【 2010年12月4日号 】 | |
[不定期連載]PCパーツ最前線: GIGABYTEに聞く、マザーの開発コンセプト 〜代理店変更の影響は?〜 |
- マザーボードメーカー、とくに日本市場においても古株であり、高いユーザーの支持を得ているのがGIGABYTEだ。
今回、同社からマザーボード製品のアジア(日本を中心としたDivision III)担当マーケティングマネージャーをされているAlan Chen氏が来日し、お話を伺う機会を得た。
また、2010年の日本ギガバイト一番のニュースといえば代理店の変更。そこで、新たな代理店となったCFD販売の取締役 事業推進部長である田中善道氏にも、今後の販売戦略を伺った。
聞き手:石川ひさよし、鈴木 光太郎
協力:CFD販売
実施日:2010年11月10日マザーボードの開発コンセプトは「四則演算」
トレンドを常に先取り
−まずGIGABYTEにおけるマザーボード開発のポリシーとはどのようなものでしょうか?
GIGABYTEのAlan Chen氏[Alan Chen氏(以下Alan)]我々のマザーボード開発は哲学に基づいています。数学で言う「足し算」「引き算」「掛け算」「割り算」のようなもので、非常に単純なものです。
足し算に関しては「バリューアッド」。付加価値を付けます。引き算に関しては自分たちが最も得意な点に特化するということです。掛け算はパートナーとの相乗効果です。割り算はパートナーや顧客と得られた利益をみんなで共有しようという考えです。
また製品そのものに関しては3つのキーフィーチャを掲げています。「Quality」「Green」「Innovation」の3つになりますが、Qualityに関してはUltra Durableをバージョンアップさせてきましたし、Greenでは高効率なコンポーネントを採用することで25%の効率改善を実現。2008年にはDynamic Energy Saverを導入することでさらにエコな製品を実現しています。
「Innovation」では現在、新インタフェースを積極的に採用しています。「333」シリーズがその最新のものになりまして、USB3.0、SATA3、3倍バスパワーUSBの3つの機能を盛り込んだ製品になります。
USB 3.0に関しては回路設計も特別なものを採用し、定格の3倍のバスパワー電力を供給できます。On/Off Charge機能としてプッシュしていますが、これによりiPhoneやiPadを40%短時間で充電することが可能です。こうした機能は、一部、あるいは全部が、エントリーモデルからハイエンドモデルまでGIGABYTEのほとんどの製品で利用可能となっています。
振り返れば、GIGABYTEは信頼面における固体コンデンサの採用、2オンス銅箔層など、常に新技術を市場に先駆けて導入しています。これがGIGABYTEのマザーボード哲学です。
−「エントリーモデルは価格勝負」というのが市場のイメージですが、高信頼、高付加価値なGIGABYTEマザーは比較的高価なイメージがあります。
[Alan]おもしろいのがG41チップマザーボードでの店頭販売実績です。
GIGABYTEの製品は、他社の同チップ搭載製品と比べ割高であるのは事実ですが、販売実績では上位に食い込んでいます。高品質で高効率といった点が評価されての結果と思います。また、たとえ500円高くても、そこに1,000円相当の価値があるならばお客さんは満足していただけるという答えでもあるでしょう。
マザーボードは「3年サイクル」を見越して開発
−「333」の話が出ましたが、発表当初、この「3倍バスパワー」は使いどころが難しい印象でした。しかし今はiPadなどの発売で、魅力もわかりやすくなってきました。開発時点でこうした状況を予見されていたのでしょうか?
「333」搭載モデル[Alan]もちろんです。マザーボードは一回購入すればおよそ3年使われると想定しています。USB 3.0の普及はまだこれからですが、3年も経てばごく普通のインタフェースになっているでしょう。
ただし、USB 3.0はチップさえ搭載すれば対応できます。そこで、3倍バスパワーというさらなる付加価値を加えたのです。増加するUSB充電対応機器に対し、1ポートで充電できる、あるいはより大電流を求める機器にも対応できるという点でメリットになると考えました。
−また、Ultra Durableにもいくつかのバージョンがありますが、その違いはどこにあるのでしょう?
[Alan]現在はUltra Durable 3に移行しておりまして、Ultra Durable 3とUltra Durable 3 Classicに分かれています。
Ultra Durable 3は2オンス銅箔層、低ESR固体コンデンサ、フェライトコアチョークなどを採用していますが、Ultradrable3 Classicに関しては2オンス銅箔層や固体コンデンサの他にDual BIOS等を訴求する事などによって、差別化を図っております。
対応するUltra Durable 3のバージョンに関しては、パッケージにロゴをプリントしてありますので、こちらを参考にしていただけると判別できると思います。
GIGABYTEマザー選びのコツは?
ブランドネームも検討中−GIGABYTEマザーボード、というと製品種類が豊富なことも特徴ですが、逆に型番だけではグレードが分かりにくい、という声も出ていますが、いかがでしょうか?
[Alan]パンフレットの裏に製品のポジショニングチャートを示していますので、それを御覧になるのが一番ですが、およそUD7以上がハイエンド、UD2以下がエントリー向けと分けております。
機能で見ると、チップセット名の後に「A」が付く製品がUSB 3.0とSATA 3、3倍バスパワー全てに対応したモデル、型番末尾に「-USB3」と付く製品はUSB 3.0に対応しSATA3を搭載していない製品という具合に見分けることが可能です。
……とはいえ、ユーザーさんから分かりにくいという声はいただいております。そこでシリーズ名を付与するということも検討しております。例えばX58に「Ninja」といったブランディングネームを付けるといったようにね。
また、「エンスージアスト向け」ということでしたら、オススメはやはり「GA-X58A-UD9」です。
今までのGIGABYTE製品は、「高品質で安定している」「手堅い」といったイメージだったと思いますが、GA-X58A-UD9はそうした点を払拭するような、パフォーマンスに特化した製品となっています。
そのために搭載したのが、24フェーズのパワーデザインや2オンス銅箔層、良質な部品類などですが、結果としてパフォーマンスと効率は切っても切り離せない関係にもなっています。こうしたエンスージアスト向けモデルでもGreenが重要な要素なのです。
代理店変更で、修理/サポート体制を強化
地方量販店での入手性も向上?−今年7月に代理店が変わりましたが、これによってどういった点が変わるのでしょうか?
[Alan]日本におけるGIGABYTEのシェアは現在2位(BNC調べ)ですが、CFD販売のような強力なパートナーを得たことで、今後に関しては前向きに捉えております。
CFD販売はとくにマザーボード以外でも様々な関連製品を取り揃えており、相乗効果による販売チャネルの拡大に期待しております。販売店との信頼関係もしっかりしておりますし、営業力、マーケティング能力に関しても評価しております。
[田中善道氏(以下、田中)]CFD販売の強みは大きく2つあると思います。ひとつ目は修理・サポート体制の充実です。既にグループ内で経験を持つスタップを出向させ、電話の繋がりやすさ、対応のスピード面も人数を増員することで改善いたしました。
CFD販売
取締役 事業推進部長 田中善道氏ふたつ目はCFD販売が取り扱う他の製品とのコラボレーションです。ご存知のとおりCFD販売はCPUやメモリ、HDDなどのキーコンポーネントも幅広く取り扱っています。
それらの製品との相性をいち早く検証することで、安心して購入いただける環境を作りたいと考えています。また、ユーザーニーズに合った、よく店頭で見かける「セット割引」もどんどん販売店様と企画していく予定です。
−実際の市場での活動はいかがでしょうか?
[田中]マザーボードというと、まだ地方においてはそもそも置いてない、なんてことも多いわけですが、こうした点を改善していくことが我々の課題と考えております。
CFD販売現在の販売網を生かし、WEB系販社や地方量販店にも力を入れ、GIGABYTE製品の入手性を向上させていく方針です。
−地方でのPC-DIY教室も開催されるとのことですが?
[Alan]こういうイベントをメーカー単独で開くということは難しいですが、この度、CFD販売の大阪支店に協力いただくことで実現しました。主にPC初心者、自作初心者に向けてのイベントになりますが、継続的に開催していく予定です。
[田中]これまでも玄人志向として同様のイベントを開催しておりまして、その経験を生かしていこうと思います。PC-DIYユーザーの裾野を拡大することができれば幸いです。
−7月に開設されたGIGABYTEショールームの意図はどのようなところにあるのでしょうか?
GIGABYTEショールーム[Alan]これは代理店切り替えとタイミングが重なりましたが、GIGABYTEが決定したものです。ショールームは、いかに付加価値を高めていくのか、というGIGABYTEの哲学を実践するひとつの窓口と位置づけ、また、エンドユーザーの考えや情報などを吸収することができます。
他社がショールーム等から撤退しており、そうしたコストダウン効果は我々も理解していますが、GIGABYTEとしては、「いかにして製品としての付加価値を高めていくか」を哲学としていますので、現時点でショールームの開設は社の理念に適っています。
既に、ショールームがオープンしてから、2度ほどGIGABYTE製品購入者を対象としたプレゼントキャンペーンを展開しています。こうした、エンドユーザーの方と交流できるキャンペーンは、今も次の企画を計画している最中です。
展示に関しても、現在はH55を搭載したMini-ITXマザーボードの「GA-H55N-USB3」を使ったHTPCをライブデモしていますが、随時最新の製品を用いることで、自作スタイルの提案になるような展示を検討しております。長期的には、「ショールーム」という場所がユーザーさん、PC-DIY業界全体にとってインタラクティブな場所になればと思います。
−GIGABYTEはオーバークロックコンテストにも積極的に関与していますね
[Alan]オーバークロックコンテストは、日本だけでなく全世界的に展開しております。優れた製品であることをアピールする場にもなりますし、オーバークロッカーの生の声やアイデアを集約することができ、そこで得られるフィードバックが製品開発にも役立っています。そういう意味で、今後もGIGABYTEにとって重要な活動であると位置づけています。
ギガバイ子とサングラス男とのコラボも実現するか!?
−とくにコアなユーザーが気になるところだと思いますが、ギガバイ子って今後どうなるのでしょう?
ギガバイ子[Alan]ギガバイ子自体は日本国内のみのキャラクターですが、ある意味GIGABYTEのスポークスマンのような立場です。今後について言及することは難しいですが、代理店変更で何かが変わるわけではなく、当面は今まで通り継続していきます。
[田中]玄人志向のサングラス男とのコラボレーションというのも、版権がなんとかなればやりたいですね。僕らはウェルカムです(笑)
−それは…どちらかが8頭身になったりどちらかがデフォルメされたりとか?
[田中]そういう展開もアリですね(笑)
−最後になりますが、今後の意気込みをそれぞれお聞かせください。
[Alan]ベストな製品を常に市場に提供していきます。現在、日本市場では第2位に甘んじているのは事実です。CFD販売には代理店切り替えの困難な状況のなか、多大な協力をいただきました。今後もいっそう頑張らねばならない点があるとは思いますが、PC DIY市場により貢献できるよう努めてまいりたいと考えています。
[田中]CFD販売は、マザーボードの代理店でもあり、CPUの代理店でもあります。さらにメモリ、HDDの代理店でもある立場を十二分に活かした提案を様々な分野に行い「GIGABYTE」というブランドを広めていきたいと思います。
−ありがとうございました。
□GIGABYTE
http://www.gigabyte.jp/
□CFD販売
http://www.cfd.co.jp/□関連記事
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