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ゲームのカクつきがSSDで減る?最速ストレージのゲームPCを組んで快適さを体感してみた
「WD Black」でハイエンド、「WD Blue」でミドルクラスPCを構築 text by 坂本はじめ
2017年5月24日 07:35
ゲーミングPCで特に重要なパーツと言えば、ビデオカードとCPUだ。ゲームを快適に遊びたいなら、まずここに投資すべきなのは間違いないし、効果も大きい。
ただし、PCゲームを快適にしたい場合、ビデオカードとCPUだけを強化すれば良いといわけではない。他のパーツが快適性に影響を与える部分もある。SSDなどはゲームのロード時間短縮に効果があることが知られるところだろう。
そこで、使用するストレージにこだわり、そこからPCの構成を考える一風変わったアプローチでゲーミングPCを組んでみたい。せっかく高速なM.2 SSDを使うなら他のパーツも高性能なハイエンド寄りのものをチョイスしたいし、コストパフォーマンスに優れるSATA SSDを使うなら他のパーツも性能バランスの良いモデルを選びたいといった具合だ。
ということで、今回はM.2 SSDを使用したハイエンドゲーミングPCとSATA SSDを使用したミドルクラスゲーミングPCを紹介する。
HDD使用時との性能差も紹介するので、ゲーミングPCを組む際には参考にしてほしい。
【記事目次】
■ハイエンドゲーミングPC編:M.2 SSD RAID 0で最速PCを
「カクつき」はストレージも原因だった?SSDの効果を検証
■ミドルクラスゲーミングPC編:コスパに優れるSATA SSDでゲーミングPCを構築
「ロード時間短縮」はSSDのキホン、HDD比で30~50%減
ハイエンドゲーミングPC編:M.2 SSD RAID 0で最速PCを「WD Black」で組むハイエンドゲーミングPC
まずはハイエンドゲーミングPCから紹介する。ストレージはNVMeのM.2 SSD選択、ハイエンドならばということで、2枚使用しRAID 0で最速環境を目指してみた。
選んだM.2 SSDはWestern Digitalの「WD Black PCIe SSD 512GB(WDS512G1X0C)」。秋葉原の店頭では税込27,000円前後で販売されている。
同社のパフォーマンス重視モデルWD BlackシリーズのSSDで、単体動作時の実測値はリード1,967GB/s・ライト836.9MB/s。2枚使用しZ270チップでRAID 0を構築した場合の速度はリード3,584MB/s・ライト1,657MB/sで、LGA1151環境ではほぼ最速といえる速度だ。
この速度をフルに使い切るような構成を考えてみたい。
今回は「ストレージにこだわったPC」なので、データ用ストレージも性能重視のモデルを選択。SSDと同じWestern Digitalのモデルから6TB HDD「WD6001FZWX」を選択し、「WD Black」で統一してみた。
実測値はリード234.3MB/s・ライト248.7MB/sと3.5インチHDDとしては最速クラスのモデルだ。容量も6TBなので、簡単にデータが埋まってしまうということもないだろう。
ストレージが決まったところで他のパーツも選んでいきたい。
せっかく最速ストレージ環境を構築しているなら、ビデオカードも最速で組みたいところ。今最速のビデオカードを選ぶなら、やはりGeForce GTX 1080 Ti搭載品だろう。オリジナルクーラー搭載モデルは高クロックかつ冷却性能も高いので、少しでも高性能なモデルが欲しい場合は意識したい。今回は人気のASUS製カードから「ROG-STRIX-GTX1080TI-O11G-GAMING」を選択した。
また、高性能なビデオカードを使用する場合はCPUもなるべく高クロックなものを組み合わせることをお勧めしたい。CPU性能が足りなくなると、GPUが性能を発揮できなくなるためだ。GeForce GTX 1080 Tiに合わせるなら、現行CPUでは最高クロックのIntel Core i7-7700Kが妥当なところだろう。
その他もハイエンド構成らしく、品質や見た目にも凝ったパーツを選択した。ストレージと違って見た目はゲームでのパフォーマンスに影響しないが、それなりのPCにはそれなりの見栄えも欲しくなるものだ。
マザーボードはM.2 SSDのRAIDが構築可能なZ270チップセット搭載モデル「ASUS ROG STRIX Z270F GAMING」、メモリは最大容量構成かつ安定性も重視しセンチュリーマイクロのDDR4-2400 16GBメモリ「CK16GX4-D4U2400」を4枚搭載(合計64GB)。CPUクーラー、ケース、電源はCooler Masterのモデルで統一し、「Master MasterAir Maker 8」、「Master MasterCase Maker 5」、「Master V750 Semi-Modular」の3製品で固めている。
参考までに、この構成でのファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークのスコアを計測してみたが、フルHD(1,920×1,080ドット)時が18,657、4k(3,840×2,160ドット)時が9,354。どちらの解像度でも最高評価となる「非常に快適」を獲得している。
●「ゲームのカクつき」はストレージも原因だった?SSDの隠れた効果を検証してみた
「SSDの効果」といえばロード時間の短縮が大きいが、HDDベースのPCの場合、実はHDDが原因で「ゲーム内のカクつき」が発生している場合がある。
PCゲームをヘビーに遊んでいるユーザーは、容量などの関係でHDDにゲームをインストールしている場合も多いと思うが、「ハイエンドゲーミングPCにはSSDを」というのはこうした理由もあったりする。
そこで、今回例示したハイエンドPCで、そのカクつきがHDD環境とどうかわるのか、その効果を簡単に紹介したいと思う。今回はシームレスマップを採用する人気のオープンワールドRPG「ニーア オートマタ」を例にしてみた。
近年のゲームでは、「シームレスマップ」を採用したものが増えてきている。旧来のゲームであれば、マップの端に到達すると、ロード画面を挟んで別のマップに移動するという形をとっていたが、シームレスマップのゲームは、画面に映る範囲のマップを順次描画/ロードすることで連続性のあるマップを実現している。
ゲームのデータロードの仕方やデータサイズなどにもよるので、全てのゲームにあてはまる現象では無いが、「ニーア オートマタ」の場合、ストレージの速度が足らずロードが間に合わなくなると、一時的に画面の表示が止まるスタッタリングが発生する。
上の映像は、「ニーア オートマタ」のプレイ中のものだが、HDD環境では時折スタッタリングが発生するものの、今回構築したM.2 SSD RAID 0環境では同じシーンでもスタッタリングが発生しないことがわかる。
ちなみに、ストレージ以外の要因でカクつきなどが発生しないように、ゲーム画面の解像度は1,920×1,080ドット、描画品質「HIGH」というあえて負荷の軽い設定にしている。Core i7-7700K + GeForce GTX 1080 Tiという環境であれば60fpsは十分維持できる画質設定だ。ストレージは、SSD側は前節でも紹介しているM.2 SSD RAID 0、HDD側はWD Black HDD 6TB。ともにCドライブと使用し、OSもゲームも同一パーティションにインストールしてテストしている。
スタッタリングが発生している状況のタスクマネージャーを確認すると、HDDに大容量の読出しが発生していることが分かる。一瞬ではあるが、HDDの速度では追いつかない量のデータロードが発生しているものと思われる。SSD環境もロード自体は発生しているが、転送速度に大幅なゆとりがあるためスタッタリングは発生していない。
HDDであっても、ロードが発生する全ての箇所でスタッタリングが発生する訳ではなく、データ量が多い場面に限定されているので、スタッタリングを解消するのにM.2 SSD RAID 0ほどの速度は必要ないと思われるが、ストレージ速度が描画のなめらかさに影響を及ぼすケースがあることは見ての通りだ。
十分な性能を持つCPUとGPUがありながら、プレイの質を損なうスタッタリングが発生するというのは実にもったいないことだ。ハイエンドクラスのゲーミングPCを組むならなら、ぜひとも高速なSSDを搭載したい。
●FF14のロード時間が半分に!待たされるストレスを軽減
さて、先述した「ロード時間の削減」だが、せっかくのM.2 SSD RAID 0環境なので、その効果も確認してみた。
上記の動画はファイナルファンタジーXIVのキャラクター選択から実際にゲームがスタートするまでの時間を見たものだ。ゲームが遊べるようになるまでの時間は、SSD環境が約14秒、HDDが約33秒と、倍以上の差となった。
ゲームスタート時のロードはゲームを遊ぶたびに待たなければならない部分なので、短いに越したことはない。待ち時間が減るというのは思いのほか快適さを感じる部分なので、ゲームPCにおいて、ストレージはCPU、ビデオカードに次いで強化する価値がある部分と見ることもできる。
ミドルクラスゲーミングPC編:コスパに優れるSATA SSDでゲーミングPCを構築「WD Blue」で組むミドルクラスPC
ここからはコストパフォーマンスに優れるSATA SSDを使用し、今時のミドルクラスゲーミングPCを組んでみたいと思う。
使用するストレージはWestern Digital製2.5インチSATA SSDの容量500GBモデル「WD Blue PC SSD 500GB(WDS500G1B0A)」だ。店頭価格は税込で約18,000円前後と比較的導入もしやすい。
WD BlueシリーズはWestern Digitalのストレージの中ではスタンダードモデルに位置づけられており、手頃な価格で中~中の上あたりの性能が手に入るコストパフォーマンスに優れたシリーズだ。
今回使用しているモデルの実測値はリード557.5MB/ss・ライト534.2MB/s。ベンチマークの値はSATA SSDとしては高速な部類に入るといえるだろう。
このSSDにあわせ、ミドルクラスのゲーミングPCは中の上あたりを狙ってみたい。
データ用ストレージには、SSDと同じWD Blueシリーズの6TB HDD「WD60EZRZ」を搭載した。SSDに「WD Blue」を使うならHDDもということで、今回スタンダードモデルの「WD Blue」で統一している。
HDDは長期使用も考慮して大容量モデルを選択しているが、コストパフォーマンスを優先する場合は、割安な3TBや4TBモデルを選択するのも良いだろう。
実測値はリード185.7MB/s・ライト180.4MB/sで、現行の3.5インチHDDとしては平均的な速度といえる。
続いてビデオカードとCPUだが、ビデオカードはGeForce GTX 1060(VRAM 6GB)を搭載するASUSの「ROG STRIX-GTX1060-O6G-GAMING」を選んだ。
GeForceは概ねx60モデルがその世代の美味しいモデルになっていることが多く、登場時期の重いゲームが中~高画質程度で遊べ、前世代のゲームはかなり快適に遊べるといった性能になっていることが多い。ROG STRIX-GTX1060-O6G-GAMINGの実売価格は税込35,000円前後だが、がっつりゲームを遊ぶのであればそこまで高価というわけではない。VRAMの容量も6GBと高解像度にも対応できる。
CPUはIntelの4コアCPUの中で価格と性能のバランスが良い「Core i5-7500」を選んだ。店頭価格は税込24,000円前後だ。
Core i5-7000シリーズで見ると、このモデルより下のモデルは動作クロックが大きく下がってしまい、このモデルより動作クロックが明確に上となるとCore i5-7600Kになるのだが、それなりの価格差がある。i5-7500は現行のCore i5シリーズではバランスが良く選びやすいモデルだ。
OCなどをする予定はないので、マザーボードはH270を搭載するmicroATXの「ASUS PRIME H270M-PLUS」選択。メモリは安定性重視でセンチュリーマイクロのDDR4-2400 8GB×2枚セットの「CK8GX2-D4U2400」を選んでいる。
ハイエンドPCと同じく、CPUクーラー、ケース、電源はCoolerMaster製のモデルで統一した。パーツは同メーカーで統一した方が見た目の統一感が出しやすく、パーツ同士の干渉も起きにくいことが多い。
今回フォームファクターをmicroATXとすることで、PC本体の筐体サイズも小さく抑えている。
ちなみに、この構成でのファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークの実行結果は、フルHDでは12,194の「非常に快適」、4kは4,045の「快適」との評価を獲得した。ただし、4kでの平均フレームレートは30fpsを割り込んでおり、快適という評価の割にフレームレートは低いものとなっている。現実的には、ほぼ確実に60fps以上の動作が期待できるフルHD程度の画面解像度がちょうど良いだろう。
●「ロード時間短縮」はSSDのキホン、HDD比で30~50%前後高速化
WD BlueシリーズのSSDを中心に組んだミドルクラスのゲーミングPCだが、コスト重視のSSDとはいえ、HDDよりはかなり高速だ。今回組み込んだ「WD Blue PC SSD 500GB(WDS500G1B0A)」が、HDD(WD Blue HDD 6TB)に比べてゲームでどれだけ速いのか簡単に紹介しよう。
上の表は主要タイトルの起動時間を計測したものだが、結果はいずれもSSDの方が高速。概ねSSDの方が2倍程度高速となっており、フォールアウト 4にいたっては3倍ほどSSDの方が高速だ。
ゲームの起動時以外にも、ダークソウル3やファイナルファンタジーXIVのように、移動したいエリアを選択しそのエリアにワープできるゲームでは、ワープの際にデータロードが発生する。その際、転送先マップのロードが完了するまで待たされるので、起動時以外にもSSDによるロード時間の短縮の恩恵が得られる。
また、意外なところでは、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークのローディングタイムの高速化も確認できた。ベンチマークなので快適性が向上するわけではないが、HDDと比較して約6割の時間でロードを完了していることが確認できた。
SSDの導入でPCゲームを快適に、ビデオカード/CPUと併せて考えたいストレージのアップグレード
ストレージに合わせハイエンドゲーミングPCとミドルクラスゲーミングPCを組んでみたが、ゲーミングPCを組む際のストレージ選びの参考になれば幸いだ。
HDDの高速化が進んでいるので、HDDでも困らないケースは多いが、快適さにこだわるのであればSSDを導入する価値は大きく、「ニーア オートマタ」のようにストレージ性能が描画に影響するようなケースも存在する。CPUとビデオカードを十分強化したならば、PCゲームの快適さを向上させるため、ストレージの強化も検討したいところだ。
比較的高価なNVMeのM.2 SSDに限らず、コストパフォーマンスに優れるSATA SSDでも導入すればPCゲームの快適性を底上げしてくれる。ゲーミングPCで最優先すべきパーツがビデオカードとCPUである事に変わりはないが、PCのトータルコストに見合ったSSDを選ぶことで、よりよいゲーム体験が得られるだろう。
[制作協力:Western Digital]