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"立体冷却"でよく冷えるGTX 1080、GIGABYTEの「XTREME GAMING」ビデオカードを徹底チェック
ゲームパフォーマンスはリファレンス比で10%向上 text by 石川 ひさよし
2016年7月30日 23:55
現時点のコンシューマー向けシングルGPUで最強のパフォーマンスを、前世代比で1セグメント分低い消費電力で実現するNVIDIA GeForce GTX 1080。
当初売り切れが続出したリファレンスデザインにあたるFounders Editionは少し落ち着きを見せ始めたが、続いてメーカーオリジナルデザインモデルも登場し、どの製品を選べばよいのか悩ましいところだろう。
今回はGIGABYTEの「XTREME GAMING」シリーズのGeForce GTX 1080/1070搭載カードに注目し、その特徴や機能・性能を確かめた。
コンセプトは「究極のゲーム体験」、GIGABYTEの「XTREME GAMING」GTX 1080/GTX 1070搭載カードを投入
GIGABYTEの「XTREME GAMING」は、ビデオカードを始め、ケース、電源、キーボード、マウス、マウスパッドやヘッドセットなどの製品を、「究極のゲーム体験を提供する」というコンセプトの下に展開するものだ。
デザインだけでなく、ゲーミング向けにひとつ上のパフォーマンスを目指した設計、LEDギミックなどもXTREME GAMINGのフィーチャだ。そうしたところをビデオカード製品で確かめてみよう。
Pascal世代のXTREME GAMINGビデオカードだが、国内ではGeForce GTX 1080搭載品が投入されており、5インチベイ用HDMI出力パネルやSLIブリッジが付属する「GV-N1080XTREME-8GD Premium Pack」、水冷クーラー搭載モデルの「GV-N1080XTREME W-8GD」が販売開始されている。空冷使用のカード単体モデル「「GV-N1080XTREME-8GD」も今後登場予定だ。また、GeForce GTX 1070を搭載モデルでは「GV-N1070XTREME-8GD」が発売されている。
空冷仕様のカードには、立体構造の「WINDFORCE STACK 3X」クーラーが搭載されており、Pascal世代のXTREME GAMINGビデオカードの特徴となっている。
選別チップによる大幅なオーバークロックがウリの「XTREME GAMING」VR向けの基板設計や多彩なLEDイルミネーションなど機能は盛りだくさん
GPU選別による大幅なオーバークロック
XTREME GAMINGビデオカードの特徴は、大幅なオーバークロックだ。
同社のG1 Gamingビデオカードもオーバークロックされているが、XTREME GAMINGビデオカードはさらに高クロックが設定されている。製品レベルでオーバークロックを施すことは、手持ちのビデオカードでオーバークロックするレベルとは異なる。そのクロックにおいて、動作保証を確保しなければならないからだ。
そこでGIGABYTEでは、「GPU Gauntlet」と呼ぶGPUチップの選別を行い、それにパスしたものをXTREME GAMINGビデオカードに採用している。
GV-N1080XTREME-8GDをはじめとしたXTREME GAMINGシリーズの仕様表を見ると、「OC mode」、「Gaming mode」2つのクロックが表記されている。これは新ユーティリティの「XTREME GAMINGユーティリティ」から切り替えることが可能で、Gaming modeがデフォルトとして設定されてる。ユーティリティ上からはこの他に「ECO mode」も選択可能で、リファレンスクロックに近い値で動作させることもできる。
GV-N1080XTREME-8GDを例に挙げると、OC modeのGPU動作クロックは、1,784MHz(ブースト時1,936MHz)だ。GeForce GTX 1080のリファレンスクロックは、1,607MHz(ブースト時が1,733MHz)なので、およそ200MHzのオーバークロックとなる。Gaming modeは少しマイルドで、1,759MHz(ブースト時1,898MHz)。ECO modeは1,607MHz(ブースト時1,746MHz)と、ブースト時のクロックのみ13MHzほど引き上げられている。
GeForce GTX 1070を搭載するGV-N1070XTREME-8GDも、モードの切り換えに関しては同様。OC modeのGPU動作クロックは、1,695MHz(ブースト時1,898MHz)、Gaming modeは1,670MHz(ブースト時1,873MHz)。ECO modeは1,506MHz(ブースト時1,683MHz)。GeForce GTX 1070のリファレンスクロックが1,506MHz(ブースト時1,683MHz)なので、こちらもリファレンスクロックと比べると大幅に引き上げられている。
VR向けに基板後方にもHDMI端子を搭載、PC前面にHDMI端子をスマートに増設
さて、XTREME GAMINGビデオカードのそのほかの特徴も見ていこう。
今回、GeForce GTX 1080/1070搭載モデルには、カード後方側にVRヘッドセット接続するためのHDMIポートが2基設けられている。同社はこれを「Xtreme VR Link」と呼んでいる。
GV-N1080XTREME-8GD Premium Packにはケース前面側にHDMI端子を設けるための5インチベイ用パネル「Xtreme VR Link extended 5.25”front panel」が同梱されており、PCケース前面に2基のHDMIポートを設けることも可能だ。なお、Xtreme VR Link側のHDMI端子はブラケット側のDisplayPort×2基と排他使用となっている。
フルカラーのLEDイルミネーション、ユーティリティから自由に設定可能
LEDイルミネーション機能もXTREME GAMINGの特徴だ。LEDはフルカラータイプで、XTREME GAMINGロゴと、エンブレム部分、ファンの回転を停止した際に点灯する「FAN STOP」表示部分のカスタマイズが可能だ。イルミネーション機能は、デフォルトではカラーが次々に切り替わるもの、発光パターンなどは「XTREME GAMINGユーティリティ」から変更することができる。
「立体冷却」なファンの一部を重ねた「WINDFORCE STACK 3X」がよく冷えるワケ
「XTREME GAMINGシリーズ」の全般的な特徴は前節で紹介したが、Pascal世代のXTREME GAMINGビデオカードの最大の特徴は、「WINDFORCE STACK 3X」と名付けられた新構造のクーラーを採用する点だ。
GeForce GTX 1080/1070 XTREME GAMINGのファンは、中央と、前後のファンのブレードの一部が重なっている。「Stack FAN技術」とよぶこの構造は、中央のブレードは外周の上側をえぐり、前後のブレードは外周の下側を跳ね上げている。
これにより、3つのファンが重なっていても、互いに干渉せず回転させることができるわけだ。また、一部を重ねることで、ファンの口径を10cm径に拡大しつつ、カードの拡大を抑制できたという。確かに10cm径ファン3基をそのまま用いれば最低でも300mmのカード長となるが、背面ブラケットのベース部分からカードの端まで実測すると、GV-N1080XTREME-8GDが289mm程度だった。
カード長を仕様表から確認してみると、GV-N1080XTREME-8GDが289mm、GV-N1070XTREME-8GDが291mm。リファレンスは280mmだから、10mm前後の延長で3連ファンを搭載できているわけだ。パフォーマンスが釣り合うあたりでGeForce GTX 980 Tiを搭載する旧WINDFORCE 3Xモデル「GV-N98TG1 GAMING-6GD」の長さは295mmで、これと比べても若干だが短くなっている。この点、ファンの大口径化によって冷却効果を高めつつ、従来型のWINDFORCE 3Xでは干渉して入らなかったケースにも収まる可能性が出ている。
なお、GeForce GTX 1080/1070 XTREME GAMINGの間に長さの違いがあったように、GV-N1080XTREME-8GDとGV-N1070XTREME-8GDのWINDFORCE STACK 3Xクーラーは別設計だ。それはヒートシンクの形状も、ヒートパイプのレイアウトも、そしてGPU接触部の銅製プレートもだ。同社は常々から、クーラーをGPU毎に別設計していると主張してきたが、それが現われている。
さて、ファンの一部を重ねた「立体冷却」を採用するメリットは、大口径化のほかにももうひとつあると言う。同社の主張を説明しよう。まず、ファンとファンの間には、ブレードが届かず、ほかよりもエアフローの弱いエリアが生じるものだとか。ファンのブレードを重ねれば、このエリアを小さくできる。この点で、冷却効果がさらに高まったと言う。これらによって従来のWINDFORCE 3X比で10%、冷却性能が向上したとのことだ。
そのほか、ファンの軸には軸ブレが少なく静音性に優れた2ボールベアリングを採用したり、ブレードの先端の形状を工夫することでエアフローを向上したりと、各種の工夫が盛り込まれている。もちろん、従来から用いられている効率に優れたコンポジットヒートパイプや、カード上下方向にエアフローを整流するトライアングルクールなども特徴だ。
なお、カードの厚みは2.5スロット分となっているので、搭載する際は実質3スロット占有カードが搭載可能なスペースが必要になる。
リファレンスから1割アップのパフォーマンス、オーバーウォッチで10fps向上
ここからは、GeForce GTX 1080/1070 XTREME GAMINGのカードを用いて、パフォーマンスや動作における特徴を見ていこう。比較対象としてGeForce GTX 1080/1070のリファレンスカードも用意した。
一つ目は3DMark。Fire Strikeと最新のDirectX 12対応テストのTime Spyを計測した。リファレンスカードのスコアは各所で見かけるもので、GeForce GTX 1080のFire Strikeなら17,000ポイント台半ばといったところだが、さすが+200MHzの高いオーバークロック仕様のGV-N1080XTREME-8GDだけに、18,000ポイント台半ばに乗せている。17,724ポイント対18,600ポイントなので、1,000ポイント近い向上だ。
一方でGV-N1070XTREME-8GDも、リファレンスの15,361ポイントに対し16,383ポイントをつけており、やはり1,000ポイントほど上回っている。これはどちらもOC modeにおけるスコアだ。Time Spy側も、各OC modeはリファレンスに対して500ポイントほど高いスコアをつけていた。
参考までにGV-N1080XTREME-8GDのみECO modeも計測してみたが、これはリファレンスからわずかにターボ時クロックを引き上げたのみだが、それでもリファレンスよりも安定して高いスコアを記録した。
もう一つのゲームタイトルはオーバーウォッチ。最近人気のFPSタイトルだ。こちらは最高画質の「EPIC」、解像度を1,920×1,080ドットとし、チュートリアルシーンを用いてFrapsからフレームレートを計測した。このテストの結果を見ると、GeForce GTX 1080/1070 XTREME GAMINGは、それぞれリファレンスに対して約10fpsという無視できない平均フレームレートの向上が見られた。
なお、GV-N1080XTREME-8GDのOC modeなら平均120fpsを超えるので、120Hz対応のG-SYNC液晶ディスプレイなどと組み合わせると、チラつきやテアリングのない高品質な映像はもちろん、高リフレッシュレート液晶のパフォーマンスを最大に引き出すことが可能だ。オーバーウォッチは、eSportsとしても用いられるタイトルなので、そうした大会で結果を求める方は、このパフォーマンスに注目していただきたい。
リファレンスに対するパフォーマンス向上の確認はこの2つとし、続いて消費電力や動作音といった点を見てみよう。
消費電力に関しては、オーバークロックモデルだけに、高負荷時はリファレンスに対しては増加している。計測条件は、アイドル時をPCの起動から10分間、高負荷時を3DMarkのFire Strike実行中の値とした。グラフで気になるのは、ECO modeのようにわずかなオーバークロックでもリファレンスに対して10W近く高まっている点。しかし、振り返ればわずかなオーバークロックの割に3DMarkもオーバーウォッチもパフォーマンスが向上していたことからすると、「パワーリミット」設定が高めに設定されているためではないかと思われる。アイドル時はおよそどれも40W少々だ。
動作音は、こちらはリファレンスに対して明確な差が出たところだ。計測条件は、バラック状態のシステムに対し、騒音計をGPUファンの正面20cmの位置に置いている。アイドル時に関しては、GeForce GTX 1080/1070 XTREME GAMINGは、低負荷時にファンの回転を止める機能が働くため、CPUファンや電源ファンのノイズのみの31.4dBとなる。
一方で、リファレンスは、確かに昔と比べると静かなのだが、ファンの回転は続くために33dB台だった。高負荷時については、リファレンスはどちらのGPUも40dBを超えたのに対し、GeForce GTX 1080/1070 XTREME GAMINGは38dB少々だった。38dBは、確かに回転音がハッキリ聞こえるものの、オープン系ケースでもなんとかなりそうな値で、40dBとなると窒息系ケースにしようかと悩む値だ。
最後はGV-N1080XTREME-8GD(OC mode)で計測したファンの回転数とGPU温度を見ておこう。グラフは3DMarkのFire Strike実行中のログを切り出したものだ。実際のテストは3~170秒あたりで実行されており、そこから300秒まではテスト後の推移を見るために切り取った。
グレーのGPU使用率と比較をすると、ファンはテストが始まってからおよそ10秒後に回転を開始した。この時のGPU温度は52℃。徐々に回転数を上げていくが、最大でもPWMの愛点数調整範囲において39%、1,240rpmまでしか上がらなかった。
一方、GPU温度は、テスト実行中ほぼ50℃台で推移し、最大で60℃までしか達しなかった。なお、この計測は室温27℃でエアコンを切り室内の風の循環をなくして計測している。ほかのファンと言えばCPUクーラーのみだ。この条件で60℃までしか上昇しないというのは優れた冷却性能と言えるだろう。もちろんGPUチップの上限温度には20℃の余裕を残しているし、ファン回転数も40%程度だから半分も力を出していない。だから静かなのだ。そして、やろうと思えばまだオーバークロックできるだけの余力を残している。
170秒あたりでテストが完了した後は、GPU温度の低下とともにファンもじわじわと回転数を下げていく。265秒でファンが再び回転を止めたが、この時のGPU温度は41℃だ。つまり、回転開始は50℃までねばり、回転終了は40℃まで引っ張るようだ。それにしても、GPU温度の緩やかさがよく分かる。静かで少ない回転数でもGPU温度の上昇が緩やかということは、それだけヒートシンクがしっかり放熱できているということが言えるだろう。
・検証環境
CPU IntelCore i7-6700K
マザーボード GIGABYTE GA-Z170N-Gaming 5(Intel Z170)
メモリ Panram NINJA-V Q4U2400PSN-4G(PC4-19200 DDR4 SDRAM、4GB×2)
SSD Crucial BX200 CT480BX200SSD1(Serial ATA 3.0、TLC、480GB)
電源 オウルテック SS-1000XP(80PLUS Platinum、1000W)
OS 日本マイクロソフトWindows 10 Pro(64bit)
クーラー性能もOCパフォーマンスもトップクラス
このように、選別チップによる大幅なオーバークロックと、それをものともせず静かに冷やす新設計の「WINDFORCE STACK 3X」クーラーがGV-N1080XTREME-8GDとGV-N1070XTREME-8GDの特徴だ。
とくに大幅なオーバークロック設定では、それぞれリファレンスに対して1割アップのフレームレートが得られており、より高いフレームレート、最新のゲームを最高画質で楽しみたい方には大きな武器となる。
また、「Xtreme VR Link」のような試みは興味深い。VRヘッドセットの使用シーンを考えるとケース前面にHDMIポートがあるのは利便性に優れるのは間違いなく、もしかしたら、USBポートのようにケース側がHDMIポートを用意する動きに発展するかもしれない。
そして最後は、今後、XTREME GAMINGシリーズが拡大した時への期待だ。COMPUTEXではケースや電源、ペリフェラルなどがXTREME GAMING製品として展示されていた。とくにケースのように外見を特徴づける製品については、XTREME GAMINGシリーズで組み合わせた時の統一感が大きく出るところ。XTREME GAMINGビデオカードとともに、今後のXTREME GAMINGシリーズの展開にも要注目だ。
[制作協力:GIGABYTE]