特集、その他
「アニメを見るならKaveri」
日本AMDに聞く、Kaveri&Mantle最新事情 (後編)
~65W版Kaveriも日本先行で ~ text by 石川ひさよし
(2014/7/22 12:50)
当初の予定から遅れてしまったが、日本AMDにKaveri&Mantleの最新事情を聞く当インタビュー、後編をお届けしよう。
後編は、世界に先駆けて、日本に先行投入された65W版Kaveri「A10-7800」と、日本AMDが「まさに日本のアニメにピッタリ」と説明する動画補完機能「Fluid Motion」の内容だ。Fluid Motionは既に発表済みだが、今夏、ついに対応ソフトが登場予定。テストに参加した日本AMD社内のアニメマニアが絶賛しているそうで、今後のアピールポイントとして注力していくという。
お話をお伺いしたのは、前編に続いて森本竜英氏だ。
アニメがヌルヌル動く!AMDアニメマニアが狂喜乱舞の「Fluid Motion」とは?対応アプリが今夏登場
――「今夏、特に大きくアピールしたい機能がある」とお伺いしましたが……
[森本氏]はい、7000番台APUでサポートされた「Fluid Motion Video」です。
技術発表は1月の発表時にさせていただいたので、「映像補完技術」だと知っている方も多いと思いますが、対応しているプレイヤーアプリが今夏、ようやく登場します。そして、これが想像以上にいいんですよ。弊社の技術スタッフにアニメマニアがいるんですが、「ラブライブ!」のBlu-rayで効果を確認してから狂喜乱舞してまして(笑
技術的に言うと「Fluid Motion」というのは、24pの映像を60pにフレームレート補完する機能です。中途のフレームを演算して作成し、動画を滑らかにする、というのが基本ですが、30pを60pに補完するのと違い、微妙なフレームを作成する必要があるのがポイントです。
そしてここからが重要なのですが、この「24p」というのがアニメにピッタリなんですよ。
アニメーション作品は24pなどで制作されることが多く、Fluid Motionの効果が抜群に出ます。普段、アニメを見ていて「カクついて見える」という経験はあまりないと思いますが、Fluid Motionを使って見ると、それはもう滑らかに動くので、これまでの環境だとカクついて見えるほどです。
ほんと、アニメに関してはオススメできますし、空撮映像のようなシーンや、動きの激しい映像でも効果が分かりやすいかと思います。
プレーヤー製品が出ましたら、ぜひ皆さんにも見て頂きたいと思っています。
[森本氏]また、オーディオ機能の「TrueAudio」も引き続きアピールしていきます。「Thiefがこれに対応した」というのは既にご紹介しましたが、2つのスピーカーだけで上下左右奥行きと、敵の位置を特定できるというのは感動ものです。ただし、聴覚的なものは個人差もありますので、自分では「すごい!」と思っても他の人には「どこが?」と感じてしまうなど、なかなか伝わりにくいところではあります。
日本に先行投入された「65W版Kaveri」AMDに聞くA10-7800の使いこなし術
――さて、初の「65W版Kaveri」としてA10-7800が出ましたが、どのようにして65WというTDP枠に収めたのでしょうか。また7000番台APUのなかでのポジショニングを教えてください
[森本氏]プロセスがこなれてきた点に加え、周波数を引き下げております。とはいえ、定格がA10-7850Kの3.7GHzに対し3.5GHz、MaxTurbo側が同4GHzに対し3.9GHzとかなり高めに設定しており、A10-7850Kに迫るパフォーマンスを65Wでご利用できます。また、A10-7700K(95W)よりも上という位置づけになります。
――どのような方、どのようなニーズに使って欲しい製品になりますか
[森本氏]やはり消費電力にも発熱にもフォーカスしている方に使っていただきたいですね。また、性能の高いモデルになりますので、65WというTDP枠の他の製品と比べ消費電力に縛られて満足できないものを買うよりはこちらの製品を選んでいただけると嬉しいですね。
――「K」の付かないモデルとなりますが、どのような違いがありますか
[森本氏]A10-7800は、低消費電力モデルという位置づけからOC向けの製品ではありません。逆にOCできるだけの伸びしろがあるのが「K」付きモデルとお考え下さい。
――A10-7850KにもcTDPがあるのでより低消費電力で動かすことは可能と思いますがいかがでしょうか
[森本氏]国内ユーザーさんはcTDPをなかなか使ってくれないんですよね(苦笑)
それもあってA10-7800を用意した、という面もありますが、実際、cTDPを利用してもA10-7850KよりもA10-7800のほうが消費電力比のパフォーマンスが出やすい傾向です。低TDP環境を構築するなら、やはりA10-7800が良いでしょう。
――最後にA10-7800のポイントをまとめていただけますか
[森本氏]Richlandの65W版と比べてもプロセスが進んだぶん性能がアップしていますし、高速メモリと組み合わせてその性能を最大に引き出すことが可能です。HSA対応の最大TDPが65Wのプロセッサは世界初で、低消費電力モデルのニーズが多い日本市場に先行投入されることが決まりました。A10-7800を使って、自由な発想でPCを自作してみてください。
【おまけ:A10-7800を割ってみた ~熱対策になる、、かも?~】
Intelプラットフォームが更新され、「殻割り」の話が時折聞かれるようになってきた。低消費電力版APUとして投入されたA10-7800だが、あえて低消費電力版を殻割りし、CPUクーラーの負担を下げることでより省電力、静音なPCを作れる可能性も考えられる……かもしれない。ということで、ひとまず割ってみた(笑 ちなみに今回は「割ってみたレポート」のみで、検証無しなのであしからず。
割り方は通常どおり。カミソリの刃でヒートスプレッダの付け根部分の接着剤を慎重に削っていく方法だ。最初はカッターの使い方と同様に引いて削り、PCBとヒートスプレッダとの間に隙間が出来たところから刃を差し込み、波間を漂う船のように、刃を揺らしながら差し入れていく。ただし、このまま一気にカミソリで接着部分を削ぎ切ってしまうと、内部のコンデンサまでダメージを与えてしまう可能性もある。接着面を少し残した状態で、今度はカミソリよりも厚みがあるカッターの刃などを四隅に差し込み、捻ることでテコの原理を応用して剥がしていくのが比較的失敗しにくい。
そして割った状態がコチラだ。製造方法は従来のKaveriと同様、以前レポートしたA10-7700Kの際と同じ状況だ。剥がす際の撮影を忘れてしまったが、TIM素材はグリスだ。
殻を割って使用すれば、グリス層を1層分減らすことができるので、適切なリテンション圧でCPUクーラーを密着させれば、ヒートスプレッダ付きの時よりも熱伝導率を向上させることが可能だ。KaveriはTurbo Coreと呼ぶ自動OC機能も備えている。65WというTDP枠内で、より高いパフォーマンスを引き出したい方は、リスクはあるものの殻割りにチャレンジしてみるのも良いだろう。