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イマドキ風、ASUS無線ルータ活用術[後編]

ハイレゾも余裕でバッチコイ。ちょっとリッチなホームオーディオ環境を作ってみた text by 日沼諭史

リッチな感じで風呂場でハイレゾ!
無線LANルーター「RT-AC68U」

 さて、先週掲載した前編ではクラウド+NAS+遠隔同期による使い方を見てみたが、後編のテーマは「音」。

 「音とルータ」というと突飛な組み合わせにも思えるが、最近話題のハイレゾ音源を本格的に活用しようとすると、かなりのストレージ容量が必要になる。小容量であれば「スマートフォンやタブレットに入れっぱなし」というのも問題ないが、全てのデバイスに全てのデータを格納するのはやはり不経済。

 そこで、思いついたのが、音楽ファイルをNASに格納し、高速な無線LANでストリーミング再生する、という方法。大容量HDDを導入しやすいNASは大量の音楽ファイルの保管に向いているうえ、最新世代の無線LANならばストレスも無いはず。自宅の好きな場所で音楽を聞きやすい、という寸法だ。

 利用例として使うのは、前編に引き続きASUSの無線LANルーター「RT-AC68U」。理論値最大1,300Mbpsを実現するIEEE 802.11acに対応、USB接続のHDDをNASとしても利用でき、音楽ファイルの管理や再生をするためのDLNAサーバーにもなる。ハイレゾ音源を楽しむのにうってつけとも言えそうなこの製品を使い、さっそくホームオーディオ環境を整備してみた。

まずは安価なUSB HDDを繋げてNAS化

比較的安価なUSB HDDで大容量NASを実現できるのがメリット
「Network Neighborhood 共有 / Cloud Disk」タブで共有を有効に
しばらくすると「RT-AC68U」のNASにアクセスできるようになる

 まず準備すべきは、無線ルータに接続するUSB HDD。

 前回紹介したように、RT-AC68Uの本体背面にはUSB 3.0ポートとUSB 2.0ポートが1つずつ用意されていて、ここにUSB HDDやメモリなどを接続することで、同じネットワーク内の機器からアクセス可能なNASとして稼働させられる。いわゆるUSBデバイスサーバー機能というやつだ。

 通常の単体NASだとやや値が張るが、USB HDDは数TBのものでもリーズナブルな価格帯に落ち着いている。NASを別途用意するのに比べても安価になるのもポイントだ。

 さて、今回の「RT-AC68U」をNASとして使うのに面倒な手順はほとんどない。USB HDDを接続すれば自動で認識されるので、あとは設定画面の「USB アプリケーション」内、「Servers Center」にある「Network Neighborhood 共有 / Cloud Disk」タブをクリック、「共有の有効」を“ON”にするだけだ。しばらくすれば他のPCなどから接続したストレージが見えるようになる。

 ちなみにUSBデバイスサーバー機能では、USBプリンターを接続、ネットワークプリンター的に複数のPCで共有することもできる。今回のテーマであるホームオーディオとは関係ないけれど、押し入れに眠っているUSBプリンターがあれば活用してみてはいかがだろう。

リビングのコンポでハイレゾ

 NASの準備ができたところで、ハイレゾ音源を楽しむにはもう1手順だけ必要になる。

 各種メディアファイルを配信するDLNAサーバーとしての設定だ。これについても、設定画面で「USB アプリケーション」内の「Servers Center」にある「Enable DLNA Media Server」を“ON”にするだけで良い。これで、オーディオ機器やPCソフト、モバイルアプリなどのDLNAクライアントから「RT-AC68U」を選択できるようになり、NASに保管しているメディアファイルを再生可能になる。

「Enable DLNA Media Server」をオンにしてDLNAを使えるようにしよう

 さて、今回の無線ルータがDLNAで対応しているハイレゾ音源のファイルフォーマットは、FLACやWAVなど。現在、注目が集まりつつあるDSD形式には対応していないが、現在、音楽配信サイトで公開されているハイレゾ音源の多くはFLACかWAVなので、大きな問題ではないだろう。

 実際、今回のRT-AC68Uでテストした範囲では24ビット・48/96/192kHzのFLAC/WAVファイルを全て認識し、再生することができたので、こうした面でも十分。

 さて、高速無線LANでどのようにハイレゾを楽しめるのか?まず考えられるのは、「ハイレゾ対応のオーディオコンポを使ってリビングで音楽鑑賞する」というものだ。

 スピーカーとアンプ、そしてDLNAクライアントとして動作するメディアレシーバーと、USB HDD付きの「RT-AC68U」を組み合わせることで、立派なホームオーディオ環境が出来上がるわけだ。

リビングのコンポと組み合わせてみた
このとおり192kHzのFLACも完璧に再生

 ただし、今回のRT-AC68Uが24ビット192kHzのハイレゾ音源に対応しているからといって、再生側のメディアレシーバーがその音源を再生できるとは限らない。聞きたい音源にメディアレシーバーが対応しているかどうか、最初に確認して買いそろえたい。また、こうした環境を整える場合、IEEE 802.11acの高速無線LANを活かして無線接続したいところだが、多くのメディアレシーバー側が対応しているのは2.4GHz帯の11nまで。競合する電波が少なく、ノイズが少ない5GHz帯に対応する製品は少ないので、製品を選ぶ際に注意したい。

 アンプやスピーカーもハイレゾ対応とされているものを選びたくなるかもしれないけれど、このあたりは実際、“ハイレゾ対応”にこだわる必要はあまりない。新たに購入する際にはオーディオショップで試聴したり、店員に相談するなりして好みのものを選ぶのが良いと思う。

 と、若干脱線してしまったが、RT-AC68Uを使ったハイレゾ環境では、DLNAクライアントからもレスポンス良くアクセスでき、24ビット192kHzの音源でも音が途切れたりすることは全くなし。11ac対応の高速無線LANということもあり、1ファイル数百MBあるようなハイレゾ音源をNASに保管する際にも、コピーに時間がかかりすぎてダレる、みたいなこともなかった。

お風呂場でもハイレゾ

風呂場でハイレゾ鑑賞

 無線LANを活用してハイレゾを聞くシーンはまだまだある。

 例えば、スマートフォンでハイレゾ再生できるようにすることで、自宅のどこにいても音楽を聞けるようになる。リビングから離れ、自分の部屋やキッチン、トイレで(踏ん張りながら)聞いてもいいし、(お風呂対応の)防水スマホなら湯船に浸かりながら聞くのも楽しい。

 再生にはハイレゾ音源対応のDLNAクライアントアプリを使おう。個人的には幅広いフォーマットに対応している「BubbleUPnP」をおすすめしたい。24ビット192kHzまでのFLAC/WAVなどに対応しているのはもちろんのこと、プレイリストや指定したフォルダ内の曲の連続再生など、音楽再生用途に適した数々の機能を備えているのが特徴だ。

 iPhoneの場合は「media:connect」がおすすめだが、確実に再生できたのはFLAC形式の24ビット192kHzまで。WAV形式は再生できないか、ノイズが入ってしまうことがあるようだ。

Androidアプリの「BubbleUPnP」
iOSアプリの「media:connect」

 お風呂場だと、スピーカーの選択肢はちょっと少ない。スマホの内蔵スピーカーで聞くか、防水のヘッドフォンやスピーカーで聞くか、といったところ。音質面でハイレゾの恩恵は受けられないだろうけれど、「ハイレゾを聞いている」と思うだけで、普段よりお風呂でのリラックス気分は倍増する、気がしないでもない!?

 ハイレゾを1人でじっくり聴き込みたい、あるいは仕事などをしつつ“ながら聞き”したい、というのであれば、PCとヘッドフォン、それにハイレゾ対応のUSB DACやヘッドフォンアンプと組み合わせるのがベスト。PCがWindowsなら「Windows Media Player」を、Mac OSなら「VLCメディアプレイヤー」などをDLNAクライアントとして使おう。

ヘッドフォンでのハイレゾ再生は最高だが、仕事中はおすすめしない。4Kディスプレイでも仕事効率は圧倒的にダウンだ(苦笑

 USB DACやヘッドフォンアンプも、聞きたいハイレゾ音源のフォーマットに対応しているかどうかあらかじめ確認しておきたい。PCにそれらを接続し、DLNAクライアントで無線ルータにアクセスしてヘッドフォンで音楽を聴けば、ハイレゾの高音質に没入できる。

 ただし、仕事しながら聞くつもりが、すっかり聞き入ってしまって何も手に付かない……なんて事態に陥ってしまいそうだったので要注意(笑。基本は休憩時間に聞くのがいいかもしれない……

膨れあがったiTunesライブラリも「RT-AC68U」へ

iTunes Server機能も有効にしておこう
4Kディスプレイで全画面表示した、iTunes Serverアクセス時のiTunes。リサイズしてしまうと何がなんだかよくわからないが、それがまたいい!?

 さて、ここまでは「ハイレゾ音源をいかにして聞くか」という部分にフォーカスしてきたが、「まだまだハイレゾまでは手を出しにくい」「iTunesで管理している圧縮音源を聞ければいい」という人もいるだろう。

 そうした場合に使えるのが、iTunesの音楽ファイルをネットワーク経由で再生できるようにするiTunes Server機能。今では単体NASでもサポート例が増えてきたiTunes Serverだが、PCのローカルに音楽ファイルを保管しているなら、ぜひ活用したい機能だ。

 今回のRT-AC68Uで利用する場合は、DLNAの時と同じく「USB アプリケーション」の中にある「Servers Center」で「iTunes Server を有効にしますか?」を“ON”にする。次にローカルにあるiTunesのライブラリフォルダを丸ごとRT-AC68UのNAS上にコピーすればOKだ。PCでいつも使っているiTunesを起動し、ウィンドウ左側に表示される「RT-AC68U」のエントリーを選ぶことで、自動で検出したコピー済みの音楽ファイルをざっと一覧表示してくれる。

 このiTunes Server機能は、高速化を目指してSSD化(=小容量化)したPCでも重要だし、家族それぞれがCDから取り込んだ楽曲や、バラバラに管理しているiTunesライブラリをまとめるのにもぴったりだ。なお、ライブラリをまとめる際は、無線にしろ有線にしろ高速な製品が有利。自分のiTunesライブラリは8GB近くあったのだけれど、RT-AC68Uへのコピーは5分程度で完了。スムーズにiTunesの“サーバー化”を完了できた。

時代に合った“ギガビット対応”な製品を選びたい

 というわけで、ハイレゾなホームオーディオ環境でどんな風に無線ルータが活躍してくれるのか、少しは感じ取っていただけただろうか。

 今やネットワーク内でありとあらゆる処理を行う時代。インターフェイス速度については「有線LAN、無線LANともギガビット」という製品が増えてきたが、今後は、付加機能の豊富さやその性能がポイントになってくるのではなかろうか。今回の記事を通じて、そうした一端を感じて頂ければ幸いだ。

日沼 諭史

ASUS RT-AC68U