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GeForce GTX 10搭載のMSI GAMINGカードを上から下まで一斉テスト、最新PCゲームに適したモデルはこれだ!

バイオ7にOverwatch、ニーア オートマタ……最新PCゲーム別に必要な性能をチェック text by 加藤勝明

 PCゲームを快適に楽しむには、何はなくても高性能なビデオカードは必須。特に最近のビデオカードはワットパフォーマンスも向上しているため、昔のように電源ユニットの負担をあまり考えずにハイエンドビデオカードが使えるようになった。

 だが、ビデオカードはゲーム中は極めて過酷な環境に晒されるため、細部の設計の善し悪しが重要になる。GPUの性能だけで無く、カードの品質も購入する上でポイントだ。

 そこで、今回は定番かつ人気の高い「MSI GAMINGシリーズ」ビデオカードを使用し、GeForce GTX 10シリーズのGPUを一斉に比較してみた。性能と合わせ、人気を得ているメーカーがどのあたりにこだわりをもってカードを設計しているのかも紹介しよう。

 パフォーマンスチェックは直近の話題作・人気作を使用しているので、ゲームに合わせどのGeForce搭載カードを選べばよいかのか、ビデオカードの更新を狙っている人はぜひ参考にして頂きたい。

・記事目次
スペックから見るMSI GAMINGシリーズのGeForce GTX 10搭載カード、主要モデルは全7種
高性能GPUクーラーのスタイルを確立させた「TWIN FROZR VI」
高耐久パーツ採用にゆとりのある綺麗なレイアウト、安定動作を支える基板デザイン
MSI独自のツールも見所がたくさん、動作クロックも発光パターンも簡単に切り替え
定番ベンチマークでの実力やいかに、ゲームタイトル別に見るパフォーマンス
高速液晶と組み合わせたい「Overwatch」
VRAMの搭載量がカギになる「BIOHAZARD 7 resident evil」
30fps維持が生命線な「For Honor」」
一気にハードルが上がった超重量級「Watch Dogs 2」」
Turf Effectsが必見の「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」
エンジンの改善を期待したい「NieR: Automata
リファレンスクーラーよりかなり冷えるMSIの「TWIN FROZR VI」、冷却性能をテスト
よく冷えて安定性も高いMSIのGeForce搭載カード、ゲームをガッツリ遊ぶならGeForce GTX 1060以上がお勧め


スペックから見るMSI GAMINGシリーズのGeForce GTX 10搭載カード、主要モデルは全7種

 現在のGeForce GTX 10シリーズは、上はGeForce GTX 1080 Tiにはじまり、下はGeForce GTX 1050まで全7モデルがラインナップされている。

 MSIのビデオカードはコスト志向の“ARMOR”シリーズやハイブリッド冷却の“SEA HAWK”といった複数のシリーズがあるが、ゲーマーに向けたハイパフォーマンス志向のシリーズが赤と黒で彩られた“GAMING”シリーズだ。同シリーズはGeForce GTX 10シリーズを網羅するかたちで7モデルが発売されている(派生モデルやカラーバリエーションを除く)。まずは各モデルのスペックをざっと見ておこう。

 なお、MSI製のビデオカードの場合、GPUやメモリのクロックが複数記載されている。これは後述する簡易チューニングツール“GAMING APP”で簡単に切り替え可能なのだが、このツールを導入しない場合は基本的にゲーミングモードでの動作となるが、本稿では最高性能となるOCモードを基準としてレビューを行っている。

【MSI GAMINGシリーズのスペック(※クロックはOCモード時のもの)】
モデルCUDAコアGPUクロックブーストクロックメモリ容量メモリクロック電源コネクタ
GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G3,584基1,569MHz1,683MHzGDDR5X 11GB11,124MHz8+8ピン
GeForce GTX 1080 GAMING X 8G2,560基1,708MHz1,847MHzGDDR5X 8GB10,108MHz8+6ピン
GeForce GTX 1070 GAMING X 8G1,920基1,607MHz1,797MHzGDDR5 8GB8,108MHz8+6ピン
GeForce GTX 1060 GAMING X 6G1,280基1,594MHz1,809MHzGDDR5 6GB8,108MHz8ピン
GeForce GTX 1060 GAMING X 3G1,152基1,594MHz1,809MHzGDDR5 3GB8,108MHz8ピン
GeForce GTX 1050 Ti GAMING X 4G768基1,379MHz1,493MHzGDDR5 4GB7,108MHz6ピン
GeForce GTX 1050 GAMING X 2G640基1,442MHz1,556MHzGDDR5 2GB7,108MHz6ピン
GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G
GeForce GTX 1080 GAMING X 8G
GeForce GTX 1070 GAMING X 8G
GeForce GTX 1060 GAMING X 6G
GeForce GTX 1060 GAMING X 3G
GeForce GTX 1050 Ti GAMING X 4G
GeForce GTX 1050 GAMING X 2G


高性能GPUクーラーのスタイルを確立させた「TWIN FROZR VI」

ひと目見ればわかる強烈な個性を放つTWIN FROZR VIのクーラー本体。他社製のカードだとファンを3つ連ねた製品も出ているが、MSIはデュアルファン仕様にこだわっているようだ。

 MSI製のGAMINGシリーズのパフォーマンスを語る上で絶対に避けて通れないのが同社自慢の冷却システム“TWIN FROZR VI”。型番が示す通り、現行モデルに搭載されているものは第6世代。前世代(TWIN FROZR V)から採用した準ファンレス仕様は、瞬く間にGPUクーラーのデファクトスタンダードとなった。

 まずはTWIN FROZR VIを中心に、MSI製のGeForce GTX 10シリーズ搭載カードを様々な角度から眺めてみるとしよう。

TWIN FROZR VIを裏側から見たところ。ヒートパイプの数や走行パターンは組み合わせるGPUによって変わる。
高性能GPUクーラーはファンの設計も重要。MSIの場合は通常のファンブレードに加え、ひねりを大きくしたファンブレードを組み合わせることで、ヒートシンクに吹き付ける空気の速さを稼ぐ“トルクスファン2.0”を採用している。
GPUとの接触部はニッケルメッキを施した銅板を使い、そこに底面を平らにしたヒートパイプを密着させることで熱伝導を最大化している。MSIはこのヒートパイプのことを“スムースヒートパイプ”と呼んでいる。
カード上部にはMSIのゲーミングブランドのシンボルであるドラゴンのマーク。下にRGB LEDが仕込まれており、任意の色で発光させることができる。
GeForce GTX 1060以上の製品にはバックプレートを装着し、基板の歪みを防止している。光の加減で浮かび上がるドラゴンのマークにも注目。
メモリの冷却用に装着されたヒートスプレッダの形状をよく見るとバックプレートに繋がる立体的な形状になっている。表面実装部品の放熱を確保すると同時に、カードをより強固にする目的がある。
GeForce GTX 1080搭載モデルとGeForce GTX 1050 Ti搭載モデルのクーラー。TWIN FROZR VIは全モデル同じ設計というわけで無く、搭載GPUや基板サイズ合わせ、ヒートシンクのサイズやヒートパイプの数などが最適化されている。


高耐久パーツ採用にゆとりのある綺麗なレイアウト、安定動作を支える基板デザイン

 ビデオカードの基板は、マザーボード同様に耐久性や安定性、そして部材のクオリティーの高さが重視される。この点においてもMSIは以前から独自の設計&パーツ選定基準を展開している。

 実装パーツは同社の“Military Class 4”準拠の高品質なものを採用しており、基板も大型なのでパーツレイアウトも整然としている。独自デザインのクーラー「TWIN FROZR VI」と合わせ、こだわりの基板を採用する点もMSI GAMINGシリーズビデオカードの特徴だ。

リファレンスデザインよりもゆったりとレイアウトされた基板。写真はGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gのもの。
Military Class 4準拠の高耐久性パーツで構成された10フェーズの電源回路を搭載。他の部材もクオリティーの高いものを厳選して搭載している。
GeForce GTX 1080 GAMING X 8Gの出力端子、通気口はドラゴンの鱗をモチーフにした独特なデザインになっている。
OCモデルの場合、電力供給量の安定化の目的でFounders Editionよりも補助電源コネクタのピン数が増える。GeForce GTX 1080 GAMING X 8Gも本来8ピンだったものを8+6ピンに強化して使用する。


MSI独自のツールも見所がたくさん、動作クロックも発光パターンも簡単に切り替え

GAMING APPを開くと、OC/ゲーミング/サイレントボタンをクリックするだけでMSI製ビデオカードのチューニングができる。このツールに対応するMSI製マザーを使っているなら、同時にCPUの挙動も若干変化する。

 MSI製ビデオカードはチューニング用ツールが多機能で使い勝手が良いという点も見逃せない。GPUのOCをする人にとっては同社製の「Afterburner」はもはや定番中の定番だが、操作できるパラメーターが多く初心者にはオススメしにくい。そこで登場するのが簡易OCとゲーマー向けの機能を凝縮した「GAMING APP」なるツールだ。

 GAMING APPの機能で最も大事なのは前掲のスペック表にあった「OC」「ゲーミング」「サイレント」モードを1クリックで切り替える機能。今回行った性能評価は全てGAMING APPを使いOCモードに切り替えて実施している点にご注意頂きたい(今回の環境でOCモードにするとCore i7-7700Kのクロックは常時4.5GHz固定になる)。

GAMING APPはCPUやGPUの状態をゲーム画面上にオーバーレイ表示させることができる(右はOverwatchでの例)。ただし対応ゲームが最近の人気作だけになっているため、汎用性を重視するならAfterburner同梱のオーバーレイ機能(もしくはRTSS)を使った方が得策。
MSI製ビデオカードとマザーの発光機能を制御する機能も搭載。マザーとビデオカードで発光制御ツールが別になっていることが多いが、MSIはよくまとまっている感がある。
画面の色温度を変化させる“Eye Rest”機能。アイレストモードにすると画面が黄変し、いわゆるブルーライトを抑制した状態になる。液晶のOSDを操作しなくてもマウスひとつで切り替えられるのがミソだ。
GAMING APPにはマウスやキーボードにマクロを設定する機能も備えている。この“Mouse Manster”では指定のキーを押している間だけマウスのDPIを下げる(上げる)設定もできる。いわゆるマウスのスナイパーモードをソフト的に組み込めるのだ。
ビデオカードのチューニングといえばAfterburnerが鉄板。スキンが昔より派手になったが、基本機能は変わっていない。これはMSI製ビデオカードでなくても利用できる。

 さらにMSI社外のツールとして、ゲーム動画実況用に「Xsplit Gamecaster(1年間ライセンス)」と、ネットゲームのラグを軽減が期待できる「WTFast(2ヶ月間無料ライセンス)」も同梱される。ハードウェアのみならずソフトウェア的なお買い得感も高いのがMSI製品の特徴なのだ。


定番ベンチマークでの実力やいかに、ゲームタイトル別に見るパフォーマンス

旧世代との比較用にMSI GeForce GTX 960 GAMING 2G、クーラーの性能を見るためにGeForce GTX 1080 Founders Editionも用意した。

 それでは最新注目ゲームにおけるMSI製GeForce GTX 10シリーズ搭載カードのパフォーマンスを検証しよう。検証環境は以下の通りだ。

 MSI製のGeForce GTX 10シリーズ搭載カードに加え、旧世代の代表としてGeForce GTX 960(MSI GeForce GTX 960 GAMING 2G)、さらにTWIN FROZR VIの力を見るためにGeForce GTX 1080 Founders Editionも準備した。

【検証環境】
CPU:Intel Core i7-7700K(4.2GHz、最大4.5GHz)
マザーボード:MSI Z270 GAMING M7(Intel Z270)
メモリ:Corsair CMU16GX4M2A2666C16R(DDR4-2666 8GB×2)
ストレージ:Crucial CT525MX300SSD1(SATA SSD、525GB)
電源ユニット:オウルテック AURUM PRO 850(850W、80PLUS Gold)
OS:Windows 10 Pro 64bit版(Anniversary Uptade)

【使用 ビデオカード】
MSI GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G
MSI GeForce GTX 1080 GAMING X 8G
MSI GeForce GTX 1070 GAMING X 8G
MSI GeForce GTX 1060 GAMING X 6G
MSI GeForce GTX 1060 GAMING X 3G
MSI GeForce GTX 1050 Ti GAMING X 4G
MSI GeForce GTX 1050 GAMING X 2G
MSI GeForce GTX 960 GAMING 2G
GeForce GTX 1080 Founders Edition

 まずは定番「3DMark」で力比べだ。テストはDirectX11環境でフルHDを想定した“Fire Strike”、4Kを想定した“Fire Strike Ultra”、そしてDirectX12ベースのテストである“Time Spy”を使用する。

「3DMark」のスコア

 GeForce GTX 1080 Tiを筆頭に見事な階段状のグラフになった。ここでのスコア比がそのまま実ゲームの性能に反映される訳ではないが、定番ベンチマークでは現行のGeForce GTX 10シリーズの実力差はこんなものと認識したうえでこの後の検証を読み進めて頂きたい。

 もうひとつ定番のベンチとして「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」の公式ベンチマークを使用する。3DMarkよりもだいぶ描画負荷が軽いが、FF14あたりのゲームなら、そろそろハイエンドビデオカード1枚で4Kプレイが狙えそうである。テストはDirectX11モードの“最高品質”設定で実施した。解像度はフルHD/WQHD/4Kの3通りで計測する(以降同じ)。

「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」公式ベンチのスコア

 スコアの傾向は3DMarkと同じだ。このベンチの場合スコアが7,000ポイント以上なら“非常に快適”判定なので、フルHDならGeForce GTX 1050 Tiより上、WQHDならGeForce GTX 1060 3GB以上、そして4KならGeForce GTX 1080以上あれば良いということになる。

 だがこのスコアでは今ひとつピンと来ないので、ベンチ中の平均フレームレートで比較してみたのが次のグラフだ。

「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」公式ベンチ実施中の平均fps

 平均60fpsを狙うにはどのMSI製ビデオカードを手に入れればよいか目安が付けやすくなったはずだ。WQHDならGeForce GTX 1060より上、4Kかつ最高画質で平均60fps以上に到達するにはGeForce GTX 1080 Tiが必要なのだ。


高速液晶と組み合わせたい「Overwatch」

 次はeスポーツ系FPSのヒット作「Overwatch」でのパフォーマンスを検証しよう。

 マップ“King's Row”におけるBotマッチを遊んだ際のフレームレートを「Fraps」で計測する。画質はプリセットの“エピック”設定を使い、レンダー・スケールは100%に固定している。

「Overwatch」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「Overwatch」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「Overwatch」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11Gなら4Kでも60fpsがキープできてしまう点には驚いてしまうが、このゲームの場合はむしろフルHD環境でのフレームレートに注目したい。

 一般的な60Hz液晶を使うならGeForce GTX 1060であれば乱戦の時もモタつくことなく描画できるが、今ゲーマーに注目されているネイティブ240Hzの超高速液晶(ZOWIE XL2540など)の性能をフルに使うには、GeForce GTX 1060は圧倒的に力不足(筆者は画質を下げる、という選択肢は考えない!)。高速液晶と組み合わせて使うなら最低でもGeForce GTX 1080以上のカードが欲しい。

 ちなみにこのゲームのVRAM使用量はフルHD/WQHD/4K時でそれぞれ1.3GB/1.6GB/2.4GBと非常に少ない(それぞれHWiNFO64による実測値)。GeForce GTX 1060の3GB版でも余裕があるのだ。


VRAMの搭載量がカギになる「BIOHAZARD 7 resident evil」

 ビジュアル重視のゲームこそハイパワービデオカードを使って最高画質で楽しんで頂きたいものだ。ここでは「BIOHAZARD 7 resident evil」を利用する。

 テストはゲーム序盤に入る廃屋内の一定のコースを移動する際のフレームレートを「Fraps」で測定するというもの。このゲームは一斉に設定を変えるプリセット的オマカセ設定ががないので、個々の設定を一番重くなるように調整した。アンチエイリアスは“FXAA+TAA”にしている。

「BIOHAZARD7 resident evil」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「BIOHAZARD7 resident evil」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「BIOHAZARD7 resident evil」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 テストは再現性重視のため戦闘のないシーンで実施したため、実際はもう少し重くなる可能性はあるものの、GeForce GTX 1060 GAMING X 6G以上のカードであれば最高画質設定でも快適に遊べるといってよいだろう。

 ここで注目したいのは上位製品のパフォーマンスではなく、GeForce GTX 1060のVRAM 3GBモデルを境にパフォーマンスが一気に悪化している部分だ。フルHD環境ではGeForce GTX 1050 Tiの方がGTX 1060 3GBより最低fpsが高くなっている。

 この理由はBIOHAZARD 7のVRAM使用量にある。フルHD&最高品質設定だと約4.6GB消費されるため、VRAM 3GB版のGeForce GTX 1060は性能が出し切れないのだ。ちなみにWQHD時は5.2GB、4K時は6.5GB程度のVRAMが必要になる。


30fps維持が生命線な「For Honor」

 次は重厚な描き込みが印象的な剣戟アクション「For Honor」で検証してみたい。

 このゲームはOverwatchほど高fpsは必要としないが、一瞬の差し合いを制するにはコマ落ちやモタつきのない滑らかなフレームレートが必要。特にマルチプレイヤーモードは30fps以下お断りシステムになっているため、描画パワーはしっかり確保しておきたい。

 ここではプリセットの“超高”設定に統一し、ゲーム内のベンチマーク機能を使って計測した。ベンチマークはいくつかのシーンに分かれているが、全シーンを総合したフレームレートで比較する。ちなみにアンチエイリアスの“スーパーサンプリング”は極端に重くなるので使用していない。

「For Honor」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「For Honor」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「For Honor」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 最大fpsに時々飛び抜けた値が出やすいベンチではあるため、平均と最低fpsを中心に比較するとよいだろう。フルHDならGeForce GTX 1060以上、WQHDならGeForce GTX 1070以上であれば、少なくとも「描画性能では」ストレスなくプレイできるはずだ。

 ちなみに、このゲームのVRAM使用量は画質設定時に目安が表示されるが、かなりいいかげん。シングルプレイ時の実測値ではフルHD/WQHD/4K時でそれぞれ3.7GB/4.4GB/5.6GBと、BIOHAZARD 7よりも消費量は若干控えめになっている。


一気にハードルが上がった超重量級「Watch Dogs 2」

 「Watch Dogs 2」のような超重量級のゲームでは、各製品がどの程度粘れるのだろうか? 本作はCPU負荷が高いことで知られているが、リアルな街並みの表現にはハイパワーGPUが欠かせない。

 今回の検証では画質をプリセットの“最大”に設定し、街中の一定のコースを移動する際のフレームレートを「Fraps」で測定する。

「Watch Dogs 2」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「Watch Dogs 2」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「Watch Dogs 2」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 このゲームもVRAMの使用量が非常に多い。フルHD時で4.6GB、WQHDおよび4K時はそれぞれ5.2GB/6.5GBとなっている。

 だが、VRAMの少ないGeForce GTX 1060 3GB版以下のモデルでもBIOHAZARD 7のような激しいフレームレートの落ち込みは見られない。どちらかといえばGeForce GTX 1060以下の製品ではGPU負荷が高すぎてフレームレートが出ない印象だ。

 ミドルレンジ製品では画質設定を大胆に落とす必要があるだろう。最速のGeForce GTX 1080 Tiをもってしても最高画質プレイ(カスタムで設定を詰めれば実はもっと上の設定はあるが……)ではWQHDがギリギリのラインなのだ。


Turf Effectsが必見の「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」

 超重量級ゲームといえば、同じUBI系列の「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」もチェックせねばならない。

 NVIDIAが最新のGameWorksに組み込んだ“Turf Effects”を利用したリアルな植生の表現は美しいがその分描画負荷も飛び抜けて高いからだ。画質設定はプリセットの“ウルトラ”に設定し、ゲーム内のベンチマーク機能を利用して計測した。

「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 傾向はWatch Dogs 2とほぼ同じ。VRAM使用量もかなり近い(フルHD/WQHD/4K時で5.7GB/6GB/7GB)が、3DMarkのようにGeForce GTX 1060とGeForce GTX 1070の間に大きな差がつく訳でなく、キレイな階段状のグラフになっている。

 ウルトラ画質でプレイするなら最低でもGeForce GTX 1080 GAMING X 8G以上のビデオカードが必要といえるだろう。


エンジンの改善を期待したい「NieR: Automata」

 最後のゲームベンチは「NieR: Automata」を使用する。

 このゲームにおける描画システムを補完するMod「FAR」は導入せず、プレーンな状態でのフレームレートをチェックしたい。画質はプリセットの“HIGH”に設定し、廃墟都市におけるキャンプ近くのフィールドを移動する際のフレームレートを「Fraps」で測定した。

「NieR: Automata」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「NieR: Automata」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「NieR: Automata」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 まずこのゲームでは垂直同期をオフにしても60fpsでキャップがかかるため、FARを導入しない限りフレームレートは頭打ちになる。

 だが描画が軽いかというとそうではなく、4KでプレイするにはGeForce GTX 1080 Tiでもパワーが足りない。そして解像度を上げると下位のビデオカードではメニュー操作すら不能になるなど、近年のゲームでは珍しいかなり荒削りな仕様となっている。フルHD&最高画質ならGeForce GTX 1060があればプレイは可能だが、コンボを確実に決めるのであればGeForce GTX 1070が欲しいところだ。

 GeForce GTX 1050等の下位カードで解像度を上げると操作不能になる理由のひとつは、このゲームのVRAM消費量がかなり多いからではないかと考える。フルHD環境においてGeForce GTX 1060 3GB版の最低fpsが6GB版に比べ落ち込んでいるのは、VRAM使用量の実測値が4.4GB(GeForce GTX 1080 Ti環境で計測)と多いため。BIOHAZARD 7と同じ構図である。

 ちなみにWQHDと4K時におけるVRAM消費量はそれぞれ5.4GBと8.1GBになるため、VRAM 4GB以下のビデオカードではフルHDより上の解像度では急激に重くなるのだ。


リファレンスクーラーよりかなり冷えるMSIの「TWIN FROZR VI」、冷却性能をテスト

 ゲームにおけるパフォーマンスの違いが分かったところで、各製品の消費電力や発熱にどの程度の差があるのかチェックしよう。

 まず消費電力はラトックシステムの電力計「REX-BTWATTH01」を使用し、システム全体の消費電力を比較した。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、3DMarkのTime Spyデモ時のピーク値を“高負荷時”としている。

 ただ今回はGAMING APPを使用してOCモードにて各種検証を行っていると述べた通りだが、OCモードにするとCPUが常時Turbo Boostの上限に張り付く(今回の場合は4.5GHz)ため、アイドル時の消費電力はかなり高めに出ている。

システム全体の消費電力(GPU/CPUともにOCモード設定時)

 とはいえ、最速のGeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11Gでもピーク時の実測で400W未満。このあたりはさすがPascal世代といったところだ。MSI製マザーボードでもCPUにOCモードを適用しない場合はもう少し消費電力は少なくなるだろう。

 次にゲームプレイ中のGPU温度やGPUのクロックの推移を比較しよう。今のGeForceはGPU温度が上がりすぎるとGPUのブーストが効かなくなる。しっかり冷えるクーラーがないと高クロック状態を維持することはできないのだ。

 ここではまずアイドル状態から「Watch Dogs 2」を起動しプレイ開始。30分後ゲームを終了させ、アイドル状態を10分間続ける。この間のGPU温度等の推移を「HWiNFO64」で追跡した。ちなみに室温は約25℃、検証システムはバラック組みである。

「Watch Dogs 2」を30分プレイし、10分休憩した際のGPU温度推移
GeForce GTX 1080搭載のMSIオリジナルモデルとFounders Editionの比較

 搭載GPUの性能が高いほど温度が高くなることは一目瞭然だろう。

 TWIN FROZR VIクーラーはGeForce GTX 1080 Tiモデルを除き2スロット厚ということもあり、見るからに“高冷却力”という印象はそれほど無いが、ミドルレンジのGeForce GTX 1060以下のGPUを搭載したモデルなら高負荷時でも60℃台前半、ハイエンドのGeForce GTX 1080搭載モデルでも70℃未満を維持している。GeForce GTX 1080 Founders Editionがゲーム開始約4分で82℃に到達したのと好対照といえる。

 ゲーム終了後の10分間のアイドルタイムでは、GeForce GTX 1080 Founders Editionの方が冷えている印象を受けるが、これはFounders Editionのクーラーは常時ファンが回転し続けるためだ。MSI製品のGPU温度が50℃前後で下げ止まってしまうのは、負荷が下がってファンが停止するからなのだ。

 温度推移が分かったところで、GPUクロックの推移を見てみよう。

「Watch Dogs 2」を30分プレイし、10分休憩した際のGPUクロック推移
GPUクロックの推移が見やすくなるように、縦軸の範囲を少し狭めて変化を強調してみた。
GeForce GTX 1080搭載のMSIオリジナルモデルとFounders Editionの比較

 GeForce GTX 1080 Founders Editionは非常に手の込んだクーラーを装備しているが、冷却力はTWIN FROZR VIに比べると圧倒的に劣る。GeForce GTX 1080 Founders EditionのGPUクロックが4分過ぎあたり(GPU温度が天井になった頃と一致)から下がり始めることからも裏付けられる。

 これに対し、TWIN FROZR VIを装備したMSI製カードのクロックは、描画負荷が始まってから間もなくストンと落ちる挙動を見せるものの、その後は極めて安定。温度的には一番キツそうなGeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11Gでも、1,911MHzでずっと安定している。スペック表のブーストクロック1,683MHzよりはるかに高い水準で維持できているのは驚きだ。

 GPU冷却ファンの回転数の推移も温度などと同様に追跡したのが下のグラフだ。

「Watch Dogs 2」を30分プレイし、10分休憩した際のGPUファン回転数推移
GeForce GTX 1080搭載のMSIオリジナルモデルとFounders Editionの比較

 GPUパワーと回転数がほぼリンクしているのが面白いが、一番発熱量の少ないGeForce GTX 1050 GAMING X 2Gに至っては、時々ファンが止まるのが興味ぶかい。


よく冷えて安定性も高いMSIのGeForce搭載カード、ゲームをガッツリ遊ぶならGeForce GTX 1060以上がお勧め

 ゲームや解像度にもよるが、MSIのGAMINGシリーズビデオカードであれば、GeForce GTX 1060 6GBを搭載する「GeForce GTX 1060 GAMING X 6G」以上のモデルあれば、大抵のゲームが画質高めでも快適に動作することが分かったはずだ。ヘビーにゲームを遊ぶのであれば、GeForce GTX 10世代のビデオカードは「GeForce GTX 1060 GAMING X 6G」以上のモデルを選びたい。

 また、GeForce GTX 1050を搭載する「GeForce GTX 1050 GAMING X 2G」でも、前世代のミドルハイGPU「GeForce GTX 960」程度の性能は出ているので、ゲームの画質設定などを調整すれば下位モデルでもゲームは十分に楽しめる。このあたりは予算やどれくらいゲームを遊ぶのかといったあたりから決めるのが良いだろう。

 さらに、一番最後に検証したGPUの冷却力の高さ、そして超高負荷環境でもGPUのクロックが非常に安定している点も強調しておきたい。特別な設定をしなくてもガッツリ冷えてクロックが安定しているというのはMSIの設計力の高さを示している。

 快適なゲーミングPCが欲しいなら、まずMSIのGAMINGシリーズのビデオカードを選択肢に加えてみてはどうだろうか。

[制作協力:MSI]