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ファンレスでゲームが遊べる?高冷却クーラー搭載の「STRIX GTX 980 Ti」をテスト

ASUSの最新モデル、基板は100%機械製造で高品質 text by 石川ひさよし

ASUS「STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMING」

 ASUSの「STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMING」は、数々の新技術が投入された同社のフラグシップモデルだ。GPUはNVIDIAの最新モデルGeForce GTX 980 Tiを搭載している。

 同カードについては、COMPUTEX TAIPEI 2015でも現地担当者にインタビューを行っているが、今回は実機を取り寄せることができたので、実際に使用した際の性能はどうなのかといった点を検証してみたい。

 「STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMING」は、これまでのSTRIXシリーズが採用していた2連ファンクーラーから新型の3連ファンクーラーに変更されており、新製造技術の「AUTO-EXTREME技術」を採用、ソフトウェアの「GPU Tweak」も2世代目に進化していたりと強化点も多いので、このあたりの改良ポイントも紹介しよう。

熱転送量100W級の10mm径ヒートパイプを採用新型クーラー「DirectCU III」

カード表面
ヒートシンクのGPU接触部は、ヒートパイプむき出しの構造。つまり「Direct」であり、あわせて銅製(Cu)であることを加えて「DirectCU」と呼ぶ

 ASUSからはリファレンスデザインのNVIDIA GeForce GTX 980 Tiカードがリリースされているが、STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMINGはASUSオリジナルデザインのモデル。オーバークロック仕様かつ新型クーラー搭載と、パフォーマンスも静音性も期待できるビデオカードだ。

 搭載するクーラーは「DirectCU III」。DirectCU自体は以前からASUS製ハイエンドビデオカードに搭載されているクーラーで、銅製ヒートパイプをGPUに直接接触させる構造から命名されている。

 DirectCU IIIは、STRIXシリーズでは初の3連ファンモデルで、フィンブレード形状にひねりを加えることで、風量を増しているという。細かなところでは、中央ファンにASUSロゴ、左右のファンにはSTRIXマークが刻印されている。

 ヒートパイプは、10mm径×2、8mm径×1、6mm径×2の5本構成を採用。とくに10mm径パイプは太さがある分、熱輸送量は1本で100W近くになるという。

ヒートシンク裏面
厚みは2スロット分
ファンのブレードはねじりを加えた独特の形状。これが風量を増すと言う
ヒートパイプは、カード下側に4本、上に1本飛び出しており、GPUの前後のヒートシンクに熱を輸送する
もっとも太いパイプは10mm径で、これが2本、さらに8mm径1本、6mm径2本といった組み合わせ
基板のGPU実装部の裏には赤いプレート「GPU-Fortifier」が装着されている。クーラーを圧着する際に生じる歪みを抑え、クラック(BGAが内部で接触不良を起こすようなこと)を防ぐ

 カードの裏側を見ると、ASUSのハイエンドビデオカードにはおなじみのバックプレートが装着され、さらに重量のあるカードの宿命である歪みを抑えるためのフレームも採用されている。

 また、新規に追加されたところでは、GPU部分の歪みを抑えるための「GPU-Fortifier」が採用されている。赤色で目立つこの部品は、その機能とともに、黒が基調のビデオカードにおいて、アクセントとなっている。

基板裏には金属製のバックプレートが装着されている。内側はわずかな隙間を残して装着され、さらに絶縁のためと見られるシートが貼られている
基板とブラケットをつなぐ形で金属フレームが装着されており、これが基板のたわみを防ぐ
映像出力端子は、DisplayPort×3、HDMI×1、DVI-I×1
カード裏面
補助電源コネクタは8ピン×2基。大型クーラーのため、一段くぼんだところにある
STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMINGビデオカードの構造。クーラー、基板、フレーム、そしてバックプレートから成る
メモリチップはSK HynixのH5GQ4H24MFR-R2C。チップ自体は7Gbps対応品で、これを7.2Gbpsにオーバークロックして動作させている。定格駆動電圧は1.55V
NVIDIA GeForce GTX 980 TiのGPUチップ

基板の劣化を抑え長寿命化100%機械製造をうたう「AUTO-EXTREME」

基板表面。上部に大きくはみ出す構造で、独自設計基板であることは一目瞭然。電源回路は14(12+2)フェーズ(リファレンスデザインは8フェーズ)。電源入力部も含めるとチョークコイルは15個搭載されている
基板裏面。メモリチップの上には何もない空間があるが、基板は14フェーズ電源のために設計されたものであることがわかる

 STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMINGは、ASUSの新しい製造技術「AUTO-EXTREME技術」で製造されている。

 AUTO-EXTREME技術は、ビデオカードの「製造工程を100%機械化したことを指す」という。機械化と言うと、生産のスピードや、ヒューマンエラーによる製品不良の削減など、製造上のメリットがまず挙げられる。

 自動製造はユーザー側にもメリットがあり、製造時の熱を加える回数が減ることで基板の劣化を抑えたり、最小限しかハンダを使わないため、酸化による劣化速度を最小限に抑えたり、凹凸にホコリが貯まりにくいという。

 外見的な特徴では、チップの足が飛び出ていたりハンダが大きくあふれることがなく、整然とチョークコイルやキャパシタが並んでいる点などが挙げられる。

 STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMINGの場合は、表面にクーラー、裏面に放熱基板が装着されているため、ぱっと見は分かりづらいのだが、クーラーを分解してみるとこれらの特徴がよく分かる。

チョークコイルの並びが整然としている。手作業で製造された基板では、若干の歪みがあるのが一般的だ
チョークコイルの裏を拡大した写真。手作業で製造された基板では、よくチョークコイルの裏に長めのピンが突き出していることがあるが、本製品ではスッキリしている
チョークコイル裏をさらに拡大。ハンダの実装を見ても、最小限の量で基板に装着されていることが分かる
ピンらしいピンが飛び出しているのが映像出力端子部と補助電源端子部だが、どちらも1mm以下で、手作業で製造されたビデオカードのように、触れて「痛い」と感じる高さではない。なお、補助電源部分はツメがクーラーとは反対を向くために着脱しやすい。そしてASUS製ビデオカードではおなじみの、通電時に色が変わるLEDも搭載している
搭載する部品もSuper Alloy Power IIとして品質アップ。さらに耐久性が向上したとされる

 インタビュー時も、よく分かる箇所として紹介されたのがチョークコイル部分だが、そのほかの部分を見ても、機械製造らしい箇所がいくつか見られた。

 映像出力端子部や補助電源コネクタ部など、通常であれば大きくピンが突き出すパーツも、その突き出し量が小さく、指で触っても痛さはほとんどない。基板全体を見渡しても、ハンダがあふれるような実装はなく、見た目にもきれいな仕上がりだ。

 実装パーツが乱れること無く整然と並ぶさまはさすがで、ASUSの高品質なイメージをさらに高めるものになっている。

【ASUS AUTO-EXTREME技術とは?】

4KやWQHDでも高画質設定ゲームが楽しめる“ガチなGTX 980 Ti”環境によってはファンレス状態でベンチマークが完走

GPUクロック、ブーストクロック、メモリクロックともにOCされている

 STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMINGは、GPUクロックが1,216MHz、ブーストクロックが1,317MHz、メモリクロックが1,800MHz(7.2Gbps)に設定されている。

 対してGeForce GTX 980 Tiのリファレンスは、GPUクロックが1,000MHz、ブーストクロックが1,076MHz、メモリクロックが1,753MHz(7Gbps)なので、GPUクロックは216MHz、ブーストクロックは241MHz、メモリも0.2Gbpsほどオーバークロックされていることになる。

 GeForce GTX 980 Tiは、GeForce GTX TITAN Xに近いパフォーマンスを秘めているが、STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMINGもこうしたオーバークロックによってGeForce GTX TITAN Xを超えるであろうパフォーマンスを秘めている。

 ではそのパフォーマンスをベンチマークで見ていこう。

ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
Battlefield 4

 まず比較的負荷の軽いファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークとBattlefield 4を見ると、この2タイトルは解像度と平均フレームレートが似かよっており、1,920×1,080ドットでは120fps超、2,560×1,440ドットでは80fps超、3,840×2,160ドットでは40fps超となった。

 MMO RPGのファイナルファンタジーXIVは、快適といえるラインが30fps~と言えるため、DirectX 11、最高品質かつ3,840×2,160ドットでのプレイが十分に可能だ。一方、FPSのBattlefield 4は60fpsが欲しいタイトルであるので、最高画質で遊べるラインは2,560×1,440ドットとまでとなる。

Dragon Age: Inquisition

 次はDragon Age: Inquisition。プリセットを最高品質とした場合、3,840×2,160ドットでも31fpsを記録し、この辺りの設定でもまずまず快適だ。最高品質の上の画質設定もあるため、そこを狙うなら2,560×1,440ドットが快適ラインとなるだろう。

Thief

 Thiefは30fpsが快適ラインで、プリセットをVery Highとした場合、3,840×2,160ドットでも45.2fpsを記録し、スムーズな映像が得られた。

Grand Theft Auto V

 今回のテストでもっとも負荷の高いGrand Theft Auto V。TXAAを用いて多少負荷を軽くしつつ、ほかの項目を最大に引き上げた場合、30fpsを満たせるのは2,560×1,440ドット、60fpsを求めると1,920×1,080ドットが限度だ。

 Grand Theft Auto Vは4K解像度環境ではビデオメモリを4GB以上消費することが知られているが、今回の設定でもギリギリではあるがSTRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMINGが備えるVRAM 6GBの範囲に収まった。

 さて、ゲームパフォーマンスと合わせて気になるのが冷却性能だろう。

 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークとGrand Theft Auto Vで、ベンチマーク中のGPU温度とファン回転数を記録してみた。

テスト中の温度とファン回転数(ケースファンによるエアフロー有り)
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
Grand Theft Auto V

 まず、検証環境はバラック状態だが、ケースに収めた時のような一定のエアフローがないため、ビデオカードによっては超高温になることもある。そうした理由から筆者はケースファン1基をGPU付近に設置し、エアフローがある状態でテストを行うのだが、今回同様に計測したところ、数分で完了するベンチマークではファンが一度も回らずに完了してしまった。

 その様子が上記の「追加ファンあり」のグラフだ。どちらのベンチマークもGPU温度が60℃以下で推移しており、一度も危険域には達していない。なお、室温25℃での計測だが、ケースファンを当てればアイドル時は室温+5℃の30℃程度まで冷えていた。

テスト中の温度とファン回転数(追加ファンなし)
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
Grand Theft Auto V

 想像以上の冷却能力で想定外な結果となってしまったため、ケースファンを停止した状態でも計測してみた。それが上記の「追加ファンなし」のグラフだ。開始時点の温度が高くなっているが、これは上記の環境と違い、ビデオカード周りにエアフローが無いためだ。

 こちらもベンチマーク起動後の30秒程度はファンがまわり出さず、GPUが60℃を超えた付近で回転を開始、ただし最大で1,100rpm程度で、動作音としてはケースファン使用時よりも静か。

 その後も、GPU温度に追従するように回転数をきめ細かく制御しており、ベンチマーク終了からは1、2分ほど回転し続け、50℃を下回った付近で回転を停止した。ケースファンを追加した状態と比べると、GPU温度の低下はゆるやかとなり、アイドル時のGPU温度も45℃前後と、室温+20℃辺りにあるようだ。最大温度は69℃で、80℃の危険域からは十分な余裕がある。

 このように、新型クーラーの「DirectCU III」は、ヒートシンクだけでもとても優れた放熱性能がある。

ファンの回転数制御はきめ細かく、うまくケースファンを組み合わせることでほとんど回転しない状況も生まれそうだ。動作音に関しても、ファンが回転し始めても騒音計が動作音を拾えないほど静かだ。

OS最適化機能も備えた新型ユーティリティ「GPU Tweak 2」

 「GPU Tweak」は、ASUSのビデオカードで広く利用できるアプリケーションであり、「GPU Tweak 2」はその最新版という位置付けだ。

SimpleモードのUIがより分かりやすくなったGPU Tweak 2

 GPU TweakのメインUIは、左にステータス監視機能、右にオーバークロック機能がまとめられている。GPU Tweak 2も基本的にはこの構成を受け継いでいるが、右のオーバークロック機能画面はガラッと一新された。特徴的なのがVRAM使用量、GPUスピード、GPU温度という三つの重要なデータが3連メーター風に改められたところだ。

 VRAM使用量とGPUスピードに関しては%表示なので視覚的にも分かりやすい。また、その上には三つのプリセットモードとプロファイル機能、そしてレーダーチャートが設けられている。

左からOCモード、Gamingモード、Silentモード。左端のレーダーチャートが切り換わっていることが分かる

 レーダーチャートは各プリセットに応じて切り換わるので、パフォーマンス(Performance)と冷却性能(Coolness)、静音性(Silence)のレベルを確認した上で選択できる。ほか、その横には「0dB Fan」のON/OFFボタンがある。

 これはSTRIXの特徴でもあるファンの回転停止機能を有効、無効を切り換えるボタンだ。主にアイドル時のGPU温度が低い状態では、STRIXはファンを停止することができるのだが、より信頼性を求める場合などでファンを止めたくない場合は、これをOffとすれば、回転停止することはなくなる。もちろん、ファン回転数調節機能は効いている。

Gaming Boosterボタンを押すと専用画面に移る
Startボタンを押すと、三つの手法でOSのゲームへの最適化が行なわれる

 右画面の下側には「Gaming Booster」というボタンがある。これはOSをゲームに最適化するボタンだ。

 Gaming Boosterは三つの機能から構成されており、まず昨今のWindowsに採用されているビジュアル・エフェクツのOff、次に不要なシステム・サービスの停止、最後はメインメモリのデフラグを行なう。

 これらを適用するには、「Start」ボタンを押すだけだ。一つ一つ作業が自動で進み、最後に結果が表示される。検証環境は、ベンチマークのほかはインストールしていない比較的きれいな環境だが、11のサービスを停止、デフラグでは127MBほど開放できた。

 Gaming Boosterの効果だが、検証環境は先に述べたとおり「比較的クリーン」な状態のため、実行前と実行後で目立ったスコアの変化は見られなかった。

 ただし、ゲーム専用PCというわけではなく、汎用のPCでゲームを楽しむ場合や、ゲームプレイと同時にチャットを楽しんだりストリーミング配信したり、といった実践的なプレイ環境では効いてくると考えられる。いくつかのサービスが停止され、メモリが整理・開放されるので、少なくとも有効化するメリットはあるだろう。

「Info」の画面でGPUのステータスを確認可能
最近人気の「実況」にも対応。GPU Tweak 2に統合されている。製品には配信ツール「XSplit」の1年間プレミアムライセンスも付属する

 「GPU Tweak 2」には、上記のGPU設定が行える「Home」の項目のほか、「Info」、「XSplit」というタブも用意されている。

 「Info」は、GPUの情報を表示するパネル。GPU Tweakは、そもそもGPU-Zと共同開発したという背景があり、GPU-Z風のインフォメーション画面を持っていたが、GPU Tweak 2では単独のウィンドウではなく、右画面内に表示されるようになった。

 「XSplit」はSplitmediaLabsのゲームプレイ画面配信ソフト「XSplit」に関する設定画面が表示される。GPU Tweak 2インストール直後では、XSplitのインストールのためのショートカットボタンが表示される。これを押すとWebブラウザが起動し、XSplitのサイトが表示されるので、そこからダウンロードする形式だ。

Professionalモードでは、スライダを用いて各項目を一つ一つ調節していく詳細なオーバークロックが可能だ

 なお、ここまで紹介したのは新UIの「シンプルモード」(Simple Mode)の話。従来ながらの詳細なオーバークロック設定画面「Professional Mode」も用意されており、細かくチューニングすることも可能だ。

 オーバークロックに関する項目は、GPUクロックやメモリクロックはもちろん、GPU電圧やGeForceの「Power Target」、ファン回転数など豊富に用意されている。

こだわりが伝わる、ASUSの最新技術が詰まったハイエンドビデオカード

 特にクーラーの性能が目を引くSTRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMINGだが、ASUSらしい多くのこだわりが凝縮したカードだ

 従来品でも強力だったDirectCUクーラーは「超強力」といえる領域まで性能が引き上げられている。DirectCUクーラーは、2連ファン化を経て、STRIXシリーズでファン停止機能の採用にいたり、ついに3連ファンという一つの完成形に達した印象がある。

 もちろんGPU自体も電力効率の向上を図っているのだが、それ以上にクーラーの冷却性能が向上してきたと考えてよい。なかなか温度が上がらずファンが回り始めないクーラーは、試すこちらが不安になるほどで、静音性を求めるユーザーなら納得の製品だ。

 基板製造技術、搭載する部品の耐久性という面でも一つ世代が上がった。AUTO-EXTREMEは、背面プレートのあるハイエンドモデルなどでは外観から確認しにくいものの、品質の向上や長寿命化が期待できる新技術だ。もちろん、こうした部分は実際に2年3年使ってみなければ分からないところではあるが、仕上がりの美しさは「高品質」を求めるユーザーの所有欲を満たしてくれるだろう。

 また、ユーティリティも進化し、手軽に使いたいユーザーからヘビーユーザーまでカバーするものに仕上がっている。カード本体だけではなく、こうした部分がしっかり作り込まれている点もASUSの魅力といえるだろう。

 STRIX-GTX980TI-DC3OC-6GD5-GAMINGは、「技術のASUS」に期待するユーザーに応えるべく、現時点で投入できる最新技術とこだわりが凝縮されたハイエンドビデオカードだ。

[制作協力:ASUS]

石川 ひさよし