【 2010年2月27日号 】
[不定期連載]PCパーツ最前線:
LSIロジックに聞く「6Gbps RAIDカード」
〜公称2,500MB/s、コンシューマーにも本格参入〜
 今週号より、メーカーインタビュー企画「PCパーツ最前線」を不定期に掲載します。

 日頃あまり表に出ない、メーカー担当者の生の声などをお届けしていく予定ですのでご期待ください。


 サーバー用RAIDカードの大手メーカーとして知られる米国LSI Corporation。同社は2009年4月にコンシューマー用RAIDカードのメーカーである3ware社を買収したが、この2月に買収後初となる3wareブランドの新製品を発売。さらにこれを機に、コンシューマー向けにも販売の拡充を図るという。

 今回は、同社の日本法人であるLSIロジックにて、3ware製品を担当するチャネル製品担当の橋本 博文氏、並びにマーケティングを担当するマーコム担当の秦 和哉氏に、製品の特徴と同社の今後の取り組みを聞いた。


聞き手:橋本 新義、鈴木 光太郎
協力:LSIロジック株式会社
実施日:2010年2月8日(月)


 
公称2,500MB/s、2枚利用で3.4GB/sも
3Gbpsドライブでも高速化



LSIロジック株式会社 チャネル セールス&マーケティング マネージャー 橋本 博文 氏

LSIロジック株式会社 マーケティング・コミュニケーションズ・マネージャー 秦 和哉氏
――まず、今回の新製品の特徴について紹介いただけますか。

[橋本 博文氏(以下橋本)] 弊社は今回8機種の製品を発表しますが、このうち「3ware 9750-8i」と「3ware 9750-4i」の2製品をコンシューマー向けとしてアピールしていきます。

 両機種とも、6Gbps SATAとSASのドライブに対応するRAIDカードです。ポート数は8iが内部8ポート、4iが内部4ポートです。接続対応ドライブ数は、SATAポートマルチプライヤーやSASエキスパンダーの併用で、両機種とも96台までとなっています。ボード上のキャッシュとしては、512MB/800MHz動作のDDR2メモリを備えています。RAIDレベルは、0、1、5、6、10、50が使用可能で、シングルディスクにも対応します。接続スロットはPCI Express 2.0 x8です。

――6Gbps対応ということですが、従来の3ware製品とはコントローラチップは異なるのですか?

[橋本] そうです。6Gbps対応のMegaRAIDシリーズなどと同じ「LSISAS2108」と呼ばれるチップで、従来のLSI製品から採用されていたアーキテクチャーです。

――今回の製品は6Gbps対応ということで、やはり速度が注目されると思います。カタログにも最大リード速度は2,500MB/s、最大ライト速度が1,500MB/s(RAID 5時)という数値があり、さらに御社のWebサイトのトップでも、「TOM'S Hardware Guide」(独立系PCハードウェア評価サイト)のテストにて、先行して発売されていたMegaRAID 9260-8i/9210-8iと16台のIntel X25-Eを使ったシステムで、世界最高速となる約3.4GB/sという記録が達成されたことをアピールされておりますね。

[橋本] 今回の3ware製品をはじめとする6Gbps対応製品では、当然ながら速度は重要です。初代のSAS(3Gbps)に対応製品の時点ではSSDが市場に存在しておりませんでしたので、コントローラチップの性能を活かせるドライブがありませんでした。しかし、今回の6GbpsはSSDが既に登場していますので、最初からSSDを意識した設計になっております。コントローラの内部処理の高速化がポイントなのです。

 また、この内部処理の高速化によって、既存の(3Gbps対応の)ドライブを接続した場合でも、速度が向上しています。弊社のテストでは、ランダムリード/ライトで最高40%、ブロックサイズの大きなシーケンシャルライトで最高80%、同リードでは最高100%の向上結果が得られています。

――やはりコントローラチップの高速化はメリットが大きいのですね。ユーザーからしますと、高性能なRAIDカードは2〜3年は第一線で長く使い続けられる製品なので、そうした点は有り難いところです。

[橋本] 「今6Gbps対応製品を買っておくと、将来6Gbps対応ドライブが本格的になった際でも、ボトルネックになりにくいですよ」という点はアピールしたいポイントです。もしコントローラ側の速度がボトルネックになった場合は、可能な限りファームウェアのアップデートで対応する予定です。

――御社は2009年11月に開催されたDIY PC EXPO 2009で、MegaRAID SAS 9280-8e+Intel X25-E SSD×4台を使ったシステムで、実転送速度が1GB/s超えのデモをされておりましたが、あのデモの狙いもそのあたりだったのですか?

[橋本] はい、そうです。とくにDIY PC EXPOですと、来場者はベンチマーカーの方が中心と思いましたので、速度を中心としたデモ展示になりました。

――なるほど。速度という点では、SASは規格自体がSerial ATA(SATA)の上位互換になっており、SATAドライブがそのまま使えますが、今回の製品では、SASとSATAの性能面での違いはありますか?

[橋本] SATAのドライブでもSASと同じように使えるというのは弊社製品のポイントです。私たちはSASはエキスパンダなどを使用した大きなストレージシステムを構築するときに有利なテクノロジー、SATAは内部ポートを使用して大容量のディスクをDASで使用するのに有利と考えています。その両方または混合使用環境にメリットのある接続の柔軟性を確保するのに苦労しました。

[秦 和哉氏(以下、秦)] コンシューマー市場ではSATAが中心なため、弊社製品のパッケージは「SATA+SAS RAID Controller Card」と、SATAの方を先に表記しています。

 
コンシューマーに本格的参入、
各種情報のしっかりとした日本語化を図る

3ware 9750-8iカード本体。接続端子はminiSAS×2基。専用ケーブルで1個の端子に4台のSATA/SASのドライブを接続できる
――御社のRAIDカードとしてはMegaRAIDシリーズもありますが、今回の3ware製品とそれらとは、どれぐらい仕様が異なるのですか?

[橋本] 実は、9750-8i/4iは、MegaRAID SAS 9261-8i/4iという製品とボードの設計は同じですが、ファームウェアとソフトウェアに違いがあります。3wareシリーズの特徴は、RAID BIOSのセットアップ画面と管理ソフトウェアである「3DM2」(3ware Disk Manager Ver.2)が、従来の3ware製品と共通の画面構成となっている点です。そのため従来の3ware製品をお使いのユーザーが、そのままの操作感で使うことができます。

 また、各種OSの対応に関しても、従来の3ware製品の特徴である「オープンソース系OSのサポートに強い」という点を継承しています。発売時点でLinuxカーネル 2.6に対応しています。また、3ware製品のみの特徴としては、Macintoshへの対応を予定している点も挙げられます。

――今回の3ware製品でコンシューマ向け市場に本格参入、ということになりますが、サポートなどの取り組みはどのようになりますか?

[橋本] まずはチャネル向けWebサイト「LSI Channel Gateway」の拡張を考えております。現在は「本社(アメリカ)サイトの日本語版」という位置づけですが、日本発の情報を拡充させていきます。とくに重点として考えているのが、マザーボードとの互換性情報です。マザーボードの場合、海外と日本では販売されている製品が大きく違う場合が多いのです。

――コンシューマー向けでマザーボードというと、いわゆるPC用のマザーボードでの互換性情報も調査される、ということでしょうか?

[橋本] さすがにそこまでのサポートではなく、基本的にはやはり想定ユーザーの多い、サーバークラスのマザーボードの情報をまとめたいと考えております。

――このあたりは本誌読者が気になる点かと思いますが、やはりPC用マザーボードでは動作しない、という情報などは来ておりますか?

[橋本] 私たちの方では、まだマザーボード側と思われるトラブルの報告は受けてはおりません。ただし、マザーボードの形状がPCI Express x16スロットであっても、内部配線がx1やx4相当となっているタイプのスロットですと、動作はいたしませんので、注意していただきたいです。



日本語化されたセットアップガイドには、PC用マザーボードで使用することを想定した注意書きも記載されている
――なるほど。他の取り組みはどのようなものでしょうか?

[橋本] また、各種情報の日本語化も進めております。実際に、3ware製品のマニュアルで中心となるクイックインストールガイドには、エラーメッセージの解説とその発生状況などの解説を詳しく記載しているのですが、今回の製品では、これを全て日本語化しています。もちろん単なる日本語化だけでなく、翻訳の質にも留意しています。

 ともすれば、こうしたエラーメッセージの一覧は原因までの紹介がされておらず、実質的なブラックボックスになってしまうことがあります。私たちがコンシューマーを狙うにあたって重視することの一つが、こうしたブラックボックスを減らしていく、という点なのです。

 また、現在弊社製品の販売店は、秋葉原ではオリオスペックさんとT-ZONE. PC DIY SHOPさんなどのストレージに強いショップさんですが、こちらも将来的には増やしていこうと考えています。

――しかし、このタイミングでコンシューマ向け製品に本格参入される理由とはなんでしょうか?

[橋本] チャレンジだと思います。私たちの製品は企業ユーザーやOEM向けではシェアが高いのですが、今後はその先が重要になってくると考えております。

 また、コンシューマ向けに直接製品を販売することで、企業ユーザーやOEM向けでは得られない使い方やそれで得られる情報がフィードバックされる、という点も重要です。私たちはそうした情報を、積極的に企業ユーザー向けにも活かそうと考えております。そうした点も含めてチャレンジですね。

――そこまで重視されているとお聞きすると、個人的にも嬉しく、頼もしいお話です。最後に、ユーザーにアピールしたい点などはありますか。

[橋本] 弊社は基本的に、「当たり前のことを実行して、お客様に満足していただく」という点に重きを置いております。それは製品の改良はもとより、OSサポートという点もそうですし、信頼性といった点もそうです。先ほどの「ブラックボックスを減らしていく」という点も、その一つなのです。

[秦] これまで弊社をご存知のユーザーは、「LSIってOEM向けでしょ」というイメージがあったのではないかと思います。OEMだけでなくコンシューマー市場にもコミットするうえで、そうしたイメージを大きく変えていく必要がありますね。

 さきほどのマニュアルの日本語化の話も、そうした取り組みの一端です。OEM向けでは「英語のままで大丈夫」という場合もあるのですが、コンシューマー向けはそうはいきません。今後の製品を通じて、OEM向けメーカーとしてだけでなく、コンシューマー向けメーカーとしてのLSIというイメージも確立したいと思います。製品発表も今後積極的におこなっていきます。

[橋本] 今後、LSIでは、8ポートより多くのポート製品をはじめ、様々なコンシューマー向け製品を計画しております。

※読者プレゼントのお知らせ

 LSIロジックよりご提供いただいた「3ware SAS 9750-4i& 純正ケーブル」を一名の方にプレゼントいたします。
 ご希望の方は以下のフォームより必要事項をお送りください。

応募期限:2010年3月9日(火) 20:00

 [読者プレゼント応募フォーム]
(プレゼントの応募は終了いたしました)


□LSIロジック
http://www.lsi.jp/
□製品情報
http://www.lsi.jp/channel/
□オリオスペック
http://www.oliospec.com/
□T-ZONE. PC DIY SHOP
http://www.tzone.com/

LSIロジック製品

[取材協力:LSIロジック]

※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。