ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

倍速データレコーダと64KBのRAMを搭載して登場したMSX「三洋 PHC-33」

本体左上にデータレコーダを内蔵し、その右側にカートリッジスロットを2基備えています。データレコーダ以外は、オーソドックスなMSXハードでしょう

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げるのは、三洋電機特機が1984年に登場させたMSX仕様のパソコン「PHC-33」です。

 1983年にMSX規格が発表されると、MSX仕様のマシンが各社から発売されることになります。基本仕様は同じなため、どこで差別化するかが問われた市場でしたが、PHC-25などのパソコンを以前から発売していた三洋電機特機が世に送り出したのが、データレコーダを本体と一体化させたPHC-33でした。

独特のカーソルキーの形状が、PHCシリーズを踏襲しています。データレコーダ左側には、ノーマルと倍速の切り替えスイッチが見えます

 これは、以前にリリースされていたPHC-30の改良版ともいえるもので、RAMの容量が64KBに増加したほか、内蔵データレコーダも倍速モードを搭載し、より使い勝手がよくなりました。特に、RAM容量が16KBだったPHC-30では、容量不足で動かないカセットテープソフトもあったため、PHC-33での変更は歓迎されたのではないかと思います。

 価格も、PHC-30の64,800円から少々下がって59,800円となり、かなり手を出しやすくなりました。この時期のRAMを64KB搭載したMSXパソコンは、安くても6万円をオーバーしていることがほとんどだったため、PHC-33の59,800円はそれなりに魅力的だったのではないでしょうか。

背面には、プリンタポート、位相切換ボタン、オーディオ出力、ビデオ出力、チャンネル切り替えボタン、RF出力、電源スイッチと並んでいます。滅多に使わないからなのか、位相切換ボタンが背面に位置していますが、障害物にぶつかり押してしまうことも……
右側面には、リセットボタンとジョイスティックコネクタ×2が配置されています

 その他の仕様はMSX1規格に準じているのですが、データレコーダ内蔵モデルは良い面と悪い面がありました。良い面は、別途データレコーダを用意する必要がないために、データレコーダの相性問題に付き合わされなくて済むということです。反対に悪い面は、故障したときに本体ごと修理に出す必要があることでした。当時使っていた友人が、ロード時にテープをわかめにしてしまい、修理に出している間に何も出来なかったのを見ていた身としては、なんとなく考えてしまいます(笑)。

 ちなみに、三洋電機特機はMSX専門誌への広告出稿はほとんどなかったようで、月刊ASCII誌がメインでした。ただし、MSX1の広告は1984年で終わってしまい、その後はビジネスパソコンの広告ページへとシフトしてしまいます。