買ってみたらこうだった!

ローエンドで4K×2画面出力ができるMSIの「GeForce GT 1030 2G LP OC」を買ってみた

DisplayPort 1.4とHDMI 2.0を搭載でLowProfile仕様 text by 瀬文茶

GeForce GT 1030 2G LP OC

 GeForce GT 1030を搭載したMSI製のビデオカード「MSI GeForce GT 1030 2G LP OC」を買ってみました。購入時の価格は税込10,022円です。

 NVIDIAの最新ローエンドGPUを搭載したビデオカードがどのような製品なのか見てみましょう。

GeForce GT 1030で唯一の4K×2画面出力対応モデルDisplayPort 1.4とHDMI 2.0を搭載

MSI GeForce GT 1030 2G LP OC本体。

 NVIDIA久々のローエンドGPUとなる「GeForce GT 1030」は、GeForce GTX 10 シリーズに採用されているPascalアーキテクチャを採用した「GP108」コアベースのローエンドGPUです。GPUコアが備えるCUDAコアの数が384基と少ない分、消費電力は30Wに抑えられています。

 MSI GeForce GT 1030 2G LP OCは、LowProfile対応の基板にGeForce GT 1030をオーバークロックして搭載したビデオカードです。オーバークロックと言っても約3%程度の軽度なもので、スペック上の消費電力は30Wに据え置かれています。

MSI GeForce GT 1030 2G LP OCと、GeForce GT 1030 (リファレンス仕様)の比較
GPUクーラーを取り外した基板。GPUと2枚のVRAMが確認できます。
基板裏面側。
50mmファンを搭載したGPUクーラー。
冷却ファンは2ピン接続。回転数のモニタリングには非対応ですが、回転数はGPU温度と連動して制御されています。
占有スロットは1スロット
GeForce GT 1030。GPUコアには「GP108-300」が使用されている。
VRAMはMicronの「D9SXD」。7Gtps対応の1GB GDDR5メモリ。
ディスプレイインターフェースとして、DisplayPort 1.4とHDMI 2.0を各1系統ずつ装備。

 今回、GeForce GT 1030搭載ビデオカードの中からMSI GeForce GT 1030 2G LP OCを選択したポイントは、この製品が備えているディスプレイインターフェースにあります。

 GeForce GT 1030搭載ビデオカードの多くは、DVI-DとHDMIを各1系統ずつ備えているのですが、GeForce GT 1030のDVI-DはSingle Link仕様となっており、1,920×1,200ドット(60Hz)までの画面出力しかできません。HDMIは4k出力にも対応するHDMI 2.0ですが、高解像度モニターへの出力に対応するインターフェースが1系統しかないというのは、最新の画面出力用ビデオカードとしてはやや物足りなさを感じます。

 その点、MSI GeForce GT 1030 2G LP OCが備えるディスプレイインターフェースは、DisplayPort 1.4とHDMI 2.0の2系統となっており、どちらも4kモニターへの画面出力に対応しています。手持ちのDisplayPort 1.2 MST接続の4kモニターと、HDMI 2.0対応の4kモニターでのデュアルディスプレイ構成も問題なく構築可能でしたので、ローエンドGPUに高解像度モニターへの出力機能を期待される方には、魅力的な一枚と言えるでしょう。

手持ちの4kモニターでのデュアルディスプレイ構成。DisplayPortに繋いだモニターはDisplayPort 1.2 MST接続であるため、合計で3つ分のディスプレイストリームが必要な接続ですが、問題なく認識可能でした。

 ただし、GeForce GT 1030は「GTシリーズ」であることにより、「GTXシリーズ」で利用できる一部の機能がカットされています。その中には、GeForce Experienceの機能としてゲーム画面の録画や配信機能を提供する「Share」や、ディスプレイ同期技術の「G-SYNC」も含まれています。また、現状ではGPU内蔵ビデオエンジンを用いるハードウェアエンコード機能「NVENC」の利用もできません。

 Adobe PhotshopやCUDA対応アプリケーションでのGPUアクセラレーションは可能ですが、カットされている機能のいくつかは有用なものであるため、このあたりの機能を利用するか否かが、GeForce GT 1030とGeForce GTX 1050の選びどころとなるでしょう。

GeForce Experienceの「Share」は、GPUが条件を満たさないため利用不可。
TMPGEnc Video Mastering Works 6では、「NVENC」を検出できない旨のエラーメッセージが表示されます。
Photoshop CC (2017)ではGeForce GT 1030をグラフィックプロセッサーとして認識可能。
NVENCが利用できないTMPGEnc Video Mastering Works 6でもCUDAデバイスとしての利用は可能。

性能はIntel HD Graphics 530の2.5~3倍、内蔵GPUとは一線を画すパフォーマンス

 GeForce GT 1030を搭載したMSI GeForce GT 1030 2G LP OCのパフォーマンスはどの程度のものなのか、ベンチマークテストでその実力をチェックしてみました。

 比較用としてIntel Core i7-6700Kの内蔵GPUである「Intel HD Graphics 530」のスコアを用意した他、MSIのGPUユーティリティ「Afterburner」でMSI GeForce GT 1030 2G LP OCのPower Limit (Power Target)を設定下限の「85%」に引き下げた際のスコアも取得しました。その他、テスト環境などは以下の通りです。

Intel HD Graphics 530のGPU-Z実行結果。現行のKaby Lake-SベースのIntel Core i7などに使用されているIntel HD Graphics 630とほぼ同等の性能を持っています。
MSIのGPUユーティリティ「Afterburner」。GPU Boost動作の消費電力基準となるPower Limitは85~100%の範囲で設定できる。
仕様機材一覧
MSI GeForce GT 1030 2G LP OC (GeForce GT 1030)とIntel HD Graphics 530の仕様比較

 それでは実際の性能を見ていきましょう。MSI GeForce GT 1030 2G LP OCは、3DMarkのFire StrikeでIntel HD Graphics 530に約2.9倍のスコアを記録。よりGPU負荷の低いテストであるSky Diverでも約2.5倍のスコアとなっており、CPU内蔵GPUとは一線を画すパフォーマンスを見せています。

3DMark Fire Strike (V1.1)
3DMark Sky Diver (V1.0)

 また、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、画面解像度1,920×1,080ドットの標準品質(デスクトップPC)で、最高評価基準の7,000を超えたことで最高評価の「非常に快適」を獲得。描画負荷の軽いゲームであれば動かせる程度の実力を持っていることが伺えます。

ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク

 MSI GeForce GT 1030 2G LP OCを搭載したシステムの消費電力はIntel HD Graphics 530利用時より高いものの、100W以下の消費電力でCPU内蔵GPUの3倍近い3D描画性能を実現していることから、MSI GeForce GT 1030 2G LP OCの電力効率の高さが伺えます。

消費電力の測定結果

 この消費電力の低さは発熱の低さにもつながっており、ファイナルファンタジーXIVベンチマーク中のGPU温度は最高で67℃と、限界温度の97℃やGPU Boost動作の停止基準となるTemp Limitの83℃から、十分に余裕のある温度となっています。今回の検証中、冷却ファンの動作音は比較的大人しいものでしたが、GPU温度と連動してファンの回転数が上がる仕様であるため、排熱能力が低い小型PCケースで利用するのであれば、静粛性についてはあまり期待をしない方が良いでしょう。

ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク実行中のGPU温度推移

安く省電力に高解像度モニターを2画面利用できるMSIのローエンドビデオカード

 MSI GeForce GT 1030 2G LP OCを選んだポイントであるディスプレイインターフェースについては、手持ちの4kモニター2枚を問題なく利用できる期待通りのものでした。

 補助電源を必要としない消費電力の低さと、LowProfileかつ1スロット占有のカードサイズにまとめたことで、幅広い環境で利用できることも、このカードの魅力であると言えるでしょう。

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