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メタルギアも高画質/60fpsで遊べる、これが2015年のスタンダードゲームPCだ

コスパ重視で旬のパーツを選定、想像以上に快適な性能 text by 坂本はじめ

 2015年は「プラットフォーム大更新の年」と言える状況になっており、7月末にWindows 10が登場、9月にはSkylake-SことIntel第6世代Core プロセッサーのスタンダードモデルも発売されている。

 新OSと最新鋭のIntelプラットフォームが登場したこの秋は、最新パーツを追いかける自作PCユーザーはもちろん、長期にわたって使えるPCを組みたいユーザーにとっても、パソコンを新調する絶好の機会だ。

 そこで、今回は自作PC向けパーツの中でもコストパフォーマンスの高い「ミドルレンジクラス」のパーツを使用して、2015年秋のスタンダードPCとも言えるパソコンを組み立てる。CPUはもちろん最新鋭のIntel Skylake-S、マザーボードとビデオカードは人気の高いASUS製品からチョイスした。

 それでは最新のミドルレンジクラスのパーツで構築したPCの実力を紹介しよう。

ゲーミングモデルが2015年のスタンダード、コストを意識してパーツをチョイス

 さて、今回組み立てる自作PCのテーマは「ミドルレンジクラスのパーツで構築する2015年秋のスタンダードPC」だが、スタンダードと言っても、用途次第でスタンダードと呼べるパーツ構成は変わってくるもの。そこで、今回は「ゲームも遊べるスタンダードPC」というサブ要素を加えてパーツ選定を行った。

 ちなみに、最新PCゲームは、一般的なアプリケーションの中では最も性能に対する要求が厳しいものの一つ。それゆえに、最新のゲームをプレイできる性能を持ったPCは、ほかの作業もそつなくこなせるオールラウンダーということになる。今回組み立てるPCは、「ゲームもできるスタンダードPC」であると同時に、大体なんでもできるPCでもあるわけだ。

 さて、そんなわけで、今回選んだパーツを以下の表にまとめてみた。総額は税込でおおよそ14万円前後と言ったところだ。

 モデル価格(税込)
CPUIntel Core i5-640025,000円前後
マザーボードASUS H170 PRO GAMING19,000円前後
ビデオカードASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING28,000円前後
メモリCrucial CT2K8G4DFD8213(8GB×2)12,000円前後
SSDIntel 535 SSDSC2BW240H6R5(240GB)16,000円前後
ケースCooler Master CM 690 III12,000円前後
電源Cooler Master V750 Semi-Modular13,000円前後
OS日本マイクロソフト Windows 10 Home パッケージ版15,000円前後
  合計140,000円前後

Intel Core i5-6400

 CPUには4コア4スレッドCPU「Core i5-6400」を選択。TDP65W版Core i5の最廉価モデルで、動作クロックは2.7GHz(ターボ時最大3.3GHz)。オーバークロック向けのKモデルとは異なり、CPUクーラーが付属している。

Core i5-6400の製品パッケージ
CPU-Z実行画面
付属の純正CPUクーラー

ASUS H170 PRO GAMING

 マザーボードに選択したのは、Intel H170チップセットを搭載したゲーミングマザーボード「ASUS H170 PRO GAMING」。

 Z170チップセットと違い、CPUやメモリのオーバークロックやNVIDIA SLIの構築はできないものの、シングルGPUでゲーミングマシンを構築するには十分な機能を持っている。黒と赤で統一感のあるルックスは、サイドパネルにアクリル窓付きが多いゲーミングPCケースとの相性も良い。

R.O.G.シリーズでも採用されているオーディオ機能「SupremeFX」を搭載」
LANコントローラにはIntelのI219Vを採用
バックパネルインターフェース

ASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING

 「ASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING」は、ミドルレンジGPUであるNVIDIA GeForce GTX 950を搭載したビデオカード。

 部品の取り付けを完全に自動化した「ASUS AUTO-EXTREME」により製造されたオリジナル設計の基板に、セミファンレス機能を備えた「DirectCU II」クーラーを搭載。GPUのGTX 950を通常の1,126MHz(ブースト時1,190MHz)から、1,140MHz(ブースト時1,329MHz)にオーバークロックして搭載した、ASUSの最新技術が光る一枚。

ディスプレイ出力ポート。DisplayPort 1.2、HDMI 2.0、DVI-D、DVI-Iを各1系統ずつ備え、4画面の同時出力が可能
補助電源コネクタは6ピン1系統
GPU-Z 0.8.5実行画面

Crucial CT2K8G4DFD8213

 メモリはCrucialのCT2K8G4DFD8213。DDR4-2133動作の8GBメモリ2枚組だ。登場当初はDDR3メモリより遥かに高価だったDDR4メモリだが、今や8GBメモリ2枚の16GBキットでも1万円そこそこで購入可能となった。

 メモリ選びで注意しておきたいのは、H170チップセットでは、CPUのスペックを超えるメモリクロックでは動作しない点。Core i5-6400の場合、動作可能なDDR4メモリのクロックはDDR4-2133までに制限される。せっかく高クロックメモリを選んでも宝の持ち腐れとなってしまうので、DDR4-2133規格のメモリを選ぶべきだろう。

8GBモジュールを2枚セットにした、16GBデュアルチャンネルメモリキット
搭載しているDRAMはMicron製
H170 PRO GAMINGにはDDR4-2133以上の設定が用意されているが、これらの設定を適用すると起動に失敗してしまう

Intel 535 SSDSC2BW240H601

 ストレージにはIntel 535 シリーズSSDの240GBモデルを選択。SATA 6Gbps対応のSSDで、シーケンシャルリード540MB/sec、同ライト490MB/secというスペック。

 SATA 6Gbpsより広い転送帯域を持つM.2やPCI Express接続のSSDに比べ、パフォーマンス面で劣っていることは確かだが、Intelブランドで5年間保証付きという保証面の充実度合いと、240GBで約16,000円という価格帯容量比の高さが魅力。

今回用意したのは簡素な茶箱に収められたモデル
付属品はステッカーのみとシンプル
Crystal Disk Markの実行結果、OSやゲームをインストールした後の状態ながらパフォーマンスは上々だ

Cooler Master CM 690 III

 PCケースにはCooler MasterのCM 690 IIIを採用した。

 最新のケースという訳ではないが、1万円そこそこで購入できるケースの中では、質感、拡張性、組み立てやすさ、いずれも高いレベルにある。標準で2基のファンを搭載しており、今回の構成であれば追加ファンなしでも運用可能。

ケース内空間は十分に広く、裏配線を考慮して設計されているため、とても組立やすい
フロントパネルインターフェースには、音声入出力の他、USB3.0ポートとUSB2.0ポートをそれぞれ2基ずつ備える
ストレージの固定はトレー式。3.5インチドライブはツールレス、2.5インチドライブはトレーにネジ止めして取り付ける

Cooler Master V750 Semi-Modular

 電源ユニットには、ケースと同じくCooler Masterの80PLUS GOLD認証電源「V750 Semi-Modular」を採用。

 今回の構成なら、電源容量は500Wもあれば十分余裕をもって動作が可能だが、低容量モデルとさほど価格差がなかったのでより容量の大きな750W電源を選択した。

一部のケーブルが着脱可能なセミモジュラー式の電源
電源ユニットに直付けされているのは、20+4pinメインケーブル、4+4pinケーブル、6+2ピン×2コネクタケーブル2本
着脱可能なケーブルはSATA電源ケーブルと、ペリフェラル4ピンケーブル(写真はSATA電源ケーブル)

Windows 10 Home パッケージ版

 OSにはWindows 10 Homeのパッケージ版を選択した。Windows 10では、DSP版がDVD-ROMで提供されているのに対し、パッケージ版はUSBメモリで提供される。これにより、光学ドライブを搭載していないPCでも手軽にインストールが可能となった。

 近年、PC向けのゲームやアプリケーションは、ダウンロード版が用意されていることが多く、光学ドライブを使う機会は減りつつある。WindowsがUSBメモリで提供されるのもこうした流れを受けてのものだろう。

USBメモリは端子のサイズそのままのコンパクトなもの
H170 PRO GAMINGのUEFIで、USBメモリをブート順の最優先に設定する。特に理由がないなら、デバイス名の前に「UEFI」と記載された、「UEFIモード」でインストールすると良いだろう
USBメモリからインストーラーが起動する際、32bitと64bitのどちらを選ぶか選択が可能

 以上のパーツでくみ上げたPCでパフォーマンスをチェックしていく。今回は組み立て過程は割愛するが、ケーブルマネージメントもしっかりしたATXケースでパーツ点数も少ない今回の構成は、組み立ての難易度は低い。慣れたユーザーなら半時もせず組み立てることができるだろう。

 なお、今回は予算を抑えるために選定パーツから光学ドライブを省いた。光学ドライブは必須パーツではなくなりつつあるものの、極稀にドライバやユーティリティが付属の光学メディアにしか収録されていないことなどもある。予算が許すなら、内蔵型でも外付け型でも良いので、1台光学ドライブを用意しておくことをお勧めする。

完成した「ゲームもできるスタンダードPC」
シンプルゆえに組み立てやすい。ケーブルマネージメントがしっかりしているケースなので、電源ケーブルをケースの裏側にまわすだけで、ゴチャゴチャ感の無いすっきりした内装に仕上がる

Skylake + GTX 950ならメタルギア最新作も60fps/高画質で快適にプレイ可能

 さて、では肝心のパフォーマンスをチェックしていこう。ゲームもできるスタンダードPCを目指しているので、実際にゲームを動かして、そのパフォーマンスをチェックしてみた。

 まず試してみたのは、先日発売されたばかりのメタルギア最新作「メタルギアソリッドV:ファントムペイン」。

 GeForce Experienceを利用し、1,920×1,080ドットのフルHD解像度でグラフィックス設定を最適化したところ、フレームレートよりも若干画質のクオリティを優先したと思われる設定が反映された。ゲーム側で設定を確認してみると、被写界深度の設定が無効化されている他は、「High」以上の設定が適用されており、かなり高画質な設定になっていることが分かる。

GeForce Experienceでの最適化設定。1,920×1,080ドットではフレームレートよりも画質クオリティ優先の設定が適用された
ゲーム中でのグラフィックス設定画面。かなり高画質な設定が適用されている

 過去のGeForce Experienceは、40~60fps程度での動作をターゲットに最適化を行っていたが、このターゲットが変更されたのか、メタルギアソリッドV:ファントムペインでは、60fpsからフレームレートが低下することはほとんどなく、滑らかな動きでプレイが可能だった。

しばらく動き回ってみたが、60fpsを割り込むことは無かった。今回の構成と同等以上の環境なら、フルHD解像度でメタルギアソリッドV:ファントムペインを思う存分楽しめるだろう。

 もう一つ試してみたのが、「The Witcher 3: Wild Hunt」。最近のゲームの中でも重たいタイトルの一つであるWitcher 3だが、GeForce Experienceで最適化を行うと、1,600×900ドットの解像度が選択され、同解像度では60fps以上のフレームレートでプレイ可能だった。

 流石に最高の画質で遊びつくせるとまではいかないが、最新のゲームタイトルを快適にプレイできるだけの性能を、今回のスタンダードPCは持っているようだ。

GeForce Experienceでの最適化設定。1,600×900ドットの解像度で、ちょうど中間程度の描画設定が適用されている。
遠景の描画はやや簡略化されている感が否めないが、 Witcher 3の世界感が損なわれるほどではない

 現行のゲームではなかなかのパフォーマンスを発揮したGeForce GTX 950。今後しばらく使うことを考えるなら、Windows 10でサポートされる新世代API「DirectX 12」に対応している点も見逃せない。

 今回のスタンダードPCでは、3DMarkの「API Overhead feature test」と、現時点で唯一のDirectX 12対応タイトル「Ashes of the Singularity」が動作することを確認できた。いざDirectX 12対応タイトルが登場した時、少なくとも動作させることが可能であるというのは心強い。

Ashes of the SingularityのジャンルはRTSで、DirectX 12対応タイトルとして注目されている。
DirectX 12対応タイトル「Ashes of the Singularity」のベンチマークモードでのリザルト画面。画面解像度1920×1080ドット、描画プリセットはLow。
3DMark API Overhead feature testのスコア。DirectX 12はDirectX 11に比べ、大幅に秒間ドローコールが増加していることを確認できる

 ゲームでのパフォーマンス以外はどの程度のものなのかということで、ワットチェッカーを使った消費電力、メタルギアソリッドVをプレイ中のGPU温度、CPUベンチマークソフトの定番「CINEBENCH R15」のスコアの測定も行った。

ワットチェッカーによる消費電力の測定結果
メタルギアソリッドVプレイ中のGPU温度推移
CINEBENCH R15の実行結果

 消費電力のピーク値はメタルギアソリッドVを実行中の147W。この間、GPU温度は70℃を越えないあたりで制御されており、ファンの動作も最大で1,400rpm程度と静かなものだった。

 ちなみにこの時のCPU温度はHWMonitor 1.28のCPUコア温度測定で最高50℃。CPUクーラーは純正の物を使用したが、十分に冷やせていると言ってよさそうだ。

想像以上に快適なPCに仕上がった「スタンダードPC」、将来性も十分

 Windows 10とIntel最新のプラットフォームで作るスタンダードなPCを実際に組み立て、その実力をチェックしてみたわけだが、今回のパーツ構成は組みやすく、かつパフォーマンスもそれなりに高いものに仕上がっているので、万人にお勧めできる。

 組み立てる前の時点では、Core i5-6400の動作クロックの低さが仇になる場面が出てくるかと思っていたのだが、実際に動作させてみるとそのようなこともなく、想像以上に優れたパフォーマンスを発揮した。「スタンダードなゲームPC」としては上々の性能だろう。

 また、将来的にCPUやビデオカードを上位モデルに換装したり、Skylake-S世代で強化された足回りを活かし、M.2やPCI Express接続の高速SSDを組み込むといったアップグレードパスが豊富な点も魅力といえる。

 今回は標準的なATX規格での例を紹介したが、自作経験豊富なユーザーならMini-ITXやmicroATXでコンパクトに纏めてみるのも面白い。

 これから自作PCを組もうと検討している方々には、今回組み立てたPCを一つの基準として、パーツ選びの参考にしてもらえれば幸いだ。

[制作協力:ASUS]

坂本はじめ