アキバスポットガイド

ロボットメーカー直営店は二足歩行ロボットだらけ!! 改造バカ潜入レポート

~ 秋葉原スポットガイド ~ text by 高橋 敏也

 秋葉原と言えば言わずと知れた「オタクの街」だが、一口に「オタク」といっても千差万別、ジャンルが違えば目的地も異なる。何の変哲もない雑居ビルの一室が、あるジャンルのオタクにとっては聖地だったりする。そこで、秋葉原歴うん十年、改造バカこと高橋敏也氏が秋葉原内のさまざまなスポットを訪問し、そのディープで雑多な魅力をとことんレポートするのがこの企画。2次元&アイドルだけがアキバじゃないのだ!

ヴイストン ロボットセンター秋葉原店

 秋葉原の知る人ぞ知る人気スポットを紹介する本連載も早くも3回目。今回ご紹介するのは、二足歩行をはじめ各種ロボットを製造・販売するメーカーの直営店だ。世界大会で5連覇を果たしたお宝ロボットが直に見られるだけでなく、技術的にもデザイン的も優れた最新機種を手ごろな価格で購入することができる。現在、教育用途でかつてない盛り上がりを見せているロボットの世界を体験してみよう。

 ヴイストン ロボットセンター秋葉原店(以下、ロボットセンター)へのアクセスは、JR秋葉原駅電気街口を起点にするのが一番分かりやすい。電気街口を出たらそのままJR総武線の高架に沿ってお茶の水方向に向かう。中央通りの大きな横断歩道をわたってしばらく進むと、右側にあるビルの4階にロボットセンターのサインが見える。同じビルの1階にある、知る人ぞ知る「ネジの西川部品」を目印にしてもいい。

JR総武線の高架沿いにお茶の水を目指し、中央通りを渡ったらビルの4階辺りに注目しよう
「ヴイストン ロボットセンター」のサイン発見!
ここから入ってエレベーターで4階へ
ヴイストン ロボットセンターに到着!

 ロボットセンターは大阪にあるヴイストン株式会社が運営するロボットショップだ。ヴイストン株式会社は大阪に本社がある、ロボットの研究開発、製造をしているメーカーなのだ。このヴイストンという会社が実はスゴいところで、国際的なロボットサッカー大会で5年連続優勝したり(2004年から2008年)、顧問に日本最先端のロボットデザイナーや研究者がいたりするのだ。

 そんなヴイストンのロボットセンター、もちろんロボットとロボットのパーツ、そしてロボット関連の商品で一杯である。と言うか店内に入ってペッパー君のあいさつをスルーしつつ、店内を見渡せばどこを見てもロボットである。そんな店内をヴイストン株式会社の営業課課長、鷹野さんと昔話で盛り上がりつつ、案内してもらいながらいろいろお話を聞いた。

店内に入ってすぐ右手にご存じペッパー君
左手にレジ兼受け付け(すいません鷹野さん、写っちゃいました)
ところ狭しと並ぶロボット、ロボット部品、関連商品の数々
さすが紙媒体の所属、編集氏はいち早く書籍の存在に気付く

二足歩行ロボットブームは一段落も、現在は教育用途がホット!

 昔話? 実は私、以前二足歩行のパーソナルロボットを取材していたのである。そしてその流れで二足歩行ロボットの格闘技大会ROBO-ONEに参戦したりしていたのだ。もちろんロボット全般を取材していたのでヴイストンのことも知っていたし、私が取材していた頃にヴイストンが前人未踏のロボカップ連勝を果たしていたのである。その頃をよくご存じの鷹野さんと話をすれば、盛り上がるなというほうがムリなのだ。

 それはそれとしてロボットセンター、最近注目されているのはやはり教育用のロボットだそうだ。プログラミングでロボットを制御し、センサーと連動した動作などを行なわせる。シンプルなロボットから二足歩行ロボットまで、教育現場で使われることも多いと言う。個人的には動きが楽しくて夢のある二足歩行ロボットが教育現場に向いていると思うのだが、そこはそれ予算というものがあって、売れ筋はシンプルで低価格なものだと言う。

ユニークだったのはこのロボットをテーマとしたアートオブジェ。ニシキー管が仕込まれている。ちなみに一番右は「非売品」なのだが、鷹野さんに理由を聞いたら「社長の私物」とのこと
すさまじく出来のいい鉄人28号、そしてBLACK OX。鉄人28号映画化の記念で作成され、かなり「いいお値段」で市販された
久々に再会したVisiON TRYZに感動するおっさんの図。ロボカップ2006で総合優勝した機体。頭部の全方位センサーが特徴的
歴代のVisiONシリーズが展示されている
おもしろかったのはこのロボットプログラミング入門キット。基本的に同じ内容なのだが、チップがH8とArmで異なる。教育現場で使用しているプログラム開発環境に合わせて2種類用意されているそうだ
二足歩行ロボットにチャレンジしたい人には最適なヴイストンのRobovie-nano、コンパクトだが15軸の本格派
本来はライバルメーカーなのだが、ロボットセンターはショップなので、近藤科学の製品も販売している。写真はベストセラーのKHR-3HV

手軽でかわいい「ピッコロボIoT」はいかが!?

 さらに現在大注目の製品がピッコロボIoT。ロボットとしてはコンパクトでシンプルな二足歩行タイプなのだが、大ヒットしている制御ボード「Arduino」互換のボード「V-duino」を搭載し、無線LANやセンサー制御、I/O関連のプログラミングを学んだり楽しんだりすることができる。また無線LAN経由でスマートホンや各種クラウドサービスと接続することも可能になっており、まさにIoTなロボットなのである。

 ほかにもプログラミングや機器制御の教育学習に活用できるロボット(二足歩行だけではなくさまざまなロボット)が販売されていて、教育者などが実際にロボットセンターを訪れて相談をしたりもするらしい。もし気になる人がいたら、ロボットセンターへ行って話を聞くのが一番早いと思う。

最初に登場したピッコロボ。シンプルだがちゃんと歩くし、プログラミングの学習には最適。ロボット制御の学習という点でも優れている。Arduino UNOの互換ボードFreaduino UNOが搭載されているのもポイント
ロボットとIoTを楽しみ、そして学ぶプラットフォームに最適なピッコロボIoTは大注目の製品。センサー類も簡単に追加可能で、制御にはArduino互換ボードのV-duinoが搭載されている
本格的なパーソナルロボットもいいが、こうしたトイロボットも楽しい。子供、大人、関係なく楽しめる
昔作った記憶がある! いいなあ、これ。もう一度作ってみたくなった
【ピッコロボIoT、実際の動き(センサー未搭載状態)】
シンプルな動きだが、歩くときにはちゃんと片足が地面から離れている。なのでピッコロボIoTも立派な「二足歩行ロボット」なのだ。そしてこの動き自体、プログラミングなどで実現できる

マニアも唸る、専門店ならではの品揃え。ロボ関連はここだけでOK!

 そう、ロボットは二足歩行だけじゃないのだが、それでも二足歩行ロボットが気になる私。最新の二足歩行ロボットや過去製品の展示を見ていると、もう一度やってみてもいいんじゃないかとか思ったりもする。とくにズラリと並ぶサーボモーターを見ると、昔の血が騒いで仕方がない。回転軸を信号で制御するサーボモーターは、二足歩行ロボットにとって関節であり筋肉でもある。よく二足歩行ロボットで「軸」とか「自由度」という数字を見かけるが、これは搭載されたサーボモーターの数なのだ。いやー、ROBO-ONEやってた頃は買ったなあ、サーボモーター。

 いやいや、ロボットセンターは二足歩行ロボットだけじゃない。企業向けのプレゼンテーションロボットもあれば、ロボコン用の車輪付きロボット用パーツなども揃っている。精密機械の制御などにも活用できる高品質、高性能なモーターも販売されていれば、アルミの板まで売っているのだ。要するにロボット関連のパーツ、部品、素材はここでほぼすべて揃うのである。

ズラリと並ぶサーボモーター。二足歩行ロボットにとって関節と筋肉を兼ねる重要なパーツ。用途やシステムに合わせてさまざまなタイプが販売されている
こうした低価格なものもある
ロボットだけでなくさまざまな工業機械にも使用されるマクソンモーター。店頭で(在庫があればその場で)マクソンモーターを購入できるのは、ここロボットセンターだけとのこと
二足歩行、教育向け、トイだけでなく、ロボコン用のパーツもここで揃う。全方向移動の車輪(オムニホイールなど)が売られているのは初めて見た
ロボット台車に無限軌道! ここ、本当に何でもあるな……
一見かわいらしいロボットだが、企業向けのプロダクツ。プレゼンテーションを行なったり、受け付けをしたりとアイディアしだいでさまざまに使える。コンパクトな設置型のペッパー君といったところか

海外からのお客さんも増加中。世界に広がれ、国産ロボット!!

 ロボットを始めたい、でも何を揃えて何をすればいいか分からないという人は、まずはロボットセンターを訪れてズラリと並んだ製品を確認し、それからスタッフさんに相談してみるといい。また、ロボット関連、ロボットプログラミング関連の講習会なども行なっているので、そちらのほうに参加してみるというのもいいアイディアだ。いずれにしても「昔はさあ、私もROBO-ONEに参加しててね、いっつも予選落ちしててさあ……(注:私です。本選1回も出られませんでした)」なんて言う人は、ロボットセンターに来たら絶対に「もう1回やってみるか」という気になるから。

おっさんがROBO-ONEを取材し、そして参加していた頃の昔話をしつつ、鷹野さんにいろいろ解説してもらった
手書きポップがいい感じ。子供向け、大人向けの講習会も開催されていると言う

 秋葉原という土地柄、海外からのお客さんもよく訪れるというロボットセンター。以前はアジア系の外国人客が多かったのだが、最近では欧米からのお客さんも増えていると言う。どうも欧米で人気の口コミサイトに掲載され、それを見た人が訪れるらしい。またおもしろいところでは春先になると、制御機器系企業の人が新人講習や訓練などに使用するパーツなどを買いに来るとのこと。ロボットセンターで売っているのはトイロボット、パーソナルロボットだけじゃない。企業で活用できるアイテムもあるということだ。まあ、とにかく行ってみてくださいな、絶対おもしろいから。

[制作協力:ヴイストン ロボットセンター秋葉原店]

【Shop Information】

店名:ヴイストン ロボットセンター秋葉原店
住所:東京都千代田区外神田1-9-9 内田ビル4F
営業時間:平日11時~20時、土日・祝祭日10時~19時
定休日:毎週木曜日
TEL:03-3256-6676
Webサイト:https://www.vstone.co.jp/shop/