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Haswell Refresh解禁、買ってきたマザーを速攻レポート
今回の狙いはOCモデル? text by 清水貴裕
(2014/5/11 14:15)
Intel CPUの最新版「Haswell Refresh」と対応する最新チップセット「9シリーズ」を搭載したマザーボードが本日発売された。
「CPUはリフレッシュ版、対応ソケットも同じLGA1150」……と聞くと、「いまいち食指が……」と思う読者も多そうだが、今期の注目はM.2による高速SSDのサポートや「“グリス問題”を解決し、オーバークロック性能を向上させる」というOC強化版CPU「Devil's Canyon」。
Devil's Canyonは「今年半ばの発売」(Intel)のため、発売は今後になると思われるが、マザーボードメーカーは当然Devil's Canyonを見据えたOCマザーボードをラインナップ。今期の注目モデルの一つといえる。
というわけで、店頭でCPUとマザーボードを最速入手してきたので、昨年に引き続き、今年も速攻で開封して紹介しよう。
買ってきた!
今回買ってきたCPUとマザーボード。
CPUはKシリーズがまだ発売されていないため、無印モデルの最上位であるCore i7-4790。倍率がロックされているのが残念だが、動作クロックは最大で4GHzとCore i7-4770から100MHz向上している。
マザーボードはMSIのOC向けモデルであるZ97 MPOWER MAX AC。メモリOC機能が大幅に強化されているとのことで選んでみた。コンポーネントの品質や多くのOC機能を搭載しつつも、実売価格が29,000円前後に抑えられているのも購入理由の一つだ。
(16:36:09)
マザーボードのパッケージ
MPOWER MAXのMが大きく描かれたデザインのパッケージ表面。御託を並べるよりも性能やベンチマークのスコアで示せというオーバークロッカー精神からか、非常にシンプルなパッケージだ。
(17:54:22)
マザーを開封したところ
開封してみるとパッケージの箱の中に2つの箱が入っている。一つはマザーボード本体が収納されており、もう一つは付属品が収納されている。
(17:54:39)
付属品を集めてみた
付属品を並べてみた。
SATAケーブル×7、SLIケーブル、電圧測定用の線、M-Connector、I/Oパネル、マニュアル類、ドライバDVDが付属。OCのやり方が記されたガイドが付属しているので不慣れな初心者も安心だ。
(17:54:08)
ドアハンガーとエンブレム
ゲーミングモデルに付属していたドアハンガーがOC向けモデルである本製品にも付属。
メッセージが中々面白く、表面には「世界記録更新中で忙しい」、裏面には「液体窒素を買いに外出中」と書かれている。OC SERIESと書かれたエンブレムも付属。
裏面に両面テープが付いているので、ケースなどに貼り付けることが可能。
(17:54:00)
マザー全体図
マザーボード本体は、黒と黄色からなるLIGHTNINGカラーでまとめられている。極冷を視野に入れたモデルだけあり、PCBの表面は結露などに強い光沢のないマットブラックフィニッシュになっている。
(17:51:10)
VRM部分
SFC(スーパーフェライトチョーク)やHI-C CAPなどのお馴染みの高品質コンポーネントで武装されたVRM部分。
Z87 MPOWER MAXは20フェーズ構成だったが、本製品は12フェーズ構成に変更されている。昨今のOCモデルの主流である少フェーズ構成を採用したようだ。カタログスペックに囚われない実戦的な仕様変更だと言える。
(17:58:37)
VRMヒートシンクも「M」マーク、水冷にも対応
水冷での冷却にも対応したVRMのヒートシンク。マザーボード用の水枕を買う必要がないので、水冷ユーザーには嬉しい機能だ。横から見るとMPOWERのMの文字があしらわれている。
(17:59:56)
チップセットヒートシンクも「M」
チップセットのヒートシンクにもMの文字があしらわれている。黒を基調としたカラーリングゆえに黄色のアクセントが映える。
(18:07:38)
基板は8層、アピールするギミックも
マザーの左下には8層基板であることを証明するためのギミックが。下の層の数字は少し読み取りにくい(笑
(18:05:06)
I/Oパネル
多くのオーバークロッカーが使うであろう、PS/2ポートと2基のUSB 2.0ポートは左側にまとめられている。CMOSクリアボタンは使いやすそうな位置にあり押し心地も良好。
その他には、USB 3.0×8、HDMI×1、DisplayPort×1、LANポートなどがある。
(18:07:15)
SATAポートは8基
Serial ATA 3.0ポートは合計8基、ASMedia ASM1061(2ポート)とZ97チップセット(6ポート)を組み合わせたもの。
(18:20:12)
M.2スロットも搭載
今後普及していくであろうM.2スロットも搭載。OCモデルながら将来性も考えて作られている。4.2cm/6cm/8cmのモジュールに対応しているようだ。
(18:19:54)
LANチップはIntel製
LANインターフェイスチップはIntelの「Intel I218-V」を搭載。CPUの処理を軽減できるのでOCに向いているとか。
(18:19:39)
高音質回路「Audio Boost」
お馴染みの高音質回路である「Audio Boost」を搭載。
ヘッドホンアンプを2基搭載しているので、600Ωクラスのヘッドホンにも対応可能という。ノイズ対策のために、アナログ回路とデジタル回路がPCBレベルで分離されているのが特徴で、分かれ目のラインは電源オンで光る。
ケースに組みこんでも映えそうだ。
(18:25:25)
取り外し可能な無線モジュール
無線LANモジュールは取り外し可能な設計。
IEEE 802.11 acとBluetooth v4.0に対応している。オーバークロッカーとしては、オーバークロック挑戦時に取り外しできるのは嬉しいところ。
(18:28:32)
OC向けボタンと、電圧測定用の端子群
マザーの右上にはOC向けのボタンなどが集約されている。
電源ボタン、リセットボタン、V-CHECK POINTSという電圧測定ポイント、ベースクロックの可変ボタンなどを備える。自動OC機能である「OC GENIE」用のボタンもある。
「今だけ遅くする」スイッチも
マザーの右下には、Debug LEDやBIOSの切り替えスイッチがある。
「いかにもOCモデル」といえるのが、強制的にCPU倍率を8倍まで下げる「Slow Mode Booting Switch」。オーバークロック競技などで起動する際、一時的に速度を落とすことで「本当に速度がほしいときだけオーバークロック」が可能となる。
このほか、UEFIに直行できる「GO2 BIOS Button」も備える。
(18:34:08)
PCI-Eスロット補助電源
ビデオカードをOCする際に安定性を高めるために、PCI Expressスロット用の補助電源が搭載されている。ハイエンドカードを極冷OCするとシングルカードでも700Wを超える電力を消費することもあるので、この実装はありがたい。
(18:34:37)
メモリスロットも「OC向け」
DDR3-3300に対応するメモリスロット。
オーバークロックを極めたい場合は、DIMMが搭載するメモリチップによって使用するスロットを変えることが推奨されている。たとえば、SamsungやHynix系チップを搭載する最近の高クロックメモリはDIMM2とDIMM4に挿す方が良いとのこと。
(18:49:58)
CPUはCore i7-4790を購入
というわけで、マザーボードの基本的な紹介はここまで。
今回買ってきたのはCore i7-4790だ。
(19:03:31)
リテールパッケージの付属CPUクーラー
これがリテールパッケージの付属クーラー。相変わらず背が低い。
(18:56:01)
早速起動へ
メモリをセット、さぁ、起動だ。
(19:10:38)
BIOSトップ画面
Click BIOS4のホーム画面。ここにもMPOWERのロゴが表示されている。システムの温度や情報がかなり細かく表示されている。ホーム画面からワンクリックで各設定項目へジャンプできるので使い勝手は良好だ。
(19:14:34)
UEFIのOC設定欄、「Simple」「Advanced」の選択もアリ
電圧やクロックを始めとする主要な設定が一カ所に集約された実戦的なOC設定ページ。新たな設定項目が追加されているものの、そのシンプルさは従来から変わりない。
なお、今回は「Simple」「Advanced」のモード選択ができるようになっており、利用者のレベルや用途に合わせて不要なメニューを隠せるようになっている。
(19:17:44)
メモリ設定は、メモリチップごとに用意
OC競技で使われるような本格的なメモリタイミングの設定が内蔵されている。
メモリチップや冷却方法ごとに細分化されており、推奨されるDIMMスロットが1番+3番なのか、2番+4番なのかまで表示される。
(19:40:16)
メモリ用OC機能「Memory Try It!」も搭載
Cas Latancyと動作クロックを選ぶだけでメモリをOCできるという機能。
メモリは搭載チップで特性が大きく変わってくるので、使いこなすにはある程度の知識が必要だ。
(19:30:33)
HARDWARE MONITOR
温度や電圧の状態をチェックするのに便利な「HARDWARE MONITOR」機能。システムの温度に合わせて回転数の設定が可能な、高性能なファンコントロール機能も搭載されている。
ファンコントロールの制御ポイントは4ヵ所で、MSI曰く「他社より多い」そう。
(19:35:11)
拡張状態をグラフィカルに拡張できる「BOARD EXPLORER」
PCの拡張状態をグラフィカルに確認可能な「BOARD EXPLORER」機能を搭載。
マウスを黄色い枠の中に重ねることで、接続デバイスを一目で確認することができる。トラブルシューティングに威力を発揮しそうだ。
(19:39:10)
「極冷向け」な設定機能
「液体窒素でのオーバークロックを気軽にできる」というExtreme OC Setup機能も装備。オーディオやUSBが無効化され、L3キャッシュ設定なども最適化するという。
多機能なUEFIには「お気に入り」も
UEFIの設定項目がだいぶ増えたからか、よく設定する項目に一発で飛べる「お気に入り」機能が追加された。
設定前に「ちょっと確認」もOK
F10で設定変更を適用する際に、Change Settings Infoを選択すれば、設定を変更した箇所を一覧で確認することができる。
多くの設定を細かく変更するオーバークロッカーにはありがたい機能だ。間違えて違う箇所を設定変更したとしても、ここを確認すれば一目瞭然なので、安全確認用としても使える。
Windows上で動作する独自ユーティリティ「COMMAND CENTER」
というわけでWindows 8.1 Pro 64bit版をインストールして、独自ユーティリティの「COMMAND CENTER」をチェックしてみた。
カラーリングは黒と黄色で、OCモデルのイメージカラーとして統一されているようだ。
ちなみに、海外のオーバークロッカーの中には競技OC向けの軽量バージョン「COMMAND CENTER Lite」を持っている人もいるようだが、こちらは公式Webサイトでの提供はない模様。
(20:02:22)
「COMMAND CENTER」での電圧設定
各種電圧やメモリタイミング、ファンコントロールの設定を細かく行うことも可能。電圧設定には通常の設定に加えて、オフセット設定も用意されているので、綿密な設定が可能だ。
(20:00:54)
スマホ連動の操作機能も
ユニークな機能としては、スマートフォンやタブレットに専用アプリをインストールし、リモート操作機能がある。
無線LAN経由で、オーバークロック設定などをリアルタイムに変更できるようだ。
(20:07:17)
システム情報
CPU、マザーボード、メモリーの詳細な情報を表示することも可能。
コンパクトにまとまったハードウェアモニター機能は、邪魔にならないので立ち上げておくと便利そうだ。
(20:09:35)
GO2BIOS
ワンクリックでUEFI BIOSに入れる「GO2BIOS」機能も搭載。
OCでは設定変更を頻繁に行うので、ワンクリックでUEFI BIOSに入れるのは便利。
(20:41:58)
ちょっとだけオーバークロックもやってみた(ただしCore i7-4770Kで…)
CPU倍率がロックされたCore i7-4790ではOCマザーのポテンシャルをフルに発揮できないため、CPUをCore i7-4770Kに交換して軽くOCしてみることにした。
時間の関係から簡易OC機能である「OC Genie」を使用してワンクリックのお手軽OCにトライ、ということになる。
ただリテールクーラーしか持ち合わせていないので無理は禁物……
(20:17:32)
BIOS上の「OC Genie」ボタン
UEFI BIOS右上にあるOC Genie Buttonをクリックするだけで簡単にOCできる。ボタンを押すとXMP設定も自動で適応されるという優れもの。
ちなみにこのボタン、マザーボード上にも実物のボタンが用意されている。
(20:19:27)
「OC Genie」の動作モードは2種類
デフォルトで選択されているGear 1の動作クロックは4.0GHz。Gear 2を選択すると更にOCされ、動作クロックは4.4GHzまで上昇する。
パフォーマンスを重視するのならばこちらを選んだ方がベターだ。
(20:20:19)
Core i7-4770K(定格)のFF XIVベンチ結果
CPUクロック定格時のスコアは5097。動作クロックは最大で3.9GHzだ。
(20:31:38)
OC Genie(Gear 1)でのFF XIVベンチ、動作クロックは4GHz
OC Genieで動作クロックが4GHzまで高められるとスコアは7154まで上昇した。メモリの動作も最適化されるため、スコアは40%程向上した。
(20:26:07)
OC Genie(Gear 2)でのFF XIVベンチ、動作クロックは4.4GHzだが………
UEFI BIOS上で動作モードをGear 2に変更すると、動作クロックは4.4GHzまで向上。しかし、リテールクーラーの冷却力の限界に来てしまったため、熱で動作クロックがドロップしてスコアは4GHz時よりも下がってしまった。冷却力の高いCPUクーラーへ換装すればより高いスコアになるはずだ。
(20:26:44)
ひとまずここまで!
速報レポートは以上でひとまず終了だ。
今回の「本命」ともいえるDevil's Canyonが未発売のため、正直「ちょっと物足りない」という感じだが、逆に「Devil's Canyonを使えば、もっと行ける!」と感じさせてくれる製品でもあった。
ちなみに、この製品は「OC向け」を標榜しているが、OCマザーとしては基板の発熱が少なく、一般ユーザー向けのわかりやすい設定/表示機能がUEFIに用意されているため、「常用向け」の一面も感じさせてくれた。
「ケースに組み込んで、オーバークロックで常用したい人」には悪くない選択といえるだろう。
また、この世代のZ97マザーを触っていて気付いたことがある。それはメモリOC機能の強化だ。
Z87世代のOCマザーはDDR3-3000MHz前後までの対応が多かったが、Z97世代ではDDR3-3300MHz前後の製品が多い。これはマザーボードの進化の影響もあるだろうが、Devil's CanyonのCPU内蔵メモリーコントローラの性能が向上していることを意味しているはずだ。
メモリタイミングのプリセットの強化や、簡易メモリOC機能である「Memory Try It !」の実装によって、MSIがメモリOC機能を大幅に強化してきたことからも今後はメモリOCが更に重要になっていくことは間違いないだろう。
2014年は進化したマザーボードとDevil's CanyonのコンボでOCが大きく盛り上がること間違いないと思っている。