【 2012年8月14日 】 | |
[不定期連載]PCパーツ最前線: LianLiに聞く「LianLiケース、ここがポイント」(後編) 奇抜な、そしてハイエンドなギミックはどこからくる? Text by 石川ひさよし |
- 後編:
奇抜な、そしてハイエンドな
ギミックはどこからくる? LianLiがこうした"変わり種"PCケースを展示するのは、近年恒例となりつつある。
例えばカタツムリ型ケースや岡持ちケース、クモ型ベンチマーク台といったように、PCケースの型に捕らわれない自由な発想のケースを展示しており、そしてそれらがその後、実際に販売されているから面白い。
さて、前回お聞きしたところでは、アルミ板から切り出す工法でシンプルかつ飽きの来ないデザインというLianLiだが、こうした変わり種PCケースたちは、どのようなコンセプトから毎年展示・リリースされるのか。興味深いこの真相について、来場中だった同社社長、Michael Chen氏(以下、Chen氏)に引き続きギモンをぶつけてみた。
聞き手:石川ひさよし
協力:LianLi
実施日:2012年6月6日奇抜なケースはLianLiの使命?
蒸気機関車が走るのは「面白いから」
LIAN LI INDUSTRIAL社長 Michael Chen氏
奇抜なデザインは氏のアイデアとのこと
歴代ユニークケース(1):エスカルゴ
(発売記事/初代)
歴代ユニークケース(2):クモ
(発売記事/改造して歩行)
歴代ユニークケース(3):岡持ち
(発売記事/応用例)−−COMPUTEXでのLianLiと言えば、毎回奇抜なデザインのケースを用意していて、記者を楽しませてくれます。単刀直入ですが、こうした奇抜なデザインはどなたが考えているのでしょうか。
[Chen氏]全て私(社長)が考えたものになります。また、思い立ったというより、年1回は作ることを使命としています。
−−それはまた何故なんでしょう。
[Chen氏]LianLiは想像力豊かな会社である、ということを示すには、製品という形が最も適していると考えているからです。
−−ちなみに、なぜ機関車ケースが走る必要があったのでしょうか。
[Chen氏]そのほうが面白いでしょう?
−−実際、その年に展示された製品は、次のCOMPUTEXまでの期間で発売されていますね。先ほど製品と言いましたが、こうした奇抜なケースも全ては製品化を前提に開発しているのでしょうか。
[Chen氏]当然、製品化を前提にしています。
−−そうした奇抜なケースのなかで、製品化できなかったものはあるのでしょうか。
[Chen氏]生産ラインを前提にしたという製品を指しているのであれば、ありません。製品化されなかった製品は、ボツになった製品です。
−−ボツになった製品というのもあるのですね。
[Chen氏]全体から見れば30%くらいがボツになっています。
−−そうしたボツ作品というのは、理由があったのでしょうか。
[Chen氏]ケースとして完成度の高さはもちろん、機能性、そして当然「製品化が可能なのか」など、様々な点を検討して製品化の可否が決まります。
そしてここが重要な点ですが、例え製品化がされなかった場合でも、優れた機能については今後の製品にフィードバックされることとなります。
−−R&Dも兼ねているわけですね。ではこうした奇抜なケースのセールスはいかがでしょうか。[Chen氏]先も申しました通り、完成度や機能性などの検討を重ねて製品化されていますから、ケースとしての魅力は十分だと思います。実際、ほとんどの製品は、私たちが予想していた以上の評価をいただいております。
エスカルゴケース「PC-U06」の内部。外観とは裏腹に、内部スペースは案外機能的
今回のPC-CK101を開けてみたところ。こちらも意外にPCパーツがしっかり収まる
−−LianLiのケースは外観だけでなく、内部にもユニークな機能が多くありますが、こうした機能は誰が考えているのでしょうか。[Chen氏]私はもちろん、工場長や社内の設計チームが中心にアイデアを出し合っています。現状に満足することなく、常になにか新しいものを、少しでも便利で快適な機能をと追求したなかで生まれた機能たちです。
プッシュピンによる固定方式
ゴムワッシャを使ったHDDマウンタ上級者向け製品も多数用意
「簡易水冷向け」「HDD20基」などマニアック機能も
−−今回展示されている製品で「PC-D8000」もユニークな製品ですが、こちらはどのようなコンセプトで誕生したのでしょうか。
サイドワゴンのようなファイルサーバ向けPCケース「PC-D8000」
合計20基のHDDベイと6基の5インチベイを搭載。アルミケースと言えどもパーツを組み込むと重量級になってしまうため、キャスター付きだ
マザーボードは奥側に搭載。引き出し式である程度パーツを組み込んだ状態でも出し入れできる[Chen氏]以前、PC-343Bというファイルサーバ向けの大型ケースを販売していましたが、PC-D8000は、これを現代版にアレンジした製品と思って下さい。
左右、2つのブロックに分かれた内部構造を採用し、前面は左右とも5インチベイと、3.5インチシャドーベイに割り当て、ファイルサーバで求められる大量のHDDを搭載可能です。また、3.5インチシャドーベイのうち6基はホットスワップに対応しています。
この製品では、他にもマザーボードベースを背面からスライド式に引き出せるようにしています。幅の広いケースですので、内部のメンテナンス性を考慮した構造です。ほか、電源を2基搭載できたりと、スペシャルな設計になっています。
ちなみに、開発当初はもっと多数のベイを備えたデザインでしたが、強度や実用面を考え、現在の仕様に収まりました。しかし、HDDを20基搭載できるケースというのはなかなか他では見つからないと思います。
−−他にもハイエンド向け製品では「PC-X2000FN」も展示されていました。最新のハイエンドモデルに搭載される新機能などはありますでしょうか。
フラットなアルミパネルで高い質感を演出するハイエンドフルタワー「PC-X2000FN」
簡易水冷キットのラジエターをケースの外に取り付けでき、内部の物理干渉を抑えられる仕組みが採用されている。この仕組みはミドルタワーのPC-V700から採用が始まっている[Chen氏]今年のモデルから、簡易水冷キットのラジエータをケース外に取付可能な機能を搭載し始めました。
LianLiでは、自作PCのトレンドに対応すべく、常にケースを進化させています。簡易水冷キットの他にも、最近のトレンドとして14cm以上のケースファンが注目を集めています。これについても、ハイエンドモデルを中心に対応が始まっています。
−−LianLiのケースはモデル数が非常に多いですが、社内ではどのようにグレード分けをしているのでしょうか。
フルタワータイプのPC-Z70(左)とPC-V2120(右)
ミドルタワータイプのPC-V650[Chen氏]サイズ的には、フルタワー、ミッドタワー、ミニタワー、Mini-ITXのように、そして少し外れたところでHTPC向けといった分け方があります。
ハイエンドユーザー向けではフルタワーがメインとなりますが、例えばPC-X2000FNはどちらかと言えばHTPC向けでもあります。ただし、拡張性や機能などから、実際ご利用されるのはハイエンドユーザーが中心ですね。搭載するのもハイエンドパーツばかりと聞いています。
また、真の上級者向けモデルを線引きしますと、Extended-ATXやHPTXなど大型マザーボードへの対応や、10本以上の拡張スロットを備え、多数のHDDベイを搭載している、というのが条件だと思います。こうした仕様を満たす製品はほとんどフルタワーになってしまうわけですが、実際にはフルタワー以外のモデルでも一部対応していたりと、ニーズに合せ様々な製品をご用意しています。
こうして見渡すと、LianLiのケースは全体的に上級者向けモデルが多いですね。
それだけ仕様や機能への要求も高く、トレンドにも素早い対応を求められます。最近ではUSB 3.0インターフェースが登場しましたが、USB 3.0対応に一番乗りしたのも弊社です。また、地味なところですが、上位モデルのホットスワップベイはSASにも対応しています。一般ユーザーの皆さんはSATAで利用するようですが、フラッグシップのアピールポイントとしてSASにも対応させています。
microATX対応のPC-V355
Mini-ITX対応のPC-Q18
HTPCタイプのPC-C33[Chen氏]先(前回)にも紹介しましたが、我々のアルミ板をベースにそれを切り抜き、加工するという方法は、型を作ってから量産する方法よりも自由度の高いところがメリットです。
ですから、こうした発想を具現化することができます。豊富な選択肢を用意でき、ちょっと違うだけの細かなニーズにも対応することができます。このフットワークの軽いも弊社の特徴と言えるのではないでしょうか。
−−最後に、日本のユーザーに向けてのメッセージをお願いします
[Chen氏]今後も弊社では様々なアイデアの具現化を行い、日本のユーザー様にも末永く愛用していただける製品、そして驚きの製品を投入していきたいと考えています。
今後とも、弊社製品をご愛用いただけるよう、お願いいたします。
−−ありがとうございました
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□LianLi
http://www.lian-li.com/
□ディラック
http://www.dirac.co.jp/index.html□関連記事
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http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20120428/sp_case_ll.htmlLianLi製品 [取材協力:株式会社ディラック]