特集、その他
高コスパなゲーミングPCを組んでみた、
目標は「最新パーツで10万円ちょっと」
話題のゲームでどこまで遊べる? WoWs、フォールアウト4、StarWars、MGSV、FF…… text by 加藤勝明
(2015/12/14 00:01)
この冬はPCゲームが豊作だ。『フォールアウト4(以下FO4)』や『Star Wars バトルフロント(以下SWBF)』といった話題作をPCで遊んでみたいが、推奨スペックの高さにゲーム購入に至らない人も少なくないのではなかろうか。
例えばSWBFの推奨スペックは「Core i5-6600&GeForce GTX 970以上」、FO4では「Core i7-4790&GeForce GTX 780以上」。ざっくりと見積もっただけでも、両者ともCPUとビデオカードだけで7万円前後はかかる計算。新ゲームに合わせ新PCを調達しようとする人にはハードルが高い。
そこで今回は、比較的低予算で組めるパーツ構成のPCで、最新ゲームは果たしてマトモに動くのか? さらにパワー不足で動作が重いとしたら、どこまで設定を落とせば快適(平均60fps)に遊べるか? の2点を検証してみたい。
パーツ一式で約9万円、その内訳は?
まずは今回かき集めたパーツ構成と、パーツ選定の理由を紹介しよう。記事作成時の調達の都合で、そのジャンルにおける最安でないパーツもいくつか混じってしまったが、OS含めず一式90,000円ほどで収めることができた。
OSについては、DSP版Windows 10 Homeなら17,000円前後、同Windows 10 Proなら23,000円前後が相場。Windows 10 Homeを使うのであれば(ちょっと足が出てしまうが)「10万円コース」には納められるイメージ。お店によってはWindows 8.1が1万円ほどで売られているので、そこで安く仕上げる手もある。
最安値巡りをしたり、セールを活用して5,000円以上安く上げることもできるため、「10万円以内」も十分目指せるだろう。
【コスパ最高のゲーミングPC】(OS含まず/税込/合計約90,000円)
■スペック
CPU:Intel Core i3-6100(3.7GHz) (実売価格:16,000円前後)
メモリ:Crucial CT2K4G4DFS8213(DDR4-2133、4GB×2)(実売価格:8,000円前後)
マザー:ASUS H170-PRO(H170、ATX)(実売価格:14,000円前後)
グラフィック:ASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING(GeForce GTX 950、2GB)(実売価格:25,000円前後)
SSD:Crucial CT240BX200SSD1 240GB(実売価格:11,000円前後)
電源:Antec EW-450-PLATINUM(80PLUS Platinum、450W)(実売価格:8,000円前後)
PCケース:Cooler Master K282(実売価格:8,000円前後)
CPUクーラー:CPUに付属
※上記価格は、12月上旬のアキバの実売価格をベースとしています。
CPU:Intel Core i3-6100
今のPCゲームはマルチスレッド化が進んでいるため、リアルな描画を売りにしたゲームだとCPU占有率は50~70%(4コアCPUの場合)になるものが多い。ゲーミングPCにはCore i5以上がよいとされるのはこの理由だが、CPUだけで30,000円コースなのは痛い。
そこで今回はあえてCore i3の一番下のモデル「Core i3-6100」を選択してみた。物理2コアだが、Hyper-Threadingがあるため疑似的に4コア動作となる。さらにCore i3-6100はSWBFの必須スペック(Core i3-6100T)ギリギリクリアできるというのもポイント。これより安いPentium Dual-Coreだと2コア2スレッドだし、ゲームに使うならCore i3-6100が好適と判断した。
なお、今回はビデオカードをGeForce GTX 950にしているが、これをGeForce GTX 750 Tiに変更、その分の予算でCPUを強化するという手もある。
GeForce GTX 750Tiは第一世代Maxwellに属するGPUでやや古いが、それほど大きなパフォーマンス差がなく、1万円ほどの予算が捻出できるので、「最新」にこだわらないなら同GPUを利用し、捻出した1万円でCPUをCore i5-6400~6500(実売価格25,000~27,000円)にしたり、そのままコスト削減してしまうのもいいだろう。
メモリ:Crucial CT2K4G4DFS8213
メモリはDDR4-2133の4GB×2構成を選択。
最近DDR3-1600も結構安くなってきたが、4GB×2だとDDR3-1600とDDR4-2133で2,000円も差がないこと、さらに今後はDDR4が主力になることを考慮し、DDR4-2133に決定。
マザー:ASUS H170-PRO
第6世代Coreに対応し、価格は安いが信頼性等の付加価値が高く……と絞りこんでいくとB150かH170搭載マザーという結論に到達。ASUS製マザーボードで低価格、DDR4対応ATXマザー……と絞り込んでいったところ、H170-PROを選択することにした。最近はこのクラスでもゲーミング色の強い製品が出ているが、今回はあえて安いスタンダードなものから選んでいる。ATXにこだわらなければ実売10,000円の「B150M-A」も選択肢として浮かび上がるが、今後の拡張性を考えてH170-PROが最善と判断している。
非常に優秀な省電力機能「EPU」にASUSの強力なファン回転数制御機能「Fan Xpert 3」といった装備に加え、各部に入った過電流保護回路や背面ポートを静電気による破損から守る保護回路等、守りの充実度も選定の理由だ。
グラフィック:ASUS STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING
高性能なビデオカードは金食い虫だが、ここをケチっては全てが台無しになる。
「低予算ゲーミングPC」というコンセプトならGeForce GTX 750Tiも狙い目だが、GTX 750Tiはアーキテクチャ(第1世代Maxwell)が古いので、今から買うなら第2世代MaxwellベースのGTX 950を選ぶのがお勧めだ。ただ、12月上旬現在、GeForce GTX 750Tiとの価格差が1万円と大きいため、「さらにコスト重視」で選ぶなら、もちろんGeForce GTX 750Tiでもいいだろう。
さて、今回はGeForce GTX 950搭載のASUS「STRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMING」を選んだが、これはクーラーの冷却力が高く、低温時はファンが停止する準ファンレス仕様、さらに補助電源も6ピン1系統と使いやすいなど、マイナス要素のない優れた製品だ。
さて、この原稿執筆中に同じGTX 950を使ったスタンダードモデル『GTX950-OC-2GD5』が発売されたが、値段はほぼ同じなのに準ファンレス機構がなく、動作クロックも低い。今後時間の経過によりGTX950-OC-2GD5の価格が下がるまでは、今回選択したSTRIX-GTX950-DC2OC-2GD5-GAMINGがゲーム用としてはベストバイといえるだろう。
ストレージ:Crucial CT240BX200SSD1
ゲーミングPCを名乗るなら起動ドライブをSSDにするのは常識。今は120GBクラスのSSDが数千円で購入できるがFO4は30GB、SWBFは40GB以上の空きスペースが必要になるため、120GBだとあっと言う間に容量不足になる恐れがある。そこで今回浮上したのがCrucialの「BX200」シリーズの240GBモデルだ。
TLC NANDを採用したことで性能はやや控えめ(リード540MB/s、ライト490MB/s)だが、ゲーム用にはこれで十分。NVMeなど高速なSSDを使っても、ゲームの読み込み待ち時間に影響はほとんどない。値段と容量、さらに性能面でゲーミングPCに最適な選択といえる。
目標は「フルHD」&「平均60fps」軽量級「WoWs」から重量級「ウィッチャー3」まで6タイトルで検証
これより各ゲームにおけるパフォーマンス計測と推奨設定を解説する。解像度をフルHDに固定し、Frapsで「3分間で平均60fps以上」出せる設定を探り出すのが目的だ。
ただ平均60fpsというと条件が甘くなりすぎるため、最低fpsは50fps以上であること、さらに60秒未満のシーンが3秒以上連続しないことを最低条件とした。シーンによってはこの値を満たせない可能性もあるが、フィールド移動などなるべく多くのオブジェクトが入り込むシーンで検証している。
パーツ構成は前述の通りだが、今回、OSは「Windows 10 Pro 64bit版」、ドライバは「GeForce 359.00」を導入している。
超軽量級『World of Warships』は楽勝
まずは海戦をテーマにした『World of Warships(以下WoWs)』を試してみよう。
画質設定はプリセットの「最高」を選択、さらに「植物品質」も「最高」にセット。測定はマップ「断層戦」を利用した。
Core i3+GTX 950の組み合わせであっても、World of Warships程度なら余裕で高fpsを維持できるが、姉妹ゲーム『World of Tanks』の軽さを考えるとむしろ当然といったところ。76fps以上出ないのはゲーム側で上限を決めているようだ。最高画質設定で60fps以上出てしまったため、このゲームの検証はここで終わりにする。
『METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN』なら少々の調整でOK
描画軽めで今年多いに注目されたゲームといえば『METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN(以下MGSV)』も忘れてはならない。
「PC版の方がPS4版よりも画質が良い!」というのも売りのひとつだが、今回の予算を切り詰めたPCではどこまで動くのだろうか? そこで今回はアフガニスタンマップでの移動時のフレームレートで判断することにした。
MGSVなら画質を“Extreme”または“ON”にした最高画質設定であっても、GTX 950ならほぼ60fpsに張り付く。しかし時々ストンとfpsが落ちる部分が出現する。最高画質でも平均58fps以上出るので問題ないともいえるが、今回は一部の設定を1段下の「High」設定にすることにより、最低59fps、平均59.93fpsという安定して高いフレームレートが確保できた。影やアンビエントオクルージョンといった“パッと見分かりにくい設定”を優先して下げるのはゲーム画質チューニングの鉄則だ。
『Star Wars バトルフロント』で60fpsプレイするためには?
注目のSWBFの検証に入ろう。
すでに当サイトのこの記事では、GTX 960ベースで60fps死守というスタンスで検証済だが、ここでは前述の通り“平均60fps目指す”やや緩めのスタンスで挑んでみたい。今回の検証で用いたのは惑星エンドアにおけるシングルプレイヤー用サバイバルミッションだ。“最高”画質設定でどこまで出るだろうか?
惑星エンドアのマップはオブジェが多く描画の重い印象だが、さすがにプリセットの“最高”画質だと40fps台まで下がる時が出てくる。そこでプリセットの“高”をベースに、負荷の高い影やアンビエントオクルージョンの設定を積極的に落とす一方、目につきやすいテクスチャーやメッシュの品質は逆に高める。こうすることで一瞬60fpsを割ることもあるが、全体として60fps以上をキープできるようだ。2GBのVRAMを使い切ってしまうので多人数対戦時はもう少し設定を軽めに振る必要があるかもしれないが、画質“低”まで下げなくても十分楽しめることが分かったはずだ。
『フォールアウト4』は設定“High”ベースで攻める
続いてFO4の検証に入ろう。
推奨GPUがGTX 780と高いゲームだが、今回の作例のようなお値段安めの構成と画質“Ultra”設定の組み合わせでもゲームは起動するし、マップを普通に歩き回ることもできる。フィールド移動中のフレームレートを計測したのが下のグラフだが、GPUドライバ側の設定で強制的に垂直同期をオフにすることで、60fps以上の出力を開放してある。
ただし画質“Ultra”設定だと最低fpsが35fpsまで下がってしまう。30fps以上出ているので遊べない訳ではないが、強い敵との戦闘が心配だ。
そこでオススメしたいのが下に掲載する設定例。これなら一瞬57fpsまで下がることはあるものの、概ね60fps以上の維持ができるようになった。全部いきなり下げると画質が露骨に下がるので、テクスチャーやデカールの設定は高めにしつつ、アンチエイリアスや影は下げる。だがアンビエントオクルージョンは下げ過ぎると立体感に乏しくなるので、最低より1個上にするのがポイントだ。
今年一番の重量級ゲーム『ウイッチャー3 ワイルドハント』はどうなる?
SWBFもFO4も推奨スペックが高い割に、Core i3+GTX 950の構成でもサクッと動いてしまった。これはこれで喜ばしいことだが、もっと重い『ウイッチャー3 ワイルドハント(以下ウィッチャー3)』ではどうだろうか?
まずは最高画質設定で試すが、このゲームに組み込まれた「HairWorks」はパワーを食いすぎる傾向があるため、この項目のみ完全オフにしてテストしている。ただし環境閉塞(いわゆるアンビエントオクルージョン)は最大の「HBAO」に設定した。
さすがに今年一番の重量級ゲームだけあって、最高画質設定では平均30fpsにも届かない。これでも歩き回って薬草採取程度は可能だが、ガッツリ戦闘まで楽しむとなるともっとfpsが必要になる。全ての設定を“低”で統一すればfpsは出せるが、描き込みがスカスカになってしまうのが悩みどころ。
そこでオススメなのが“低”をベースにテクスチャー設定や地形品質を上げる方法。アンチエイリアスがないのでオブジェクトの輪郭がチラチラと動いて見える“クローリング”が出やすくなる(特に柱や樹木の幹など)が、フィールド移動中はおおよそ60fpsをキープできる。
村など建物が多いシーンでは50fps台に落ち込むが、画質を最低にセットしても(検証に用いたシーンでは)最低fpsが60fpsを上回ることはなかったので、そこはマシンパワーの限界といったところだ。
定番の『ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド』ベンチマークもチェック
ゲーム検証の最後として『ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド』の公式ベンチを使ったテストも行ってみた。
ベンチマークのガイドによると、スコア7,000ポイント以上であれば“非常に快適”判定となる。
今回の作例ではDirectX11モードにおける“最高品質”で6,500ポイントを越えているため、快適にプレイできると判断できる。
しかし「Fraps」でフレームレートを追跡してみると、釣りのシーン~水上を飛行するシーンでは30fps台に落ち込む。別にこれでもプレイに大きな支障が出る訳ではないが、難しい局面でfpsが落ちるのは勘弁ならん、という人は画質を“標準品質(デスクトップPC)”まで下げる必要がある。というのも“高品質(ノートPC用)”でも水上飛行シーン後半や、その後に続く城(?)出現シーン等では40fps台まで落ち込むためだ。さらに“標準品質(ノートPC)”まで下げても、瞬間的に50fps台まで下がるときがあり、この辺はCore i3+GTX 950の限界と考えるべきだろう。
450W電源&リテールクーラーで大丈夫?
今回は予算控えめの構成にするために、電源は(80PLUS PLATINUMだが)450W、CPUクーラーはCPUに付属のものを使用した。果たしてこれで電力は足りるのか? 冷却は十分なのか気になるところだ。そこでこれを検証して終わりにしたい。
テストはシステム起動10分後を“アイドル時”、「OCCT Perestroika 4.4.1」のPower Supplyテストを30分実行した際の値を“高負荷時”とした。消費電力測定は「Watts Up? PRO」、温度測定は「HWiNFO64」を利用している。
一番心配だったのはCPUの温度だが、OCCTを使って全力で回しても61℃と低い。これなら特別クーラーを購入しなくても安心して酷使できるだろう。GPU温度も70℃未満に抑えている点はさすがASUS製といったところだ。
消費電力もOCCT実行時に200Wを越えることはなかった。実ゲームでもだいたい130~150Wをフラフラ推移する感じなので、こちらも容量が不足する心配はない。将来Core i7やもっと消費電力の多いGTX 980クラスに替える予定がなければ、450Wでも十分戦力になるのだ。
まとめ:「約10万円」のPCでも最新ゲームは怖くない
以上様々なゲームで検証してきたが、今回の作例なら何も考えずにプリセットの最高画質を選んでも全く動けないほど重いゲームは存在しなかった(超重量級のウイッチャー3はさすがに重かったが……)。SWBFやFO4は推奨スペックがやたら高い印象だが、それでも全く臆する必要はない。
家庭用ゲーム機で気楽に遊ぶのもよいが、PCで遊ぶゲームの奥の深さも最近見直されつつある。SWBFやFO4をきっかけにPCゲームにカムバックしようと考えるなら、ぜひ今回のパーツ構成を参考にして欲しい。
[制作協力:ASUS]