1月号は11月29日(土)発売】
★第1特集「マザーボード100選 2015」はもちろん、"即戦力"になるフリーソフト特集、次期OS「Windows 10」Technical Preview使用レポート、髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事を掲載
★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 紙版は小冊子「マザーボード&ベアボーン超図鑑 2015」付き
★ 電子版は割安な税別926円
★ 電子版では小冊子の電子版も完全収録
★ 毎月700円(税込)で最新号が読める 直販電子版 月額プランも受付中
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