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前期王者に土をつけたRFの粘りとマップコントロール、
~試合の流れを徹底解説!Revolレポート~
LJL SEASON2 ROUND2 RabbitFive vs DetonatioN FocusMe
(2015/6/3 12:18)
本記事は、LJLの詳報レポートを掲載するRevolレポート(SANKO Webサイト掲載)を特約の元、転載/編集したものです。
この試合はRainbrain選手のバロンスティールが試合の趨勢に大きな影響を与えた。
だが、そのバロンスティールの前からRFは見事な動きをみせていた。今回はバロンスティールが発生する前までのRFの動きを仔細に追っていきたいと思う。
Team Composition~両チームのチャンピオン構成~
RabbitFive(以下RF)の構成はGnar(YutoriMoyashi)とRek'Sai(Rainbrain)という強力な2人のタンクが敵を抑え、Cassiopeia(Shinmori)とLucian(Estelim)がダメージを出し、Janna(Awaker)がキャリーをフォローするというものだ。
また、試合の中盤ではRek'SaiがGnarと共にスプリットプッシュをすることで敵に圧力をかけることもできる。しかしJannaは位置取りに気をつけなければ強みであるPeel能力を活かせなくなってしまう。
相手のDetonatioN FocusMe(以下DFM)の構成には遠距離から強制的に位置をずらすことのできるスキルを持ったGragasと範囲打ち上げのスキルを持ったAlistarがいるからだ。守るべきキャリーに近づきすぎてしまうと同時にそれらのスキルを受けてしまうし、かといって離れすぎてしまうとPeelが追いつかない。集団戦では非常に難しい判断が求められるだろう。
DFMの構成はMaokai(BonziN)、Gragas(Rokenia)、Alistar(Hwang)というTankと、Azir(Ceros)とKog'Maw(Yutapon)という終盤でもダメージの出せるキャリーを揃えた集団戦に重きをおいたものだ。GragasとAzirは相手の位置を強制的にずらすスキルを持っており、逃げ性能にかけるKog'Mawをフォローできる。またGragasとAlistarは敵の後衛に圧力をかけにいくことも可能であり、CassiopeiaやLucianのいずれかを狙いつつJannaも巻き込んでしまえばRFの集団戦の陣形を大きく崩すことが可能だ。
ただしRFのスプリットプッシュに対して対抗できるChampionがいないため、RFに先手を取られてしまうと構成の強みである集団戦を起こせなくなってしまう可能性が高い。序盤から中盤にかけていかに有利を作り出すかが鍵になる。
In-Game
DFMはレーンスワップを選択した。
序盤におけるRek'Saiの圧力が逃げ性能に欠けるKog'Mawに刺さってしまっているからだろう。さらにはGnarとMaokaiのマッチアップを避ける狙いもあったのではないか。レーニングではGnarが有利であり、そこにRek'Saiの圧力も加わるためMaokaiが序盤からつらい状況に立たされてしまう。レーンスワップをすることでそれらを一手に解決しようとしたのではないか。
TopのGnarが味方のJunglerに合流するそぶりをみせなかったので、DFMは4人でガンクをしかける判断をした。レーンスワップをされた側はJunglerに合流してレベルを2まで上げてからレーンに現れるというのが定石になっている。スワップされたにもかかわらずレーンに居続けると、今回のようにガンクを狙われてしまう。
しかしRFもかなり早い段階からJannaをTopに送り込んでおり、ガンク対策はできていたと言えるだろう。こういったレーンスワップ時のガンクはJunglerが青バフと赤バフを確保してから行なわれるものであり、今回はDFMの判断が一手早かった。その決断の早さがGnarのテレポートを使わせることに繋がったと言えるし、Gnarも相手の動きに合わせてすぐさまテレポートを使用した判断は見事だった。
RFとDFMは共に素早い判断をしており、試合開始直後から両チームの強さを伺えるような展開になった。
RFのレーンスワップとカウンタージャングル
RFはBotにいたLucianがすぐさまミニオンウェーブを処理してリコールし、Topへ向かった。レーンスワップへの対応としてはいくつかあるが、TopにADCとSupportを送り込むことで、Kog'MawとMaokaiに圧力をかけることを狙ったのではないか。
RFはTopにはしっかりとWardを置いておりDFMのJunglerの位置が把握できている。Rek'Saiはその情報を活かして反対側のJungleへ侵入しカウンタージャングルとWardingをすることでGragasの動きに対して反応を返している。こういったRek'SaiのカウンタージャングルがGragasとの間にゴールド差を生み出し、さらには試合の中盤以降のRek'Saiのスプリットプッシュにつながっていく。
Rek'SaiはCounter Jungleの機会を逃さず、必ず実行していた。
BotのPink WardにGragasが映るとすぐさま敵のJungleに潜り込み、Wardingをしながら中立モンスターを荒らしていた。こういったWardingを同時に行うことでマップコントロールにもつながり、Jungler同士の金額差を生みだすだけでなく、Laner(今回はMidにいるCassiopeiaとTopにいるLucianとJanna)のレーニングを手助けしている。
その後もマップコントロールを活かしてDFMの重要プレイヤーであるRokenia選手を抑え込んでいた、のだが……。
RFのミス、DFMのしたたかさ
DFMはBotへのガンクを成功させる。
しかしこのガンクのための動きはRFがドラゴン前に置いたWardに映っており、RFがMinimapのチェックを一瞬怠った隙を突く形になった。DFMはBotへのガンクが成功すると、すぐさまドラゴンの確保に繋げている。
一方のRFは、Topで大きな有利を作っているGnarをより有利にすべく、Topへのガンクを狙っていた。しかしMaokaiはその動きを察知しており、無理をしない安全なレーニングを心掛けていた。さらにはAlistarがドラゴンから離れ一目散にTopへ向かうことでRek'Saiのガンクに対処しようとしていた。
このように、ドラゴンを確保している敵の動きに対応する形でTopへガンクすることは、ドラゴンを相手に渡す代わりに、Topの有利を得るというObject交換の形を作り上げることになる。
しかし、DFMはその交換すら許さない、素晴らしい判断を下した。今回、Rek'Saiはガンクの判断を取りやめたが、もしそのままガンクしていたら手痛い仕返しを受けていたことだろう。
この一連の動きによってRek'SaiとGragasの間にあった金額差は600Goldから200Goldに縮まってしまう。
1度のガンクの成功だけでは埋まらないほどの金額差を作っていただけに、このミスは痛かった。そしてDFMが有利になったとはまだ言えない状況だった…のだが、またしてもRFはミスを犯してしまう。
DFMのGragasとAlistarはRFのJungleに侵入し、Midへ圧力をかけようとしていた。その動きをRFのJannaが察知していたにも係わらず、Midへ寄るそぶりをみせずBotへ向かってしまう。DFMは当然のようにMidへガンクをしかけた。
CassiopeiaはFlashを使用することでこのガンクに対処したが、JannaがMidに寄っていればFlashを落とすことなく対処できていただろう。そしてこのFlashを落としたことが後のガンクへと繋がっていく。
さらにRFは、MidにDFMが集まっていた状況で、Botで孤立していたKog'Mawを狙ってしまった。すぐさまDFMはBotに集結し、このRFの動きを咎めることに成功する。もしKog'Mawを落としていれば痛み分けのような結果になっただろうが、Midに集まっていたDFMのメンバーがBotへすぐさま集結することが明らかだっただけに、リスクの高い行動だったことは否めないだろう。
そしてDFMはFlashのないCassiopeiaを狙い撃った。このとき、CCを解除できるAlistarを先にタワーダイブさせることでガンクの成功率を上げている。Gragasが無理をしすぎてLucianにKillを取られてしまったが、DFMは先ほどのRFのミスを活かして立て続けに攻め立てた。
崩れないRF、攻めきれないDFM
DFMは有利を広げようとドラゴンの確保に動く。
DFMとしてはできれば集団戦を起こして一気に有利を広げたいところだが、RFは丁寧にDFMの動きをいなした。DFMはドラゴンを確保し終えた後にMidのファーストタワーを狙った。ドラゴン周りでのにらみ合いの際にDFMはMid寄り、RFはBot寄りだったこともあってRFは明け渡さざるをえない状況になるが、むしろそれを逆手にとってBotのファーストタワーを折り、さらにはセカンドタワーを狙っていった。
DFMはMidのセカンドタワーまで折ろうとしたが、Rek'SaiとGnarの圧力によって下がらざるを得なくなった。
RFは結果としてドラゴンとMidのファーストタワーを失ったが、一方でBotのファーストタワーを得た。集団戦ではDFMのほうが有利であることやAzirが育っていることを考えると、悪くない交換ができたと言えるだろう。
ただしMidのファーストタワーはマップコントロールに大きな影響を与えるObjectだ。DFMはこれを活かしてMid周辺の視界を掌握しローテーションで有利を広げていくことも可能なだけに、この時点ではDFMが試合の主導権を握ったと言って良いだろう。
しかしRFは崩れなかった。むしろ隙を作り出そうと積極的に仕掛けていった。
RFはMidのファーストタワーを狙うような動きをすることでDFMの注意をMidに集めた。そしてすぐさまTopにRek'SaiがULTで飛び、JannaとLucianがリバーを通ってそれに追随した。Topでは瞬間的に人数差が生まれ、RFはKog'Mawを倒すことに成功する。その後のDFMの反応が早かったことが計算外だったのだろうか、Rek'Saiが逆に倒されてしまったがRFはただ受け身になってObjectの交換をしかけるだけではなく、こういったDFMの隙を作り出す動きで逆転の時をうかがいDFMに圧力をかけていた。
DFMのミス、RFのしたたかさ
そしてDFMが遂に致命的なミスを犯した。
TopにいたGnarを5人で倒そうと仕掛けたのだが、RFはGnarを助けにいくのではなくMidのファーストタワーを折りにいく判断を下した。GnarはDFMに捕まらず逃げ続けることで時間を稼ぎ、RFの残りの4人はMidのセカンドタワーだけでなくドラゴンの確保にまで繋げた。DFMとしてはObjectを1つも取れないどころかGnarを倒すこともできず、RFに3つのObjectを明け渡してしまった。
このDFMの判断ミスには、今までRFが粘りに粘り続けてきたことも影響していただろう。そして試合はその後のRainbrain選手のバロンスティールへと繋がっていく。
ミスにも折れない気持ちの強さで粘り勝ち、そして王者に土が付く…
冒頭でも述べたように、RFの勝利に大きく貢献したのはRainbrain選手のバロンスティールだが、序盤からRFは見事なマップコントロールを見せていた。
さらには中盤、立て続けにミスを犯したにも係わらず、精神的に折れることなく粘り強く戦っていたことも見逃せないポイントだ。RFがDFMに勝ったのはまぐれではなく、しっかりとした実力を持ったチームだからだろう。
ROUND2にてSEASON1の王者に土がついた。そして王者に土をつけたのはSEASON1で王者に一度も勝てなかったRFだ。SEASON2は何が起きるかわからない、混沌としたものになりそうだ。
[写真提供:SANKO]