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SSDもカラーで選ぶ、3色展開のWestern Digital製SSDの選び方
3D NANDの新型Blueも登場、Blue/Black/Greensそれぞれに適した用途を解説 text by 石川ひさよし
2017年9月25日 00:01
ウエスタンデジタルが「WD Blue SSD」でSSD市場に参入して約1年となる。WD Green SSDやWD Black PCIe SSDといったモデルも拡充され、新たなNANDフラッシュメモリを搭載する第2世代製品「WD Blue 3D NAND SATA SSD」が8月に登場した。
今回、第2世代製品の投入に合わせ、ウエスタンデジタルのSSD担当者に話を聞く機会を得たので、現在のラインナップと製品の特徴、そして新製品の強みについてお聞きした。
なお、ウエスタンデジタルはHDDと同様にSSDもカラー別にモデルをラインナップしており、同社のHDDと同じく、カラー毎にターゲットとする用途やユーザーが異なるとのことだ。カラー別の特徴を確認するのと合わせ、実際の性能も検証したので、SSD選びの参考にしてもらいたい。
ウエスタンデジタルはSSDも色別にモデルを展開、Blue/Green/Blackで何が違うのか聞いてきた
――まず、ウエスタンデジタルのSSD製品の特徴を教えて下さい。
[牛島氏]ウエスタンデジタルは、HDDはもちろんNANDメーカーでもあり、SSDも製造する垂直統合型のストレージメーカーです。HDDで培った信頼を背景に、SSDでも信頼性の高い製品をラインナップしております。
――ウエスタンデジタルと言えば傘下にSanDiskブランドもあり、そちらからもSSDがリリースされています。SSDを2つのブランドからリリースする理由はどのようなところにあるのでしょうか。
[牛島氏]ウエスタンデジタルはHDDでPC DIY市場を中心として知られており、一方のSanDiskはフラッシュメモリカードとして非PC DIYユーザーにも知られています。2つのブランドから製品を投入することで、1つのブランドの時よりも、さらに広く多くの方にSSDを手にとってもらえるといったところがメリットになります。
実際、2つのブランドでターゲットとする層が異なるので、それに合わせアピールする部分も変えています。ウエスタンデジタルのモデルは組み込みなどでも使われるので、速度など数値的なスペック部分を、SanDiskであればクリエイティブな用途やゲームなどに適しているといった用途面でのメリットがユーザーに伝わりやすいよう展開しています。
性能と価格のバランスに優れた「Blue」、メインストリームを担う3D NAND採用モデル
――ここからはSSDラインナップのシリーズについて個別にお話をうかがおうと思います。まず、Blueについて、どのような位置づけの製品なのか教えてください。
[牛島氏]Blueは、弊社HDD製品のWD Blue HDDと同様、メインストリームを担う製品です。
第2世代となるWD Blue 3D NAND SATA SSDでは、製品名にもある3D NANDを採用し、容量ラインナップも250GBから最大2TBまでと幅広いニーズをカバーするモデルになっています。
――3D NANDについて詳しくお聞かせください。ウエスタンデジタルの3D NANDはどのような製品なのでしょうか。
[牛島氏]WD Blue 3D NAND SATA SSDで採用しているのは、サンディスクと東芝が共同開発した3D NAND「BiCS」の第3世代にあたる64層3D NAND「BiCS3」を採用しています。
――BiCSは、以前から技術開発についてはリリースが出されていましたが、製品化はこれが初めてになるのでしょうか。
[牛島氏]BiCSは初代BiCS、BiCS2、そして第3世代に進化し、コンシューマー向けに安定して供給できる段階になりました。WD SSDシリーズの中でBiCS3を採用するモデルはWD Blue 3D NAND SATA SSDが初めてになります。
――BiCS3の特徴やアドバンテージはどのようなところにあるのでしょうか。
[牛島氏]TLCで64層を実現したチップあたりの大容量化に加え、転送速度の向上、耐久性の確保、そして低消費電力化といったところが特徴に挙げられます。
――新型のBlueはどのようなユーザーにオススメできる製品と言えるのでしょうか。
[牛島氏]WD Blue 3D NAND SATA SSDは、3D NANDを採用したことでこれまでの最大容量だった1TBを超える2TBモデルをラインナップに加え、コストパフォーマンスのよさを受け継います。これらの点から、普段使いからゲームまで、映像などの大容量データの保存先にも適したポジションの製品と言えます。
また、2.5インチとM.2(SATA)という2つのフォームファクタをラインナップしており、デスクトップ、ノート双方でご利用いただけます。幅広い用途でお使いいただける万能タイプのSSDになっています。
SSDを使ってみたい人向けの「Green」、気軽に試せる割安なSSD
――Greenですが、HDDではラインナップから外れて無くなったものの、SSDで再び復活した経緯があります。このGreenの位置づけについて教えてください。
[牛島氏]「WD Green SSD」は、はじめてSSDを使う方向けに気軽に試せる容量と価格でラインナップしています。
新興国市場など、コストがより一層シビアとなる市場に向けて開発された背景がありまして、上位モデルよりも低コストなコントローラチップを用い、キャッシュメモリを省くといった点でコストダウンを図っています。スペックを割り切り、代わりに徹底的にコストを抑えているわけです。
スペックを見ていただければ分かりますが、ランダムデータの処理速度、TBW(最大書き換え回数)などが上位モデルよりも低い値になっています。これはコントローラの性能やキャッシュメモリを搭載しないことなどによる影響です。
――同じSATA接続の2.5インチSSDということで、BlueとGreenで悩む方も多いかと思います。その際の決め手となるアドバイスをいただけますか。
[牛島氏]Greenの容量ラインナップは最大で240GBなので、システムSSDとしては利用できるギリギリのラインだと思います。OS以外はほとんど入れないという用途を想定していますので、日本ではHDDからSSDに換装した際の変化を体感するためのお試しモデルとして認識してもらうのが良いかもしれません。
といっても、性能面ではしっかりとSSDの高速性が体感できる性能は持っていますので、そこまでデータを書き換えることのない用途のPCであればGreenでもカバーできます。
OSのほかに多くのアプリケーションを導入したり、音楽や写真、映像などの大容量データも保存したいという一般的な使い方には、Blueの方を選んでもらえればと思います。
高速で価格とのバランスもよいM.2 NVMe対応の「Black」
――最後にフラグシップと言えるBlackについて、位置づけをお聞かせください。
[牛島氏]Blackは、6Gbps SATAでは速度が足りないといったさらにパフォーマンスを求めるニーズに向けた製品です。
「WD Black PCIe SSD」という製品名のとおり、PCI Express 3.0 x4、M.2 NVMeに対応し優れたシーケンシャル性能を実現しています。
――発売以降、感触はいかがでしょうか。
[牛島氏]嬉しいことに、ユーザーからはその転送速度の速さで好評をいただいております。ゲームやコンテンツ制作といった転送速度が重視される用途で主に使用されているようです。高速性と合わせ、ほどよい価格、容量ラインナップ、そしてそれらのバランスの良さも好評いただいている理由のようです。
――パフォーマンスのみを追求したわけではないのですね。
[牛島氏]はい。当時の最高速度を狙うということも不可能ではありませんでしたが、そうなるとかなり高価な製品になり、多くの方に高速SSDを試していただくことができなくなります。また、速度をさらに上げることもできましたが、速度が上がる分発熱が増え、冷却面での問題がシビアになりますので、製品化にあたりバランスのとれたスイートスポットを狙いました。結果としてこれがよかったのだと思います。
――ではBlackの想定ユーザーや、製品に合った使い方を教えてください。
[牛島氏]Blackは、もちろん高速な転送速度が魅力になりますので、ゲームなどのニーズがマッチします。
ただし、高速なぶん6Gbps SATA接続モデルよりも発熱が増えますので、ノートで用いる際は、筐体サイズや冷却性能に余裕のあるハイエンドノートがオススメで、モバイルノートは熱対策を施したほうがよいと思います。
十分に余裕をもった動作温度域を確保していますが、SSDは十分に冷却することで性能を発揮することができます。ここがWD Black PCIe SSDを使ううえでのポイントになると思います。
WD BlueのSSD+HDDでコスパに優れた快適PCを提案ストレージを1メーカーで統一できるのがウエスタンデジタルの強み
――最後にユーザーに向けて一言いただけますか。
[牛島氏]我々のSSDは、これまでのSanDiskにWDブランドを加え、2つのブランドで展開しています。さらに3D NANDを採用することでラインナップを拡充することも実現し、ユーザーにとってより幅広い製品選択肢をご用意できました。
これまで扱ってきたHDDも合わせ、ストレージのトータルパッケージをご提案できるところがウエスタンデジタルの強みです。SSDもHDDと同様の信頼性をご提供していきます。
これからの時代のメインストリームPCには、システムドライブにWD Blue 3D NAND SATA SSD、データドライブにはWD Blue HDDと、ともにコストパフォーマンスの優れたSSDとHDDの組み合わせはいかがでしょうか。
ウエスタンデジタル製SSDのBlue、Green、Blackを実際にテスト、お勧めの用途を考えてみた
ここからはウエスタンデジタル製SSDの実際の性能を見ていこう。Blue、Green、Blackと3モデルがそれぞれ実際のどの程度の速度の製品なのか、ベンチマークソフトを使用し計測してみた。合わせて、それぞれのモデルが向いている用途も考えてみたので、SSD選択時の参考にしてもらいたい。
また、WD Blue 3D NAND SSDは新型のNANDフラッシュメモリを搭載しているので、旧モデルと何が変わったといった点もチェックしてみた。
6Gbps SATAの上限に迫る性能、システムドライブやデータドライブにも使える万能な「Blue」
はじめに最新モデルのWD Blue 3D NAND SSDから見ていこう。店頭価格は2TB(2.5インチ)の「WDS200T2B0A」が税込78,000円前後、1TB(2.5インチ)の「WDS100T2B0A」が税込40,000円前後、500GB(2.5インチ)の「WDS500G2B0A」が税込21,000円前後、250GB(2.5インチ)の「WDS250G2B0A」が税込12,500円前後。検証には1TBモデルを使用している。
従来モデルのWD Blue SSD(1TB:WDS100T1B0A)と中身も比べてみたが、違うのはNANDチップの型番や、キャッシュメモリの枚数、そしてカバー側の熱伝導シートの大きさだ。熱伝導シートは新型のWD Blue 3D NAND SSDの方がかなり小さく、発熱が減少していることが想像できる
パフォーマンス面だが、まずはCrystalDiskMark 5.2.2でチェックしてみよう。前モデルのWD Blue SSD(1TB:WDS100T1B0A)とも合わせて比較を行った。
WD Blue 3D NAND SATA SSDは、第1世代のWD Blue SSDと比べると、シーケンシャルリードとランダムライトが向上しているのが特徴だ。6Gbps SATAインターフェースのボトルネックがあるため、シーケンシャル側はおよそその上限に近い。SSDでも比較的遅い転送速度になりがちなQ1T1側の4Kランダムに高速化が見られるので、幅広いシーンで高速化が体感できそうである。
続いてATTO Disk Benchmark 3.05。WD Blue 3D NAND SSDは、概ね第1世代モデルWD Blue SSDと似た傾向にある。これは同じコントローラを用いていることもあるだろう。異なるところは、512Bや1KBあたりで、リードが第1世代モデルよりも速く、ライトはやや劣るところだろうか。このあたりはまだWD Blue 3D NAND SSDが製品化されて日も浅く、ファームウェア側の最適化が課題と言えるかもしれない。
このように、パフォーマンスについては6Gbps SATA接続の上限に近い性能となっており、全体を通じて見れば従来モデルよりも高速化を実現している。
WD Blue 3D NAND SATA SSDで消費電力の削減が実現できたという話があったので、NANDチップ表面の温度も前モデルと比較した。
ちなみに、CrystalDiskInfoなどSMARTの情報を表示するソフトでは、動作温度はNANDチップの温度ではなくコントローラの温度を取得するため、ここではカバーを外してチップを露出させ、放射温度計を用いて8つのNANDフラッシュメモリチップを計測した。
ともにアクティブ時の消費電力がミリワット級の製品であり、さらに温度計が0.5℃単位であるため差は小さいが、複数回計測していくと、確かにWD Blue 3D NAND SSDのほうがWD Blue SSDよりも若干低い温度で推移する傾向が確認できた。おそらく、デスクトップPCではあまり影響がないが、冷却にシビアなモバイルノートPCではここが効いてくるだろう。
登場したてということもあり、価格面では従来モデルよりも若干高いが、全SSD製品で比較するとコストパフォーマンスはよい。新旧モデルで悩んだ時は動作温度などを気にしても良いだろう。
6GBpsの上限に近い性能を発揮しているので、システムドライブやゲームの起動ドライブ、大容量であれば動画編集用やデータ保管場所など、用途を選ばず使えるモデルになっている。500GBクラスのモデルと大容量のWD Blue HDDを組み合わせて使い方もお勧めだ。メインストリーム向けのBlueらしい汎用性の高いモデルだ。
手ごろな容量と価格でサブPCや事務用PCにピッタリな「Green」
先のBlueと同様に、Greenについても製品をチェックしていこう。店頭価格は240GB(2.5インチ)の「WDS240G1G0A」が税込9,300円前後、120GB(2.5インチ)の「WDS120G1G0A」が税込6,500円前後。検証には240GBモデルを使用している。
CrystalDiskMark 5.2.2のスコアを見ると、シーケンシャルリードについてはBlueに迫るものを見せる。一方、ライト側は50MB/s程度低く、話にもあったランダム4Kの性能はBlueと大きな差があった。もちろんHDDと比べれば高速なので、システムドライブとして用いた際の効果は大きいとしても、エントリーモデルとメインストリームモデルの差がランダム性能に現れていると言えそうだ。
ATTO Disk Benchmark 3.05も、CrystalDiskMarkと同様、リード/ライトの差がやや開いたグラフになった。
WD Green PC SSDは、キャッシュメモリを搭載せずコントローラもより安価なものを採用するといった割り切ったスペックのモデルだ。インタビュー時にも説明があったように、ライト側のパフォーマンスやランダム4Kパフォーマンスはメインストリームよりも抑えられたものとなった。
ただし容量単価については、SSD製品のなかでもかなりよい。最大容量が240GBなので、事務用PCや、個人で用いるならば初めてSSDを試そうという方、あるいは用途を限定したPCでHDDと併用するようなシーンが想定できるだろう。
ゲーミングPCのシステムドライブに最適、SATAより3倍速くてコスパもよい「Black」
WD Black PCIe SSDについても製品チェックと検証をしていこう。店頭価格は512GBの「WDS512G1X0C」が税込24.000円前後、256GBの「WDS256G1X0C 」が税込み14,000円前後だ。検証には512GBモデルを使用している。
実際の速度だが、WD Black PCIe SSDはQ32T1のシーケンシャルリードで1.9GB/sを記録し、Blue、Greenの6Gbps SATA接続モデルに対し3倍以上速い値を記録している。
また、細かく見ていくと、ランダム側もQ32T1、Q1T1双方で6Gbps SATA接続モデルよりも速い。Q1T1時については多少ブレがあり、シーケンシャルリードは1217~1118MB/s、同ライトはブレなく838MB/s前後、4Kランダムリードは32.34~44.12MB/s、4Kランダム第とは115.7~155.2MB/sだった。このあたり、多少のクセがありそうだが、常にSerial ATA 3.0接続モデルを上回っているので、パフォーマンスを求める方にはオススメできる。
WD Black PCIe SSDは、ATTOのデフォルト設定ではCrystalDiskMarkで計測した際の速度よりもやや低く出る傾向が見られた。転送サイズが64MBの際の値で見ると、リードが1.636GB/s、ライトは776.198MB/sだ。試しにキューデプスを10に増やしたところ、グラフの形が変わり、転送サイズが8KB以下ではリード/ライトともに向上、16MB以上のリードで向上が見られ、一方でライトがやや犠牲になる傾向が見られた。こちらの64MB時を見ると、リードが1.859GB/s、ライトが765.396MB/sだった。
WD Black PCIe SSDは、SATA接続モデルよりもさらに速さを求める方に向けた製品であることはベンチマークからも間違いない。ただし、速度競争が加熱しているNVMe SSDのなかでは最速の部類ではない。インタビュー時にも出たように、Blackの魅力はバランスだ。この点で、M.2 NVMe SSDにちょっと敷居の高さを感じていた方にオススメしやすくなっている。ゲーミングPCのシステムドライブなどに使用するには最適だろう。
HDDと同様分かりやすいカラーシリーズがウエスタンデジタル製SSDの魅力
Blue、Green、Blackとシリーズ別にSSDの特徴と性能を紹介したが、製品の位置づけがより明確になったのではないだろうか。見た目ではあまり区別のつかないSSDだが、同社製品には色で判断できるといった分かりやすさがあり、そうした部分が自作PC初心者から上級者までWDブランドが受け入れられている理由にもなっている。
個別のモデルで見ると、WD Blue 3D NAND SSDについては、一部旧モデルよりも低い値が出たテスト項目はあるが、既に6Gbps SATAがボトルネックとなっていながらも全体を通じればパフォーマンスを向上させており、とくに4Kランダムアクセス時の性能を向上させているのは好感が持てる。
WD Green SSDは、シーケンシャルの性能は優秀だが、やはり4KランダムアクセスはBlueほどではなく、耐久性の点でもメインPCとして使うならBlueを、サブPCにGreenをといった使い分けがベストであるように思う。そして足りない容量面はWD Blue HDDを組み合わせるのがベターだろう。
WD Black PCIe SSDは、バランス重視との話だったがM.2 NVMe SSDとして十分にパフォーマンスがよく、システムドライブに組み合わせれば快適だろう。
このように、SSD製品でも同社のHDDと同様の用途別提案がなされている。SSDを選ぶ際には是非「色」を気にしてみてもらいたい。
[制作協力:ウエスタンデジタル]