パワレポ連動企画

【10年使えるATXケース徹底紹介(5)】
~Panteks Enthoo Luxe / SilverStone RAVEN 5 / Thermaltake Core V31編~

DOS/V POWER REPORT 2015年3月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集記事をほぼまるごと紹介するこのコーナー、今回は「10年使えるATXケース徹底特集」の第5回目としてPhanteksの「Enthoo Luxe」とSilverStone Technologyの「RAVEN 5 SST-RV05」、Thermaltake Technologyの「Core V31」の検証記事を掲載する。

 今回紹介するケースに限らず、最近は5インチのオープンベイがないモデルを見かけるようになった。スリムタイプの光学ドライブを搭載できる場合もあるが、必要なときにだけUSB光学ドライブを接続する方法もある。USB接続ならば、タブレットPCやスリムノートPCにも転用できるので便利だ。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年3月号は全国書店、ネット通販にて絶賛発売中。3月号では本特集のほか、今話題の低価格タブレットPCを筆頭にその魅力に迫る「2万円からのフル機能激安PC選び」、用途・予算に合わせて選ぶ「低価格CPU大全」、髙橋敏也氏による連載記事「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」など、多数の記事を掲載。

 今号の特別付録は「使えるPC小物&周辺機器大カタログ」。ちょっと欲しい!今すぐ欲しい!がいっぱい!!の内容だ。


- ATXケースの選び方 2015年版 -
10年使えるATXケース徹底紹介


ダッチデザインと高い拡張性が魅力のフルタワーケース

Phanteks Enthoo Luxe Full Tower Chassis

メンテナンス性 ★★★★☆
冷却拡張性   ★★★★★
剛性      ★★★★★

 Enthoo LuxeはEEB、ExtendedATX対応の大型フルタワーケースだ。冷却拡張性の高さだけでなく、オランダにデザインチームを持つ同社ならではのビジュアルへのこだわりも強くうかがえる。最大の特徴は、サイドパネルに大胆に配置した「スプリットウィンドウ」だ。「見せる」ための窓でありながら、ドライブや電源ユニットなどの配線は「見せない」ことで、スマートなデザインを損なわないよう配慮されている。フロントカバー、トップカバーにはLEDが埋め込まれており、エッジを10色に光らせることができるギミックも魅力だ。

 多彩な場所にファンを追加搭載可能な、冷却拡張性の高さもウリ。マザーボード上部も広く空いており、大型の水冷ラジエータでも余裕を持って搭載できる。ただし、本体サイズは非常に大きく、重量も約14kgとかなり重い。そのため、ミドルレンジクラス以下のパーツ構成では拡張性や冷却性能を持て余し、扱いにくさだけが残ってしまう。本格的な水冷やSLI、CrossFireXを構築するような、ハイエンドパーツ構成でこそ活きる製品と言える。

[Text by 鈴木雅暢]

【Specification】

規格:ExtendedATX●カラー:ブラック、ホワイト●付属電源:なし●ベイ:5インチ×3、3.5/2.5インチシャドー×6、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:20cm径×1(前面)、14cm角×1(背面)、14cm角×1(天板)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×2(前面、20cm径×1と排他)、12cm角×1(背面、14cm角×1と排他)、20cm径×1 / 14/12cm角×3(天板、14cm角×1と排他)、14cm角×1 / 12cm角×2(底面)●本体クラス(W×D×H):235×550×560mm●重量:13.9kg●実売価格:22,000円前後
AKIBA PC Hotline!掲載記事:Phanteksの「マニア向け」PCケースにイルミネーションモデルが追加 10色に発光、長さ2mの増設用LEDキットも発売 (2014/8/9)

【このPCケースの注目機能】
感性を刺激する光の演出
天板と前面パネルの内側にLEDを内蔵しており、エッジを光らせることができる。カラーは10色用意され、好きな色に変えられる。もちろん消灯も可能
こだわりのスプリットウィンドウと見た目のグレードを上げる隠し技
サイドカバーはアクリルウィンドウを分割して配置している。ドライブケージを一般的な向きとは反対に付けることでストレージ周りの配線を隠しているほか、電源ユニットまわりもカバーを付けてケーブルを隠し、ウインドウ越しからきれいに見えるようにしている
【パーツを組み込んでの使い勝手】
スマートな裏面配線が可能
マザーボードベースにはケーブルタイが標準で装着されており、スマートに裏面配線できる。メンテナンスホールも大きく(実測で20.5×14〜15c m) 空いており、マザーボードを付けたままCPUクーラーを着脱できる。さらに下部に吸音材付きの2.5インチベイを2基装備するなど、マザーボードベースの裏をフル活用している
ドライブケージのアクセスは右側面から
ドライブケージは右側面からアクセスする。ウィンドウのある左側面からはドライブを見せず、ロゴのみが見えるようにしている
電源設置スペースは余裕あり
電源設置用スペースは広く空いている。底面ファンを使うなら奥行き18cmまで、使わないなら30c mを超える製品も搭載可能だ
充実した冷却拡張性
20cm径の大口径ファンを装備
標準でフロントには20cm径の大口径ファンを装備している。低速回転では無音に近い動作音ながら、14/12cm角ファンよりも吸気量が多く、効率がよい
最大42cmクラスのラジエータに対応
天面のメッシュパネルは後部の2カ所のスイッチを押すだけで外れる。42cm(14cm角×3)、36cm(12cm角×3)といった大型のラジエータの搭載にも対応する
PWMハブは微妙
標準搭載ファンはいずれも3ピン仕様で、裏面の「PWMハブ」に接続されている。CPUクーラー用のPWMを利用した回転制御ができるはずなのだが、マザーボードによってはPWM制御が機能しない。その場合はマザーボードにファンを接続する

【検証結果:冷却性能は優秀 ファン制御は必須】

冷却性能は優秀で、CPUとGPUともにしっかり冷却できている。ただ、ファンを最大回転数にすると動作音が大きめだった。PWMハブで回転数制御を行なえない場合はファン電源をマザーボードに接続して、マザーボードのファンコン機能などを活用したい。

こう使え!

・ミドルレンジ以下お断りの超ハイエンドPCに
・大型水冷ラジエータでクールに決めたい

ゲームPCに求められる要素を絞り込んで凝縮した1台

SilverStone Technology RAVEN 5 SST-RV05

メンテナンス性 ★★★★☆
冷却拡張性   ★★★☆☆
剛性      ★★★★☆

 冷却性能を重視したPCケース「RAVEN」シリーズの最新モデル。バックパネルを上向きに設置する独特のレイアウト「倒立配置」は、底面に装備した2基の18cm角ファンからの風を、CPUクーラーやビデオカードに効率よく当てることで冷却性能を向上させる工夫である。これは他を圧倒する冷却性能を示してきた歴代のRAVENシリーズと同じ構造で、その優位性は右ページのベンチ結果を見ても遺憾なく発揮されている印象だ。

 また、ゲーミングPC向けケースはサイズが大きめな傾向があるが、本機は一般的なミドルタワーケースとほぼ同サイズである。にもかかわらず、ATXよりも大型のCEBマザーボードにも対応しており、パーツの選択肢が多い。これは、通常の5インチベイを搭載せず、3.5インチシャドーベイの搭載数も少なめに抑えているからだ。ゲーミングPCに求められるのは、大型CPUクーラーへの対応や、高性能なビデオカードをより安定して運用できる冷却性能。その意味で利用されるシーンをよく研究し、必要な機能を絞り込んだ設計と言える。

[Text by 竹内亮介]

【Specification】

規格:CEB●カラー:ブラック●付属電源:なし●ベイ:5インチスリム×1(スロットイン)、3.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:18cm角×2(底面)●追加搭載可能ファン:12cm角×1(天板)、14cm角×2 / 12cm角×3(底面、18cm角×2と排他)●本体クラス(W×D×H):242×498×529mm●重量:7.6kg●実売価格:16,000円前後
AKIBA PC Hotline!掲載記事:天井部に拡張スロットがある「Raven」の小型モデルが発売 SilverStone製 (2014/6/13)

【このPCケースの注目機能】
底面に18cm 角ファンを2基装備
底面の18cm角ファン2基は吸気方向で設置されており、大量の外気を底面から天板に直線的に吹き付けることで効率的な冷却を行なえる
回転数は2段階で制御可能
底面ファンの回転数は、天板前方に装備するスイッチで制御できる。それぞれのファンを2段階に切り換えられる
【パーツを組み込んでの使い勝手】
電源ユニットの奥行きに注意
3.5インチシャドーベイを利用する場合、電源ユニットは奥行きが16cmまでのものにしたほうがよい。それ以上だと、取り付けられない可能性が出てくる
裏面配線の自由度は低い
裏面には5インチスリムベイ、2.5インチシャドーベイなどがあり、ケーブルレイアウトの自由度が低めで組み立て難易度も高い
各種ケーブルは背面から
バックパネルを上向きにしてマザーボードを設置する関係上、電源ケーブルやディスプレイケーブルは天板に挿す。またケーブルは背面の穴から垂れ下がる格好だ
拡張ベイは最小限の構成
3.5インチシャドーベイは外せる
シャドーベイは取り外すことが可能。電源ユニットやマザーボードの組み込み時に外しておくと、作業がしやすい
5インチスリムベイ
5インチスリムベイを装備するが、対応ドライブはスロットインタイプだけ
こまめな清掃で冷却性能を維持
防塵フィルタは前面から外せる
底面の防塵フィルタにはホコリがたまりやすい。本体手前から簡単に引き出せる構造なので、清掃はこまめに行ないたい
天板にファンを追加可能
天板に12cm角ファンを追加することで、より冷却性能を高めることもできる

【検証結果:動作音は大きいものの最高の冷却性能を発揮】

最大回転数ならCPU温度は62℃。2位(Core V31)の68℃を大きく引き離してのトップで、GPUも十分に冷えている。ただ動作音は、近くに置いて使うには耐え難いレベルの大きさなので、CPUとGPU温度が80℃を超えないなら低回転で使うのがオススメ。

こう使え!

・ハイエンドCPU・GPUを使ったゲーミングPCの作成
・24時間連続エンコードでも安心の超高負荷PCに

水冷システムに最適化した冷却重視型ミドルタワー

Thermaltake Technology Core V31

メンテナンス性 ★★★★★
冷却拡張性   ★★★★★
剛性      ★★★★☆

 前面や天板パネルに風通しのよいメッシュ構造を採用した、冷却性能重視型のケース。5インチベイと3.5/2.5インチシャドーベイは取り外すことができ、さらに3.5/2.5インチシャドーベイは位置を変更することもできる。シャドーベイを取り外した場合は、前面にも水冷用ラジエータを搭載することが可能だ。同社は水冷パーツの組み込みに適したPCケースに「Tt LCS 水冷システム認証ケース」という独自の認証を与えているが、このCore V31もその認証を受けている。搭載可能なラジエータは12cm角ファン3基の36cmサイズのほか、前面は14cm角ファン2基の28cmサイズにも対応する。

 各ベイを外すと、完全にフレームだけの状態になる。組み込み時にジャマになる部品がないので、マザーボードやビデオカードはもちろん、ケースファンや水冷用のラジエータの組み込み作業も楽に行なえる。左側面には大型アクリルパネルが装備されているので、ゲーミングPC用途では光モノパーツを多数組み込んで、ハデにデコレーションするのもおもしろいだろう。

[Text by 竹内亮介]

【Specification】

規格:ATX●カラー:ブラック+ウィンドウ●付属電源:なし●ベイ:5インチ×1、5/3.5インチ×1、3.5/2.5インチシャドー×3、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:12cm角×1(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、14cm 角×1(前面、12cm角×1と排他)、14/12cm角×3(天板)、12cm角×2(底面)●本体クラス(W×D×H):208×506×470mm●重量:7.1kg●実売価格:9,000円前後
AKIBA PC Hotline!掲載記事:今週見つけた新製品 Thermaltake Core V31(2014/12/14)

このPCケースの注目機能
すべてのベイが外せ、移動も可能
すべてのベイは取り外すことが可能なので、外しておくとマザーボードやラジエータなどを組み込むときに作業がしやすい。また、3.5/2.5インチシャドーベイは、取り付け位置を変えることも可能なので、ラジエータやファンを組み込む位置によって調整しよう
【パーツを組み込んでの使い勝手】
側板の膨らみがあるので裏面配線は比較的楽
マザーボードベース裏側のスペースはやや狭いが、右の側板が膨らんでいる。裏面配線時に若干ケーブルが重なったとしても、右側板が閉まらなくなることはない
マザーボードと天板のスペースはやや狭い
天板とマザーボード上端の隙間はやや狭い印象だ。CPUクーラーを組み込んだ状態では、ATX/EPS12Vコネクタが接続しにくかった
ケーブルの通し穴が2個
マザーボードベース裏側に電源ケーブルなどを引き回すための穴が、2個設けられている。ケーブルの種類によって振り分けて使うと便利
メッシュ構造だが清掃もラク
こまめな清掃で冷却性能を確保
天板や前面パネルは、風通しのよいメッシュ構造だ。前面パネル自体が防塵フィルタの役割を果たすので、ホコリがたまったら前面パネルを拭くようにしよう
天板と底面には防塵フィルタ
天板や底面には防塵フィルタを装備する。磁石で貼り付いているだけなので、ペロッと簡単にはがせる。底面のフィルタも定期的に清掃しよう
高い冷却拡張性
多数のファンを追加可能
前面はもちろん、天板や底面など、さまざまな場所に大型ファンを追加できる。冷却重視型PCケースらしい構造だ
2.5インチベイも装備
SSDはマザーボードベース裏面に
マザーボードベース裏面に、2.5インチシャドーベイのトレイを2基装備しているので、やろうと思えば5インチと3.5インチベイなしでの運用も可能だ

【検証結果:ファンの数は少ないが冷却性能はトップレベル】

標準搭載ファンが少ないものの、メッシュ構造によりCPUとGPU温度はかなり低く、12製品中2位の結果に。一方で動作音はそこそこ大きい。ただ、ファンの回転数を調整すれば、かなり静かにできる。

こう使え!

・ファンを多数追加して安定動作の高性能PC
・水冷ラジエータを複数導入した静音PC

【掲載ケース共通検証環境】

CPU:Intel Core i7-4790K(4GHz)、マザーボード:ASUSTeK H97-PRO(Intel H97)、メモリ:CFD販売 CFD ELIXIR W3U1600HQ-4G(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、ビデオカード:MSI GTX 970 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX 970)、SSD:Intel SSD 335 SSDSC2CT240A4K5(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:サイズ エナジアプラチナ550W(550W、80PLUS Platinum)、CPUクーラー:サイズ 虎徹、OS:Windows 8.1 Pro Update 64bit 版、室温:21.4℃、暗騒音:32.4dB、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:OCCT 4.4.1 POWER SUPPLYテストを10分間動作させたときの最大値、各部の温度:使用したソフトはHWMonitor 1.26でCPU はCPUTemperaturesのPackage、GPUはTemperaturesの値、動作音測定距離:ケース正面から20cm


DOS/V POWER REPORT 2015年3月号は2015年1月29日(木)発売】

★第一特集「10年使えるATXケースを買う」
★第二特集「2万円からのフル機能激安PC選び」
★特別企画「低価格CPU大全」「スマホから使える多機能リモコン」「ブラウザゲーム群雄割拠」
★連載「最新自作計画」「POWER REPORT PLUS」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 紙版は特別付録小冊子「使えるPC小物&周辺機器大カタログ」が別途付属
★ 電子版では小冊子の電子版も完全収録
★ 電子版は割安な税別926円
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http://book.impress.co.jp/teiki/dvpr/2014-12-26-1549.php

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(AKIBA PC Hotline!編集部)