裏面配線のコツや5インチベイの活用方法

68.　裏面配線の活用でメンテナンスや清掃がスムーズに　　　難易度★★★

　ここ5年間くらいに発売されたATX対応PCケースであれば、右側面のマザーボードベース裏面に若干のスペースを設け、電源ユニットやピンヘッダケーブルを整理できるようになっているはずだ。いわゆる「裏面配線機能」である。ケーブルを整理せず、散らかったままにしておくと、どのケーブルがどこを通っているのかが分かりにくくなるし、ケーブルがジャマになってパーツの組み込みや内部の清掃がしにくい。放置している状態なら、ぜひこの機会にチャレンジしてほしい。

　裏面配線に必要なのは、「結束バンド」と呼ばれるケーブルをまとめるための細いプラスチックのバンドだ。裏面配線に対応するPCケースでは、マザーボードベースの裏面にいくつかのフックを設けているので、このフックに結束バンドを通す。そして整理したいケーブルを結束バンドでギュッと縛る。

マザーボードベース裏面のフックで固定

裏面配線対応のPCケースでは、マザーボードベースの裏面にこうしたフックがある

このフックに結束バンドを通し、固定して整理したいケーブルをまとめてキュッと縛る。これがケーブル整理の基本だ

結束バンドは電源ケーブルなどの太いケーブルをまとめる長めのタイプと、ピンヘッダケーブルやSerial ATAケーブルなど細いケーブルをまとめる短めのタイプの2種類を用意しておくと便利

縛った後に、ケーブルの余った部分を切る。はさみでも切れるが、プラモデル作成用の刃が鋭くて小さめのニッパーがあると作業がはかどる

　結束バンドはパーツショップでも購入できるが、ホームセンターで購入できる屋内工事用のパッケージのほうが安い。余ったケーブル部分は、切れ味のよいニッパーで切るとよい。また太い電源ケーブルの処理は、裏面配線を行なう上で重要なポイントになる。重なり過ぎないようにうまくまとめ、右側板がちゃんと閉まるようにしたい。

【美しい裏面配線のために】

細いピンヘッダケーブルは、裏面に引き出す一番上の部分で、一旦まとめておく。ここがバラバラの状態だと、中央や下部でケーブルが散らばってまとめにくくなるため、ケーブル全体の流れが作りにくい

電源ケーブルを表面から引き出すときに注意したいのが、太いケーブルが重ならないようにすることだ。裏面配線用のスペースは狭いので、太い電源ケーブルが重なると右側板を閉じにくくなる

作業の最後に、ピンヘッダコネクタを確認しよう。ピンヘッダケーブルを整理する際に力を入れ過ぎて、コネクタからケーブルが外れたり、コネクタが折れそうになったりすることがある

69.　ワイヤレス電源スイッチでPCの置き場所が自由になる　　　難易度★★★

SilverStone Technology
SST-ES01-PCIe
実売価格：4,500円前後
PCI Express x1スロットに対応する電源スイッチ用の拡張カードと、リモコンユニットで構成されるワイヤレス電源スイッチ。リモコンユニットはボタン電池で駆動し、電源ボタンを押すと赤色LEDが光る

　前面中央や側面に、電源やリセットボタンを装備するATX対応PCケースを床置きする場合、立ったりイスに座ったりした状態だと、電源ボタンやリセットボタンに手が届きにくい。液晶ディスプレイの裏にMini-ITX対応の小型ケースを設置したときも、同じように電源ボタンなどを押しにくくなる。

　こうした状況で便利なのが、SilverStone の「SST-ES01-PCIe」だ。マザーボードの電源／リセットスイッチに接続する拡張カードと、ワイヤレスで操作できるリモコンユニットの組み合わせで構成されている。リモコンユニットから拡張カードへの操作は、2.4GHzの電波経由で行なうので、PCが見える場所になくても操作できる。

　電波の到達範囲は20mと非常に広いので、PCの設置自由度が大幅に高まる。冒頭で紹介したような電源ボタンの操作がしにくくなる状況で利用すると非常に便利だ。電波の到達距離が長いので、別の部屋に設置したサーバーPCの電源を入れることも可能。また電源ボタンやリセットボタンが壊れてしまったPCケースを、そのまま使い続けるために活用するのもよいだろう。

リモコンのボタンを押すと電源ON

拡張カードに接続されているピンヘッダケーブルを、マザーボードのピンヘッダに挿す。コネクタとピンヘッダの刻印をよく確認して正しく接続する

小さなリモコンユニットには電源ボタンとリセットボタンが組み込まれており、PCに近付かなくても電源を入れたり、リセットしたりできる

70.　余っている5インチベイにHDDやSSDを増設する　　　難易度★★★

パーツを組み込まず、空になっている5インチベイをそのまま放置しておくのはもったいない。HDDケースを使ってストレージを前面から増設できるようにしよう

　最近では光学ドライブを使わなくても、OSやアプリをインストールできるようになった。マザーボードが自由度の高いファン制御機能を備えるようになったこともあり、ハードウェアのファンコントローラの需要も減っている。こうした背景もあり、ミドルタワータイプのPCケースを使っていても、5インチベイには何もパーツを装着していないというユーザーはめずらしくないだろう。

　しかしせっかくの拡張ベイなのだから、有効活用したいものだ。サーバーPCなどで多数の3.5インチHDDを搭載したいなら、2、3基の5インチベイを使い、3、4台の3.5インチHDDを搭載できるHDDケースを組み込むとよいだろう。HDDを簡単に着脱できる製品が多いので、大容量ファイルをHDDに一括してバックアップしたいときにも便利だ。

　また、1基の5インチベイに複数台の2.5インチSSDを組み込めるHDDケースも登場している。組み替えで余った小容量のSSDを組み込んで、まとめて1台分のSSDとして設定し、データ保存用の大容量SSDとして使うのもおもしろい。

使っていない5インチベイを活用できるHDDケース

センチュリー
5インチベイに2.5"SATA×4 まとめるラック
実売価格：4,000円前後
1基の5インチベイに、4基の2.5インチデバイスを組み込めるHDDケース。前面から簡単にSSDを着脱できるようになる。背面には冷却用に4cm角ファンを備える

ISG Industrial
iStarUSA BPN-DE230SS
実売価格：8,000円前後
2基の5インチベイに、3基の3.5インチデバイスを組み込めるHDDケース。堅牢で頑丈なアルミ製のフレームを採用する。背面には7cm角ファンを装備している

[Text by 竹内亮介]